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27章 雨乞いを
疑念
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ミリアムに対する監視。頼んでいる相手は、多岐にわたる。別に、オユキがそうしてくれと言い出したわけでは無く、こちらに来るにあたってマリーア公爵その人から。シェリアはともかく、タルヤが貸し出されているのは、間違いなく国としても見過ごすわけにはいかぬと。つい先日には、はっきりとそうした者たちがミリアムに対して敵対する様子を見せた。一度は、それこそ、あまりに突然の事に対応はできなかった者たちだが、一度事の起こりを見てしまえば二度は無いのだぞと。
事実、先ほどまでもシェリアが単独でいなしている。
オユキは無理だろう。トモエも、できはしない。アイリスは、恐らく周囲に彼女の持つ炎を放ってとするだろう。他の者たちは、さてどうであろうか。正直、シェリアで十分に切り払うことが出来るのであれば、アベルとローレンツにしてもとオユキとしては考える物だが。
「私は、どうでしょう。流石にアベル卿に負ける気はありませんが」
「あの、ご本人が事あるごとに」
「能力が伸びなくなった。元騎士団の長。その程度の相手に負けるようでは、近衛など務まりませんとも」
どうだろうかと考えていたオユキに、抱える手に軽く力を入れたうえでシェリアからその様な事を言われる。護衛の任を頂いている以上は、そのあたりで不安を感じさせる気などないのだと。
「全く。私は、単に、こうしたことが得意ではないんです」
「まぁ、そうなのでしょう。正直、話に聞いた」
「私は、一度たりとも汚染なんてされていません」
オユキの疑いは、正しくミリアムに届いたようで、さも不機嫌だと言わんばかりに周囲の木々も併せてざわめく。
「あの、オユキ様。もう目的は達成したのでは」
「いえ、流石に挑発と言う訳では無く。単に、確認としてですね」
要は、このミリアムなる人物は。王族として、継承権はとうに放棄しているのだろうが、それでもここまで周囲に警戒される理由は何なのだろうかと考えたときに。他に思い当たる物も無い。
「だから、違いますって。私と、ブルーノと。それから幾人かの異邦人であったり、当時の皆と私が討滅した側なんですって」
「その割には」
「正直、この程度でどうにかなるのなら、噂に聞くほどの、タルヤが語るほどの危険があるとは思えませんね」
正直、現状の規模がどの程度か。流石に外がどうなっているかはわからない。鬱蒼とした森は陽光を通しはしない。外からの声も聞こえてこない。移動に費やした時間という物は、オユキのほうはシェリアに抱えられてここまで来た以上、もはや当てになる物ではない。
「タルヤさんは花精ですし、岩を割る花が素性なので私よりも攻撃と言う面では優れているんです。私は、こうして人を落ち着かせる香りを持つ」
「落ち着かせる当人に効果がないのは、如何な物でしょう」
「あの、オユキ様。不機嫌なのは分かるのですが、どうかそのあたりで」
オユキの非常に単純な疑問が、ただただミリアムをえぐる。もの言いたげに伸びてくる周囲の枝、それを変わらずシェリアが払いながら。
「いえ、不機嫌と言うほどでは無く、その」
「良いですよ、言いたいことくらいはわかりますから」
単純に、オユキが年不相応と、見た目に騙されるだろうという物たちが多い。どうにも、そうした要因はこの人物が、他の年齢と共に外見がいよいよ変わらぬ者たちが下地を作ってきたのだろうかと。どうにもそうした考えを行ってしまう。流石に、オユキとしても不本意であることには変わらないのだ。何も偉ぶりたいなどと言う訳でもない。過剰に侮られているなと、そう感じる状況が続くのは。都合が良いと感じる部分もある。まさに、今こうしてミリアムに対しての企てが成功したように。ただ、これがあまりにも常の事となるようであれば、少々思う所も出てくる。言ってしまえば、見た目で得をしているとそう言える以上に、随分と利益を得てしまっている。
