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21章 祭りの日
隠し行く
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要は、そうした話し合いの席を持ったうえで今。
此処で、こうして少女達とシェリアにオユキは甘えてみる事にしたと、そう言う事だ。
もしも叶うなら、そう前置きをしながらも、恩義を感じていることを使って、そこに漬け込むようなそうした振る舞いを多少恥じ入る気持ちはあるが、そこばかりは過去も乗り越えてきたものだ。
厚顔無恥と呼ぶなら呼べと、そう言い切ったのはさて、己であったかミズキリであったか。
「その、お手伝いを頂けるというのなら、有難いのですが。」
「ええ、必ずやオユキ様の望みを叶えて見せましょうとも。」
「あの、あまり、こう、気負わずに。」
髪を梳る櫛迄おいて、何やらシェリアが随分と熱量の高い視線をオユキに向けている。それに対して、これは少々効き過ぎたかと、オユキとしては危機感を覚えて制動を。
どうにも、気負い過ぎていると言えばいいのか、ここまでの事で色々と思うところがあったというのか。
「いえ、初めて明確にオユキ様の望みをお伺いしたわけです。勿論、全霊をもって。」
「あの、くれぐれも程々で。」
それこそ、そこで何かが起こればオユキとしてもさて誰に何を謝ればいいのかと、そう言う話になってくる。不思議とそれが誰かは想像がつきそうなものだが。
さて、何やらシェリアに触発されてという訳でもなく、少々冷え始めたどころでは無い室内。床には霜が降り、室内のそこかしこに氷が現れ始めている。各々が春から夏に移るころ、少々薄手の布団を抱え込んでオユキの周りに集まっている少女達。人が側にいる、その事が何とはなしに穏やかなぬくもりが。
「でも、オユキちゃん、それがやりたいんだよね。」
「ええと、はい。」
そして、アナが何やら眠たげにし始めているが、それでもオユキに向かって言葉を作る。オユキとしては、聞かれてしまえばそもそも己が言い出した事であり、それに伴って室内にこのような惨状を持ち込んだ事もあるのだ。ただ頷いて見せるしかない。
「皆さんにも、その、お願いしたいことではあるのですが。」
そもそも、ロザリアに頼んでみろと言われての事なのだ。少女達への期待の理由というのは、それ以上でもそれ以下でもない。こうして話して聞かせて見たのも、要はロザリアに恩返しの機会をうかがっているのだと、そう聞いているから。少年たちの方は、トモエに懐いているのだからそちらに向けて欲しいというところもあるし、実際に折に触れて少年達一同としてトモエに何かを贈り物として渡している場面も目撃しているし、トモエから少し嬉し気に話を聞かされることもある。オユキに対してそれが無いのは、まぁ、どちらが主体として教えているのかと、そういった話なのだろう。しかし、こうして少女たちの様子を見れば、それだけではなかったという事でもあるらしい。
「じゃあ、頑張ってみようかな。」
「ね。」
「そうだね。明日、起きたら司教様とか、助祭様に相談してみようかな。」
キャイキャイと、そうして少女たちが随分と盛り上がり始める。
「その、一応お願いしているのですが、皆さんもくれぐれも。」
さて、事此処に至って、少女たちの方でも何やら他の多くを巻き込んで算段を付けようとし始めている。それに対して、オユキとしても慌てて止めた方が良いのでは、そんな事をいよいよ。
「でも、許せないんだよね。フスカさんの事。」
「ええと、そうですね。そこは、はい。」
己の比翼を痛めつけられて、何やら不条理な理由でもってそのような振る舞いをされて、さて許せるという人間がどれほどいるというのか。振られた話に、オユキとしてもまた内側でざわつくものが生まれ、周囲にその影響が。慌てて抑えようとするのだが、どうにも上手くいきそうもない。一体全体、こうして周囲に影響を与えるのは一体何事かと。オユキとしても甚だ疑問ではあるし、今度カナリアに相談してみようかなどとそう考えながらも。
