917 / 1,235
27章 雨乞いを
外でも
しおりを挟む
「面目次第も」
「いえ、そればかりは使い方の差ですから」
狩猟の日々。そこにあるのは、鍛錬も勿論何よりも武器の消耗。トモエ自身は、流石にそれなりに長く使えるのだが、騎士たちはやはりそうもいかない。トモエが一振りの太刀をダメにする頃には、騎士たちはやはり数本を使い物にならない状態にする。
「老師に比べてしまえば、私にしても大差ない有様です。皆様方では、未だに及ばずとなるのも当然の帰結かと」
「カリン殿は、動きを試されておるからでしょうに」
ローレンツと並んで、刃を振るう日々。どことなく、明確な役割分担とでもいえばいいのだろうか。過日に刃を交えたこともあり、互いがどう動くのかと言う理解も深まっている。こうして、そのような理解をもとに動きを繰り返せばやはり色々と、さらに先にと進んでいくものだ。加えて、今となってはミリアムに対して押し込む形で勝ち取った人々もいる。ミリアムが、何やら悄然と神国へ戻るまでの間手伝いを頼んでみれば、寧ろその程度でよいのならば喜んでとばかりに頷かれた。
今も散々に周囲に切り捨てた魔物の残骸が散らかる物を、膝や腰を痛めているとわかる動作で拾う物もいれば、片腕で器用に荷袋に放り込んでいく者もいる。そのあたりは、トモエが言うでもなく実に手慣れたと言わんばかりに連携が行われ、すっかりとなれた環境で、先頭に集中しても良い環境が得られている。カリンにしても、始まりの町でトモエとオユキが連れ帰った人員に頼むことが当然となっていたのだろう。彼女一人で行っていた、勿論護衛はついての上でだが、日々に比べてしまえば実にのびのびと己の動きを試している。
「見て、お分かりだというのなら、私の見立てよりも」
「そう、ですね。カリンさんにお話はしていませんでしたか」
加護が全く無いと、そのような状況は流石にトモエには作れなかった。だが、アベルから剥奪できるだけの状況で、このローレンツと言う人物は平然とトモエと拮抗して見せた。どちらかと言えば、その状況でもトモエを超えていたのだ。少なくとも加護を含めたものでは。
「老師が、そこまで仰るほどですか」
「カリンさんは、どうでしょうか。正直、私よりも相性は良さそうですが」
トモエとて、己の流派こそ至上と掲げはするのだが何も、そこにある問題に対して目を閉じるような真似はしない。厳然として存在するものを認めたうえで、では対策は何かと考える。ローレンツの構え、騎士としてこの人物が身に着けているか前と言うのは、待つことを基本としている。そして、トモエが少々相手からの動きを引き出そうとしたところで、加護が残っている以上は、やはり適わない。意味のある攻撃をと思えば、そうした一切を排するのだとした空間で、トモエから武技を使わなければならなくなる。結局、アベルとローレンツ、この両者にある差が何故生まれるのかはオユキによれば時間だろうと、そうした話では合った。だが、トモエとしては、この人物が岩をも貫くのだとばかりに、可憐な花精の為にと磨き上げた時間に対しての物。それが、何かあっての事だろうと踏んでいる。
恐らく、トモエが剥奪できる加護と言うのは戦と武技、木々と狩猟の神から与えられた加護に限られているのだろうと。
「ふむ。試してみたいと、そう仰せであれば」
「いいえ、流石に相性とだけしか言われない、だとすれば今は到底及ばないものでしょう」
カリンがトモエと同じことが、加護を奪う場を作れるのかと言われれば、そうでは無いだろう。
「技だけとなると、我こそ首を垂れなばならぬのだがな」
「そこは、ええ、私たちから見ればこちらの歪としか言いようがありませんね」
鍛錬で得られるものが、明らかに前の世界に比べて頭抜けている。かつての世界であれば、高々ひと月で息も切らさずに剣を一時間も振り続けることが出来るようになるはずもない。そんな事をしようものならば、早々に手の皮がむけ、血を流し。それでもと振り続けるのであれば、今度は骨や健が。勿論、最低限の鍛錬がそれ前でにあれば別なのだが、こちらに来てみた子供たちはそんなものではなかった。ファルコが頼んだ少女二人、そちらにしても大して時間を使っているわけでも無いというのに。
「生憎と、我にしても、他の者達にしても」
