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20章 かつてのように
疲れて、到着
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「ようこそ、というのもおかしいのかしら。」
「ええ、お久しぶりです司祭様。」
散々に磨き上げられたオユキは、そのまま仕事着を着せられて馬車に詰め込まれた。そして、そのまま教会へと連れていかれて今に至る。一体全体何がどうなっているのやら、そう言いたくなる程度には目が回っている。今は馬車から降ろされ、シェリアに手を引かれていはするのだがどうにもここまで慌ただしかった事もある。
「ご挨拶に伺うのが、随分と間が空いてしまいました。」
どうにも、ここ暫くの忙しさもあり足が遠のいていたが、子供たち、少年達。そして、犠牲になった者達を頼んでいるのだ。挨拶に来なければならないだろうと、そう考えていたのだが後回しになっていた。それよりも優先するべき事柄があったからというのも一つではあるのだ。日々の事があれこれと押し寄せてきたこともある。他にも、メイの手伝いをしなければならず、トモエの持ちこんだ祭りの事もあった。目まぐるしい日々を過ごしていれば、どうした所でというもの。
「その後は、いかがお過ごしでしょうか。」
オユキが改めてそう尋ねてみれば、司祭はただ微笑んで。
「ここ暫くは、色々と起こりました。」
やや疲れたように、そう話される物だ。
「どうにも、愚痴っぽくなってしまいそうです。しかし、これも神々から頂いた試練という事なのでしょう。」
老体には堪えるのですが、そうくすくすと笑いながら話される。オユキとしては、あれこれと持ち込んだ事もあり申し訳なさを覚えるというもの。ロザリアは何処かくたびれた様子ではあるのだが、何もここで話をするでも無いだろう。持ち込んだ品は、あれこれと使用人たちが荷降ろしを始めているし、先方の者達が手伝いを始めている。オユキとしても、トモエとしてもお世話になっている以上は、こちらの神々に対してあれこれと返せるものがあれば返したい。色々と手を借りていることもあるのだから。
「では、一先ず明日迄の事として、オユキ様は当教会が預かりましょう。シェリア様は。」
「シェリアも、こちらにお邪魔させて頂きましょうか。」
シェリアの方も、明日の祭りにメイから招かれている。それに、己が助けた者達の様子というのも気になりはするだろう。
「シェリア、貴女が助けた相手の事も気になるでしょうから。」
そうして振り返ることなく話せば、何やら背後から頷いたような、前に出てきたようなそんな気配。
「では、あちらのに降ろしが終わるまで、どうされますか。」
「そうですね。」
まぁ、寄付の類も色々と持ち込んでいるし、次に運ぶための道具も用意されている。ついでに話を聞いておきたいことも色々とある。ついでと言っては何だが、こうしている間にも礼拝に来ている者達が何やら頭を下げて嵐が通り過ぎるのを待っている。
「先に、門を案内頂いても。」
ただ、オユキとしては先に気になることを済ませておきたい。
「ええ。勿論ですとも。」
そうロザリアが笑いながら言えば、オユキを先導するように礼拝堂を抜けて、隣に用意された建物へと足を向ける。どうにも、長蛇の列となっているのが気になりはするのだがこればかりは仕方があるまい。諦めてロザリア司祭の後をついていくことにして、周囲の頭を下げている者達にはあまり気にしてはなりませんよとそう身振りで示しておく。どうにも、慣れないのだこうした振る舞いというのは。
「先ごろ、陛下の行幸があったとか。」
「ええ。陛下と、それから隣国の王妃様がご利用されました。」
そうして案内された先には、厳かな柱が立ち並ぶ何処かギリシアの神殿を思わせる様な場所。どの柱が、どの神々を顕しているのかを示す為だろうか、習い覚えた意匠があちらこちらに施されている。そんな柱がただ並ぶ場を抜けて、その先に待つ門へと。こちらにしても、何やら物々しい様子ではあるし、メイから貸し与えられているのか、国王陛下その人から、若しくは領主である現公爵から預けられているのか。騎士のように見える者達が警護している。
