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22章 祭りを終えて
狩猟者ギルドにて
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ウーヴェと暫く話し込み、一先ず当座の武器として彼が手習いで造ったという太刀を模した武器をついでとばかりに買い求めた後は、そのまま馬車に乗り込んで狩猟者ギルドへと向かう。中型以上の素材が必要だと言われたこともあるため、一応はこの町の周囲で手に入る物を、そう考えての事。
しかし、狩猟者ギルドについてみれば。
「ふむ。オユキは、もう少しかかるか。」
「ええ。流石に少し動いて疲れて眠気にという事は無くなってきてはいますが。」
顔を出したと思えばまずはミリアムに補足され、そしてそのままギルドの二階に連れ込まれた。
拒否することが出来なかったわけでは無いし、せっかくだからとそのままミリアムに中型の資料を請求して、写しの用意にかかる時間はこうしてブルーノと差し向かいで話している。まずはとばかりに彼が口にしたのは、オユキの事。どうにも彼にしてもオユキに頼みたいことがあるようで。
「相分かった。」
「それにしても、狩猟者ギルドから私たちにとなると、いよいよこちらでも把握していますか。」
「ふむ。」
どれの事だと言わんばかりにブルーノが言葉を濁す。これがオユキであれば、この様子であれやこれやと思いつくのだろうが生憎トモエはそこまで腹芸が得意ではない。
「マルコさんから、話を聞きましたから。当屋敷でも授かりものを得た使用人は、相応の数です。」
「そうなのだ。」
ブルーノにしても、トモエには言外に伝えようと考えている事は上手くいかぬらしいと、当座の問題、トモエが把握している問題に関して乗る事とする。
「このギルドでも、数人だ。有難い事ではある。これまで求めても、得られなかった事である故な。」
「そうですね。それが幸福、目標などとは言いませんが、一つの形ではあるでしょうから。」
「神々に定められた、一つの目標であるには違いない。」
生めよ、増えよ、地に満ちよ。
かつての世界では、色々と解釈があったと言えばいいのか、人口の抑制を考えなければならない状況が差し迫る程になっていたため、問題が無かったとは言えないのだがこちらの世界ではそれこそ称賛されるべきことではある。人類の版図は大陸の面積に比べてあまりに少なく、加えて同じ大陸がこの世界にはまだ8も残っている。これほどの面積を人が生めるには、果たしてどれだけの歳月が必要になっていくのか。正直、トモエにとっては途方もない話としか思えない。
「食料などは、十分な備蓄があるかと思いますが。」
「ふむ。」
「おや、不足がありますか。」
事此処に至るまで、少なくとも神々から人口の上限が無くなると聞いたのは、相応に昔の話。とはいっても一年もたっていない。トモエの感覚では、随分と前に感じはするのだが、改めて考えてみれば確かに難しい期間だと考えを改める。保存食としても収穫期を一度超えただけであれば、周囲の魔物から得られる物以外、確かに備蓄が心許ないだろうと。
「うむ。何分これから人手が減るのだと考えればな。」
「そうですか。ですが、私にしてもオユキさんにしても流石に農作業は門外漢ですよ。」
恐らく不足しているだろう部分、それに関してトモエが言葉を掛ければブルーノがただ瞑目する。
少しは、そうした方面での期待でもあったのだろうかとトモエとしては首をかしげるしかない。どうにもこのブルーノという人物、ギルドの長ではあるのだがオユキによれば、初代公爵その人であるらしく、どうにもトモエはこの人物がどういった思考を行うのかが掴み切れていない。あくまでトモエの対人技能、他人に対して重ねる推論というのはその人物の理解を基礎とする。いよいよ自分とは全く違う形で、これまでの経験が生きない相手ではなかなかどうして。
「失礼します。」
ブルーノは黙り込み。トモエはトモエで他に情報でもあるのかと待っているところに、ミリアムが訪れる。