「ですが、皆さんがそれで負担を得る事は望んでいませんからね。」
一応とばかりに、どうにもオユキ自身白々しいと思いながらも、どうかそうでないことが伝わって欲しいと考えて。
「くれぐれも、どう言えばいいのでしょうか、怪我無く無事に済むよう皆さんも。」
それこそ、どう言えばいいのか。可能なら誰にも怪我などしてほしくはない。勿論、身内意識のない相手に関しては、オユキにしてもどうでも良いというのか、そう言う事もあるのだろうとその程度で片づける。しかし、こうして側にいても就寝の場で側にいても構わないと考える相手というのは、やはり怪我などして欲しくないのも事実。
全くもって都合が良い、オユキ自身そのように考えるものだが、これに関してはトモエとて基本は同意見。トモエの方は鍛錬の中であれば、それが必要だと考えれば勿論容赦なく行うのだろうが。
「でも、うん。」
「うん、そうだね。」
さて、オユキの説得を聞いているようで聞いていない、そんな少女たちに果たしてどう声を掛けた物か。
「あの、いいですか。くれぐれも怪我の内容に務めるんですよ。」
「うん。」
「はい。」
「分かりました。」
さて、そうして三者三様の反応が返ってくるが、本当に分かっているのやら。シェリアの方でも、何やらあれやこれやと考えているらしいが、そちらはもういよいよ置いておくしかない。正直、オユキの想像を超える様な、そうした振る舞いをして見せるのかもしれない。どうにも、このシェリアという人物にしても、近衛として色々と手札を隠していると言えばいいのか、使う必要が無かっただけなのか。それすらも分かりはしないのだから。
「ええ、空返事は置いておくとしましょう。いいですか、くれぐれも記憶にとどめて置き、そのように。」
最早聞く気が無いと言えばいいのか、聞いていても何をするつもりもないとそれが分かったからと言えばいいのか、オユキもややあきらめ気味に。いよいよ明日に迫ったこともある。その場では、少女たちがあまり無理をしないように、それこそシェリアに過度に負担がかからないように。なにかを自分でも考えておかねばとオユキも改めて己に戒めを。
こうして、オユキが己に課すものというのが徐々に増えていくのだろう。
オユキ自身、そうした自覚というのはあるのだ。ロザリア司教の話を纏めれば、要はもっと自在にあれという事であるらしい。トモエの方でも己の流派の理念と照らし合わせて、もっと己のままに振舞う事が良いのだろうと考えている。そして、そのように振舞い始めているというのはオユキから見てもよくわかる。トモエから今回の事を言い出されたというのが、オユキが事前に教会にこうして止まるという事を勧められたというのが最たる例なのだろう。
これまでであれば、オユキの方針を立ててくれていたのだが、オユキを追い出して屋敷に他の者達を招いてそちらはそちらでというのは、過去に無かったとは言わないが、まぁ珍しい事ではある。過去はそれこそオユキが仕事に出ている間に、トモエが人を招いて、そう言う形であったものだし、オユキが仕事に出るからと言って、トモエに勧めてという事はあったのだが。
「本当に、皆無事にすめば良いのですが。」
「オユキちゃんは、その皆の中に入ってるの。」
「私は、そうですね。」
仕方が無いと、そう思って零した言葉に率直な、率直すぎる疑問をぶつけられてオユキとしては言葉に詰まる。
己の無事、それよりも重要な事があるのだからと。
ただ、そうした思考が、どうにも周囲に、シェリア、アナ、セシリア、それからアドリアーナ、こうして周囲にいる者達に何やら不安を与えているものであるらしい。
「フスカ様が相手ですから、難しそうですね。」
正直な所、叶うなどとはやはり考えていない。業火に焼かれることは、覚悟している。ただ、それでも思い知らせなければならない。己の矜持に懸けて。過去の約束に懸けて。
