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26章 魔国へ
一方そのころ
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「成程、それを私に教えてほしいと」
「ええ。一応、良く作っていましたので、最低限は覚えているのですが」
ミリアムに、流石にここ暫くの事で疲労もたまっているからと、今日は職務に関しては行わないと言い切って。そこで、ミリアムのほうでも、ある程度情報を纏めた以上は報告先と言えばいいのか、共有先が必要になってくるとそんな話になった。ただ、そちらに関しては、神国に対して戦力の供出を求めた相手に聞かねば、想像がついたところでどうなる物でもなく。では、誰がと言う話になれば、オユキとしては流石に今日はもはやそうした気分でもないうえに、エステールが苦い顔をした以上はそこで決まる。ミリアムがここ四日ほどでまとめ上げた書類をもって、そのまま王城へとアベルを伴って向かっていけば、では修身の時間かと構えたエステールを置いて。
「確かに、以前こちらでいくらか買い求めもしましたが、どうにも」
「食卓に上がらないと思えば、成程そうした問題ですか」
「私としても、知識はありますが道具を求めるにも、試作をするにも」
コーヒー豆は定期的に、それこそ王都に足を運んだ時に纏めて買い込んだりはしている。しかし、以前にこちらに来た時に見かけたチョコレートはどうなっているのかと思えば要はアルノーが納得できる品質ではないと言う事であるらしい。
「問題として感じるのは、精製でしょうか」
「ええ、まさしくその通り」
そうして、常々少しは持ち歩いているらしいものが、オユキの前にも出される。
今、オユキはトモエの気に入っていた品を用意してみようと、ここ暫くで随分と面倒をかけたからとアルノーに相談するために厨房に顔を出している。オランジェット、かつてのオユキが、無い知恵を絞って用意した品を。それからも、折に触れては用意していたものを、本当に久しぶりにと。しかし、事前の手配が無ければ、やはり結果はついてこず。
「見た目からしても、随分と」
「ええ。現状進んでいるのは焙炒迄なのでしょう」
「確か、そこから先にはココアバターを混ぜたりといった工程があるのでしたか」
「ええ。圧搾が出来ている以上は、存在しているはずなのですが」
であれば、不用品として捨てられているのか、こちらの世界の不可思議さがまた邪魔をしているのか。
「予算は、十分に組めるでしょうが」
「生憎と、私にはそこまでの時間も知識もありません。これらを作っている方に、簡単に助言をしたうえで試作をしてもらえるよう頼むのは如何でしょう」
こうして話している時間も、アルノーは常に手を動かしている。今は朝食が終わって少しした時間。当然、これから昼食もあり夜にはまた。手伝いとしてアルノーが選んだ子供たちも、一心不乱にと言うほどでは無いが、それでもアルノーがもう野菜の切りつけに関しては目を離しても良いと判断ができる程度には仕込んだものらしい。
「それも悪くはありませんが、そういえば、これはどちらで」
「神国の王都で手に入れたものです」
「確か、コルテスと言いましたか」
「ええ、確か大航海時代にアステカへ。そこからヨーロッパに戻った時に広まったはずです」
そう、スペインに広めたのは元をたどればスペインの冒険家であったような、そのような記憶。実際には侯爵位を与えられている征服者ではあるのだが。
「リオハ領という物を、異邦人が建てていたようなのですが」
「となると、こちらでも同じような流れを行えと言う事でしょう。とすると、時間が足りませんね」
「已むを得ませんか、であれば代用を考えましょう」
精製できるようになれば、色々と幅広い使い道があったようなと考えるものだが、オユキの目的はやはりそちらではない。あくまで、チョコレートを求めている理由と言うのは、トモエの為にと言うだけなのだ。オユキ自身が、特別口に運びたいものではないため、最低限の知識だけが頭にあり、それ以上の意欲という物もやはりない。