「確かに、こちらの世界であれば。そもそも、前提として存在するのならば」
カリンの言葉に、トモエとしては成程、それも一理あると内心で納得を得る。
オユキは、常々口にするものであるし、トモエとしてもそうであるならと考えていた。だが、こちらの者たちにとっては、加護があるのが大前提なのだ。
「新しい観点ですね」
散々に、それがない状況でも、神々に頼らずとも、加護などなくともと繰り返すトモエとオユキ。だが、こちらの者たちにとっては、これまでの当然を考えるなとそうした話をしている。それは、確かに納得するのも、理解をするのも難しいだろう。そして、それを語るのが、戦と武技から巫女として扱われるものなのだ。尚の事、納得と言うのは遠い物になりそうだ。そして、そうでは無い異邦人たちが来て、それを知る者たちは納得を。それ以外の者たちは、そんなトモエとオユキが連れまわしている子供たちの成長が。
「だから、シグルド君たちですか」
「ふむ。トモエ卿が、そう納得を得たのならば」
「老師はともかく、オユキは粗忽ですからね。過去の当然が、こちらではそうでは無い。そうした意識があっても、それが向く方向が固定されていたのでしょう」
カリンから苦笑交じりにそんな話をされる。このような事を言われれば、オユキからはもっと早くにと、そんな事を若干の恨み節を交えて言うだろう。要は、そうした役をトモエに引き取れと、カリンからはそういう事であるらしい。恐らくは、トモエが伝えてみればただただこれまでの己の行状を振り返って、また落ち込みそうなものだ。
「まぁ、折を見て伝えておきましょう」
「老師は、随分とオユキを甘やかしますね」
「ええ。私にとって、特別ですから」
甘やかしていると、そうカリンが評する。勿論、間違いではない。だが、今も既にあれこれと抱え込んでいるのだ。ここでさらなる負荷をとなれば、恐らく耐えきれないだろうとそうした判断をしているだけ。万が一、そう、万が一。オユキがもはやこれまでと考えてしまえば、その先に待っているのは非常に自動的な判断になる。ともすれば、もはや己の限界という物も一切考慮すらせずに結末へと向かって急ぐことだろう。そこに待っているのは、トモエすらも今の判断をはっきりと変えるに足る、最早死出の旅路ですらないものだ。
何処までも、結末に向けて。
何処までも、他の全てを諦めて。
それを考えて、トモエとしては気が付くものがある。
「ああ、クレリー家の令嬢が抱えている物は、それですか」
要は、あの令嬢にしてももはやどうにもならぬと全てを諦めているのだ。
一応は、国王その人から何かを言われていることだろう。このあたりをオユキに話せば、何か思いつくところがオユキのほうであるかもしれない。トモエにはわからなくとも。
「老師」
「トモエ卿」
そして、思わず、戦場だというのに思わず思考に流れたトモエに側に居る二人からそれぞれに声がかかる。
「いえ、いけませんね。確かに、今は戦場です」
確かに、今気を抜いていい状況ではない。己の思考に耽っている場合ではない。確かにこの辺りの魔物程度であれば、そうしていたところでもはや問題がない程度にはトモエもなっている。さらには、過剰ともいえる護衛がいることもあり、そうしても良いと思えるだけの物が確かにある。だが、それは甘えだとトモエは切り捨てる。
「ただ、それにしても話は戻りますが」
そして、改めて己の振るう刃を見てみる。こちらに来て、一週間ほど。だというのに、トモエですら一度刀を取り換えている。周囲を飛ぶ光球はまだしも、やはり粘液で構成された生き物。こちらを斬るたびに、きちんと刀が痛んでいく。武技を使えば、それで容赦なく。技だけで切ったとしても、どうやら鉄を侵す類の成分を含んでいるようで、乱獲としている時にはぬぐう暇もないのだからきっちりと。
「追加は、必要でしょうな」
「それこそ、もとよりそうした予定があったと聞いていましたけど」
「いえ、門を使うのに釣り合うのかなと」
そして、ここまでで散々に魔石なども手に入れているのだが、それらを使い果たして釣り合いが取れる物なのかと。振り返ってみれば、そんな事すらトモエはオユキに任せてしまっていたのだなと、改めて反省をして。確かに、生前のトモエが行っていたようなことをオユキに振るのであれば、生前のオユキがやっていたことをトモエが引き取らなければならない部分も出てくるのだ。