己の伴侶を傷つけた相手を、己の知らぬところで行われたのだとしても、ただそれでのうのうと生きて行くことを許すような、そのような人間になった覚えはない。繰り返し、それだけを考えて。他の事などどうでもいいとまではいわない。己がそこで失われてしまえば、トモエが気に病むこととて理解はしている。ただ、それでも。
「そうだよね、オユキちゃん、トモエさんが好きだもんね。」
「本当に。」
何処か、少女達から呆れたように言われる物だが、そればかりはここまでの関係性というのがオユキにもトモエにも。二人の間に存在するのだから仕方がない。
「どうにも、かつての世界から今まで、ええ、引き摺ってしまっているものがあると言いましょうか。」
「そう言えば、前の世界からだっけ。」
「えっと、異邦人の人達は、前の世界の記憶も持ってて、そこから今もあるんだよね。」
その言葉に、オユキとしては僅かに以外を覚えるのだが、確かに過去に関係を持っていた者達が一堂に会してという事は無かったのろうと、少ないのだろうと此処に至って理解する。始まりの町とは言え、確かに過去と違って今この場に全ての元プレイヤーが集まるという訳でも無いのだ。
「そうですね。前にもお話ししたかと思いますが、トモエさんとはもう半世紀以上、いえ、50年以上でしょうか。それくらいには連れ添っていまして。」
「あ、そうなんだ。」
「えっと、それじゃ、トモエさんとの間で何かこう。」
「本当に、色々ありましたよ。」
そう、本当に色々と。
「最たるものと言いますか、皆さんも気になているところで言えば、そうでうすね。」
さて、寝物語に少しトモエとの馴れ初めを離すのもいいだろうと、これまでに何度か話した事もある話ではない物、少しオユキとしても気恥ずかしさを覚える様な、そうしたトモエとの間にあった、お互いに距離感を計りかねている時期と言えばいいのだろうか。そうした物を選んで少し話して見せようと。
「トモエさん、ああ見えて家庭的なところがありまして。」
「そう言えば、オユキちゃんよくトモエさんに色々と。」
何やらアドリアーナが思い当たるところがあると言わんばかりの表情を浮かべているのだが、そちらについては一先ず置いておく。そこは、オユキとしても伏せておくことができない物なのだ。
此処で、こうして少女達とシェリアにオユキは甘えてみる事にしたと、そう言う事だ。
もしも叶うなら、そう前置きをしながらも、恩義を感じていることを使って、そこに漬け込むようなそうした振る舞いを多少恥じ入る気持ちはあるが、そこばかりは過去も乗り越えてきたものだ。
厚顔無恥と呼ぶなら呼べと、そう言い切ったのはさて、己であったかミズキリであったか。
「その、お手伝いを頂けるというのなら、有難いのですが。」
「ええ、必ずやオユキ様の望みを叶えて見せましょうとも。」
「あの、あまり、こう、気負わずに。」
髪を梳る櫛迄おいて、何やらシェリアが随分と熱量の高い視線をオユキに向けている。それに対して、これは少々効き過ぎたかと、オユキとしては危機感を覚えて制動を。
どうにも、気負い過ぎていると言えばいいのか、ここまでの事で色々と思うところがあったというのか。
「いえ、初めて明確にオユキ様の望みをお伺いしたわけです。勿論、全霊をもって。」
「あの、くれぐれも程々で。」
それこそ、そこで何かが起こればオユキとしてもさて誰に何を謝ればいいのかと、そう言う話になってくる。不思議とそれが誰かは想像がつきそうなものだが。
さて、何やらシェリアに触発されてという訳でもなく、少々冷え始めたどころでは無い室内。床には霜が降り、室内のそこかしこに氷が現れ始めている。各々が春から夏に移るころ、少々薄手の布団を抱え込んでオユキの周りに集まっている少女達。人が側にいる、その事が何とはなしに穏やかなぬくもりが。
「でも、オユキちゃん、それがやりたいんだよね。」
「ええと、はい。」
そして、アナが何やら眠たげにし始めているが、それでもオユキに向かって言葉を作る。オユキとしては、聞かれてしまえばそもそも己が言い出した事であり、それに伴って室内にこのような惨状を持ち込んだ事もあるのだ。ただ頷いて見せるしかない。
