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28章 事も無く
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「先が見えるからこそ、全ての事柄に目が届くからこそ。そうでは無い私達では、図りかねるところが多いのでしょうね」
そう、凡そ普く神々の物語で聞く様に。
「確かにと、そうは思うのですが。こちらでは、そうでは無い方法も選べるのではないかと」
「役割がある以上は、と言う事なのでしょう」
「あとは、戦と武技、かの神からの」
「それについては、あくまで今回の事に限ってなのでしょうね」
そう、オユキが直接。トモエにも、創造神から与えられている功績を通して聞かされたかの神の不満。それについては、確かに思い返してみれば雨乞いの祭りに限った話ではあると、そう理解も及ぶ。
「言われてみれば、確かにそうですか」
「ええ。悪辣だとそう断定するのも難しい」
つまりは、過去に語られたまさに超越者。
どうか祟ってくれるなよと祈り、祀り。そして、日々の感謝を、安穏と過ごせることに対する感謝をささげるのだ。相手は完全な上位者であり、自然災害に人格を与えたような存在だ。ならば、それにあらがえぬ者たちがどうすればよいのかと言えば、ただ頭を下げて。無論、そうしたことを良しとするわけではなく、人々に自由な歩みを、こちらで暮らす者たちの歩みにはどうか過度な干渉はしてくれるなと言う創世にあたって存在する祈りもある。そして、確かにそれを考えたであろう子供のオユキに対して、あまりに無体を働いてしまえばいよいよ存在意義が揺らぐのだと。
「そういった理屈ですか。とすると、今回の事は」
「戦と武技がはっきりと忌避感を示した、今回の一連ですね」
しかして、歓声が非常に近いトモエとしてはやはり飲めるようなものではないと。
「信徒の軽重はあるでしょうから」
そう。神国では、戦と武技が主体となっているわけではない。ただ、その事実を示せば、トモエからはため息一つが返ってくるだけ。そして、次に口にする言葉もオユキには予想がつくからこそ。
「いかに平等に祀るのだと神職の方々が説いたところで」
「そうでしたね、あの子たちは、これまでそうした話をした方々は教会の方でしたね」
そう。これまで身近に接した相手と言うのは、基本的に真摯に神々の奉仕者として生きてきた者達ばかり。過去の世界よりも、確かに神々との距離は近いのだろう。オユキとしても、明確にそうした存在がいるのだからとそう考えてもいたのだ。
「思い返してみれば、食前に祈りをささげるのも」
「ええ、やはり限られていましたからね。いえ、それでも折に触れて教会にと言う事は皆さんあるには違いないのでしょうが」
「そうですね。どうにも、それでですか」
「価値を高めることが出来る、そういった意味では有難い事ではあるのですが」
言ってしまえば、価値観の違いがとにかくこちらに来てから立て続けに作られていったのが問題なのだと。それは、トモエとオユキの振る舞いによって、こちらの者たちがそうした物を生んだのと同様に。勿論、トモエとオユキのほうでも。
「そうしたことを全て踏まえて、もっと時間を使えと言う事なのでしょうか」
「ええ。間違いなく」
言葉が足りない。それは事実ではあるのだが、特別扱いできない個人に対してできる助言など、確かにどうとでも取れる言葉を投げてみて、そこで判断にゆだねるしかないと言うのは、確かによく分かるものだ。
「何にせよ、これで暫くはゆっくりと日々を過ごせそうです」
「外の方々は、護衛を頼んでいる騎士様方に任せるしかありませんが」
「それも、どちらかと言えば今度ばかりは壁の中で少々派手に動いたアイリスさんの領分ですから」
そう。今度の雨乞い、それに伴ってアイリスが願った豊穣の祈り。壁の外には、神国と違い物見高い者たちまでも出てくるk十は無かった。勿論、神国から来ている者たちは護衛が散らした魔物の残留物を拾うために出てきていたのだが、それくらい。では、今もこうして神国からの客人たちの屋敷を取り囲んでいる者たちの、目的はと言えば、要はわざわざオユキにしても伝えていない以上見ていたアイリスのおかげと見えていることだろう。