「畜産は行われており、チーズもあるわけですし、当然」
「ええ。成程、ですが少し香りが変わりますが」
「もとより、私がかつて作った時にはコーティングとしてではありますが、トモエさんの好みに合わせて」
「甘みも足すためにと言う事ですか、そうであれば、確かに問題はなさそうですね。ただ、問題としては」
そうして、改めて指で触れてもざらつきを感じるチョコレートをアルノーが取り上げて見せる。
「磨砕には限界があるでしょう」
「確か、実際にはローラーで挟んでそこを数度通すことで微粒子化していたはずです」
「とすると、必要なものはそちらになりますか」
「撹拌は、どうしましょうか」
「そのあたりは、既にある魔道具で」
どうやら、そうした道具は存在しているらしい。ならば、それらを使ってもう少し加工が進まなかったのかと、オユキとしては疑問を感じる物ではあるのだが。
「疑問はもっともですが、それが撹拌した物を改めて固めたものです」
「布などを使って漉してみるだけでも、もう少しどうにかなりそうなものですが」
「生憎とそれも試した後でして」
アルノーとしても、オユキが思いつくことなどはとっくに一通りやって見せたものがそれだと。
「パティシエ資格も取得はしているので、ショコラに関しては妥協をしたくはありませんでしたが」
「成程、それで溶かしてチュロに合わせるなどと言ったことも無かったのですか」
「このままソースに入れてしまうと、やはり苦みとざらつきが」
「流石に、素人考えは通じませんか」
あれこれと、オユキから提案してはみるのだが、基本的に通るのは工業的に制作するための方法。そこで使っていたような工作機械に関わるようなことばかり。流石に、どうやって作るのかまでは想像がつくものではないし、いかにして砕くかと、滑らかにしようというのであれば粒子として均一になる様にと思いつくのはそればかり。
「しかし、ローラーですか」
「大型の物は、見たような記憶もありますが、果たして小型化して十分な物となるでしょうか」
「オユキさんは、既に乗り気ですか」
「ええ。作ることは決めていますので、今後も簡単に手に入るようになればと」
喜ぶものは多かろうとは思う。ファンタズマ子爵家として、そのあたりの嗜好品に投資をするのも構うまいと考えて。
「アマギさんに設計を任せてみますか」
「アマギさんですか」
そういえば、アルノーには紹介していなかった。そんな人物を俎上に出してしまったために、簡単に説明を加えた上で何を任せようとしているのか、それについて。
「成程、食品を工業的に作る、その試行ですか」
「ええ。幸い、始まりの町であれば、少々の無理を頼んでも通していただけそうですし、まずは小型の試験場として」
「ゆくゆくは、広くとしてですか。良い案かとは思いますが、その方は今どちらに」
「そういえば、あまり話を聞きませんね。橋の確認が終われば、どこかで一度くらいは顔を合わせる機会もあるのでしょうが」
さて、今はどこで何をしているのだろうか。橋の確認があるからと、間違いなくウニルにいたのだろうが、そこから当然確認項目を並べ上げていけば橋を渡ると決めるだろうとは考えている。今回、オユキが特別何を言うでもなく魔国へ来ることを良しとしているのは、こちら側でアマギと一度会おうと考えての事でもあるのだが。
「いえ、話がそれていましたね」
「私が、と言う事ではなく、オユキさんがそれでもかまわないというのであれば、喜んでお手伝いはさせていただきますよ」
「現状、これしかないというのであれば、ええ、これでまずはと言うのが筋でもあるでしょう」
アルノーが、己が直接とするのであればとてもではないがこのような品質は受け入れられないとして。しかし、オユキがそれでもかまわない、一先ず今ある物で試してみるというのであれば手伝おうと。正直、彼の手が借りられるのは、オユキとしても非常にありがたい物ではあるのだ。生前、あれこれと調べてはみた物の、やはり素人料理。本職の手によれば随分と時間をかける品とは聞いたことがあるのだが、半日程度で用意してとしたのだから。
「では、まずはオレンジからですか」
