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19章 久しぶりの日々
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実際の狩猟者としては、果たしてどうなのかと思わないでも無いのだが。辺りに散乱する狩りの成果は頼める人手に任せた上で久しぶりに草原に腰を下ろして、食事に手を付ける。これまでであれば、いよいよそのままであったが、今はオユキがそれを許される立場でも無い為、敷物はシェリアが持ち運んできたものを使ってとなっているが。
「皆さん、確かな成長を見せてくれたことは、非常に嬉しいものでした。」
そして、例の如く食事に手を付けながらのんびりと総評が行われる。
「ま、なら、よかったって思うさ。」
「ええ。離れていた間の確かな鍛錬、その成果はきちんと出ていましたよ。」
直すべき部分は、既に個別に伝えている。だからこそ、この場ではトモエも基本的に褒めるばかり。
「ただ、何度も話してはいますが私の教え、それが抱える問題がやはり出る形にもなっているわけです。」
「あー、攻撃をかわすようにってやつか。」
「いえ、基本的に一人でというものです。」
一対多数、その教えはある。しかし、多人数で事に当たるという前提が存在しない。だからこそ、教えの無い集団での役割分担というところで、少年たちの独自の試行錯誤が求められ、そこで負担が生まれているから生まれた現状だというのが、トモエの結論となる。
「でも、トモエさんもオユキちゃんも、アイリスさんと一緒に動いたり、アベルさんとも。」
「相手が上手であり、こちらも相手が格下。そこで生まれた余裕があるからできているだけです。丁度いいですね、あちらのファルコさんの戦い方を。」
学校では学んでいないと言いながらも、当然そこでだけで学習をする訳でもない。公爵家の教育を受けたファルコは当然下地があり、実施で行軍を始め、アベルに少人数の指揮を習ったりもしていた。そちらはそちらで確かな成果が出ているというものだ。そうして座学を行いながらも、きちんと時間を作ってトモエやオユキの前で素振りに勤しんだりと。正直基礎体力という意味では、この少年達とは流石に比べ物にならない。
「あー、いや、あれは流石に。」
「少し話には聞いてみたが。」
少年達も視線を向ける先には、忙しなく動き回りながら、あちこちで声をかけ続けるファルコの姿。指揮官として動きながら、周囲の不足を補い続けている。ではそれを目指せるのかと言われれば、知識が足りない。それがまず真っ先に。
「何もそっくりそのままとはいきませんよ。ただ、集団で戦う、それを前提としたときには学ぶべきこともあるという訳です。そして、それは流石に私たちの知るところではありませんから。」
「メイ様に頼んでみれば、教師役の方をご紹介頂けるかとも思いますが。」
「えっと、今は騎士様はみんな忙しいみたいで、まずは座学なら本をって言われたんですけど。」
「正直書いてある事全く分かんなくってさ。」
現状リース伯爵領がという訳でなく、リース伯爵家の抱える戦力はかなり忙しくしている。
騎士としての仕事かと言われれば、かつての世界と比べれば首をかしげたくもなるが、こちらの世界で開拓や町の拡張を行うとなれば戦闘能力が相応に高いものの仕事になる。積み荷を運ぶことに関しては物理に真っ向から喧嘩を売る馬車というものがあるが、それを壁や一時的な集積場で上げ下げしようと思えばやはり加護を持つ人間が求められる。結果として、騎士達は今ダンジョンから得た金属や石材を周囲に運び、そしてそれぞれの先で積み上げてと。
「文字よりも、語彙が必要になるでしょうから。それに教育課程で使われる物であれば、前提知識は省略されているでしょう。」
「そういうものなんですか。」
「はい。いちいちすべてを書いていれば、とても持ち運びしたいと思えない厚さになるでしょうから。」
辞書で調べれば方が付くような、別で纏めるべき資料まですべて盛り込めば、それはさぞ愉快な情報量の書籍が出来上がるだろう。