「皆さんにも、その、お願いしたいことではあるのですが。」
そもそも、ロザリアに頼んでみろと言われての事なのだ。少女達への期待の理由というのは、それ以上でもそれ以下でもない。こうして話して聞かせて見たのも、要はロザリアに恩返しの機会をうかがっているのだと、そう聞いているから。少年たちの方は、トモエに懐いているのだからそちらに向けて欲しいというところもあるし、実際に折に触れて少年達一同としてトモエに何かを贈り物として渡している場面も目撃しているし、トモエから少し嬉し気に話を聞かされることもある。オユキに対してそれが無いのは、まぁ、どちらが主体として教えているのかと、そういった話なのだろう。しかし、こうして少女たちの様子を見れば、それだけではなかったという事でもあるらしい。
「じゃあ、頑張ってみようかな。」
「ね。」
「そうだね。明日、起きたら司教様とか、助祭様に相談してみようかな。」
キャイキャイと、そうして少女たちが随分と盛り上がり始める。
「その、一応お願いしているのですが、皆さんもくれぐれも。」
さて、事此処に至って、少女たちの方でも何やら他の多くを巻き込んで算段を付けようとし始めている。それに対して、オユキとしても慌てて止めた方が良いのでは、そんな事をいよいよ。
「でも、許せないんだよね。フスカさんの事。」
「ええと、そうですね。そこは、はい。」
己の比翼を痛めつけられて、何やら不条理な理由でもってそのような振る舞いをされて、さて許せるという人間がどれほどいるというのか。振られた話に、オユキとしてもまた内側でざわつくものが生まれ、周囲にその影響が。慌てて抑えようとするのだが、どうにも上手くいきそうもない。一体全体、こうして周囲に影響を与えるのは一体何事かと。オユキとしても甚だ疑問ではあるし、今度カナリアに相談してみようかなどとそう考えながらも。
「ですが、皆さんがそれで負担を得る事は望んでいませんからね。」
一応とばかりに、どうにもオユキ自身白々しいと思いながらも、どうかそうでないことが伝わって欲しいと考えて。
「くれぐれも、どう言えばいいのでしょうか、怪我無く無事に済むよう皆さんも。」
それこそ、どう言えばいいのか。可能なら誰にも怪我などしてほしくはない。勿論、身内意識のない相手に関しては、オユキにしてもどうでも良いというのか、そう言う事もあるのだろうとその程度で片づける。しかし、こうして側にいても就寝の場で側にいても構わないと考える相手というのは、やはり怪我などして欲しくないのも事実。
全くもって都合が良い、オユキ自身そのように考えるものだが、これに関してはトモエとて基本は同意見。トモエの方は鍛錬の中であれば、それが必要だと考えれば勿論容赦なく行うのだろうが。
「でも、うん。」
「うん、そうだね。」
さて、オユキの説得を聞いているようで聞いていない、そんな少女たちに果たしてどう声を掛けた物か。
「あの、いいですか。くれぐれも怪我の内容に務めるんですよ。」
「うん。」
「はい。」
「分かりました。」
さて、そうして三者三様の反応が返ってくるが、本当に分かっているのやら。シェリアの方でも、何やらあれやこれやと考えているらしいが、そちらはもういよいよ置いておくしかない。正直、オユキの想像を超える様な、そうした振る舞いをして見せるのかもしれない。どうにも、このシェリアという人物にしても、近衛として色々と手札を隠していると言えばいいのか、使う必要が無かっただけなのか。それすらも分かりはしないのだから。
「ええ、空返事は置いておくとしましょう。いいですか、くれぐれも記憶にとどめて置き、そのように。」
最早聞く気が無いと言えばいいのか、聞いていても何をするつもりもないとそれが分かったからと言えばいいのか、オユキもややあきらめ気味に。いよいよ明日に迫ったこともある。その場では、少女たちがあまり無理をしないように、それこそシェリアに過度に負担がかからないように。なにかを自分でも考えておかねばとオユキも改めて己に戒めを。
こうして、オユキが己に課すものというのが徐々に増えていくのだろう。