「そうですね、記憶に間違いがなければ、こちらはイタリアがもととなっていたはずですし、良い物があれば」
魔国に来て、早速と考えたのはそれもあっての事。
「神国のほうが、と言いますかスペインのほうがよほど有名でしたが」
言われて、オユキも少し考えてみる。確かに、かつての世界であればバレンシアと呼ばれる地方でかなり盛んであったはずだ。オユキ自身、その名を冠したオレンジにしても度々見ていたし、買って戻ったこともある。ただ、不思議なことにと言えばいいのだろうか。
「言われてみればと思いますが、ただ、食卓に並んだことがなかったようにも思いますが。いえ、こちらに来たばかりのころに、ソースとしてと言うのはみましたが」
「皮が厚く、可食部も少ないとなればこれまでの方法では遠くまでと言うのは難しかったのでしょう。」
「いえ、バレンシアオレンジに関しては」
「ああ、オユキさん、そちらは名前こそバレンシアとついていますが新大陸の物です」
一先ず、方向性は決まったなと。アルノーにしても、そろそろ次の用意があるからと話を切り上げる構えを作っている。ならば、後はそれこそこのままトモエにばれぬ様に準備を進めてけば良い。そこまで考えて、ではオユキのほうでもそろそろ次に向けた用意でもと考えているところにエステールが表れる。
「オユキ様」
「エステール様ですか、どうかされましたか」
おずおずとと言う訳でもなく、それでもオユキが午前中は一先ずアルノーとやることがあるからと話したせいだろう。少し申し訳なさそうにしながら、厨房に顔を出したエステール。他とやはり変わる事無く、公の場であればもはや爵位も返上した以上はきちんと様を付けずに呼ぶようにと言われているため、これまでの癖ばかりは。特に、こうしてアルノーと話している時間と言うのはいよいよ公からは遠い物でもある。
「いえ、どうにも困ったことになっていまして」
「困ったこと、ですか」
さて、何故オユキの判断を待たねばならぬのかと疑問は大いにあるのだが、何やら困りごとではあるらしい。ならば、それに対応するのが、今こちらに残っている者たちの中、神国の権限をある程度持っているオユキの役割でもあるだろうと。
「ええ。一応、良く作っていましたので、最低限は覚えているのですが」
ミリアムに、流石にここ暫くの事で疲労もたまっているからと、今日は職務に関しては行わないと言い切って。そこで、ミリアムのほうでも、ある程度情報を纏めた以上は報告先と言えばいいのか、共有先が必要になってくるとそんな話になった。ただ、そちらに関しては、神国に対して戦力の供出を求めた相手に聞かねば、想像がついたところでどうなる物でもなく。では、誰がと言う話になれば、オユキとしては流石に今日はもはやそうした気分でもないうえに、エステールが苦い顔をした以上はそこで決まる。ミリアムがここ四日ほどでまとめ上げた書類をもって、そのまま王城へとアベルを伴って向かっていけば、では修身の時間かと構えたエステールを置いて。
「確かに、以前こちらでいくらか買い求めもしましたが、どうにも」
「食卓に上がらないと思えば、成程そうした問題ですか」
「私としても、知識はありますが道具を求めるにも、試作をするにも」
コーヒー豆は定期的に、それこそ王都に足を運んだ時に纏めて買い込んだりはしている。しかし、以前にこちらに来た時に見かけたチョコレートはどうなっているのかと思えば要はアルノーが納得できる品質ではないと言う事であるらしい。
「問題として感じるのは、精製でしょうか」
「ええ、まさしくその通り」
そうして、常々少しは持ち歩いているらしいものが、オユキの前にも出される。
今、オユキはトモエの気に入っていた品を用意してみようと、ここ暫くで随分と面倒をかけたからとアルノーに相談するために厨房に顔を出している。オランジェット、かつてのオユキが、無い知恵を絞って用意した品を。それからも、折に触れては用意していたものを、本当に久しぶりにと。しかし、事前の手配が無ければ、やはり結果はついてこず。
「見た目からしても、随分と」
「ええ。現状進んでいるのは焙炒迄なのでしょう」
