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29章 豊かな実りを願い
久しぶりに
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トモエとアイリスを揃って送り出し、昨夜から戻ってこないカリンとヴィルヘルミナがやっと戻ってきたかと思えば、馬車を求めるだけ求めてまた出ていくことになった。一体何事かとは思いながらも、オユキとしてはそのまま送り出して、戻ってきたときには大量の食材を積んで。
「その、仰っていただければ」
「ごめんなさいね、私の衝動買いのようなもので」
「ああ、確かにヴィルヘルミナさんにとっては、懐かしい物でしょうけど」
種々様々であれば、まだ問題ないと思えたには違いないのだが、馬車いっぱいに積まれたジャガイモを前にオユキとしても苦笑いをするしかない。足が速いなどと言う事は、確かにない。それくらいはオユキも知っている。だが、食材の管理はアルノーに任せると、そう決めたこともある以上は難しいというしかない。
「久しぶりに、クロースが食べたくなったのよ」
「ええと、確か芋もちのようなものでしたか」
クロースと言うよりも、クヌーデルと言った呼称のほうが有名ではあるのだろうが、ヴィルヘルミナの暮らしていた地の郷土料理。それをどうやらご所望だと言う事らしい。カリンの親しんだ料理については、彼女自身では無理なのだが、非常に有名な物でもありオユキが数少ない肉を問題なくとれる料理の一つとしてアルノーが折を見て作ってもいる。飲茶として、茶席に点心を並べることも実のところ少なくない。両者の仲は、アルノーとヴィルヘルミナの仲が悪いとは見えないのだが、それでもアルノーが自ら進んでヴィルヘルミナの故国の料理を作ることが無い。その程度には、有名な物ではあるのだ。個人間であればともかく、集団となってしまえば、そこには色々と難しさはあるだろう。
「あら、オユキは知っているのね」
「そうですね。過去に数度では効かない程に訪れたこともありますし、確か、その時には色々な種類を並べて頂いた記憶も」
それこそ、オユキでも知っていた郷土料理に近い物から、デザートと呼んでも良い物まで。
「老師、トモエさんに相談されていたこともあるのですが、一応は奥に大豆もそれなりに」
「豆類は、アルノーさんも喜ぶでしょうが」
アルノーは、サラダにスープに付け合わせにと。それはもう、あの手この手と言えばいいのだろう。少しでも、オユキにタンパク質を供給しようと考えた上でのことと分かるほどには、非常によく使っている。だが、それにしても彼のレシピに存在するものが基本となる以上は、大豆はやはり少ないのも事実。調味料と言うよりも、香りをつけるためにと、多少のしょうゆなどは使うそぶりを見せているのだが、やはりそれを超えるものは無い。
「私も、朝にたまにはシェントウジャンを食べたいのよ」
「ああ、あの」
カリンの語る言葉には、確かにオユキとしても思い当たるものがある。要は豆乳に酢を加えて緩く固めた物に、ヨウティアオと呼ばれる揚げパンを放り込んでとそんな料理だったようにオユキは覚えている。
「あら、知っているのね」
「その、どのような勘違いをされているのかは知りませんが、私もそこまで興味がないわけでは」
「同じものばかり食べそうな気がするのよ、オユキは」
カリンの言葉が正鵠を得ているばかりに、オユキからは何も言い返せるところがない。だが、カリンが私もそうだけど等と続けているのは、こちらも同じ穴の狢と言う事であるらしい。オユキとしても、確かに色々と詳しいのだが、そのあたりはどこで身につけた知識かと言えば、方々に仕事として出向いた時にある程度の説明を受けて。さらには、トモエと足を運んだ時に、トモエが熱心に強請るものだから。
「それにしても、これだけあると私としてもいくらか久しぶりに食べたいものもありますね」
