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20章 かつてのように
今後は
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理屈は分かるからこそ、腹立たしい。
その結果を選択したのはオユキ自身であるからこそ、猶の事。
「私の理解が由縁とはいえ。」
「こちらとしても、其の方の語った目的だ、それが。」
「ええ。道中もと捉える事が出来るでしょう。間違いという訳でもありません。」
アベルとは、幾度も移動を共にしたことがある。そして、道中も一部は楽しんでいる様子を見たからこそという事なのだ。
「余計な警戒が、今回の事を招きましたか。」
「ですが、オユキ様。」
そして、シェリアからは何処かアベルを責める様な視線が。
「言わんとすることはわかるが、それこそ私の責と言われれば一部は納得もしよう。」
「アベル殿の立場では、色々と難しかろう。アベル殿がいればこそ、シェリア、其の方はそうして侍る事が出来たわけでもある。」
「そういう訳ですから、アベルさんを表立って責める事も難しいのですよね。」
意趣返しは行うつもりだと、ただ言外にオユキはそう言い放ってため息一つ。
旬が近いという事だろう。レモンがふんだんに使われたタルトを、少々行儀が悪いと思いながらも不必要に細かく刻んで口に運ぶ。香り高く、仄かな苦みも本来であればアクセントとして楽しめたのだろうが、己の感情がその苦みを痛みのように誤認させる。
「ただ、アベルさんがその行動をとったという事であれば、根回しはそこまで難しくなさそうなのが救いですか。」
「使者の選定については。」
「ローレンツ様とシェリア様がお受けしてくださるなら、お二人に任せます。」
アベルが続ける前に、オユキがただ決まったこととして。
「お受けしてくださらないとなれば、また次を私は行くでしょう。その中で、他に頼める方を探すとして。」
「つまり。」
「はい。」
深々とため息をつくアベル。オユキは、トモエの見立てはどうかと視線を向ければ。
「オユキさんを軽んじる方に、オユキさんが得た大事をお任せするのは抵抗がありますね。」
今度の旅が、あまり楽しくなかった。その分かりやすい理由など、それ以上でもそれ以下でもない。アベルからの配慮はあった。それ以外からが無い。そして、アベルにしても護衛の統括として指揮を担っていたが、指揮官であるからこそあまりに明快な理由があり、退けられないとなれば現場の声を優先する。上意下達、如何に封建制制とはいえ限度というものがある。一応は、厳しい環境を切り抜けるために強固な指導力が求められるためそうはなっている。
では、アベルにそれがあるかと言われれば、当然違う。
あくまで元騎士団長。そして、今は他国の公爵家。
とかく枕に元とつく人間であり、扱いに困る存在だ。無理も出来ない。
そうした状況で、オユキやトモエが子爵家として家格を得た上で、王命を携えて他国に向かうというのであれば、そこに対する至上命題は、やはり王命だ。オユキとトモエに対しては、お前たちも神国に忠を捧げたのだろうと、そうした同調が求められることになる。
「軽んじたわけでは無いのだが。」
「護衛の振る舞いとして、ええ、こちらで見た幾人の方は対象の心にも配慮を頂けましたが。」
「アベル様。後程先の隣国へ同道した者達の名簿を頂けますか。」
「あの者達の振る舞いが間違っていたわけでもない。」
近衛、いよいよ側につくものとして主人が心安く過ごせるようにと、それを当然とするシェリアがトモエの言葉にいよいよ分かりやすい気迫をアベルに向けたりもするが。
「その辺りは置いておきましょう。こうした位置を取るために動きながらも、他との伝手をあまり作らなかった。ただそれだけですから。」
あまり手を広げても煩わしくなるものだが、それでも最低限はというものだ。
「ですが、オユキさん。」
「いえ、あまりに偶然に頼る場面が多かったわけですから、十分であったかといわっれば否ですね。」