「確か、そこから先にはココアバターを混ぜたりといった工程があるのでしたか」
「ええ。圧搾が出来ている以上は、存在しているはずなのですが」
であれば、不用品として捨てられているのか、こちらの世界の不可思議さがまた邪魔をしているのか。
「予算は、十分に組めるでしょうが」
「生憎と、私にはそこまでの時間も知識もありません。これらを作っている方に、簡単に助言をしたうえで試作をしてもらえるよう頼むのは如何でしょう」
こうして話している時間も、アルノーは常に手を動かしている。今は朝食が終わって少しした時間。当然、これから昼食もあり夜にはまた。手伝いとしてアルノーが選んだ子供たちも、一心不乱にと言うほどでは無いが、それでもアルノーがもう野菜の切りつけに関しては目を離しても良いと判断ができる程度には仕込んだものらしい。
「それも悪くはありませんが、そういえば、これはどちらで」
「神国の王都で手に入れたものです」
「確か、コルテスと言いましたか」
「ええ、確か大航海時代にアステカへ。そこからヨーロッパに戻った時に広まったはずです」
そう、スペインに広めたのは元をたどればスペインの冒険家であったような、そのような記憶。実際には侯爵位を与えられている征服者ではあるのだが。
「リオハ領という物を、異邦人が建てていたようなのですが」
「となると、こちらでも同じような流れを行えと言う事でしょう。とすると、時間が足りませんね」
「已むを得ませんか、であれば代用を考えましょう」
精製できるようになれば、色々と幅広い使い道があったようなと考えるものだが、オユキの目的はやはりそちらではない。あくまで、チョコレートを求めている理由と言うのは、トモエの為にと言うだけなのだ。オユキ自身が、特別口に運びたいものではないため、最低限の知識だけが頭にあり、それ以上の意欲という物もやはりない。
「畜産は行われており、チーズもあるわけですし、当然」
「ええ。成程、ですが少し香りが変わりますが」
「もとより、私がかつて作った時にはコーティングとしてではありますが、トモエさんの好みに合わせて」
「甘みも足すためにと言う事ですか、そうであれば、確かに問題はなさそうですね。ただ、問題としては」
そうして、改めて指で触れてもざらつきを感じるチョコレートをアルノーが取り上げて見せる。
「磨砕には限界があるでしょう」
「確か、実際にはローラーで挟んでそこを数度通すことで微粒子化していたはずです」
「とすると、必要なものはそちらになりますか」
「撹拌は、どうしましょうか」
「そのあたりは、既にある魔道具で」
どうやら、そうした道具は存在しているらしい。ならば、それらを使ってもう少し加工が進まなかったのかと、オユキとしては疑問を感じる物ではあるのだが。
「疑問はもっともですが、それが撹拌した物を改めて固めたものです」
「布などを使って漉してみるだけでも、もう少しどうにかなりそうなものですが」
「生憎とそれも試した後でして」
アルノーとしても、オユキが思いつくことなどはとっくに一通りやって見せたものがそれだと。
「パティシエ資格も取得はしているので、ショコラに関しては妥協をしたくはありませんでしたが」
「成程、それで溶かしてチュロに合わせるなどと言ったことも無かったのですか」
「このままソースに入れてしまうと、やはり苦みとざらつきが」
「流石に、素人考えは通じませんか」
あれこれと、オユキから提案してはみるのだが、基本的に通るのは工業的に制作するための方法。そこで使っていたような工作機械に関わるようなことばかり。流石に、どうやって作るのかまでは想像がつくものではないし、いかにして砕くかと、滑らかにしようというのであれば粒子として均一になる様にと思いつくのはそればかり。
「しかし、ローラーですか」
「大型の物は、見たような記憶もありますが、果たして小型化して十分な物となるでしょうか」
「オユキさんは、既に乗り気ですか」
「ええ。作ることは決めていますので、今後も簡単に手に入るようになればと」
喜ぶものは多かろうとは思う。ファンタズマ子爵家として、そのあたりの嗜好品に投資をするのも構うまいと考えて。