そして、その言葉に、ヴィルヘルミナとカリンが露骨に安心を。オユキにしても、それに気が付くために、一体何を考えての事かと考えてみれば、やはりすぐに思いつくことがある。要は、各々がトモエに頼まれてもいるのだろう。オユキが食べられるものを、少しでも量が食べられるものを探してくれと頼まれているのだろう。トモエの気遣いが有難いのも確か、そして、それを快く引き受けてくれるこの得難いかつての世界と言う広い括りで見たときに同胞と呼んでも良い相手にも。
「ヴィルヘルミナさんも、カリンさんも。改めて、ありがとうございます」
苦労を掛けている、と言うよりも。こちらに渡るにあたって、それぞれがトモエよりもオユキの補佐をするようにと言われて、それを当たり前と受け入れてくれているのだ。カリンについては、寧ろオユキと言う存在が多少なりとも同期になったには違いないのだが、ヴィルヘルミナに至っては、アルノーもそうだが、全くの他人。すれ違ったことも無いような、そんな相手。それでも、見ず知らずの相手を手伝えと言われて、選択肢が無かったのだとしても良しとしてくれた得難い相手。
「どうにも、機会がそうはありませんから」
「都度、そうした気持ちは受け取っていますが」
「言葉にすることも大切なのだと、私はそれをここまでの間に学んでいますから」
さて、トモエの配慮と言う事もあるし、こうして目の前に、馬車の中に大量にある食材を見てもオユキとして食欲が失せないどころか、久しぶりに等と思う物もある。であれば、早速とばかりに動こうかとは考えるのだが。
「一先ず、ユフィに預けねばなりませんね」
「ごめんなさいね、手間をかけるけれど」
「アルノーさんが分かればよいのですが、そうでない場合は私のほうで簡単にお伝えしましょうか」
「そういえば、オユキは工学、機械あたりに詳しいのだったかしら」
カリンの疑問にこちらでも豆乳を作りたいと言う事なのだと、オユキも理解は及ぶ。
「その、圧搾を行う場合は脂になりますよ」
「ええと、そうなのかしら」
「はい。豆乳とは言う物の、絞るというよりはに出すものですし。乾燥しているようですから、確か一日はつけておくのでしたか」
「相変わらず、方法だけは知っているのね」
からかい交じりにカリンに言われるのだが、オユキとしてはそのような物だと応えるしかない。知識としては持っている、だが自分でわざわざやろうとは全くもって思わない。
「豆乳が出来れば、湯葉も作れますし、ええ、悪くは無いでしょう」
「それは、本当に悪くはないわね」
どうやら、ヴィルヘルミナの口にもあっていたものであるらしい。随分と楽しみにはしている様子。だが、とかく時間がかかるのと、細かい分量迄オユキが覚えているわけではない。煮だすという行為にしても、その前に相応に大豆を砕かなければいけなかったはず。細かい手順は、一先ずアルノーに任せてとなるだろう。何かにつけてと言う事も無いのだが、こうして食材を持ち込むたびに彼の仕事が増える。どちらが等と言う事は無いのだが、日々必ず求められるものを用意しなければいけないアルノーの作業量と言うのは、なかなかに酷なものだという自覚はある。あちらこちらについてくる丁稚を、彼が特に重用しているというよりも可愛がっている理由と言うのも、同様に。
教えるときには、トモエと同様。相応の厳しさをもって接していると聞いているのだが、それ以外の場面では本当に気さくだとか。子供たちのなつきようでも、それが見て取れるという物だ。
「そういえば、オユキはいったい何を用意するつもりなのかしら」
「用意という程ではないのですが、久しぶりに北欧のジャガイモ料理などを」
「北欧と言うと」
「あら、悪くないわね」
オユキの言葉に、全く思いつかないとばかりのカリン。反面、思いつくところのあるヴィルヘルミナ。このあたりの差は、いよいよ基本的な文かと言うしかない。ただ、問題としてはと思いながら、何とはなしにオユキは一つを手に取って。
「炭水化物、糖質、なのですよね」