「おや。」
「あー、お前か。」
しかして、騎士に見えた相手はアーサーその人であり、どうやらこちらに勤務地を移しているらしい。隣にはアイリスとセラフィーナが用意した社も置かれているし、何となれば先ほどまでいた場所には以前に立てた鳥居がそのまま残されている。神殿の前に鳥居があり、そこにあった社は既に失われ。今は西、南に向かって右手側に置かれている。左手側には、さて何が用意されるのだろうかとオユキとしては考えないでも無いのだが、まぁ、戦と武技か月と安息か。戦と武技に関しては、鳥居が目の前にあるのだから前を固めていると見る事も出来るのだ。
「お久しぶりです。やはり、こちらは門を守る方々が、ですか。」
「ま、そう言う事だな。」
そして、この門を守っているアーサーが恐らくは王祖その人。思い返してみれば、どうにも面影などもありはするのだが、今一つオユキとしても思い出せはしない。どうにも過去の記憶があやふやではあるし、今どうなっているのかと思わないでも無い。ただ、そう考えて接してみて、そこから出てくる情報を集めて幾しかない物だろう。
「となると、初めから予定があったのでしょう。」
「ええ、そうですね。もう少し先の事と伺っていましたが。」
「ほんとにな。ったく、お前らが来てからっていうものの、何とも忙しない事だ。」
さて、誰も彼もからそのように言われる物だがオユキとしても当然言い分というのはある。
「こちらの人々が、過去から今まで、ええ、歪を良しとしたからでしょう。」
どんなことでも、歪みを正すには労力がいる。それが何処までも積み上げられてきた物であれば、尚更というもの。オユキはただそれを、神々に言われて行っているに過ぎない。勿論、己の望みのままに振舞っているところもあるのだが、少なくとも神々から、神の使いである両親からの追認とてえている。預かった手紙も、今となっては二通。隣国の神殿に残されていた手紙は、確かにトモエの手に渡り、オユキの手元に来たのだ。そこに書かれていたのは、言ってしまえば懺悔の類ではあったのだろう。
過去、技術力が足りずに、想像力が足りずに。この世界に対して不備を用意した。その事実に始まり、考え得る対応策のいくつかが書かれていた。恐らくは、ミズキリが、若しくは創造神辺りが何か吹き込んだに違いないのだが、そこにはオユキに頼みたいことがあると、そのように書かれていたものだ。勿論、聞く義理は無いのだがただ、まぁ、色々と。オユキとしても、考える事があったため、そのうちのいくつかは引き受けてみようかと、そう考えが変わっているのだ。
「ま、そりゃそうだ。ったく、本当にどうしてこうなったんだが。」
「それこそ、過去からの事でしょうから。」
さて、長く生きている者達同士で、何やら思うところがあるようで。
「では、通して頂いても構いませんか。」
「ああ、そうだな。」
オユキとしては、そちらはそちらで存分に話し合ってくれとそう言うしかない。
開けられた先を覗き込んでみれば、どうやら先ごろと変わらない様子で門がたたずんでいる。変わったことと言えば、周囲をこうして覆われて内部にしてもあちらこちらに趣向を凝らした飾りがなされていること位。王都の物ともまた違う、異空と流離を司る神に仕える者達がいるからか、実に華やいだ様子になっている。側には恐らくフスカに言われているのだろう。翼人種の一人が、何処かぼんやりとした様子で本などを片手にのんびりとしている。
「成程。こうなりましたか。」
「まぁ、そうだな。」
そして、内部の様子はオユキの目から見れば実に色々と変わっている。門の周囲には、以前に見た系統樹らしきものが浮かんでいるし、そのどれもがオユキが理解できるものでもない。不可思議な文様が、創造神を示すと聞かされている場所からさらにいくつか枝分かれして。恐らく上に続いている部分については、かつての世界の創造神と呼んでも良い相手だろう。そこから伸びているいくつかの線に連なっているのが、さて何を示すのやら。