なにも、トモエがそこまで考えて選んだと考え無いのだが、それでもあまりに都合が良すぎるなと。
「私は、ええ、想像通りです」
要は、公爵領とするまでは考えてもいなかったのだと。とにかく、身近な、目につく者たちをただ助けようと城から飛び出して。ついてきてくれた者たちが、とにかく当時は苦労しながら場を整え続けたのだと。
「本当に、懐かしい事です」
「まぁ、当時もままミリアムさんを狙ったでしょうし」
「ええ。あの頃も、拠点を作るとなったら、私が自分で選んだところ以外は、毎度毎度よくにた流れで」
過去のミリアムの手綱を握った者たちにしても、容赦なく挑発を重ねて。ミリアムが別に良いだろうと考えたところに、森を作り、そのまま木材として活用していったのだと。
「となると、始まりの町のすぐそばにある森も」
オユキの記憶の中には、やはりもう少し離れた場所にあった様に記憶している。当時は、それこそ大量のプレイヤーがいたのだ。伐採の結果、等とも考えられないことも無いのだが、それにしてもゲーム的な都合として保全はされていたはず。どうにも、このあたりの記憶は封がされているのか、最初から記憶にないのか。確かに、人里には寄り付かなかったとはいえ折に触れて。旅からの帰還では、ゲームとしての仕組み。リスポーンを使っていたのだから、頻繁に訪れていたはずなのだ。
始まりの町で、長く時間を使えと言われていることもある。それを考えれば、何かあの町の方々にオユキの記憶を呼び起こすための色々があるのかもしれないのだが。
「えっと、もともとは確かにもっと離れていましたけど。はい、私の力で。それもあって、あまりあの町から離れるのも難しいんですけど」
「確かに、今はあの町で木材の需要は随分伸びていますからね。いえ、だとすれば」
「あの、勿論全力でとなれば今回のように無理もできますけど、こうして力を振るうと、そこにある大地の加護をかなり吸い上げてしまいますから」
「正直、そのあたりはアイリスさんの分野ですね」
まぁ、ここが終われば、間違いなくあれこれ言われるだろう。そして、アイリスにしても、目論見があっての事には違いない。アイリスから、彼女の元居た場所では森が遠いと聞いた。鍛錬に大量の木材を消費せざるを得ない、彼女のと言うよりもハヤトが伝えた流派。正統なものにと、彼の薫陶を軽視させる気など一切ないとしめし続けるアイリスにしてみれば。ミリアムが単独で森を作り出すことが叶うというのであれば、一も二も無く。
「その、もしかして、ですけど」
「ええ。ミリアムさんは、あちらに門がつけば」
今回の事、それを間違いなく条件として。
「こちらの方々、ええ、ミリアムさんが救済したいと考える方々。それに対する助けを、間違いなくアイリスさんにも求めますから。あとは、アベルさんにしても」
「本当に、どうしてこう」
「これが政治と、そう韜晦することもできますが」
こんなものは、序の口でしかないのが実際の舞台だ。これに関しては、非常に限られた範囲の物でしかない。オユキとしても、主目的のついでにとそうできる程度の。今回の、オユキの目的、突発的に発生したそれをどうにかするためにと考え、きちんと苦労に見合うだけの利益を他にもと考えたときに分配できる物をするというだけの話。今回は、実に都合の良い人材がいるために、それに誰もが目を付けた。
「あの、この流れを理解しているのは」
言われて、オユキは少し考える。さて、一体だれが理解していないのだろうかと。
「ミリアム様、後は、まだまだ年若いファルコ様くらいでしょうか」
「ええ。今回の事に理解がないのであれば、シェリアだけに護衛を任せようと考えていないでしょうし。ただ、ファルコ君に関しても、リュディさんあたりが気が付いているようですし、話だけはしていると思いますよ」
そして、先代アルゼオ公が今も彼の孫の下に向かって、あれこれと話を詰めていることだろう。問題としては、まず間違いなく、こうして新しい流れを作ったことに気が付いているクレリー家のご令嬢。