「ああ、トモエさん、お待たせしました。一応武器に加工ができる中型種ですね、その生息域や注意事項などをまとめた物をお持ちしましたよ。」
「有難う御座います。随分とお早いですね。」
「最近は、同じことを考えている方も増えてきていますから。」
どうやら事前にある程度用意があったらしい。
「ギルド長は、何をそんなに困っているんですか。」
困っているのは、トモエも理解している。ただ、何がとなると分からない。
「さて、オユキさんについて聞かれ、今は食料の問題に関して話をしたのですが。」
「えっと、そんな事を話す予定では無かったんじゃ。」
「おや、そうなのですか。」
オユキの事を世間話と言えばいいのか、話しの導入としたのは何か別の糸があったのだろうか。トモエが今一つ要領を得無いという視線をミリアムに向けてみれば、そのミリアムがトモエが頼んでいた資料をまずはトモエの前に置く。それに対して一言礼を告げた上で、まずは数枚確認してみる。
内容は確かに良く纏まっており、手書きか版画か、魔物の特徴が分かる程度の図解も併せてついているのが非常に助かる。これがかつてこの世界を遊んでいた者達であれば、名前を聞けばどのような相手なのか想像がつくのかもしれないが、トモエはそうでは無いのだから。
「もう、ファンタズマ子爵家にはいくらか狩猟者ギルドからの要望書を送ったじゃないですか。」
「うむ。そうなのだがな。」
「ああ、それの確認ですか。オユキさんが、早ければ今日中に確認しているかもしれませんが。」
「どうでしょうか。オユキさんは、基本的に古い物から確認するでしょうし。」
ミリアムがブルーノにそんな話をするのだが、トモエの見解としてはオユキは今頃書類や手紙の日付を確認していき、いま訴状に上がっているものはいつ送られたか次第。それこそ、昨日、一昨日にという事であればそれこそかなり先になるのではないか、トモエとしてはついついそんな事を考えてしまう。
「それは、仕方が無いというしかあるまいか。」
「いえ、ギルド長それだと困るわけですし、せっかくトモエさんがこうして来ているのですから。」
「うむ。」
「うむではなくて、ですね。」
何やら困っているらしい。
手伝おうかとも考えるが、そこまでする義理もない、トモエとしてはなかなか難しい問題ではある。所属する狩猟者として話を聞いてくれと言われれば、今こうしてこの場にいる様に断りはしないのだが。
「お話が無いようなら、その。」
「あ、待ってくださいトモエさん。」
ただ、何やら難儀な話ではありそうだと、トモエがオユキの事もあるから今は一度この場を離れようと口にすれば、ミリアムから制止がかかる。ブルーノが話しにくい事であるらしく、どうやらミリアムからとなるらしい。どうやら断る事が許される空気でも無いと、トモエは一度確認の為に目を通していた魔物の資料を一度机に置いたうえで話を聞く体制を作る。なんだかんだと、世話にはなっているのだ。こうして魔物の資料とて用意してくれているのだから、その分はと。
「その、既にお気づきかとは思うのですが。」
「はい。先ほどブルーノ様にもお伝えしたのですが、当屋敷でも授かりものを得ている者達がいますから。」
「その、それはオユキさんもという事でしょうか。」
「いえ、私達の間でそういった事はありませんよ。今後、そうですね、今後こちらに残ると決めればそうした話もするのでしょうが。」
此処で一つ、性別が入れ替わっているのはひとまず置いておき、問題となるのは今後のトモエとオユキの去就だ。こちらで無責任な真似をすることなど、トモエもオユキも望みはしない。
「ああ、そうなんですか。ええと、その、とにかく以前からの懸念がかなり前倒しになったわけです。」
「それは、そうなのでしょうが。その、狩猟の範囲であればお手伝いは出来ますが、それにしても備蓄自体は十分では。」
トモエとオユキが切欠となって、この町では既に新人の育成としてかなりの数狩猟を行う者が増えている。この町を囲んだ者達の内、更生の余地ありとされている者達にしてもかなりの数がいるのだ。どうやらそちらもこれまでの思い上がりというものが綺麗になくなり、今はただ粛々と日々の狩りに勤しんでいるという話も聞いてはいるし、見てもいる。