「どうにも、色々と気になるところはありますがまた後程としましょうか。」
「ま、それがいいだろうな。」
さて、このアーサーなる人物にロザリア司祭。どちらも、一体どれだけの物が見えているのか。戦と武技から連なる座は、オユキはいくつかしか見えないが、それにしてもどれがどの柱、しいて言うならば神の使いと言えばいいだろうか、そういった存在がどれなのか分かりはしない。
「ところで、アイリスさんの祖霊なのですが。」
「あー、それならあれだな。見えてるかは分からないが、あの上から伸びている一つ、戦と武技の神、それから月と安息の神との間に伸びて来てるだろ。」
「ああ、成程。」
さて、そう言われてもどれの事だかオユキには分からない物だ。いくつか、言われたところにまっすぐ伸びてきている経路がある。そのどれを指しているのだろうかと、思わず首をかしげてしまう。
「オユキ様、あちらです。一際戦と武技に近く、その上に水と癒しを置いている。」
ロザリアからの言葉に、オユキは簡単に辺りを付ける。確かに、そうした位置にあるのは、オユキの目には一つだけが映っている。どうやら、それがアイリスの祀る祖霊にあたる物らしい。何ともそれらしいものでは一切なく、実に複雑窮まる紋章がそこには誂えられている。五穀豊穣を顕す物、日華と月精を顕す物。どちらも存在せず、ただ何やらよくわからない文字らしきものが。
「あちらですか。どうにも、司るものが意匠として現れるものではないのですね。」
「いいえ、ありますよ。」
そして、ロザリア司祭が軽く手をたたけばいくらか追加で現れる。成程、確かにその様子を見れば納得できそうな、そうでもないような。共通の意匠があちらこちらに存在しているのだと、そう分かりはするのだが。
「ええと、あれの何処が。」
「おや、見えていませんか。」
「いえ、見えてはいるのですが、何分以前まで見ていた文字とは少々どころでは無く違いますから。」
「魔術文字なのですが、勉強はされていないのですか。」
さて、何やら本を読んでいた相手からも、オユキに対してもの言いたげな視線が送られてくるのだが、一先ずそちらには応えないでおく。
「ええ、お久しぶりです司祭様。」
散々に磨き上げられたオユキは、そのまま仕事着を着せられて馬車に詰め込まれた。そして、そのまま教会へと連れていかれて今に至る。一体全体何がどうなっているのやら、そう言いたくなる程度には目が回っている。今は馬車から降ろされ、シェリアに手を引かれていはするのだがどうにもここまで慌ただしかった事もある。
「ご挨拶に伺うのが、随分と間が空いてしまいました。」
どうにも、ここ暫くの忙しさもあり足が遠のいていたが、子供たち、少年達。そして、犠牲になった者達を頼んでいるのだ。挨拶に来なければならないだろうと、そう考えていたのだが後回しになっていた。それよりも優先するべき事柄があったからというのも一つではあるのだ。日々の事があれこれと押し寄せてきたこともある。他にも、メイの手伝いをしなければならず、トモエの持ちこんだ祭りの事もあった。目まぐるしい日々を過ごしていれば、どうした所でというもの。
「その後は、いかがお過ごしでしょうか。」
オユキが改めてそう尋ねてみれば、司祭はただ微笑んで。
「ここ暫くは、色々と起こりました。」
やや疲れたように、そう話される物だ。
「どうにも、愚痴っぽくなってしまいそうです。しかし、これも神々から頂いた試練という事なのでしょう。」
老体には堪えるのですが、そうくすくすと笑いながら話される。オユキとしては、あれこれと持ち込んだ事もあり申し訳なさを覚えるというもの。ロザリアは何処かくたびれた様子ではあるのだが、何もここで話をするでも無いだろう。持ち込んだ品は、あれこれと使用人たちが荷降ろしを始めているし、先方の者達が手伝いを始めている。オユキとしても、トモエとしてもお世話になっている以上は、こちらの神々に対してあれこれと返せるものがあれば返したい。色々と手を借りていることもあるのだから。
「では、一先ず明日迄の事として、オユキ様は当教会が預かりましょう。シェリア様は。」