「さて、これでテトラポダにも良い話をアイリスさんは持って帰れるでしょう」
「そうですね。その分くらいは、きちんと自分たちで対応を行って頂きましょうか。いえ、先代アルゼオ公もですか」
「ええ。アベルさん、現ユニエス公爵も与えられた職務がある以上は、やはりそちらばかりに関わるわけにもいきませんから」
そして、オユキが少し気を抜いたように笑えば。
「ようやく、戻ってきましたね」
「ええ。ご心配をおかけしました」
「これで、一先ず過剰に背負っていたものはなくなりましたか」
「生前にも、何度も言われたものです」
任せられるところは、預けるべきところはきちんとしろと。それはもう、トモエだけでなくミズキリに迄過去散々にオユキは言われたものだ。
「その都度、同じ言葉を聞いた気もしますが」
「そればかりは、己の限度が分からぬ愚か者だと、そういうしかないのでしょうね」
だからこそ、オユキとしてはトモエが必要なのだと。
「仕方のない人ですね」
「私がこうあるようになったのは、さて」
「それを言われてしまえば、私としても弱いのですが」
こうして、甘えられえる部分を、頼んでも構わない部分を常に用意してくれている。だからこそ、トモエが居る時には、オユキはそういった部分を省みないのだと言うしかない。
「さて、オユキさん」
「はい」
「これで、本当に暫くはと考えていますか」
今は、シェリアとタルヤ。ついでにエステールと言う、すっかりと馴染んだ顔をそろえての夜の時間。昼間の魔国の王妃との話し合いの時間を終えて。参加していただけのトモエとオユキからも、相も変わらずしっかりと抜き取られるものもあったからと、早めに休むこととしたうえで。
ついでと言う訳でもないのだが、アルノーが用意した物が色々と残っているからと、お酒の当てに渡されたものを、机を囲む者たちで思い思いにつつきながら。ここにローレンツがいないのは、今日も今日とて屋敷の外を守る者たちの責任者としての仕事があるからやむを得ず。
「ええ、暫くは、間違いなく」
「具体的な期間に言及しないのは」
「その」
そして、はっきりとした期間を言うことが出来るのなら、確保したい日数があるのなら、そういうのだろうと。
「一週間ほど、でしょうか」
「いえ、流石に十日ほどは」
そして、オユキが問い詰められて、白状した日数を聞いて、同席している者達からしっかりとため息がこぼれる。
「オユキ様、追加でと言った図案もありますのに」
「追加となると、雨と虹ですか」
「ええと、はい」
エステールが新しく投げられた図案がある以上は、もっとゆっくりするのではないかと、せめて体を休めながらの仕事とするのではないかとそう話せば、トモエとしても思い当たることもあるからと。
「その、オユキ様。休むと決めたのであれば、きちんと休まれた方が。カナリアさんも不在の今」
「そちらは、一応私も今度の事でかなり余剰の力を得ていますから、変わることもできるのですが」
まさかとは思うのだが、そういった視線を隠そうともしないタルヤには、流石にオユキとしても言い分位はある。
「あの、一応私たちが神国に戻れば、間違いなくカナリアさんも返してくれますから」
「前に連れていかれたときは、それなりの期間だったようにも」
「そこは、フスカ様が間違いなくとはしてくれるでしょうし」
さて、今頃は同族に囲まれ、色々と祝われているはずの相手。本来であれば、水と癒しに沈められる存在であり、そこから司祭の位など得られるはずもなかった存在。それが、こちらで生まれた物の中から、何の因果か。本来であれば、失われたはず。それが今となっては、種族としての炎も扱える、まさにこちらの世界に馴染んだ象徴として。確かに、カナリアをかわいがる者たちが、祝福する者たちも多いのだろうが、だからこそ間に合わせなければならないものと言うのもある。