そう、オユキは、全くもってあの令嬢を信頼していない。潜在的な敵どころではなく、はっきりと現状の敵として考えている。
「それよりも、シェリア」
「はい。今はと言いますか、こちらに来てからは大人しくしています。他の異邦からの二人も、間違いなく」
「で、あれば今暫くは様子見としましょうか。僅かでも不満があれば、送り返す心算ではあったのですが」
しかし、相手もそれに気が付いている。間違いなく、そんな話が話題に上るような振る舞いは取ってくれはしないだろう。
「さて、流石にミリアムさんほど簡単ではない相手ですからね」
「はい」
そして、何やら一体だれに対して警戒を向けているのか、それに気が付いたのだろう。オユキにしても、実に分かりやすくそうしていたのだ。トモエも、勿論オユキの警戒に気が付いて、はっきりと敵意に近い物を向けている。あの、サクレタ公爵家、既に離反したあの家と共同していた家から送り込まれてきた相手を。問題があるのだ、今後を考えたときに。そちらの領を通らなければ、遠回りになってしまう。これに関しては、離反した領も同様。関係性と言う意味では、かなり根深い物が既に存在してしまっている。切り捨てた相手が多い。襲ってきたから返り討ちにしただけではあるのだが、それでも遺恨は残っていることだろう。そうでは無い相手と、王都であしらった相手と。そこには一体どのような差があったのかと。筋違いと言うしかない恨みを、まぁ、向けてくる者たちがいるとは想像も容易い。
「あの」
さて、ミリアムが誰についてどういった懸念があるのかわからないと、そういった様子を見せている。
「要は、今回の魔国でのことですね、私たちが一番警戒しているのは魔国ではありません」
「クレリー家、ここ以上の物はありませんからね。正直、魔国相手であれば、国同士でもあるので利益を、こちらが渡せる利益を積み上げて譲歩を求めることなど容易ですから」
そう。魔国が神国に対して渡せるものは、魔道具だけ。そして、それにしても一つ渡してしまえば、複製も可能ではあるのだ。相応に手間も時間もかかるには違いない。だが、知識と言うのは正しく身に着けるには大変なのだが、完成した物を模倣するだけであれば、次につながる物を作る必要も無ければ。
事実、先ほどまでもシェリアが単独でいなしている。
オユキは無理だろう。トモエも、できはしない。アイリスは、恐らく周囲に彼女の持つ炎を放ってとするだろう。他の者たちは、さてどうであろうか。正直、シェリアで十分に切り払うことが出来るのであれば、アベルとローレンツにしてもとオユキとしては考える物だが。
「私は、どうでしょう。流石にアベル卿に負ける気はありませんが」
「あの、ご本人が事あるごとに」
「能力が伸びなくなった。元騎士団の長。その程度の相手に負けるようでは、近衛など務まりませんとも」
どうだろうかと考えていたオユキに、抱える手に軽く力を入れたうえでシェリアからその様な事を言われる。護衛の任を頂いている以上は、そのあたりで不安を感じさせる気などないのだと。
「全く。私は、単に、こうしたことが得意ではないんです」
「まぁ、そうなのでしょう。正直、話に聞いた」
「私は、一度たりとも汚染なんてされていません」
オユキの疑いは、正しくミリアムに届いたようで、さも不機嫌だと言わんばかりに周囲の木々も併せてざわめく。
「あの、オユキ様。もう目的は達成したのでは」
「いえ、流石に挑発と言う訳では無く。単に、確認としてですね」
要は、このミリアムなる人物は。王族として、継承権はとうに放棄しているのだろうが、それでもここまで周囲に警戒される理由は何なのだろうかと考えたときに。他に思い当たる物も無い。
「だから、違いますって。私と、ブルーノと。それから幾人かの異邦人であったり、当時の皆と私が討滅した側なんですって」
「その割には」
「正直、この程度でどうにかなるのなら、噂に聞くほどの、タルヤが語るほどの危険があるとは思えませんね」