「シェリアも、こちらにお邪魔させて頂きましょうか。」
シェリアの方も、明日の祭りにメイから招かれている。それに、己が助けた者達の様子というのも気になりはするだろう。
「シェリア、貴女が助けた相手の事も気になるでしょうから。」
そうして振り返ることなく話せば、何やら背後から頷いたような、前に出てきたようなそんな気配。
「では、あちらのに降ろしが終わるまで、どうされますか。」
「そうですね。」
まぁ、寄付の類も色々と持ち込んでいるし、次に運ぶための道具も用意されている。ついでに話を聞いておきたいことも色々とある。ついでと言っては何だが、こうしている間にも礼拝に来ている者達が何やら頭を下げて嵐が通り過ぎるのを待っている。
「先に、門を案内頂いても。」
ただ、オユキとしては先に気になることを済ませておきたい。
「ええ。勿論ですとも。」
そうロザリアが笑いながら言えば、オユキを先導するように礼拝堂を抜けて、隣に用意された建物へと足を向ける。どうにも、長蛇の列となっているのが気になりはするのだがこればかりは仕方があるまい。諦めてロザリア司祭の後をついていくことにして、周囲の頭を下げている者達にはあまり気にしてはなりませんよとそう身振りで示しておく。どうにも、慣れないのだこうした振る舞いというのは。
「先ごろ、陛下の行幸があったとか。」
「ええ。陛下と、それから隣国の王妃様がご利用されました。」
そうして案内された先には、厳かな柱が立ち並ぶ何処かギリシアの神殿を思わせる様な場所。どの柱が、どの神々を顕しているのかを示す為だろうか、習い覚えた意匠があちらこちらに施されている。そんな柱がただ並ぶ場を抜けて、その先に待つ門へと。こちらにしても、何やら物々しい様子ではあるし、メイから貸し与えられているのか、国王陛下その人から、若しくは領主である現公爵から預けられているのか。騎士のように見える者達が警護している。
「おや。」
「あー、お前か。」
しかして、騎士に見えた相手はアーサーその人であり、どうやらこちらに勤務地を移しているらしい。隣にはアイリスとセラフィーナが用意した社も置かれているし、何となれば先ほどまでいた場所には以前に立てた鳥居がそのまま残されている。神殿の前に鳥居があり、そこにあった社は既に失われ。今は西、南に向かって右手側に置かれている。左手側には、さて何が用意されるのだろうかとオユキとしては考えないでも無いのだが、まぁ、戦と武技か月と安息か。戦と武技に関しては、鳥居が目の前にあるのだから前を固めていると見る事も出来るのだ。
「お久しぶりです。やはり、こちらは門を守る方々が、ですか。」
「ま、そう言う事だな。」
そして、この門を守っているアーサーが恐らくは王祖その人。思い返してみれば、どうにも面影などもありはするのだが、今一つオユキとしても思い出せはしない。どうにも過去の記憶があやふやではあるし、今どうなっているのかと思わないでも無い。ただ、そう考えて接してみて、そこから出てくる情報を集めて幾しかない物だろう。
「となると、初めから予定があったのでしょう。」
「ええ、そうですね。もう少し先の事と伺っていましたが。」
「ほんとにな。ったく、お前らが来てからっていうものの、何とも忙しない事だ。」
さて、誰も彼もからそのように言われる物だがオユキとしても当然言い分というのはある。
「こちらの人々が、過去から今まで、ええ、歪を良しとしたからでしょう。」
どんなことでも、歪みを正すには労力がいる。それが何処までも積み上げられてきた物であれば、尚更というもの。オユキはただそれを、神々に言われて行っているに過ぎない。勿論、己の望みのままに振舞っているところもあるのだが、少なくとも神々から、神の使いである両親からの追認とてえている。預かった手紙も、今となっては二通。隣国の神殿に残されていた手紙は、確かにトモエの手に渡り、オユキの手元に来たのだ。そこに書かれていたのは、言ってしまえば懺悔の類ではあったのだろう。