過去もそうであったように、道場の運営にしてもオユキが資金繰りとでもいえばいいのだろうか。そのあたりは、すっかりとトモエの手から離れていた。父からも、気がつけばオユキが取り上げていたのだ。そして、オユキの両親が遺したものを使って、どうにかとしてくれていたのだろう。当時に道場に来ていた者たち、そちらからある支払だけでは、とてもではないが道場の維持すらままならなかっただろうと、それくらいは流石にトモエも分かるのだから。
「オユキさんに、甘え切ってしまっている。それを私も直さねばならぬのでしょうが」
だが、それに気が付いたからと、すぐにトモエが引き取れるのかと言われれば、それは無理なのだ。何分、生前から苦手な事でもあり、今でもそれは変わらない。トモエがどうにかと、四苦八苦しながら家計を管理するのをオユキが望むのかと言われれば、当然そんなはずもない。では、家宰として預けられているカレンに頼んではと考えてみるのだが、そちらはそちらで正直過剰な仕事が既に振られている。正直、過去のオユキを思い出すような、そうした顔色になっていることが多いのだ。何をしているのか、流石にそれはトモエに分かりはしないのだが、今もオユキの用意した手紙であったりをあちらこちらに配達して、返事を持ち帰り。さらには、面会を求める者たちの差配を行ってと、忙しさの想像位はつくという物だ。
「あの方は、恐らくそろそろでしょうから、一先ずはそこまででしょうか」
「いえ、そればかりは使い方の差ですから」
狩猟の日々。そこにあるのは、鍛錬も勿論何よりも武器の消耗。トモエ自身は、流石にそれなりに長く使えるのだが、騎士たちはやはりそうもいかない。トモエが一振りの太刀をダメにする頃には、騎士たちはやはり数本を使い物にならない状態にする。
「老師に比べてしまえば、私にしても大差ない有様です。皆様方では、未だに及ばずとなるのも当然の帰結かと」
「カリン殿は、動きを試されておるからでしょうに」
ローレンツと並んで、刃を振るう日々。どことなく、明確な役割分担とでもいえばいいのだろうか。過日に刃を交えたこともあり、互いがどう動くのかと言う理解も深まっている。こうして、そのような理解をもとに動きを繰り返せばやはり色々と、さらに先にと進んでいくものだ。加えて、今となってはミリアムに対して押し込む形で勝ち取った人々もいる。ミリアムが、何やら悄然と神国へ戻るまでの間手伝いを頼んでみれば、寧ろその程度でよいのならば喜んでとばかりに頷かれた。
今も散々に周囲に切り捨てた魔物の残骸が散らかる物を、膝や腰を痛めているとわかる動作で拾う物もいれば、片腕で器用に荷袋に放り込んでいく者もいる。そのあたりは、トモエが言うでもなく実に手慣れたと言わんばかりに連携が行われ、すっかりとなれた環境で、先頭に集中しても良い環境が得られている。カリンにしても、始まりの町でトモエとオユキが連れ帰った人員に頼むことが当然となっていたのだろう。彼女一人で行っていた、勿論護衛はついての上でだが、日々に比べてしまえば実にのびのびと己の動きを試している。
「見て、お分かりだというのなら、私の見立てよりも」
「そう、ですね。カリンさんにお話はしていませんでしたか」
加護が全く無いと、そのような状況は流石にトモエには作れなかった。だが、アベルから剥奪できるだけの状況で、このローレンツと言う人物は平然とトモエと拮抗して見せた。どちらかと言えば、その状況でもトモエを超えていたのだ。少なくとも加護を含めたものでは。
「老師が、そこまで仰るほどですか」
「カリンさんは、どうでしょうか。正直、私よりも相性は良さそうですが」
トモエとて、己の流派こそ至上と掲げはするのだが何も、そこにある問題に対して目を閉じるような真似はしない。厳然として存在するものを認めたうえで、では対策は何かと考える。ローレンツの構え、騎士としてこの人物が身に着けているか前と言うのは、待つことを基本としている。そして、トモエが少々相手からの動きを引き出そうとしたところで、加護が残っている以上は、やはり適わない。意味のある攻撃をと思えば、そうした一切を排するのだとした空間で、トモエから武技を使わなければならなくなる。結局、アベルとローレンツ、この両者にある差が何故生まれるのかはオユキによれば時間だろうと、そうした話では合った。だが、トモエとしては、この人物が岩をも貫くのだとばかりに、可憐な花精の為にと磨き上げた時間に対しての物。それが、何かあっての事だろうと踏んでいる。