正直、現状の規模がどの程度か。流石に外がどうなっているかはわからない。鬱蒼とした森は陽光を通しはしない。外からの声も聞こえてこない。移動に費やした時間という物は、オユキのほうはシェリアに抱えられてここまで来た以上、もはや当てになる物ではない。
「タルヤさんは花精ですし、岩を割る花が素性なので私よりも攻撃と言う面では優れているんです。私は、こうして人を落ち着かせる香りを持つ」
「落ち着かせる当人に効果がないのは、如何な物でしょう」
「あの、オユキ様。不機嫌なのは分かるのですが、どうかそのあたりで」
オユキの非常に単純な疑問が、ただただミリアムをえぐる。もの言いたげに伸びてくる周囲の枝、それを変わらずシェリアが払いながら。
「いえ、不機嫌と言うほどでは無く、その」
「良いですよ、言いたいことくらいはわかりますから」
単純に、オユキが年不相応と、見た目に騙されるだろうという物たちが多い。どうにも、そうした要因はこの人物が、他の年齢と共に外見がいよいよ変わらぬ者たちが下地を作ってきたのだろうかと。どうにもそうした考えを行ってしまう。流石に、オユキとしても不本意であることには変わらないのだ。何も偉ぶりたいなどと言う訳でもない。過剰に侮られているなと、そう感じる状況が続くのは。都合が良いと感じる部分もある。まさに、今こうしてミリアムに対しての企てが成功したように。ただ、これがあまりにも常の事となるようであれば、少々思う所も出てくる。言ってしまえば、見た目で得をしているとそう言える以上に、随分と利益を得てしまっている。
なにも、トモエがそこまで考えて選んだと考え無いのだが、それでもあまりに都合が良すぎるなと。
「私は、ええ、想像通りです」
要は、公爵領とするまでは考えてもいなかったのだと。とにかく、身近な、目につく者たちをただ助けようと城から飛び出して。ついてきてくれた者たちが、とにかく当時は苦労しながら場を整え続けたのだと。
「本当に、懐かしい事です」
「まぁ、当時もままミリアムさんを狙ったでしょうし」
「ええ。あの頃も、拠点を作るとなったら、私が自分で選んだところ以外は、毎度毎度よくにた流れで」
過去のミリアムの手綱を握った者たちにしても、容赦なく挑発を重ねて。ミリアムが別に良いだろうと考えたところに、森を作り、そのまま木材として活用していったのだと。
「となると、始まりの町のすぐそばにある森も」
オユキの記憶の中には、やはりもう少し離れた場所にあった様に記憶している。当時は、それこそ大量のプレイヤーがいたのだ。伐採の結果、等とも考えられないことも無いのだが、それにしてもゲーム的な都合として保全はされていたはず。どうにも、このあたりの記憶は封がされているのか、最初から記憶にないのか。確かに、人里には寄り付かなかったとはいえ折に触れて。旅からの帰還では、ゲームとしての仕組み。リスポーンを使っていたのだから、頻繁に訪れていたはずなのだ。
始まりの町で、長く時間を使えと言われていることもある。それを考えれば、何かあの町の方々にオユキの記憶を呼び起こすための色々があるのかもしれないのだが。
「えっと、もともとは確かにもっと離れていましたけど。はい、私の力で。それもあって、あまりあの町から離れるのも難しいんですけど」
「確かに、今はあの町で木材の需要は随分伸びていますからね。いえ、だとすれば」
「あの、勿論全力でとなれば今回のように無理もできますけど、こうして力を振るうと、そこにある大地の加護をかなり吸い上げてしまいますから」
「正直、そのあたりはアイリスさんの分野ですね」
まぁ、ここが終われば、間違いなくあれこれ言われるだろう。そして、アイリスにしても、目論見があっての事には違いない。アイリスから、彼女の元居た場所では森が遠いと聞いた。鍛錬に大量の木材を消費せざるを得ない、彼女のと言うよりもハヤトが伝えた流派。正統なものにと、彼の薫陶を軽視させる気など一切ないとしめし続けるアイリスにしてみれば。ミリアムが単独で森を作り出すことが叶うというのであれば、一も二も無く。