過去、技術力が足りずに、想像力が足りずに。この世界に対して不備を用意した。その事実に始まり、考え得る対応策のいくつかが書かれていた。恐らくは、ミズキリが、若しくは創造神辺りが何か吹き込んだに違いないのだが、そこにはオユキに頼みたいことがあると、そのように書かれていたものだ。勿論、聞く義理は無いのだがただ、まぁ、色々と。オユキとしても、考える事があったため、そのうちのいくつかは引き受けてみようかと、そう考えが変わっているのだ。
「ま、そりゃそうだ。ったく、本当にどうしてこうなったんだが。」
「それこそ、過去からの事でしょうから。」
さて、長く生きている者達同士で、何やら思うところがあるようで。
「では、通して頂いても構いませんか。」
「ああ、そうだな。」
オユキとしては、そちらはそちらで存分に話し合ってくれとそう言うしかない。
開けられた先を覗き込んでみれば、どうやら先ごろと変わらない様子で門がたたずんでいる。変わったことと言えば、周囲をこうして覆われて内部にしてもあちらこちらに趣向を凝らした飾りがなされていること位。王都の物ともまた違う、異空と流離を司る神に仕える者達がいるからか、実に華やいだ様子になっている。側には恐らくフスカに言われているのだろう。翼人種の一人が、何処かぼんやりとした様子で本などを片手にのんびりとしている。
「成程。こうなりましたか。」
「まぁ、そうだな。」
そして、内部の様子はオユキの目から見れば実に色々と変わっている。門の周囲には、以前に見た系統樹らしきものが浮かんでいるし、そのどれもがオユキが理解できるものでもない。不可思議な文様が、創造神を示すと聞かされている場所からさらにいくつか枝分かれして。恐らく上に続いている部分については、かつての世界の創造神と呼んでも良い相手だろう。そこから伸びているいくつかの線に連なっているのが、さて何を示すのやら。
「どうにも、色々と気になるところはありますがまた後程としましょうか。」
「ま、それがいいだろうな。」
さて、このアーサーなる人物にロザリア司祭。どちらも、一体どれだけの物が見えているのか。戦と武技から連なる座は、オユキはいくつかしか見えないが、それにしてもどれがどの柱、しいて言うならば神の使いと言えばいいだろうか、そういった存在がどれなのか分かりはしない。
「ところで、アイリスさんの祖霊なのですが。」
「あー、それならあれだな。見えてるかは分からないが、あの上から伸びている一つ、戦と武技の神、それから月と安息の神との間に伸びて来てるだろ。」
「ああ、成程。」
さて、そう言われてもどれの事だかオユキには分からない物だ。いくつか、言われたところにまっすぐ伸びてきている経路がある。そのどれを指しているのだろうかと、思わず首をかしげてしまう。
「オユキ様、あちらです。一際戦と武技に近く、その上に水と癒しを置いている。」
ロザリアからの言葉に、オユキは簡単に辺りを付ける。確かに、そうした位置にあるのは、オユキの目には一つだけが映っている。どうやら、それがアイリスの祀る祖霊にあたる物らしい。何ともそれらしいものでは一切なく、実に複雑窮まる紋章がそこには誂えられている。五穀豊穣を顕す物、日華と月精を顕す物。どちらも存在せず、ただ何やらよくわからない文字らしきものが。
「あちらですか。どうにも、司るものが意匠として現れるものではないのですね。」
「いいえ、ありますよ。」
そして、ロザリア司祭が軽く手をたたけばいくらか追加で現れる。成程、確かにその様子を見れば納得できそうな、そうでもないような。共通の意匠があちらこちらに存在しているのだと、そう分かりはするのだが。
「ええと、あれの何処が。」
「おや、見えていませんか。」
「いえ、見えてはいるのですが、何分以前まで見ていた文字とは少々どころでは無く違いますから。」
「魔術文字なのですが、勉強はされていないのですか。」
さて、何やら本を読んでいた相手からも、オユキに対してもの言いたげな視線が送られてくるのだが、一先ずそちらには応えないでおく。
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