「ただ、此処で示したかったのはやはり私の知らぬ事、教えられぬ事。それを学べばああして行えることも増えるという事です。やはり、私もああした事はよく知りませんから。」
「ええと、よく知らないトモエさんから見て、私たちの戦い方って。」
「いえ、やはりよくわからないので、そちらは評価の仕様がありません。ただ、皆さんで動いている時についたであろう癖、それを良くない物と捉えるのが当流派の前提にあるのです。」
草原を抜ける風は、初夏の熱を確かに感じさせる。常春の国、去年は夏でもそこまで気温が上がる事は無かったのだが、今となっては炎の化身と呼ばわれるほどの祖を持つ種族がすぐそばに引っ越してきたこともある。オユキが少々閉口せざるを得ないほど、回復に手間取り、こうして少し運動するだけで分かりやすく疲労するほどの原因が。種族間での問題という程ではなく、居を移す分かりやすい要因になり、周囲が使える手札になりやすい為、オユキは疲労が残っていると言っているが、疲労が回復しない要因というのが、分かりやすくあるのだ。とにかく、オユキは翼人とは相性が悪い。カナリアが問題なくそばに置けるのは、彼女自身が祖から連なる力よりも、他を求め続けた結果に過ぎない。水と癒しから奇跡を得るほどに、彼女の抱える火というのは抑えられている。
「それって。」
「繰り返しになりますが、やはり一人で戦う事が前提となっています。だからこそ、皆で戦うときに生まれる役割分担、それをよくない物と捉える訳です。」
「でも、一人だけだと難しいですよ。」
「ああ。だが、前にも聞かれた時に応えた。それでもと。」
パウの言葉は、まぁ、それなりに懐かしさを覚える程前の事。
「どちらも必要に応じて切り替えられる事が肝要です。しかし、皆さんではまだ早いですから。」
だからこそ、成長を喜びながらも、それはそれとして教えている事それに合わせる形で直すのだと。
「ま、相変わらず面倒をかけてるのは分かったさ。」
「もう、ジーク。」
「だから、ありがとな。んで、これからもよろしく。」
「ええ。勿論です。」
そして、微笑まし気に見る相手が周囲に多い中、とりあえずとばかりに持ち込んだ食事を終えれば、いよいよ鍛錬の為にと町に戻るため動き出す。このあたりは子供たちにしても実に慣れた物。オユキとトモエが立ち上がれば、それこそいつもの事だとばかりに準備を始める。
「この後は、狩猟者ギルドに久しぶりに顔を出しましょうか。」
「あんちゃんはともかく、オユキは全然来てないよな。」
「一応、相応の立場を得た事もありますから、仕事の邪魔をしてしまいかねませんから。」
曲がりなりにも子爵家当主であり、戦と武技の巫女だ。そんな人間が顔を出して、狩猟者ギルド側が何もしないという訳にもいかない。そして、もてなす為という訳でもなく、色々と都合の良い相手だからこそ、向こうも話したいことがあると待ち構えている事だろう。それを始めてしまえば、下手をすれば通常の業務に支障が出る程長い話になる。
「ですので、ご挨拶と、お誘いだけですね、私がするのは。」
そして、それを避けるにはやはりある程度の権限を持っている人間が、別の場所で事前の折衝を行うのが手っ取り早いのだ。組織の施設内にいれば、担当者を呼んで確認をという流れを避けられない。しかし、それ以外であれば、後日改めてとするのも理由付けが容易い。
「オユキちゃん、色々大変そうだよね。」
「私よりも、私の周囲の方の方がとは思いますが。」
「えっと、メイ様も機会があればって。」
「一応席は設ける予定がありますし、四阿を立てた折にはとも思いますが。」
そして、オユキは改めてシェリアに視線を投げる。今日は自分で荷物を運ばないでもよいからと、これまで抑えていたのだと言わんばかりに散々に優美な踊りを披露したカリンと話していたが、直ぐに気が付き返答が。いよいよ侍女としての仕事は、次の用意が整うまでの繋ぎでしかないというのに助かるものだ。
「木材と石材が町全体で不足していますので、そちらを自分で用意ができるのならと。」
「流石にダンジョンに顔を出すのは難しそうですから、木造で考えていただきましょうか。」