「助祭以上の位を得るには、神殿での勤めが必要だと言う話ですし」
「確かに、正式にと言う事であれば私たちが神国に戻り、言われたものを納めに行くと申し出れば、ですか」
確かに、それ以上に都合の良い機会など無かろうと、トモエとしても納得がいく。そして、新しい司祭のお披露目としては豊穣祭に合わせて祭祀を執り行うとすれば、実に都合も良いだろうと。
「カナリア様は、この後はやはりウニルに」
「どうでしょうか、あちらはリザ助祭が預かる流れが生まれそうですし」
そして、実に都合のいい事に。始まりの町から程近くに、新規の教会が存在する。マリーア公爵領でもあり、今回初めて雨乞いを執り行った、魔国との関係をこれからも持つ町にある、教会。彼女とも面識のある、騎士を目指していたはずが、今はすっかりとその教会での手伝いに日々追われている子供たちが住む場所。そちらに、今後配属されるのかと言う懸念に対しては、オユキからは先約があると応える。ではどこにと言えば、やはり暫くは無いだろうとそうも考えるのだが、確かにトモエの懸念と言うのも理解はできる。
「流石に、翼人種の住まう場所にと言うのは」
「ありそうだと、私はそのように」
「だとすれば、是非とも神域の種にしてもそちらでと考えますが」
トモエがこうして口に出す、その意味を考えればと言う所もある。
「トモエ様」
「すぐの事では無いと、そうは思いたいのですが」
「ですが、確かにオユキ様の事で、随分とカナリア様には」
「元の流れを考えたとき、それを言えばという物ではあるのでしょうが、さて」
確かに、思い返してみれば実に色々と、そう色々と。持ちつ持たれつと言えばいいのか、それこそオユキと言うよりもマリーア公爵の判断に依る物ではあるのだが。
「今度の予定も、また色々と変わりそうですね」
「流石に、最低限にはしてほしい物ですが」
本当に、今度ばかりは色々と。多くの勘違いもあり、それ故に得てしまった負荷も多い。だからこそ、暫くは、オユキが口にした日数程度はゆっくりと観光を楽しむつもりになっていたのだが。しかし、今度の問題はこれから観光に向かう先にこそあるのだと、そうトモエに言われた以上は。
そう、凡そ普く神々の物語で聞く様に。
「確かにと、そうは思うのですが。こちらでは、そうでは無い方法も選べるのではないかと」
「役割がある以上は、と言う事なのでしょう」
「あとは、戦と武技、かの神からの」
「それについては、あくまで今回の事に限ってなのでしょうね」
そう、オユキが直接。トモエにも、創造神から与えられている功績を通して聞かされたかの神の不満。それについては、確かに思い返してみれば雨乞いの祭りに限った話ではあると、そう理解も及ぶ。
「言われてみれば、確かにそうですか」
「ええ。悪辣だとそう断定するのも難しい」
つまりは、過去に語られたまさに超越者。
どうか祟ってくれるなよと祈り、祀り。そして、日々の感謝を、安穏と過ごせることに対する感謝をささげるのだ。相手は完全な上位者であり、自然災害に人格を与えたような存在だ。ならば、それにあらがえぬ者たちがどうすればよいのかと言えば、ただ頭を下げて。無論、そうしたことを良しとするわけではなく、人々に自由な歩みを、こちらで暮らす者たちの歩みにはどうか過度な干渉はしてくれるなと言う創世にあたって存在する祈りもある。そして、確かにそれを考えたであろう子供のオユキに対して、あまりに無体を働いてしまえばいよいよ存在意義が揺らぐのだと。
「そういった理屈ですか。とすると、今回の事は」
「戦と武技がはっきりと忌避感を示した、今回の一連ですね」
しかして、歓声が非常に近いトモエとしてはやはり飲めるようなものではないと。
「信徒の軽重はあるでしょうから」
そう。神国では、戦と武技が主体となっているわけではない。ただ、その事実を示せば、トモエからはため息一つが返ってくるだけ。そして、次に口にする言葉もオユキには予想がつくからこそ。
「いかに平等に祀るのだと神職の方々が説いたところで」
「そうでしたね、あの子たちは、これまでそうした話をした方々は教会の方でしたね」
そう。これまで身近に接した相手と言うのは、基本的に真摯に神々の奉仕者として生きてきた者達ばかり。過去の世界よりも、確かに神々との距離は近いのだろう。オユキとしても、明確にそうした存在がいるのだからとそう考えてもいたのだ。
「思い返してみれば、食前に祈りをささげるのも」
「ええ、やはり限られていましたからね。いえ、それでも折に触れて教会にと言う事は皆さんあるには違いないのでしょうが」
「そうですね。どうにも、それでですか」
「価値を高めることが出来る、そういった意味では有難い事ではあるのですが」
言ってしまえば、価値観の違いがとにかくこちらに来てから立て続けに作られていったのが問題なのだと。それは、トモエとオユキの振る舞いによって、こちらの者たちがそうした物を生んだのと同様に。勿論、トモエとオユキのほうでも。
「そうしたことを全て踏まえて、もっと時間を使えと言う事なのでしょうか」
「ええ。間違いなく」
言葉が足りない。それは事実ではあるのだが、特別扱いできない個人に対してできる助言など、確かにどうとでも取れる言葉を投げてみて、そこで判断にゆだねるしかないと言うのは、確かによく分かるものだ。
「何にせよ、これで暫くはゆっくりと日々を過ごせそうです」
「外の方々は、護衛を頼んでいる騎士様方に任せるしかありませんが」
「それも、どちらかと言えば今度ばかりは壁の中で少々派手に動いたアイリスさんの領分ですから」
そう。今度の雨乞い、それに伴ってアイリスが願った豊穣の祈り。壁の外には、神国と違い物見高い者たちまでも出てくるk十は無かった。勿論、神国から来ている者たちは護衛が散らした魔物の残留物を拾うために出てきていたのだが、それくらい。では、今もこうして神国からの客人たちの屋敷を取り囲んでいる者たちの、目的はと言えば、要はわざわざオユキにしても伝えていない以上見ていたアイリスのおかげと見えていることだろう。
「さて、これでテトラポダにも良い話をアイリスさんは持って帰れるでしょう」
「そうですね。その分くらいは、きちんと自分たちで対応を行って頂きましょうか。いえ、先代アルゼオ公もですか」
「ええ。アベルさん、現ユニエス公爵も与えられた職務がある以上は、やはりそちらばかりに関わるわけにもいきませんから」
そして、オユキが少し気を抜いたように笑えば。
「ようやく、戻ってきましたね」
「ええ。ご心配をおかけしました」
「これで、一先ず過剰に背負っていたものはなくなりましたか」
「生前にも、何度も言われたものです」
任せられるところは、預けるべきところはきちんとしろと。それはもう、トモエだけでなくミズキリに迄過去散々にオユキは言われたものだ。
「その都度、同じ言葉を聞いた気もしますが」
「そればかりは、己の限度が分からぬ愚か者だと、そういうしかないのでしょうね」
だからこそ、オユキとしてはトモエが必要なのだと。
「仕方のない人ですね」
「私がこうあるようになったのは、さて」
「それを言われてしまえば、私としても弱いのですが」
こうして、甘えられえる部分を、頼んでも構わない部分を常に用意してくれている。だからこそ、トモエが居る時には、オユキはそういった部分を省みないのだと言うしかない。
「さて、オユキさん」
「はい」
「これで、本当に暫くはと考えていますか」
今は、シェリアとタルヤ。ついでにエステールと言う、すっかりと馴染んだ顔をそろえての夜の時間。昼間の魔国の王妃との話し合いの時間を終えて。参加していただけのトモエとオユキからも、相も変わらずしっかりと抜き取られるものもあったからと、早めに休むこととしたうえで。
ついでと言う訳でもないのだが、アルノーが用意した物が色々と残っているからと、お酒の当てに渡されたものを、机を囲む者たちで思い思いにつつきながら。ここにローレンツがいないのは、今日も今日とて屋敷の外を守る者たちの責任者としての仕事があるからやむを得ず。
「ええ、暫くは、間違いなく」
「具体的な期間に言及しないのは」
「その」
そして、はっきりとした期間を言うことが出来るのなら、確保したい日数があるのなら、そういうのだろうと。
「一週間ほど、でしょうか」
「いえ、流石に十日ほどは」
そして、オユキが問い詰められて、白状した日数を聞いて、同席している者達からしっかりとため息がこぼれる。
「オユキ様、追加でと言った図案もありますのに」
「追加となると、雨と虹ですか」
「ええと、はい」
エステールが新しく投げられた図案がある以上は、もっとゆっくりするのではないかと、せめて体を休めながらの仕事とするのではないかとそう話せば、トモエとしても思い当たることもあるからと。
「その、オユキ様。休むと決めたのであれば、きちんと休まれた方が。カナリアさんも不在の今」
「そちらは、一応私も今度の事でかなり余剰の力を得ていますから、変わることもできるのですが」
まさかとは思うのだが、そういった視線を隠そうともしないタルヤには、流石にオユキとしても言い分位はある。
「あの、一応私たちが神国に戻れば、間違いなくカナリアさんも返してくれますから」
「前に連れていかれたときは、それなりの期間だったようにも」
「そこは、フスカ様が間違いなくとはしてくれるでしょうし」
さて、今頃は同族に囲まれ、色々と祝われているはずの相手。本来であれば、水と癒しに沈められる存在であり、そこから司祭の位など得られるはずもなかった存在。それが、こちらで生まれた物の中から、何の因果か。本来であれば、失われたはず。それが今となっては、種族としての炎も扱える、まさにこちらの世界に馴染んだ象徴として。確かに、カナリアをかわいがる者たちが、祝福する者たちも多いのだろうが、だからこそ間に合わせなければならないものと言うのもある。
「助祭以上の位を得るには、神殿での勤めが必要だと言う話ですし」
「確かに、正式にと言う事であれば私たちが神国に戻り、言われたものを納めに行くと申し出れば、ですか」
確かに、それ以上に都合の良い機会など無かろうと、トモエとしても納得がいく。そして、新しい司祭のお披露目としては豊穣祭に合わせて祭祀を執り行うとすれば、実に都合も良いだろうと。
「カナリア様は、この後はやはりウニルに」
「どうでしょうか、あちらはリザ助祭が預かる流れが生まれそうですし」
そして、実に都合のいい事に。始まりの町から程近くに、新規の教会が存在する。マリーア公爵領でもあり、今回初めて雨乞いを執り行った、魔国との関係をこれからも持つ町にある、教会。彼女とも面識のある、騎士を目指していたはずが、今はすっかりとその教会での手伝いに日々追われている子供たちが住む場所。そちらに、今後配属されるのかと言う懸念に対しては、オユキからは先約があると応える。ではどこにと言えば、やはり暫くは無いだろうとそうも考えるのだが、確かにトモエの懸念と言うのも理解はできる。
「流石に、翼人種の住まう場所にと言うのは」
「ありそうだと、私はそのように」
「だとすれば、是非とも神域の種にしてもそちらでと考えますが」
トモエがこうして口に出す、その意味を考えればと言う所もある。
「トモエ様」
「すぐの事では無いと、そうは思いたいのですが」
「ですが、確かにオユキ様の事で、随分とカナリア様には」
「元の流れを考えたとき、それを言えばという物ではあるのでしょうが、さて」
確かに、思い返してみれば実に色々と、そう色々と。持ちつ持たれつと言えばいいのか、それこそオユキと言うよりもマリーア公爵の判断に依る物ではあるのだが。
「今度の予定も、また色々と変わりそうですね」
「流石に、最低限にはしてほしい物ですが」
本当に、今度ばかりは色々と。多くの勘違いもあり、それ故に得てしまった負荷も多い。だからこそ、暫くは、オユキが口にした日数程度はゆっくりと観光を楽しむつもりになっていたのだが。しかし、今度の問題はこれから観光に向かう先にこそあるのだと、そうトモエに言われた以上は。
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