「まぁ、レジス候にしてもラスト子爵にしても、派閥が違うからな。」
「ブーランジュ公爵もですね。」
後は、レイン伯爵であったり、ハイム侯爵であったり。その両家の者達に、そっと視線を向けたりもするが。
「生憎と私たちがお側にとのことで、当主は。」
「これで当主までもと望めば、他から釘も刺されよう。」
そして、そうしたことを望んでいる他の家からも色々と人材を供出しようと、そうした動きもあったのだ。ただ、それら一切を難しいものとすることとして、オユキとトモエが神殿を巡って回るつもりだという話が合った。
であれば、人を出し、そばに置こうとしたとして、屋敷に主人は基本的にいない。では供回りとして戦力をと考えるのかといわれれば、今後は何処の量でも戦力の確保が急がれるため、難しい。所詮は一子爵家。己の領に将来の影を作ってまでと、そうなる事だろう。戦力という意味では、それこそアベルの存在が比較対象となるため、難しいというのも当然理由としてあったのだろう。
「ミズキリに言わせれば、急いだ結果無理が出た。それ以上でも、それ以下でも無いでしょう。」
そして、諸々の状況を一言で纏めるとすれば、まさにそれ以上の物は無い。
「それにしても、アベルさんの口ぶりであれば、私どもを先に戻す予定があったようですが。」
「異邦人で、こちらに来てようやく一年といった相手だ。正直持つとは思っていなかった。」
それこそ、旅の助けとなる奇跡が無ければ、いよいよどうにもならなかっただろう。
「オユキさんもトモエさんも、移動をそこまで嫌ってはいないと考えていましたが。」
「嫌いではありません。」
「そう、ですね。カナリアさんとも一緒に移動しましたが、河沿いの町へ行ったときなどは、本当に楽しいものでした。」
魔物が容赦なく襲ってくる場で一晩を過ごさねばならぬ。初めて、改めてそれを体験した事で、過剰に疲労を感じたりもしたがそれも楽しい事と出来たのだ。
「箱に押し込められて運ばれて。では、それを好めと言われても難しいものでしょう。」
「馬車の中は落ち着いていましたし、オユキさんは気にしないと考えていたのですが。」
同行していたカナリアからは、道中にしてもあれこれと思い思いに思索で遊んでいたこともあり、そんなに悪い時間と感じていなかったと。
「貴女は、まぁそうでしょうね。オユキは無理よ。トモエも。」
「ええと。」
「そこまで慣れていないのよ、自分を誰かに任せる事に。」
「その言い方では、語弊もありそうなものですが、生憎と我が強い自覚はありますので。」
どうにも、責任といえばいいのか、何処に原因があったかと言えばいいのか。話自体は既に着地しており、今はシェリアとローレンツがどう返答するかを待っている間に、こうした席らしい言葉遊びを行っているだけではあるが。互いに互いが打ち上げ、話題が着地しきらないように。そうして話を続けている。他に話すべきことが無いとは言わないが、今はまず決めてからでないとそちらも結局色々修正がいる。話に基本的に入ってこないのは、面倒だと言わんばかりのアイリスと、ついていけないとあきらめ気味のイリアとカナリア。フスカは、何やらこの流れが何処に行きつくものかと楽し気に。アルノーがいないため、他の異邦人二人にも誘いは出してみたのだが、生憎とどちらもアルノーが料理を供する場をより賑やかな物とするために。アイリスの機嫌がよろしくないのは、その場からアベルが無理に引き戻したことも原因だろう。
「待って頂く必要は、無いのですがな。」
「ええ。」
「これを命令とするのは、好みませんから。」
そして、待っているはずの両名も、時折割って入っては互いに投げ合って、どのように切り分けようかと遊んでいる中に混ざっていたのだ。
「時間が必要とも考えたのですが。」
「家との事も、今頼まれていることもあるだろう。」
両名とも、既に川沿いの町で新たな役割を得ようと動いているのだ。ではそこに別の物を、長い移動を当然とするような新しい仕事を引き受けてくれと頼んだところで、難しいだろうとオユキとアベルから。
「お二方とも、頼まれることを待ってくださっていたわけですから。」
但し、トモエからは。
「ですので、この場で返事をしたくないのは、正式な物としてという事でしょう。」
「その、それは。」
「オユキさん。既にお二人とも覚悟は示してくださいました。ならば、それを疑うのは礼を欠く振る舞いです。」
目を見れば分かる、しばしばそのように言われるものだが、この二人はそれ以上に分かりやすい形で示している。オユキはそうした進退を聞いて、各々がなどと言っていたものだが仮にそうであるなら、シェリアはいよいよ違う形を選んだ。ローレンツも河沿いの町を、無理に枠を作らんければならない場所を選んだりはしなかった。
どうにも、このあたりはオユキの悪癖としか言えない物ではあるが。
「その方らは、本当に良いのか。」
「良いも何も、この上ない機会です。」
「うむ。こちらで暮らすものとして、さてこの度の、これまでの奇跡。その契機を下さったオユキ様に返せるものがあるというのならば、老骨の最期の仕事としてこれ以上の物はありませんからな。」
ただ、まぁ、そうしてすでにきめているふたりとしては、オユキやトモエよりもよほど伝統や格式に慣れた相手は、正式に任じる手筈の話はいつされるのかと待っていたに過ぎない。どうやら、それを決めるために、今回の責任、こうしてオユキが選択をするに至った動機を何処に着地させるのかを話し合っているのだろうと。
ここでも、理解不足による、無為が。
「意外と、オユキさんも人の事を言えない程度には、苦手ですからね。」
「お前らは、本当に良く分からんな。」
「さて、己の事などいくつになっても分からぬ事ばかり。私たちでは、己の背中にあるものも、内にあるものも見ることは出来ませんから。」
「金言というのか、韜晦と言えばいいのか。」
トモエのどこかのらりくらりとした言い回しに、アベルが腕を組んだところで、今度はオユキから。
「お受けしてくださるという意思に、まずは感謝を。ですが、正式な物となると。王都ででしょうか。」
そして、受けると決め、後は待つのだと決めた二人からお任せしますと。そして、それにはオユキが今度は頭を悩ませることに。
その結果を選択したのはオユキ自身であるからこそ、猶の事。
「私の理解が由縁とはいえ。」
「こちらとしても、其の方の語った目的だ、それが。」
「ええ。道中もと捉える事が出来るでしょう。間違いという訳でもありません。」
アベルとは、幾度も移動を共にしたことがある。そして、道中も一部は楽しんでいる様子を見たからこそという事なのだ。
「余計な警戒が、今回の事を招きましたか。」
「ですが、オユキ様。」
そして、シェリアからは何処かアベルを責める様な視線が。
「言わんとすることはわかるが、それこそ私の責と言われれば一部は納得もしよう。」
「アベル殿の立場では、色々と難しかろう。アベル殿がいればこそ、シェリア、其の方はそうして侍る事が出来たわけでもある。」
「そういう訳ですから、アベルさんを表立って責める事も難しいのですよね。」
意趣返しは行うつもりだと、ただ言外にオユキはそう言い放ってため息一つ。
旬が近いという事だろう。レモンがふんだんに使われたタルトを、少々行儀が悪いと思いながらも不必要に細かく刻んで口に運ぶ。香り高く、仄かな苦みも本来であればアクセントとして楽しめたのだろうが、己の感情がその苦みを痛みのように誤認させる。
「ただ、アベルさんがその行動をとったという事であれば、根回しはそこまで難しくなさそうなのが救いですか。」
「使者の選定については。」
「ローレンツ様とシェリア様がお受けしてくださるなら、お二人に任せます。」
アベルが続ける前に、オユキがただ決まったこととして。
「お受けしてくださらないとなれば、また次を私は行くでしょう。その中で、他に頼める方を探すとして。」
「つまり。」
「はい。」
深々とため息をつくアベル。オユキは、トモエの見立てはどうかと視線を向ければ。
「オユキさんを軽んじる方に、オユキさんが得た大事をお任せするのは抵抗がありますね。」