恐らく、トモエが剥奪できる加護と言うのは戦と武技、木々と狩猟の神から与えられた加護に限られているのだろうと。
「ふむ。試してみたいと、そう仰せであれば」
「いいえ、流石に相性とだけしか言われない、だとすれば今は到底及ばないものでしょう」
カリンがトモエと同じことが、加護を奪う場を作れるのかと言われれば、そうでは無いだろう。
「技だけとなると、我こそ首を垂れなばならぬのだがな」
「そこは、ええ、私たちから見ればこちらの歪としか言いようがありませんね」
鍛錬で得られるものが、明らかに前の世界に比べて頭抜けている。かつての世界であれば、高々ひと月で息も切らさずに剣を一時間も振り続けることが出来るようになるはずもない。そんな事をしようものならば、早々に手の皮がむけ、血を流し。それでもと振り続けるのであれば、今度は骨や健が。勿論、最低限の鍛錬がそれ前でにあれば別なのだが、こちらに来てみた子供たちはそんなものではなかった。ファルコが頼んだ少女二人、そちらにしても大して時間を使っているわけでも無いというのに。
「生憎と、我にしても、他の者達にしても」
「確かに、こちらの世界であれば。そもそも、前提として存在するのならば」
カリンの言葉に、トモエとしては成程、それも一理あると内心で納得を得る。
オユキは、常々口にするものであるし、トモエとしてもそうであるならと考えていた。だが、こちらの者たちにとっては、加護があるのが大前提なのだ。
「新しい観点ですね」
散々に、それがない状況でも、神々に頼らずとも、加護などなくともと繰り返すトモエとオユキ。だが、こちらの者たちにとっては、これまでの当然を考えるなとそうした話をしている。それは、確かに納得するのも、理解をするのも難しいだろう。そして、それを語るのが、戦と武技から巫女として扱われるものなのだ。尚の事、納得と言うのは遠い物になりそうだ。そして、そうでは無い異邦人たちが来て、それを知る者たちは納得を。それ以外の者たちは、そんなトモエとオユキが連れまわしている子供たちの成長が。
「だから、シグルド君たちですか」
「ふむ。トモエ卿が、そう納得を得たのならば」
「老師はともかく、オユキは粗忽ですからね。過去の当然が、こちらではそうでは無い。そうした意識があっても、それが向く方向が固定されていたのでしょう」
カリンから苦笑交じりにそんな話をされる。このような事を言われれば、オユキからはもっと早くにと、そんな事を若干の恨み節を交えて言うだろう。要は、そうした役をトモエに引き取れと、カリンからはそういう事であるらしい。恐らくは、トモエが伝えてみればただただこれまでの己の行状を振り返って、また落ち込みそうなものだ。
「まぁ、折を見て伝えておきましょう」
「老師は、随分とオユキを甘やかしますね」
「ええ。私にとって、特別ですから」
甘やかしていると、そうカリンが評する。勿論、間違いではない。だが、今も既にあれこれと抱え込んでいるのだ。ここでさらなる負荷をとなれば、恐らく耐えきれないだろうとそうした判断をしているだけ。万が一、そう、万が一。オユキがもはやこれまでと考えてしまえば、その先に待っているのは非常に自動的な判断になる。ともすれば、もはや己の限界という物も一切考慮すらせずに結末へと向かって急ぐことだろう。そこに待っているのは、トモエすらも今の判断をはっきりと変えるに足る、最早死出の旅路ですらないものだ。
何処までも、結末に向けて。
何処までも、他の全てを諦めて。
それを考えて、トモエとしては気が付くものがある。
「ああ、クレリー家の令嬢が抱えている物は、それですか」
要は、あの令嬢にしてももはやどうにもならぬと全てを諦めているのだ。
一応は、国王その人から何かを言われていることだろう。このあたりをオユキに話せば、何か思いつくところがオユキのほうであるかもしれない。トモエにはわからなくとも。
「老師」
「トモエ卿」