これを主食にしてしまうと、確か問題が等とオユキとしては聞いた覚えがあるなと。手にしている物は、何やら数の少ないメークイーンのようにも見える少し細長い芋。そして、やはりヴィルヘルミナが己の食欲に忠実にと言うよりも、先ほど挙げた料理を作るためにと大量に買い付けた男爵イモに見える物。流石に、オユキには細かい種類まではわからないのだが、まぁ、ヴィルヘルミナが選んだ以上は間違いも無いだろうと考えて。
「動くから問題ないわ」
「何も言っていませんが」
「目が口ほどにものを言っているのよ」
ようは、太るのだとそんなことをオユキは考えたものだが、相手は特にそうしたことを気にする職業についていた相手。随分と目線が鋭くなっているのだが、改めてこちらの生活を考えてみればそれにしても問題はなさそうな物ではある。寧ろ、痩せている人間が多い事を考えれば、こうした物はもっと広まってもいいだろうとは考えるのだが。
「やはり、手間がかかるからでしょうか」
「時間は、確かに早々使えないわね」
「日々の仕事を、街中でと言う方々であれば」
「どうかしら、いよいよ纏めて作ればというものでしょうけど」
一般家庭で作る量は、それこそ多くて二人分が圧倒的に多い、と言うよりも多かったのだ。ならば、焼くだけでよい物。日持ちがするものを選ぶ流れと言うのも理解ができる。歴史で見れば、食事を共同の仕事として集まって煮炊き等と言う事も行っていたはずなのだが、それにしてもこの広すぎる世界ではなかなか難しい物もあるだろう。薪が無い場所、そういった場所ではまた独自の方法が発展もしているのだろう。魔道具を、早々に持ち込んでというよりも、過去から存在するどうやって作ったかもわからぬものを、いつ壊れるかもわからぬ恐怖と共に使い続けたのかもしれない。そのあたりは、いよいよおいて起き。
「オーブンは、今の屋敷にあるのでしたか」
「魔国で、調理用の魔道具はかなり買ったはずだけれど」
「オーブン、ですか。となると、いくつか思い当たるものが」
オユキは、手に持ったジャガイモを一先ずとばかりに袂に放り込んで、足をまずはとばかりに屋敷に向ける。屋敷の中でトモエもおらぬからと、書物をめくるのにもやはりもう飽き始めていたのだ。ならば、トモエが戻ってくるまでに少しの料理を用意しておくのも良いだろう。豆乳にしても、芋餅にしても、やはり時間はかかる。だが、オユキが求める物は、手早く作れば一時間もあればできるのだから。
「その、仰っていただければ」
「ごめんなさいね、私の衝動買いのようなもので」
「ああ、確かにヴィルヘルミナさんにとっては、懐かしい物でしょうけど」
種々様々であれば、まだ問題ないと思えたには違いないのだが、馬車いっぱいに積まれたジャガイモを前にオユキとしても苦笑いをするしかない。足が速いなどと言う事は、確かにない。それくらいはオユキも知っている。だが、食材の管理はアルノーに任せると、そう決めたこともある以上は難しいというしかない。
「久しぶりに、クロースが食べたくなったのよ」
「ええと、確か芋もちのようなものでしたか」
クロースと言うよりも、クヌーデルと言った呼称のほうが有名ではあるのだろうが、ヴィルヘルミナの暮らしていた地の郷土料理。それをどうやらご所望だと言う事らしい。カリンの親しんだ料理については、彼女自身では無理なのだが、非常に有名な物でもありオユキが数少ない肉を問題なくとれる料理の一つとしてアルノーが折を見て作ってもいる。飲茶として、茶席に点心を並べることも実のところ少なくない。両者の仲は、アルノーとヴィルヘルミナの仲が悪いとは見えないのだが、それでもアルノーが自ら進んでヴィルヘルミナの故国の料理を作ることが無い。その程度には、有名な物ではあるのだ。個人間であればともかく、集団となってしまえば、そこには色々と難しさはあるだろう。
「あら、オユキは知っているのね」
「そうですね。過去に数度では効かない程に訪れたこともありますし、確か、その時には色々な種類を並べて頂いた記憶も」
それこそ、オユキでも知っていた郷土料理に近い物から、デザートと呼んでも良い物まで。
「老師、トモエさんに相談されていたこともあるのですが、一応は奥に大豆もそれなりに」
「豆類は、アルノーさんも喜ぶでしょうが」