今度の旅が、あまり楽しくなかった。その分かりやすい理由など、それ以上でもそれ以下でもない。アベルからの配慮はあった。それ以外からが無い。そして、アベルにしても護衛の統括として指揮を担っていたが、指揮官であるからこそあまりに明快な理由があり、退けられないとなれば現場の声を優先する。上意下達、如何に封建制制とはいえ限度というものがある。一応は、厳しい環境を切り抜けるために強固な指導力が求められるためそうはなっている。
では、アベルにそれがあるかと言われれば、当然違う。
あくまで元騎士団長。そして、今は他国の公爵家。
とかく枕に元とつく人間であり、扱いに困る存在だ。無理も出来ない。
そうした状況で、オユキやトモエが子爵家として家格を得た上で、王命を携えて他国に向かうというのであれば、そこに対する至上命題は、やはり王命だ。オユキとトモエに対しては、お前たちも神国に忠を捧げたのだろうと、そうした同調が求められることになる。
「軽んじたわけでは無いのだが。」
「護衛の振る舞いとして、ええ、こちらで見た幾人の方は対象の心にも配慮を頂けましたが。」
「アベル様。後程先の隣国へ同道した者達の名簿を頂けますか。」
「あの者達の振る舞いが間違っていたわけでもない。」
近衛、いよいよ側につくものとして主人が心安く過ごせるようにと、それを当然とするシェリアがトモエの言葉にいよいよ分かりやすい気迫をアベルに向けたりもするが。
「その辺りは置いておきましょう。こうした位置を取るために動きながらも、他との伝手をあまり作らなかった。ただそれだけですから。」
あまり手を広げても煩わしくなるものだが、それでも最低限はというものだ。
「ですが、オユキさん。」
「いえ、あまりに偶然に頼る場面が多かったわけですから、十分であったかといわっれば否ですね。」
「まぁ、レジス候にしてもラスト子爵にしても、派閥が違うからな。」
「ブーランジュ公爵もですね。」
後は、レイン伯爵であったり、ハイム侯爵であったり。その両家の者達に、そっと視線を向けたりもするが。
「生憎と私たちがお側にとのことで、当主は。」
「これで当主までもと望めば、他から釘も刺されよう。」
そして、そうしたことを望んでいる他の家からも色々と人材を供出しようと、そうした動きもあったのだ。ただ、それら一切を難しいものとすることとして、オユキとトモエが神殿を巡って回るつもりだという話が合った。
であれば、人を出し、そばに置こうとしたとして、屋敷に主人は基本的にいない。では供回りとして戦力をと考えるのかといわれれば、今後は何処の量でも戦力の確保が急がれるため、難しい。所詮は一子爵家。己の領に将来の影を作ってまでと、そうなる事だろう。戦力という意味では、それこそアベルの存在が比較対象となるため、難しいというのも当然理由としてあったのだろう。
「ミズキリに言わせれば、急いだ結果無理が出た。それ以上でも、それ以下でも無いでしょう。」
そして、諸々の状況を一言で纏めるとすれば、まさにそれ以上の物は無い。
「それにしても、アベルさんの口ぶりであれば、私どもを先に戻す予定があったようですが。」
「異邦人で、こちらに来てようやく一年といった相手だ。正直持つとは思っていなかった。」
それこそ、旅の助けとなる奇跡が無ければ、いよいよどうにもならなかっただろう。
「オユキさんもトモエさんも、移動をそこまで嫌ってはいないと考えていましたが。」
「嫌いではありません。」
「そう、ですね。カナリアさんとも一緒に移動しましたが、河沿いの町へ行ったときなどは、本当に楽しいものでした。」
魔物が容赦なく襲ってくる場で一晩を過ごさねばならぬ。初めて、改めてそれを体験した事で、過剰に疲労を感じたりもしたがそれも楽しい事と出来たのだ。
「箱に押し込められて運ばれて。では、それを好めと言われても難しいものでしょう。」
「馬車の中は落ち着いていましたし、オユキさんは気にしないと考えていたのですが。」
同行していたカナリアからは、道中にしてもあれこれと思い思いに思索で遊んでいたこともあり、そんなに悪い時間と感じていなかったと。