「オユキ様は、既に案があるご様子。」
「そうですね。聊かこちらの建造物と趣は異なりますが。」
さて、そうして話していれば、トモエの前に進み出る相手がいる。
オユキとしては、何となく見覚えがある程度。ただ、シグルドが何処かバツが悪そうにする様子を見れば、成程この相手が少年たちに挑もうと考えている相手なのだろう。
「今、構わないか。」
「ええ。構いませんよ。」
これまで突っかかって来た相手でもある、しかしシグルドがトモエに伺いを立てる程度には、改善が見られたのだと分かっている。だというのに、なぜ挑むのかと言われれば、トモエが怪我の心配をした理由というのも明確。勝つことを望んでいる。互いを試す為だけではなく。だからこそ、熱にあてられて加減を忘れる相手だ、お互いに。
「あんたの許可が無ければ、そいつは戦えないって言っててな。」
「ええ。それは教える物の責務です。師として代わりに、それを望んではいないのでしょう。」
「ああ。あんたは無理だ。今となっちゃ、そっちのガキだって無理なのは分かる。」
さて、オユキをさしてそう評することに、納得もあれば苛立ちもあるが。
「だがな、後から来た狩猟者の子供。それに負けるってのは、言わせたままにしちゃ置けない。」
「勝てませんよ。」
「それも分かるさ。」
だが、それでもと。
「俺らじゃ逃げるしかない魔物だって狩ってる。俺らを追い回す傭兵だって、こいつらの方が強いって認めてる。でもな、改めて前に進むと決めたからには、逃げちゃいけない事がある。」
「怪我をしますよ。以前私が腕を折ったでしょう。」
「それは、そいつだって変わらないだろ。」
トモエが許可に傾いていることが伝わっているのだろう。シグルドたちに挑もうと考えている4人の狩猟者たち。トモエが以前すげなくあしらい、オユキが己の老いを改めて自覚する要因となった相手。オユキは記憶に残していないが、トモエはその由縁があるからこそはっきりと覚えている。
「見た所、それは無いでしょう。それでも良いというのであれば。」
「ああ。負けたって良い。だが、諦めるつもりはもうないからな。」
さて、相手のその様子を喜んでいるシグルドに対して、師としてくれぐれもと言わねばならぬ事があるため、トモエとしても不安があるのだ。
「皆さん、確かな成長を見せてくれたことは、非常に嬉しいものでした。」
そして、例の如く食事に手を付けながらのんびりと総評が行われる。
「ま、なら、よかったって思うさ。」
「ええ。離れていた間の確かな鍛錬、その成果はきちんと出ていましたよ。」
直すべき部分は、既に個別に伝えている。だからこそ、この場ではトモエも基本的に褒めるばかり。
「ただ、何度も話してはいますが私の教え、それが抱える問題がやはり出る形にもなっているわけです。」
「あー、攻撃をかわすようにってやつか。」
「いえ、基本的に一人でというものです。」
一対多数、その教えはある。しかし、多人数で事に当たるという前提が存在しない。だからこそ、教えの無い集団での役割分担というところで、少年たちの独自の試行錯誤が求められ、そこで負担が生まれているから生まれた現状だというのが、トモエの結論となる。
「でも、トモエさんもオユキちゃんも、アイリスさんと一緒に動いたり、アベルさんとも。」
「相手が上手であり、こちらも相手が格下。そこで生まれた余裕があるからできているだけです。丁度いいですね、あちらのファルコさんの戦い方を。」
学校では学んでいないと言いながらも、当然そこでだけで学習をする訳でもない。公爵家の教育を受けたファルコは当然下地があり、実施で行軍を始め、アベルに少人数の指揮を習ったりもしていた。そちらはそちらで確かな成果が出ているというものだ。そうして座学を行いながらも、きちんと時間を作ってトモエやオユキの前で素振りに勤しんだりと。正直基礎体力という意味では、この少年達とは流石に比べ物にならない。
「あー、いや、あれは流石に。」
「少し話には聞いてみたが。」