「その、もしかして、ですけど」
「ええ。ミリアムさんは、あちらに門がつけば」
今回の事、それを間違いなく条件として。
「こちらの方々、ええ、ミリアムさんが救済したいと考える方々。それに対する助けを、間違いなくアイリスさんにも求めますから。あとは、アベルさんにしても」
「本当に、どうしてこう」
「これが政治と、そう韜晦することもできますが」
こんなものは、序の口でしかないのが実際の舞台だ。これに関しては、非常に限られた範囲の物でしかない。オユキとしても、主目的のついでにとそうできる程度の。今回の、オユキの目的、突発的に発生したそれをどうにかするためにと考え、きちんと苦労に見合うだけの利益を他にもと考えたときに分配できる物をするというだけの話。今回は、実に都合の良い人材がいるために、それに誰もが目を付けた。
「あの、この流れを理解しているのは」
言われて、オユキは少し考える。さて、一体だれが理解していないのだろうかと。
「ミリアム様、後は、まだまだ年若いファルコ様くらいでしょうか」
「ええ。今回の事に理解がないのであれば、シェリアだけに護衛を任せようと考えていないでしょうし。ただ、ファルコ君に関しても、リュディさんあたりが気が付いているようですし、話だけはしていると思いますよ」
そして、先代アルゼオ公が今も彼の孫の下に向かって、あれこれと話を詰めていることだろう。問題としては、まず間違いなく、こうして新しい流れを作ったことに気が付いているクレリー家のご令嬢。
そう、オユキは、全くもってあの令嬢を信頼していない。潜在的な敵どころではなく、はっきりと現状の敵として考えている。
「それよりも、シェリア」
「はい。今はと言いますか、こちらに来てからは大人しくしています。他の異邦からの二人も、間違いなく」
「で、あれば今暫くは様子見としましょうか。僅かでも不満があれば、送り返す心算ではあったのですが」
しかし、相手もそれに気が付いている。間違いなく、そんな話が話題に上るような振る舞いは取ってくれはしないだろう。
「さて、流石にミリアムさんほど簡単ではない相手ですからね」
「はい」
そして、何やら一体だれに対して警戒を向けているのか、それに気が付いたのだろう。オユキにしても、実に分かりやすくそうしていたのだ。トモエも、勿論オユキの警戒に気が付いて、はっきりと敵意に近い物を向けている。あの、サクレタ公爵家、既に離反したあの家と共同していた家から送り込まれてきた相手を。問題があるのだ、今後を考えたときに。そちらの領を通らなければ、遠回りになってしまう。これに関しては、離反した領も同様。関係性と言う意味では、かなり根深い物が既に存在してしまっている。切り捨てた相手が多い。襲ってきたから返り討ちにしただけではあるのだが、それでも遺恨は残っていることだろう。そうでは無い相手と、王都であしらった相手と。そこには一体どのような差があったのかと。筋違いと言うしかない恨みを、まぁ、向けてくる者たちがいるとは想像も容易い。
「あの」
さて、ミリアムが誰についてどういった懸念があるのかわからないと、そういった様子を見せている。
「要は、今回の魔国でのことですね、私たちが一番警戒しているのは魔国ではありません」
「クレリー家、ここ以上の物はありませんからね。正直、魔国相手であれば、国同士でもあるので利益を、こちらが渡せる利益を積み上げて譲歩を求めることなど容易ですから」
そう。魔国が神国に対して渡せるものは、魔道具だけ。そして、それにしても一つ渡してしまえば、複製も可能ではあるのだ。相応に手間も時間もかかるには違いない。だが、知識と言うのは正しく身に着けるには大変なのだが、完成した物を模倣するだけであれば、次につながる物を作る必要も無ければ。
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