そして、思わず、戦場だというのに思わず思考に流れたトモエに側に居る二人からそれぞれに声がかかる。
「いえ、いけませんね。確かに、今は戦場です」
確かに、今気を抜いていい状況ではない。己の思考に耽っている場合ではない。確かにこの辺りの魔物程度であれば、そうしていたところでもはや問題がない程度にはトモエもなっている。さらには、過剰ともいえる護衛がいることもあり、そうしても良いと思えるだけの物が確かにある。だが、それは甘えだとトモエは切り捨てる。
「ただ、それにしても話は戻りますが」
そして、改めて己の振るう刃を見てみる。こちらに来て、一週間ほど。だというのに、トモエですら一度刀を取り換えている。周囲を飛ぶ光球はまだしも、やはり粘液で構成された生き物。こちらを斬るたびに、きちんと刀が痛んでいく。武技を使えば、それで容赦なく。技だけで切ったとしても、どうやら鉄を侵す類の成分を含んでいるようで、乱獲としている時にはぬぐう暇もないのだからきっちりと。
「追加は、必要でしょうな」
「それこそ、もとよりそうした予定があったと聞いていましたけど」
「いえ、門を使うのに釣り合うのかなと」
そして、ここまでで散々に魔石なども手に入れているのだが、それらを使い果たして釣り合いが取れる物なのかと。振り返ってみれば、そんな事すらトモエはオユキに任せてしまっていたのだなと、改めて反省をして。確かに、生前のトモエが行っていたようなことをオユキに振るのであれば、生前のオユキがやっていたことをトモエが引き取らなければならない部分も出てくるのだ。
過去もそうであったように、道場の運営にしてもオユキが資金繰りとでもいえばいいのだろうか。そのあたりは、すっかりとトモエの手から離れていた。父からも、気がつけばオユキが取り上げていたのだ。そして、オユキの両親が遺したものを使って、どうにかとしてくれていたのだろう。当時に道場に来ていた者たち、そちらからある支払だけでは、とてもではないが道場の維持すらままならなかっただろうと、それくらいは流石にトモエも分かるのだから。
「オユキさんに、甘え切ってしまっている。それを私も直さねばならぬのでしょうが」
だが、それに気が付いたからと、すぐにトモエが引き取れるのかと言われれば、それは無理なのだ。何分、生前から苦手な事でもあり、今でもそれは変わらない。トモエがどうにかと、四苦八苦しながら家計を管理するのをオユキが望むのかと言われれば、当然そんなはずもない。では、家宰として預けられているカレンに頼んではと考えてみるのだが、そちらはそちらで正直過剰な仕事が既に振られている。正直、過去のオユキを思い出すような、そうした顔色になっていることが多いのだ。何をしているのか、流石にそれはトモエに分かりはしないのだが、今もオユキの用意した手紙であったりをあちらこちらに配達して、返事を持ち帰り。さらには、面会を求める者たちの差配を行ってと、忙しさの想像位はつくという物だ。
「あの方は、恐らくそろそろでしょうから、一先ずはそこまででしょうか」
0
お気に入りに追加
456
あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw
かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます!
って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑)
フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?
甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。
友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。
マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に……
そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり……
武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる