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20章 かつてのように
複雑な事
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「そういや、あんちゃん。」
「はい。どうかしましたか。」
さて、つんざくような怒鳴り声が響く中ではあるのだが、シグルドの言葉にトモエはただなんだろうかと応える。
「いやさ、オユキになんか贈り物とかしないのか。」
「ああ、それですか。」
「そういや、そうだな。なんか贈りたいなら、相談に乗らんこともないが。」
そうアベルにまで言われるのだが、トモエとしての言い分も当然あるというものだ。
「オユキさんは、己を飾ることをそこまで好みませんからね。贈れば、身に着けていただけるでしょうが、何分難しい所です。」
そう、トモエとしてはオユキを飾り立てたい気持ちはあるのだが、当の本人がそれを好んでいない。
どうした所で、オユキはもとよりそうしたことを好んでいないのだ。それを行ってくれと頼むのは、トモエのエゴでしかないだろう。オユキはオユキで、トモエはトモエなのだ。
「へー。」
「成程。」
さて、少年たちはそうして頷くものだが、アベルの方は何やら難しい顔。
「アベルさん、どうかしましたか。」
「いや、まぁ仕方が無い事ではあるのかもしれないが、お前の方でどうにかならんか。」
「そればかりは、どうしようもありませんね。」
オユキのその辺りのものぐさは、今に始まったことではない。過去にもあったことだが、それが今こちらで再発している。我儘が聞き届けられやすい環境だからだろうか、それとも体によるものか。その辺りはトモエもよくわからないのだが、どうにもそうした傾向がみられるというものだ。先の事にしても、それが顕著に出ている。元々一人でいる事を極端に嫌う素性ではあったのだが、こちらに来てからというもの、猶の事。
「オユキさんは、寂しがりですから。」
「あー、そんな感じだよな。あんちゃんに任せるって決めて、暫くイライラしてたし。」
「そうだな。」
「いや、お前らも気がついていたんだったらって、いやそれよりもだな。」
そして、アベルがため息をつく。
「それにもかかって来るんだがな、トモエ、お前何も贈っちゃいないだろ。」
「いえ、簡単な小物であったりは贈っていますが。」
さて、そう言われたところで、色々と難しい事ではあるのだ。
「あんちゃん、あれこれオユキによういしてるもんな。」
「そう、何ですよね。どれも喜んで頂けてはいますが、身に着けていただけてはいないのですよね。」
トモエとしても、やはりそこは気になっている。あれこれと用意してはいるのだが、喜ぶものは武器、それから食事だけ。後者は今となってはアルノーがいる為、トモエがなにをできる訳でもない。旅の間、あれやこれやと気にかけて食事の用意をして見せはしたのだが、やはりこうして屋敷に戻ってくるとアルノーに及ぶものではない。
「どうした所で、料理という面ではアルノーさんには及びませんから。」
「あー、アルノーのおっさんがなんか言ってた気もするけど。」
「そう言えば、何か言っていたな。」
「おや、そうですか。」
さて、何か言っていたとすれば以前にも言われたことに違いないだろう。オユキは生前から、特にトモエの料理を好んでいたのだから。ただ、その辺りにしてもトモエからアルノーに伝えてはいるのだが、オユキはどうにも違いが分かる者であるらしい。そして、トモエもそれを嬉しく思っているのだから、度し難いと言わざるを得ない。
なんにせよ、トモエの作る料理をいくつかオユキに与えなければいけない、という程ではないがその辺りは色々難しい。オユキはトモエが好きだし、トモエもオユキが好きなのは間違いが無い。その愛情の示し方が、色々と形を変えているだけではあるのだが。
「あー、なんつったっけ。落ち着く味とかなんとか。」
「確か、そうだな。」
「そう評価して頂けるのは有難いのですが、まぁ、素人料理ですから。」
色々と、そう、それこそ色々と。実にあれこれと習いはしたものだが、どうにもその域を出る物でも無かったし、オユキが好む物からは外れていった。トモエがより良いと思う物、それがオユキにとっては違うのだと分かったのは最初の十年が経った頃。そこからは、オユキの好みと己の好みをすり合わせて。
「いや、話が逸れてるぞ。」
「うん。何の話だっけか。」
そして、こうしてだらだらと話しながらも、アベルが適度に締める。
「オユキが装飾を身に着けない理由についてだがな、トモエ、お前から贈ってもいいんじゃないか。」
「それは、そうなのでしょうが。」
「オユキが好まないというのは分かるが、お前から好むように誘導して見せてはどうだ。」
さて、ここでそう言い出すのは一体なぜかと考えれば、成程、少年たちに向けてという事もあるらしい。そうであるならば、乗らない手も無いとトモエは考え、アベルに意見を求める。
「では、アベルさんからは何かありますか。」
「いや、正直な所難しいな。お前の方で、何か思いつく事は無いのか。」
「私ですか。」
さて、オユキが好む物となれば既に挙げた物以外に他に思いつくこともない。アベルからどうした物かと、そう話しを振られてもトモエにしても首をかしげるしかない。少年たちの手前、いい所を見せたいと考えてはいるのだが、こればかりは色々と難しい。どうにもオユキが好む物を、トモエが把握しきれていない事もある。オユキの方でも体が変わり、色々と好みが変わっているようでもあるのだから。
以前で言えば、今回のように不安定になる事は少なかった。いよいよホルモンバランスなども影響していそうなものだがと、そうトモエは考え始めているが、それが分かるのはいったい誰の手によるものか。
「正直、あまり。」
「それは、無いだろ。」
「いえ、オユキさんも生前とはかなり好みが変わっていますから。」
「そういや、あんちゃん言ってたもんなぁ。」
そう、これについては以前に口に出した事だ。
「いや、料理ではなくてな。こう、装飾品の類だな。」
「装飾ですか。」
さて、こうして流れを作ってあげれば、どうにもだれていた少年たちもなんだなんだと興味を見せる。特に強い興味を示しているのは、少女たちに何を送ろうかとぼんやりと考えていたからだろうか。それとも、他に気になる事があっての事か。トモエとしては、是非とも前者であって欲しいと考えてはいるのだが、ともかくアベルに向けて。
「オユキさんは、そうですね。私がお贈りした物であれば、なんであれ喜んで頂けるかとは思いますが。」
「いや、考えてもみろ。お前が微妙な品をあいつにあげるとするだろ。」
まぁ、それでもオユキは何も言わずにただトモエからの厚意を喜ぶだろうが、少年たちに向けて言っているに違いない以上は、確かにと、そう思うところではある。少年たちが少女たちに向けて、何やら身の丈に合わぬ品を贈ったとして、若しくは身に付けられぬ品を贈ったとして。さて、今後の関係にひびが入ると言えばいいのか、それを使ってまた時間を過ごせと言えばいいのか。どちらにしても、少年たちにとってはまさに今が試練の時であるし、贈られた少女たちにしても今後の試練が待ち受けている。
「そうですね。それは、良くありませんね。」
「あー、だとしたら、どうすんだ。」
「いや、それをトモエさんに聞いているのでは。」
「ま、それはそうなんだが、どうだ、贈り物にしたいのは何か思い当たるか。」
さて、そう話しを振られたところで。
「いえ、皆目見当もつきません。」
では、どうすればいいのか。そんな事は決まっている。少年たちを連れて、外に出かければよい。
「ですから、少し見に行きましょうか、町に。」
「ま、それしかないわな。」
ただ、少年達にしてみれば、何が何やらといった様子ではある。
それも仕方あるまい。彼らがこれまで買い物に出ていたのは、言われた物を買う為だろう。それ以外であれば、仮の為の道具を買おうとして。こうして、休日に自由気ままに買い物に出てという事など無かったに違いが無いのだから。いや、それこそ領都で、王都であれこれと機会はあったかもしれないが、こうして一緒にあれこれと選びに幾のは初めてかもしれない。
「では、お二人も、行きましょうか。」
「おー。」
「だが、あいつらは良いのか。」
そして、パウの言葉にアベルと顔を見合わせて振り返ってみはするのだが、そちらについてはメイとシェリアに任せておけば問題あるまいと、そう結論付ける。
「ええ、問題ありません。」
「だな、問題ない。」
さて、何がなにやらわからぬといった様子の少年たちを急かして、部屋を出ようとする。
「さ、では、行きましょうか。」
「ああ、じゃぁ、行くぞ。」
「うん、どうした、何かあったか。」
「あー、うん、まぁ、いいけどさぁ。」
さて、こうして何がなにやらわからぬといった様子の少年たちを連れて、さて、これからどこに向かおうか。そんな事を考える。オユキが気に入るものは、いくつか思い当たる物もあるのだが、そのどれもがやはり程々の品にしかなりはしない。こっそりと用意して、楽しませるのも一興ではあるのだがさてどうした物かとそう考えながらも、ただただ歩いて。
「そう言えば、アベルさんはアイリスさんには。」
「あー、まぁ、俺からも何か渡さなきゃまずいわな。」
「ええ、そうでしょうとも。」
さて、先に追い立てている少年達には聞こえないように、後ろを振り返って少し茶目っ気を出して。
「どうすっかな。」
そして、トモエと同じ悩みを、このアベルという人物も考えなければならないのだ。女心は秋の空とはよくいった物で、アベルがこれまで彼女に差し出したのはこうして暮らすための屋敷に間借りするための対価と、彼女が食べる食料だけ。それ以外の者に関しては、まぁ、確かに対価は頂いている。しかし、それだけと言えばそれだけだ。彼自身が彼女に対して、何かをしたいというのであれば止めるまでも無いだろうと。
「どうするも何も、先ほどご自身で言っていたいたようにも思いますが。」
「あー、装飾品の類が。」
「ええ、アイリスさんにも、必要でしょうから。」
さて、それをこの人物が送っていいのかどうなのか。それすらもアベルに任せるしかないのが、現在の状況なのだ。少年たちに比べれば、大人組はなかなかどうして難しい状況でもある。オユキの方は、まぁ、トモエがどうにかするとして、アイリスに関してはトモエもアベルに任せてしまいたいのだ。
「はい。どうかしましたか。」
さて、つんざくような怒鳴り声が響く中ではあるのだが、シグルドの言葉にトモエはただなんだろうかと応える。
「いやさ、オユキになんか贈り物とかしないのか。」
「ああ、それですか。」
「そういや、そうだな。なんか贈りたいなら、相談に乗らんこともないが。」
そうアベルにまで言われるのだが、トモエとしての言い分も当然あるというものだ。
「オユキさんは、己を飾ることをそこまで好みませんからね。贈れば、身に着けていただけるでしょうが、何分難しい所です。」
そう、トモエとしてはオユキを飾り立てたい気持ちはあるのだが、当の本人がそれを好んでいない。
どうした所で、オユキはもとよりそうしたことを好んでいないのだ。それを行ってくれと頼むのは、トモエのエゴでしかないだろう。オユキはオユキで、トモエはトモエなのだ。
「へー。」
「成程。」
さて、少年たちはそうして頷くものだが、アベルの方は何やら難しい顔。
「アベルさん、どうかしましたか。」
「いや、まぁ仕方が無い事ではあるのかもしれないが、お前の方でどうにかならんか。」
「そればかりは、どうしようもありませんね。」
オユキのその辺りのものぐさは、今に始まったことではない。過去にもあったことだが、それが今こちらで再発している。我儘が聞き届けられやすい環境だからだろうか、それとも体によるものか。その辺りはトモエもよくわからないのだが、どうにもそうした傾向がみられるというものだ。先の事にしても、それが顕著に出ている。元々一人でいる事を極端に嫌う素性ではあったのだが、こちらに来てからというもの、猶の事。
「オユキさんは、寂しがりですから。」
「あー、そんな感じだよな。あんちゃんに任せるって決めて、暫くイライラしてたし。」
「そうだな。」
「いや、お前らも気がついていたんだったらって、いやそれよりもだな。」
そして、アベルがため息をつく。
「それにもかかって来るんだがな、トモエ、お前何も贈っちゃいないだろ。」
「いえ、簡単な小物であったりは贈っていますが。」
さて、そう言われたところで、色々と難しい事ではあるのだ。
「あんちゃん、あれこれオユキによういしてるもんな。」
「そう、何ですよね。どれも喜んで頂けてはいますが、身に着けていただけてはいないのですよね。」
トモエとしても、やはりそこは気になっている。あれこれと用意してはいるのだが、喜ぶものは武器、それから食事だけ。後者は今となってはアルノーがいる為、トモエがなにをできる訳でもない。旅の間、あれやこれやと気にかけて食事の用意をして見せはしたのだが、やはりこうして屋敷に戻ってくるとアルノーに及ぶものではない。
「どうした所で、料理という面ではアルノーさんには及びませんから。」
「あー、アルノーのおっさんがなんか言ってた気もするけど。」
「そう言えば、何か言っていたな。」
「おや、そうですか。」
さて、何か言っていたとすれば以前にも言われたことに違いないだろう。オユキは生前から、特にトモエの料理を好んでいたのだから。ただ、その辺りにしてもトモエからアルノーに伝えてはいるのだが、オユキはどうにも違いが分かる者であるらしい。そして、トモエもそれを嬉しく思っているのだから、度し難いと言わざるを得ない。
なんにせよ、トモエの作る料理をいくつかオユキに与えなければいけない、という程ではないがその辺りは色々難しい。オユキはトモエが好きだし、トモエもオユキが好きなのは間違いが無い。その愛情の示し方が、色々と形を変えているだけではあるのだが。
「あー、なんつったっけ。落ち着く味とかなんとか。」
「確か、そうだな。」
「そう評価して頂けるのは有難いのですが、まぁ、素人料理ですから。」
色々と、そう、それこそ色々と。実にあれこれと習いはしたものだが、どうにもその域を出る物でも無かったし、オユキが好む物からは外れていった。トモエがより良いと思う物、それがオユキにとっては違うのだと分かったのは最初の十年が経った頃。そこからは、オユキの好みと己の好みをすり合わせて。
「いや、話が逸れてるぞ。」
「うん。何の話だっけか。」
そして、こうしてだらだらと話しながらも、アベルが適度に締める。
「オユキが装飾を身に着けない理由についてだがな、トモエ、お前から贈ってもいいんじゃないか。」
「それは、そうなのでしょうが。」
「オユキが好まないというのは分かるが、お前から好むように誘導して見せてはどうだ。」
さて、ここでそう言い出すのは一体なぜかと考えれば、成程、少年たちに向けてという事もあるらしい。そうであるならば、乗らない手も無いとトモエは考え、アベルに意見を求める。
「では、アベルさんからは何かありますか。」
「いや、正直な所難しいな。お前の方で、何か思いつく事は無いのか。」
「私ですか。」
さて、オユキが好む物となれば既に挙げた物以外に他に思いつくこともない。アベルからどうした物かと、そう話しを振られてもトモエにしても首をかしげるしかない。少年たちの手前、いい所を見せたいと考えてはいるのだが、こればかりは色々と難しい。どうにもオユキが好む物を、トモエが把握しきれていない事もある。オユキの方でも体が変わり、色々と好みが変わっているようでもあるのだから。
以前で言えば、今回のように不安定になる事は少なかった。いよいよホルモンバランスなども影響していそうなものだがと、そうトモエは考え始めているが、それが分かるのはいったい誰の手によるものか。
「正直、あまり。」
「それは、無いだろ。」
「いえ、オユキさんも生前とはかなり好みが変わっていますから。」
「そういや、あんちゃん言ってたもんなぁ。」
そう、これについては以前に口に出した事だ。
「いや、料理ではなくてな。こう、装飾品の類だな。」
「装飾ですか。」
さて、こうして流れを作ってあげれば、どうにもだれていた少年たちもなんだなんだと興味を見せる。特に強い興味を示しているのは、少女たちに何を送ろうかとぼんやりと考えていたからだろうか。それとも、他に気になる事があっての事か。トモエとしては、是非とも前者であって欲しいと考えてはいるのだが、ともかくアベルに向けて。