少年達も視線を向ける先には、忙しなく動き回りながら、あちこちで声をかけ続けるファルコの姿。指揮官として動きながら、周囲の不足を補い続けている。ではそれを目指せるのかと言われれば、知識が足りない。それがまず真っ先に。
「何もそっくりそのままとはいきませんよ。ただ、集団で戦う、それを前提としたときには学ぶべきこともあるという訳です。そして、それは流石に私たちの知るところではありませんから。」
「メイ様に頼んでみれば、教師役の方をご紹介頂けるかとも思いますが。」
「えっと、今は騎士様はみんな忙しいみたいで、まずは座学なら本をって言われたんですけど。」
「正直書いてある事全く分かんなくってさ。」
現状リース伯爵領がという訳でなく、リース伯爵家の抱える戦力はかなり忙しくしている。
騎士としての仕事かと言われれば、かつての世界と比べれば首をかしげたくもなるが、こちらの世界で開拓や町の拡張を行うとなれば戦闘能力が相応に高いものの仕事になる。積み荷を運ぶことに関しては物理に真っ向から喧嘩を売る馬車というものがあるが、それを壁や一時的な集積場で上げ下げしようと思えばやはり加護を持つ人間が求められる。結果として、騎士達は今ダンジョンから得た金属や石材を周囲に運び、そしてそれぞれの先で積み上げてと。
「文字よりも、語彙が必要になるでしょうから。それに教育課程で使われる物であれば、前提知識は省略されているでしょう。」
「そういうものなんですか。」
「はい。いちいちすべてを書いていれば、とても持ち運びしたいと思えない厚さになるでしょうから。」
辞書で調べれば方が付くような、別で纏めるべき資料まですべて盛り込めば、それはさぞ愉快な情報量の書籍が出来上がるだろう。
「ただ、此処で示したかったのはやはり私の知らぬ事、教えられぬ事。それを学べばああして行えることも増えるという事です。やはり、私もああした事はよく知りませんから。」
「ええと、よく知らないトモエさんから見て、私たちの戦い方って。」
「いえ、やはりよくわからないので、そちらは評価の仕様がありません。ただ、皆さんで動いている時についたであろう癖、それを良くない物と捉えるのが当流派の前提にあるのです。」
草原を抜ける風は、初夏の熱を確かに感じさせる。常春の国、去年は夏でもそこまで気温が上がる事は無かったのだが、今となっては炎の化身と呼ばわれるほどの祖を持つ種族がすぐそばに引っ越してきたこともある。オユキが少々閉口せざるを得ないほど、回復に手間取り、こうして少し運動するだけで分かりやすく疲労するほどの原因が。種族間での問題という程ではなく、居を移す分かりやすい要因になり、周囲が使える手札になりやすい為、オユキは疲労が残っていると言っているが、疲労が回復しない要因というのが、分かりやすくあるのだ。とにかく、オユキは翼人とは相性が悪い。カナリアが問題なくそばに置けるのは、彼女自身が祖から連なる力よりも、他を求め続けた結果に過ぎない。水と癒しから奇跡を得るほどに、彼女の抱える火というのは抑えられている。
「それって。」
「繰り返しになりますが、やはり一人で戦う事が前提となっています。だからこそ、皆で戦うときに生まれる役割分担、それをよくない物と捉える訳です。」
「でも、一人だけだと難しいですよ。」
「ああ。だが、前にも聞かれた時に応えた。それでもと。」
パウの言葉は、まぁ、それなりに懐かしさを覚える程前の事。
「どちらも必要に応じて切り替えられる事が肝要です。しかし、皆さんではまだ早いですから。」
だからこそ、成長を喜びながらも、それはそれとして教えている事それに合わせる形で直すのだと。
「ま、相変わらず面倒をかけてるのは分かったさ。」
「もう、ジーク。」
「だから、ありがとな。んで、これからもよろしく。」
「ええ。勿論です。」
そして、微笑まし気に見る相手が周囲に多い中、とりあえずとばかりに持ち込んだ食事を終えれば、いよいよ鍛錬の為にと町に戻るため動き出す。このあたりは子供たちにしても実に慣れた物。オユキとトモエが立ち上がれば、それこそいつもの事だとばかりに準備を始める。
「この後は、狩猟者ギルドに久しぶりに顔を出しましょうか。」