オユキ自身、そうした自覚というのはあるのだ。ロザリア司教の話を纏めれば、要はもっと自在にあれという事であるらしい。トモエの方でも己の流派の理念と照らし合わせて、もっと己のままに振舞う事が良いのだろうと考えている。そして、そのように振舞い始めているというのはオユキから見てもよくわかる。トモエから今回の事を言い出されたというのが、オユキが事前に教会にこうして止まるという事を勧められたというのが最たる例なのだろう。
これまでであれば、オユキの方針を立ててくれていたのだが、オユキを追い出して屋敷に他の者達を招いてそちらはそちらでというのは、過去に無かったとは言わないが、まぁ珍しい事ではある。過去はそれこそオユキが仕事に出ている間に、トモエが人を招いて、そう言う形であったものだし、オユキが仕事に出るからと言って、トモエに勧めてという事はあったのだが。
「本当に、皆無事にすめば良いのですが。」
「オユキちゃんは、その皆の中に入ってるの。」
「私は、そうですね。」
仕方が無いと、そう思って零した言葉に率直な、率直すぎる疑問をぶつけられてオユキとしては言葉に詰まる。
己の無事、それよりも重要な事があるのだからと。
ただ、そうした思考が、どうにも周囲に、シェリア、アナ、セシリア、それからアドリアーナ、こうして周囲にいる者達に何やら不安を与えているものであるらしい。
「フスカ様が相手ですから、難しそうですね。」
正直な所、叶うなどとはやはり考えていない。業火に焼かれることは、覚悟している。ただ、それでも思い知らせなければならない。己の矜持に懸けて。過去の約束に懸けて。
己の伴侶を傷つけた相手を、己の知らぬところで行われたのだとしても、ただそれでのうのうと生きて行くことを許すような、そのような人間になった覚えはない。繰り返し、それだけを考えて。他の事などどうでもいいとまではいわない。己がそこで失われてしまえば、トモエが気に病むこととて理解はしている。ただ、それでも。
「そうだよね、オユキちゃん、トモエさんが好きだもんね。」
「本当に。」
何処か、少女達から呆れたように言われる物だが、そればかりはここまでの関係性というのがオユキにもトモエにも。二人の間に存在するのだから仕方がない。
「どうにも、かつての世界から今まで、ええ、引き摺ってしまっているものがあると言いましょうか。」
「そう言えば、前の世界からだっけ。」
「えっと、異邦人の人達は、前の世界の記憶も持ってて、そこから今もあるんだよね。」
その言葉に、オユキとしては僅かに以外を覚えるのだが、確かに過去に関係を持っていた者達が一堂に会してという事は無かったのろうと、少ないのだろうと此処に至って理解する。始まりの町とは言え、確かに過去と違って今この場に全ての元プレイヤーが集まるという訳でも無いのだ。
「そうですね。前にもお話ししたかと思いますが、トモエさんとはもう半世紀以上、いえ、50年以上でしょうか。それくらいには連れ添っていまして。」
「あ、そうなんだ。」
「えっと、それじゃ、トモエさんとの間で何かこう。」
「本当に、色々ありましたよ。」
そう、本当に色々と。
「最たるものと言いますか、皆さんも気になているところで言えば、そうでうすね。」
さて、寝物語に少しトモエとの馴れ初めを離すのもいいだろうと、これまでに何度か話した事もある話ではない物、少しオユキとしても気恥ずかしさを覚える様な、そうしたトモエとの間にあった、お互いに距離感を計りかねている時期と言えばいいのだろうか。そうした物を選んで少し話して見せようと。
「トモエさん、ああ見えて家庭的なところがありまして。」
「そう言えば、オユキちゃんよくトモエさんに色々と。」
何やらアドリアーナが思い当たるところがあると言わんばかりの表情を浮かべているのだが、そちらについては一先ず置いておく。そこは、オユキとしても伏せておくことができない物なのだ。
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