「オユキさんは、そうですね。私がお贈りした物であれば、なんであれ喜んで頂けるかとは思いますが。」
「いや、考えてもみろ。お前が微妙な品をあいつにあげるとするだろ。」
まぁ、それでもオユキは何も言わずにただトモエからの厚意を喜ぶだろうが、少年たちに向けて言っているに違いない以上は、確かにと、そう思うところではある。少年たちが少女たちに向けて、何やら身の丈に合わぬ品を贈ったとして、若しくは身に付けられぬ品を贈ったとして。さて、今後の関係にひびが入ると言えばいいのか、それを使ってまた時間を過ごせと言えばいいのか。どちらにしても、少年たちにとってはまさに今が試練の時であるし、贈られた少女たちにしても今後の試練が待ち受けている。
「そうですね。それは、良くありませんね。」
「あー、だとしたら、どうすんだ。」
「いや、それをトモエさんに聞いているのでは。」
「ま、それはそうなんだが、どうだ、贈り物にしたいのは何か思い当たるか。」
さて、そう話しを振られたところで。
「いえ、皆目見当もつきません。」
では、どうすればいいのか。そんな事は決まっている。少年たちを連れて、外に出かければよい。
「ですから、少し見に行きましょうか、町に。」
「ま、それしかないわな。」
ただ、少年達にしてみれば、何が何やらといった様子ではある。
それも仕方あるまい。彼らがこれまで買い物に出ていたのは、言われた物を買う為だろう。それ以外であれば、仮の為の道具を買おうとして。こうして、休日に自由気ままに買い物に出てという事など無かったに違いが無いのだから。いや、それこそ領都で、王都であれこれと機会はあったかもしれないが、こうして一緒にあれこれと選びに幾のは初めてかもしれない。
「では、お二人も、行きましょうか。」
「おー。」
「だが、あいつらは良いのか。」
そして、パウの言葉にアベルと顔を見合わせて振り返ってみはするのだが、そちらについてはメイとシェリアに任せておけば問題あるまいと、そう結論付ける。
「ええ、問題ありません。」
「だな、問題ない。」
さて、何がなにやらわからぬといった様子の少年たちを急かして、部屋を出ようとする。
「さ、では、行きましょうか。」
「ああ、じゃぁ、行くぞ。」
「うん、どうした、何かあったか。」
「あー、うん、まぁ、いいけどさぁ。」
さて、こうして何がなにやらわからぬといった様子の少年たちを連れて、さて、これからどこに向かおうか。そんな事を考える。オユキが気に入るものは、いくつか思い当たる物もあるのだが、そのどれもがやはり程々の品にしかなりはしない。こっそりと用意して、楽しませるのも一興ではあるのだがさてどうした物かとそう考えながらも、ただただ歩いて。
「そう言えば、アベルさんはアイリスさんには。」
「あー、まぁ、俺からも何か渡さなきゃまずいわな。」
「ええ、そうでしょうとも。」
さて、先に追い立てている少年達には聞こえないように、後ろを振り返って少し茶目っ気を出して。
「どうすっかな。」
そして、トモエと同じ悩みを、このアベルという人物も考えなければならないのだ。女心は秋の空とはよくいった物で、アベルがこれまで彼女に差し出したのはこうして暮らすための屋敷に間借りするための対価と、彼女が食べる食料だけ。それ以外の者に関しては、まぁ、確かに対価は頂いている。しかし、それだけと言えばそれだけだ。彼自身が彼女に対して、何かをしたいというのであれば止めるまでも無いだろうと。
「どうするも何も、先ほどご自身で言っていたいたようにも思いますが。」
「あー、装飾品の類が。」
「ええ、アイリスさんにも、必要でしょうから。」
さて、それをこの人物が送っていいのかどうなのか。それすらもアベルに任せるしかないのが、現在の状況なのだ。少年たちに比べれば、大人組はなかなかどうして難しい状況でもある。オユキの方は、まぁ、トモエがどうにかするとして、アイリスに関してはトモエもアベルに任せてしまいたいのだ。
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