「ええ、そちらは色々と手を打って頂いたこともあり十分とは言えない物の、生産量自体は問題なく推移するだろうと。」
「では、特段手伝えることが無いのでは。」
「そうでは無く、不足している薬の材料などですね。」
「と、言われましても。」
薬になる素材を取ってこいなどと言われても、トモエはいよいよ門外漢。正直図鑑を預けられたとて、判別がつくかの自信も無い。それは、オユキにしても同様だろう。
「ええと、王都で護衛をされたとか。」
「ああ、そう言う事ですか。」
数度行って、それきりとなっているのだが。
「と、言いますかこちらにも共有されていたのですね。王都ではあまり狩猟者ギルドを経由せずに動いた気もするのですが。」
「それで、ギルド長が気にしていたのですか。その、一緒にいた相手、シグルド君とかですね、そちらから報告が随時上がっていましたし、町の出入りには狩猟者ギルドの発行した物を使っていたでしょう。」
「そう言えば、そうですね。ああ、その辺りの情報をまとめた物が共有されたわけですか。」
まぁ、そうした要望があるというのなら、確かに考慮に値する。というよりも、オユキが午前中は書類仕事に向かうのであれば、トモエはトモエで採取者たちの護衛とするのもいいだろう。
「そう言えば、そういった話は採取者ギルドから回ってくるのが筋では。」
「その、ファンタズマ子爵家に数度採取者ギルドの長から話が行っているかと。」
「ここ数日の事であれば、私が全て白紙に戻しなさいと、そうした通達をしていましたから。」
成程、行き違いがあったらしい。そして、トモエはその宣言を撤回もしていない。オユキが動いてもいい時間、それはトモエが今も決めている。要は昼食の時間まで。午前中の極短い時間を、オユキが執務室で書類仕事をすることだけは許可しているに過ぎない。まだまだ、オユキが完全に回復するまでは日がいるのだと、マルコとカナリアからも随分と繰り返し聞かされたものだ。
「それに、オユキさんは快復まで前と同じかそれ以上の日数がかかるようですし。」
「そう、ですか。」
「ただ、そうですね。午前中、オユキさんが仕事をする時間。その間位は私も護衛に参加しましょう。」
しかし、狩猟者ギルドについてみれば。
「ふむ。オユキは、もう少しかかるか。」
「ええ。流石に少し動いて疲れて眠気にという事は無くなってきてはいますが。」
顔を出したと思えばまずはミリアムに補足され、そしてそのままギルドの二階に連れ込まれた。
拒否することが出来なかったわけでは無いし、せっかくだからとそのままミリアムに中型の資料を請求して、写しの用意にかかる時間はこうしてブルーノと差し向かいで話している。まずはとばかりに彼が口にしたのは、オユキの事。どうにも彼にしてもオユキに頼みたいことがあるようで。
「相分かった。」
「それにしても、狩猟者ギルドから私たちにとなると、いよいよこちらでも把握していますか。」
「ふむ。」
どれの事だと言わんばかりにブルーノが言葉を濁す。これがオユキであれば、この様子であれやこれやと思いつくのだろうが生憎トモエはそこまで腹芸が得意ではない。
「マルコさんから、話を聞きましたから。当屋敷でも授かりものを得た使用人は、相応の数です。」
「そうなのだ。」
ブルーノにしても、トモエには言外に伝えようと考えている事は上手くいかぬらしいと、当座の問題、トモエが把握している問題に関して乗る事とする。
「このギルドでも、数人だ。有難い事ではある。これまで求めても、得られなかった事である故な。」
「そうですね。それが幸福、目標などとは言いませんが、一つの形ではあるでしょうから。」
「神々に定められた、一つの目標であるには違いない。」
生めよ、増えよ、地に満ちよ。
かつての世界では、色々と解釈があったと言えばいいのか、人口の抑制を考えなければならない状況が差し迫る程になっていたため、問題が無かったとは言えないのだがこちらの世界ではそれこそ称賛されるべきことではある。人類の版図は大陸の面積に比べてあまりに少なく、加えて同じ大陸がこの世界にはまだ8も残っている。これほどの面積を人が生めるには、果たしてどれだけの歳月が必要になっていくのか。正直、トモエにとっては途方もない話としか思えない。