「あんちゃんはともかく、オユキは全然来てないよな。」
「一応、相応の立場を得た事もありますから、仕事の邪魔をしてしまいかねませんから。」
曲がりなりにも子爵家当主であり、戦と武技の巫女だ。そんな人間が顔を出して、狩猟者ギルド側が何もしないという訳にもいかない。そして、もてなす為という訳でもなく、色々と都合の良い相手だからこそ、向こうも話したいことがあると待ち構えている事だろう。それを始めてしまえば、下手をすれば通常の業務に支障が出る程長い話になる。
「ですので、ご挨拶と、お誘いだけですね、私がするのは。」
そして、それを避けるにはやはりある程度の権限を持っている人間が、別の場所で事前の折衝を行うのが手っ取り早いのだ。組織の施設内にいれば、担当者を呼んで確認をという流れを避けられない。しかし、それ以外であれば、後日改めてとするのも理由付けが容易い。
「オユキちゃん、色々大変そうだよね。」
「私よりも、私の周囲の方の方がとは思いますが。」
「えっと、メイ様も機会があればって。」
「一応席は設ける予定がありますし、四阿を立てた折にはとも思いますが。」
そして、オユキは改めてシェリアに視線を投げる。今日は自分で荷物を運ばないでもよいからと、これまで抑えていたのだと言わんばかりに散々に優美な踊りを披露したカリンと話していたが、直ぐに気が付き返答が。いよいよ侍女としての仕事は、次の用意が整うまでの繋ぎでしかないというのに助かるものだ。
「木材と石材が町全体で不足していますので、そちらを自分で用意ができるのならと。」
「流石にダンジョンに顔を出すのは難しそうですから、木造で考えていただきましょうか。」
「オユキ様は、既に案があるご様子。」
「そうですね。聊かこちらの建造物と趣は異なりますが。」
さて、そうして話していれば、トモエの前に進み出る相手がいる。
オユキとしては、何となく見覚えがある程度。ただ、シグルドが何処かバツが悪そうにする様子を見れば、成程この相手が少年たちに挑もうと考えている相手なのだろう。
「今、構わないか。」
「ええ。構いませんよ。」
これまで突っかかって来た相手でもある、しかしシグルドがトモエに伺いを立てる程度には、改善が見られたのだと分かっている。だというのに、なぜ挑むのかと言われれば、トモエが怪我の心配をした理由というのも明確。勝つことを望んでいる。互いを試す為だけではなく。だからこそ、熱にあてられて加減を忘れる相手だ、お互いに。
「あんたの許可が無ければ、そいつは戦えないって言っててな。」
「ええ。それは教える物の責務です。師として代わりに、それを望んではいないのでしょう。」
「ああ。あんたは無理だ。今となっちゃ、そっちのガキだって無理なのは分かる。」
さて、オユキをさしてそう評することに、納得もあれば苛立ちもあるが。
「だがな、後から来た狩猟者の子供。それに負けるってのは、言わせたままにしちゃ置けない。」
「勝てませんよ。」
「それも分かるさ。」
だが、それでもと。
「俺らじゃ逃げるしかない魔物だって狩ってる。俺らを追い回す傭兵だって、こいつらの方が強いって認めてる。でもな、改めて前に進むと決めたからには、逃げちゃいけない事がある。」
「怪我をしますよ。以前私が腕を折ったでしょう。」
「それは、そいつだって変わらないだろ。」
トモエが許可に傾いていることが伝わっているのだろう。シグルドたちに挑もうと考えている4人の狩猟者たち。トモエが以前すげなくあしらい、オユキが己の老いを改めて自覚する要因となった相手。オユキは記憶に残していないが、トモエはその由縁があるからこそはっきりと覚えている。
「見た所、それは無いでしょう。それでも良いというのであれば。」
「ああ。負けたって良い。だが、諦めるつもりはもうないからな。」
さて、相手のその様子を喜んでいるシグルドに対して、師としてくれぐれもと言わねばならぬ事があるため、トモエとしても不安があるのだ。
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