「貴女は、まぁそうでしょうね。オユキは無理よ。トモエも。」
「ええと。」
「そこまで慣れていないのよ、自分を誰かに任せる事に。」
「その言い方では、語弊もありそうなものですが、生憎と我が強い自覚はありますので。」
どうにも、責任といえばいいのか、何処に原因があったかと言えばいいのか。話自体は既に着地しており、今はシェリアとローレンツがどう返答するかを待っている間に、こうした席らしい言葉遊びを行っているだけではあるが。互いに互いが打ち上げ、話題が着地しきらないように。そうして話を続けている。他に話すべきことが無いとは言わないが、今はまず決めてからでないとそちらも結局色々修正がいる。話に基本的に入ってこないのは、面倒だと言わんばかりのアイリスと、ついていけないとあきらめ気味のイリアとカナリア。フスカは、何やらこの流れが何処に行きつくものかと楽し気に。アルノーがいないため、他の異邦人二人にも誘いは出してみたのだが、生憎とどちらもアルノーが料理を供する場をより賑やかな物とするために。アイリスの機嫌がよろしくないのは、その場からアベルが無理に引き戻したことも原因だろう。
「待って頂く必要は、無いのですがな。」
「ええ。」
「これを命令とするのは、好みませんから。」
そして、待っているはずの両名も、時折割って入っては互いに投げ合って、どのように切り分けようかと遊んでいる中に混ざっていたのだ。
「時間が必要とも考えたのですが。」
「家との事も、今頼まれていることもあるだろう。」
両名とも、既に川沿いの町で新たな役割を得ようと動いているのだ。ではそこに別の物を、長い移動を当然とするような新しい仕事を引き受けてくれと頼んだところで、難しいだろうとオユキとアベルから。
「お二方とも、頼まれることを待ってくださっていたわけですから。」
但し、トモエからは。
「ですので、この場で返事をしたくないのは、正式な物としてという事でしょう。」
「その、それは。」
「オユキさん。既にお二人とも覚悟は示してくださいました。ならば、それを疑うのは礼を欠く振る舞いです。」
目を見れば分かる、しばしばそのように言われるものだが、この二人はそれ以上に分かりやすい形で示している。オユキはそうした進退を聞いて、各々がなどと言っていたものだが仮にそうであるなら、シェリアはいよいよ違う形を選んだ。ローレンツも河沿いの町を、無理に枠を作らんければならない場所を選んだりはしなかった。
どうにも、このあたりはオユキの悪癖としか言えない物ではあるが。
「その方らは、本当に良いのか。」
「良いも何も、この上ない機会です。」
「うむ。こちらで暮らすものとして、さてこの度の、これまでの奇跡。その契機を下さったオユキ様に返せるものがあるというのならば、老骨の最期の仕事としてこれ以上の物はありませんからな。」
ただ、まぁ、そうしてすでにきめているふたりとしては、オユキやトモエよりもよほど伝統や格式に慣れた相手は、正式に任じる手筈の話はいつされるのかと待っていたに過ぎない。どうやら、それを決めるために、今回の責任、こうしてオユキが選択をするに至った動機を何処に着地させるのかを話し合っているのだろうと。
ここでも、理解不足による、無為が。
「意外と、オユキさんも人の事を言えない程度には、苦手ですからね。」
「お前らは、本当に良く分からんな。」
「さて、己の事などいくつになっても分からぬ事ばかり。私たちでは、己の背中にあるものも、内にあるものも見ることは出来ませんから。」
「金言というのか、韜晦と言えばいいのか。」
トモエのどこかのらりくらりとした言い回しに、アベルが腕を組んだところで、今度はオユキから。
「お受けしてくださるという意思に、まずは感謝を。ですが、正式な物となると。王都ででしょうか。」
そして、受けると決め、後は待つのだと決めた二人からお任せしますと。そして、それにはオユキが今度は頭を悩ませることに。
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