アルノーは、サラダにスープに付け合わせにと。それはもう、あの手この手と言えばいいのだろう。少しでも、オユキにタンパク質を供給しようと考えた上でのことと分かるほどには、非常によく使っている。だが、それにしても彼のレシピに存在するものが基本となる以上は、大豆はやはり少ないのも事実。調味料と言うよりも、香りをつけるためにと、多少のしょうゆなどは使うそぶりを見せているのだが、やはりそれを超えるものは無い。
「私も、朝にたまにはシェントウジャンを食べたいのよ」
「ああ、あの」
カリンの語る言葉には、確かにオユキとしても思い当たるものがある。要は豆乳に酢を加えて緩く固めた物に、ヨウティアオと呼ばれる揚げパンを放り込んでとそんな料理だったようにオユキは覚えている。
「あら、知っているのね」
「その、どのような勘違いをされているのかは知りませんが、私もそこまで興味がないわけでは」
「同じものばかり食べそうな気がするのよ、オユキは」
カリンの言葉が正鵠を得ているばかりに、オユキからは何も言い返せるところがない。だが、カリンが私もそうだけど等と続けているのは、こちらも同じ穴の狢と言う事であるらしい。オユキとしても、確かに色々と詳しいのだが、そのあたりはどこで身につけた知識かと言えば、方々に仕事として出向いた時にある程度の説明を受けて。さらには、トモエと足を運んだ時に、トモエが熱心に強請るものだから。
「それにしても、これだけあると私としてもいくらか久しぶりに食べたいものもありますね」
そして、その言葉に、ヴィルヘルミナとカリンが露骨に安心を。オユキにしても、それに気が付くために、一体何を考えての事かと考えてみれば、やはりすぐに思いつくことがある。要は、各々がトモエに頼まれてもいるのだろう。オユキが食べられるものを、少しでも量が食べられるものを探してくれと頼まれているのだろう。トモエの気遣いが有難いのも確か、そして、それを快く引き受けてくれるこの得難いかつての世界と言う広い括りで見たときに同胞と呼んでも良い相手にも。
「ヴィルヘルミナさんも、カリンさんも。改めて、ありがとうございます」
苦労を掛けている、と言うよりも。こちらに渡るにあたって、それぞれがトモエよりもオユキの補佐をするようにと言われて、それを当たり前と受け入れてくれているのだ。カリンについては、寧ろオユキと言う存在が多少なりとも同期になったには違いないのだが、ヴィルヘルミナに至っては、アルノーもそうだが、全くの他人。すれ違ったことも無いような、そんな相手。それでも、見ず知らずの相手を手伝えと言われて、選択肢が無かったのだとしても良しとしてくれた得難い相手。
「どうにも、機会がそうはありませんから」
「都度、そうした気持ちは受け取っていますが」
「言葉にすることも大切なのだと、私はそれをここまでの間に学んでいますから」
さて、トモエの配慮と言う事もあるし、こうして目の前に、馬車の中に大量にある食材を見てもオユキとして食欲が失せないどころか、久しぶりに等と思う物もある。であれば、早速とばかりに動こうかとは考えるのだが。
「一先ず、ユフィに預けねばなりませんね」
「ごめんなさいね、手間をかけるけれど」
「アルノーさんが分かればよいのですが、そうでない場合は私のほうで簡単にお伝えしましょうか」
「そういえば、オユキは工学、機械あたりに詳しいのだったかしら」
カリンの疑問にこちらでも豆乳を作りたいと言う事なのだと、オユキも理解は及ぶ。
「その、圧搾を行う場合は脂になりますよ」
「ええと、そうなのかしら」
「はい。豆乳とは言う物の、絞るというよりはに出すものですし。乾燥しているようですから、確か一日はつけておくのでしたか」
「相変わらず、方法だけは知っているのね」
からかい交じりにカリンに言われるのだが、オユキとしてはそのような物だと応えるしかない。知識としては持っている、だが自分でわざわざやろうとは全くもって思わない。
「豆乳が出来れば、湯葉も作れますし、ええ、悪くは無いでしょう」