「食料などは、十分な備蓄があるかと思いますが。」
「ふむ。」
「おや、不足がありますか。」
事此処に至るまで、少なくとも神々から人口の上限が無くなると聞いたのは、相応に昔の話。とはいっても一年もたっていない。トモエの感覚では、随分と前に感じはするのだが、改めて考えてみれば確かに難しい期間だと考えを改める。保存食としても収穫期を一度超えただけであれば、周囲の魔物から得られる物以外、確かに備蓄が心許ないだろうと。
「うむ。何分これから人手が減るのだと考えればな。」
「そうですか。ですが、私にしてもオユキさんにしても流石に農作業は門外漢ですよ。」
恐らく不足しているだろう部分、それに関してトモエが言葉を掛ければブルーノがただ瞑目する。
少しは、そうした方面での期待でもあったのだろうかとトモエとしては首をかしげるしかない。どうにもこのブルーノという人物、ギルドの長ではあるのだがオユキによれば、初代公爵その人であるらしく、どうにもトモエはこの人物がどういった思考を行うのかが掴み切れていない。あくまでトモエの対人技能、他人に対して重ねる推論というのはその人物の理解を基礎とする。いよいよ自分とは全く違う形で、これまでの経験が生きない相手ではなかなかどうして。
「失礼します。」
ブルーノは黙り込み。トモエはトモエで他に情報でもあるのかと待っているところに、ミリアムが訪れる。
「ああ、トモエさん、お待たせしました。一応武器に加工ができる中型種ですね、その生息域や注意事項などをまとめた物をお持ちしましたよ。」
「有難う御座います。随分とお早いですね。」
「最近は、同じことを考えている方も増えてきていますから。」
どうやら事前にある程度用意があったらしい。
「ギルド長は、何をそんなに困っているんですか。」
困っているのは、トモエも理解している。ただ、何がとなると分からない。
「さて、オユキさんについて聞かれ、今は食料の問題に関して話をしたのですが。」
「えっと、そんな事を話す予定では無かったんじゃ。」
「おや、そうなのですか。」
オユキの事を世間話と言えばいいのか、話しの導入としたのは何か別の糸があったのだろうか。トモエが今一つ要領を得無いという視線をミリアムに向けてみれば、そのミリアムがトモエが頼んでいた資料をまずはトモエの前に置く。それに対して一言礼を告げた上で、まずは数枚確認してみる。
内容は確かに良く纏まっており、手書きか版画か、魔物の特徴が分かる程度の図解も併せてついているのが非常に助かる。これがかつてこの世界を遊んでいた者達であれば、名前を聞けばどのような相手なのか想像がつくのかもしれないが、トモエはそうでは無いのだから。
「もう、ファンタズマ子爵家にはいくらか狩猟者ギルドからの要望書を送ったじゃないですか。」
「うむ。そうなのだがな。」
「ああ、それの確認ですか。オユキさんが、早ければ今日中に確認しているかもしれませんが。」
「どうでしょうか。オユキさんは、基本的に古い物から確認するでしょうし。」
ミリアムがブルーノにそんな話をするのだが、トモエの見解としてはオユキは今頃書類や手紙の日付を確認していき、いま訴状に上がっているものはいつ送られたか次第。それこそ、昨日、一昨日にという事であればそれこそかなり先になるのではないか、トモエとしてはついついそんな事を考えてしまう。
「それは、仕方が無いというしかあるまいか。」
「いえ、ギルド長それだと困るわけですし、せっかくトモエさんがこうして来ているのですから。」
「うむ。」
「うむではなくて、ですね。」
何やら困っているらしい。
手伝おうかとも考えるが、そこまでする義理もない、トモエとしてはなかなか難しい問題ではある。所属する狩猟者として話を聞いてくれと言われれば、今こうしてこの場にいる様に断りはしないのだが。
「お話が無いようなら、その。」