「アマギさんに設計を任せてみますか」
「アマギさんですか」
そういえば、アルノーには紹介していなかった。そんな人物を俎上に出してしまったために、簡単に説明を加えた上で何を任せようとしているのか、それについて。
「成程、食品を工業的に作る、その試行ですか」
「ええ。幸い、始まりの町であれば、少々の無理を頼んでも通していただけそうですし、まずは小型の試験場として」
「ゆくゆくは、広くとしてですか。良い案かとは思いますが、その方は今どちらに」
「そういえば、あまり話を聞きませんね。橋の確認が終われば、どこかで一度くらいは顔を合わせる機会もあるのでしょうが」
さて、今はどこで何をしているのだろうか。橋の確認があるからと、間違いなくウニルにいたのだろうが、そこから当然確認項目を並べ上げていけば橋を渡ると決めるだろうとは考えている。今回、オユキが特別何を言うでもなく魔国へ来ることを良しとしているのは、こちら側でアマギと一度会おうと考えての事でもあるのだが。
「いえ、話がそれていましたね」
「私が、と言う事ではなく、オユキさんがそれでもかまわないというのであれば、喜んでお手伝いはさせていただきますよ」
「現状、これしかないというのであれば、ええ、これでまずはと言うのが筋でもあるでしょう」
アルノーが、己が直接とするのであればとてもではないがこのような品質は受け入れられないとして。しかし、オユキがそれでもかまわない、一先ず今ある物で試してみるというのであれば手伝おうと。正直、彼の手が借りられるのは、オユキとしても非常にありがたい物ではあるのだ。生前、あれこれと調べてはみた物の、やはり素人料理。本職の手によれば随分と時間をかける品とは聞いたことがあるのだが、半日程度で用意してとしたのだから。
「では、まずはオレンジからですか」
「そうですね、記憶に間違いがなければ、こちらはイタリアがもととなっていたはずですし、良い物があれば」
魔国に来て、早速と考えたのはそれもあっての事。
「神国のほうが、と言いますかスペインのほうがよほど有名でしたが」
言われて、オユキも少し考えてみる。確かに、かつての世界であればバレンシアと呼ばれる地方でかなり盛んであったはずだ。オユキ自身、その名を冠したオレンジにしても度々見ていたし、買って戻ったこともある。ただ、不思議なことにと言えばいいのだろうか。
「言われてみればと思いますが、ただ、食卓に並んだことがなかったようにも思いますが。いえ、こちらに来たばかりのころに、ソースとしてと言うのはみましたが」
「皮が厚く、可食部も少ないとなればこれまでの方法では遠くまでと言うのは難しかったのでしょう。」
「いえ、バレンシアオレンジに関しては」
「ああ、オユキさん、そちらは名前こそバレンシアとついていますが新大陸の物です」
一先ず、方向性は決まったなと。アルノーにしても、そろそろ次の用意があるからと話を切り上げる構えを作っている。ならば、後はそれこそこのままトモエにばれぬ様に準備を進めてけば良い。そこまで考えて、ではオユキのほうでもそろそろ次に向けた用意でもと考えているところにエステールが表れる。
「オユキ様」
「エステール様ですか、どうかされましたか」
おずおずとと言う訳でもなく、それでもオユキが午前中は一先ずアルノーとやることがあるからと話したせいだろう。少し申し訳なさそうにしながら、厨房に顔を出したエステール。他とやはり変わる事無く、公の場であればもはや爵位も返上した以上はきちんと様を付けずに呼ぶようにと言われているため、これまでの癖ばかりは。特に、こうしてアルノーと話している時間と言うのはいよいよ公からは遠い物でもある。
「いえ、どうにも困ったことになっていまして」
「困ったこと、ですか」
さて、何故オユキの判断を待たねばならぬのかと疑問は大いにあるのだが、何やら困りごとではあるらしい。ならば、それに対応するのが、今こちらに残っている者たちの中、神国の権限をある程度持っているオユキの役割でもあるだろうと。
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