「それは、本当に悪くはないわね」
どうやら、ヴィルヘルミナの口にもあっていたものであるらしい。随分と楽しみにはしている様子。だが、とかく時間がかかるのと、細かい分量迄オユキが覚えているわけではない。煮だすという行為にしても、その前に相応に大豆を砕かなければいけなかったはず。細かい手順は、一先ずアルノーに任せてとなるだろう。何かにつけてと言う事も無いのだが、こうして食材を持ち込むたびに彼の仕事が増える。どちらが等と言う事は無いのだが、日々必ず求められるものを用意しなければいけないアルノーの作業量と言うのは、なかなかに酷なものだという自覚はある。あちらこちらについてくる丁稚を、彼が特に重用しているというよりも可愛がっている理由と言うのも、同様に。
教えるときには、トモエと同様。相応の厳しさをもって接していると聞いているのだが、それ以外の場面では本当に気さくだとか。子供たちのなつきようでも、それが見て取れるという物だ。
「そういえば、オユキはいったい何を用意するつもりなのかしら」
「用意という程ではないのですが、久しぶりに北欧のジャガイモ料理などを」
「北欧と言うと」
「あら、悪くないわね」
オユキの言葉に、全く思いつかないとばかりのカリン。反面、思いつくところのあるヴィルヘルミナ。このあたりの差は、いよいよ基本的な文かと言うしかない。ただ、問題としてはと思いながら、何とはなしにオユキは一つを手に取って。
「炭水化物、糖質、なのですよね」
これを主食にしてしまうと、確か問題が等とオユキとしては聞いた覚えがあるなと。手にしている物は、何やら数の少ないメークイーンのようにも見える少し細長い芋。そして、やはりヴィルヘルミナが己の食欲に忠実にと言うよりも、先ほど挙げた料理を作るためにと大量に買い付けた男爵イモに見える物。流石に、オユキには細かい種類まではわからないのだが、まぁ、ヴィルヘルミナが選んだ以上は間違いも無いだろうと考えて。
「動くから問題ないわ」
「何も言っていませんが」
「目が口ほどにものを言っているのよ」
ようは、太るのだとそんなことをオユキは考えたものだが、相手は特にそうしたことを気にする職業についていた相手。随分と目線が鋭くなっているのだが、改めてこちらの生活を考えてみればそれにしても問題はなさそうな物ではある。寧ろ、痩せている人間が多い事を考えれば、こうした物はもっと広まってもいいだろうとは考えるのだが。
「やはり、手間がかかるからでしょうか」
「時間は、確かに早々使えないわね」
「日々の仕事を、街中でと言う方々であれば」
「どうかしら、いよいよ纏めて作ればというものでしょうけど」
一般家庭で作る量は、それこそ多くて二人分が圧倒的に多い、と言うよりも多かったのだ。ならば、焼くだけでよい物。日持ちがするものを選ぶ流れと言うのも理解ができる。歴史で見れば、食事を共同の仕事として集まって煮炊き等と言う事も行っていたはずなのだが、それにしてもこの広すぎる世界ではなかなか難しい物もあるだろう。薪が無い場所、そういった場所ではまた独自の方法が発展もしているのだろう。魔道具を、早々に持ち込んでというよりも、過去から存在するどうやって作ったかもわからぬものを、いつ壊れるかもわからぬ恐怖と共に使い続けたのかもしれない。そのあたりは、いよいよおいて起き。
「オーブンは、今の屋敷にあるのでしたか」
「魔国で、調理用の魔道具はかなり買ったはずだけれど」
「オーブン、ですか。となると、いくつか思い当たるものが」
オユキは、手に持ったジャガイモを一先ずとばかりに袂に放り込んで、足をまずはとばかりに屋敷に向ける。屋敷の中でトモエもおらぬからと、書物をめくるのにもやはりもう飽き始めていたのだ。ならば、トモエが戻ってくるまでに少しの料理を用意しておくのも良いだろう。豆乳にしても、芋餅にしても、やはり時間はかかる。だが、オユキが求める物は、手早く作れば一時間もあればできるのだから。
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