「あ、待ってくださいトモエさん。」
ただ、何やら難儀な話ではありそうだと、トモエがオユキの事もあるから今は一度この場を離れようと口にすれば、ミリアムから制止がかかる。ブルーノが話しにくい事であるらしく、どうやらミリアムからとなるらしい。どうやら断る事が許される空気でも無いと、トモエは一度確認の為に目を通していた魔物の資料を一度机に置いたうえで話を聞く体制を作る。なんだかんだと、世話にはなっているのだ。こうして魔物の資料とて用意してくれているのだから、その分はと。
「その、既にお気づきかとは思うのですが。」
「はい。先ほどブルーノ様にもお伝えしたのですが、当屋敷でも授かりものを得ている者達がいますから。」
「その、それはオユキさんもという事でしょうか。」
「いえ、私達の間でそういった事はありませんよ。今後、そうですね、今後こちらに残ると決めればそうした話もするのでしょうが。」
此処で一つ、性別が入れ替わっているのはひとまず置いておき、問題となるのは今後のトモエとオユキの去就だ。こちらで無責任な真似をすることなど、トモエもオユキも望みはしない。
「ああ、そうなんですか。ええと、その、とにかく以前からの懸念がかなり前倒しになったわけです。」
「それは、そうなのでしょうが。その、狩猟の範囲であればお手伝いは出来ますが、それにしても備蓄自体は十分では。」
トモエとオユキが切欠となって、この町では既に新人の育成としてかなりの数狩猟を行う者が増えている。この町を囲んだ者達の内、更生の余地ありとされている者達にしてもかなりの数がいるのだ。どうやらそちらもこれまでの思い上がりというものが綺麗になくなり、今はただ粛々と日々の狩りに勤しんでいるという話も聞いてはいるし、見てもいる。
「ええ、そちらは色々と手を打って頂いたこともあり十分とは言えない物の、生産量自体は問題なく推移するだろうと。」
「では、特段手伝えることが無いのでは。」
「そうでは無く、不足している薬の材料などですね。」
「と、言われましても。」
薬になる素材を取ってこいなどと言われても、トモエはいよいよ門外漢。正直図鑑を預けられたとて、判別がつくかの自信も無い。それは、オユキにしても同様だろう。
「ええと、王都で護衛をされたとか。」
「ああ、そう言う事ですか。」
数度行って、それきりとなっているのだが。
「と、言いますかこちらにも共有されていたのですね。王都ではあまり狩猟者ギルドを経由せずに動いた気もするのですが。」
「それで、ギルド長が気にしていたのですか。その、一緒にいた相手、シグルド君とかですね、そちらから報告が随時上がっていましたし、町の出入りには狩猟者ギルドの発行した物を使っていたでしょう。」
「そう言えば、そうですね。ああ、その辺りの情報をまとめた物が共有されたわけですか。」
まぁ、そうした要望があるというのなら、確かに考慮に値する。というよりも、オユキが午前中は書類仕事に向かうのであれば、トモエはトモエで採取者たちの護衛とするのもいいだろう。
「そう言えば、そういった話は採取者ギルドから回ってくるのが筋では。」
「その、ファンタズマ子爵家に数度採取者ギルドの長から話が行っているかと。」
「ここ数日の事であれば、私が全て白紙に戻しなさいと、そうした通達をしていましたから。」
成程、行き違いがあったらしい。そして、トモエはその宣言を撤回もしていない。オユキが動いてもいい時間、それはトモエが今も決めている。要は昼食の時間まで。午前中の極短い時間を、オユキが執務室で書類仕事をすることだけは許可しているに過ぎない。まだまだ、オユキが完全に回復するまでは日がいるのだと、マルコとカナリアからも随分と繰り返し聞かされたものだ。
「それに、オユキさんは快復まで前と同じかそれ以上の日数がかかるようですし。」
「そう、ですか。」
「ただ、そうですね。午前中、オユキさんが仕事をする時間。その間位は私も護衛に参加しましょう。」
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