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18章 魔国の下見
とはいうものの
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さて、行うべきことはある。何となれば、既に物を得た事もある。
では、だからと言ってオユキとトモエが早急に行うべきことが生まれるのかと言えば、勿論そうでは無い。
「ま、聞いちゃいたがな。」
「アベルさんは、一応統括の立場では。」
「この後、こっちはこっちで引継ぎだな。俺が指示を出すのは、流石に移動中までだ。身の回りに置く人員くらいは、流石に今後も指示は出すが。」
「確かに、他国であればそちらに任せるのが筋ですか。」
そもそも長旅の疲れを癒すために、今日一日くらいはゆっくりと事を進めようという共通の目論見もある。しかし、何よりも他国であり、いよいよ判断を待たねばならぬ事ばかりである。
要は、こうして居間に神域の種を置き、それを横目に見ながらお茶を楽しむ程度の余裕はあるというものだ。
「サキさんには、申し訳ありませんが。」
「いいですよ。良くしてもらってますから。それくらいのお遣いは喜んで。でも。」
そして、何故アベルと席を同じくしているかと言えば、サキについてだ。
「カレンさんにお願いするのが良いのは事実ですが。」
そう、こういった事を頼む為に、借り受けている側仕え、家宰見習いのカレンがいるというのも事実なのだが。
「流石に、当分は身動きとれん。」
「えっと、そうなんですか。」
「そうなんですよ。今のカレンさんは、此処迄運んできた積み荷、それが全て間違いなくという大仕事が待っていますから。」
「ここに来る迄、何度も確認されてましたけど。」
サキから不思議そうに言われ、ああ成程とトモエが先に気が付く。
「今度は、受け取る方々との確認ですから。」
郵送、宅配。そういった物を主体として行っていれば、ある程度分かるのだろうが生憎と相手はそのような年ごろではない。オユキにとってみれば、受け入れに際して行うべき事柄というのは、そもそも当然の事となっているため気が付きにくいという事もある。
「そうですね、これまで経験は無いでしょうが運んだとされる物、それが間違っていないかは受け取る側も確かめなければいけません。そして、そこには当然運んだ側の責任者、今の場合はカレンさんですね、その同席も当然必要になりますから。」
「最後の確認から今まで、当然短い期間だが、その間に積み荷に接近した人数も多い。万が一もある。カレンの方で作っている目録と、これから魔国側の人員が運ばれた物を確認しながら一覧を作って照らし合わせてと、それでも数日仕事になるな。」
「大変なんですね。」
流石に、どういった事が行われているかはぴんと来ていないらしいが、実に苦々し気にそう話すアベルとオユキの姿に何やら大変な事をしているのだと、その理解はサキも出来たらしい。
「加えて王太子妃様から預かっている手紙などもありますから、それらを正しく届け先に。そういった手配もあるので。」
「手紙とかって、こう、ここに来る前だと使用人の誰かに預けたりしてましたけど。」
「それを出来る使用人がいないというのが、難点でな。」
マリーア公爵の麾下、その立場を取っているためその権勢が通じる範囲であれば、それも出来る。しかし、この場はそうでは無い。
「そう言えば、以前王妃様が頭を抱えていたが。」
「先代アルゼオ公爵に間に入って頂きました。流石に、私が分かる事でもマリーア公が分かる事でもありませんから。」
そして、今こうしてのんびりとしている場所にしても、出発前にひと悶着あったのだ。結局、よくわからないと丸投げして、好きにされるよりはと受け入れてくれたこともあり、何も考えず案内に従ってとなっているが。それこそ門が出来た後、次回以降観光を目的に訪れる際は結局同じ問題に直面するため、先送りしただけではあるのだが。
「そう言えば、アイリスさんは。」
「向こうは向こうで、少々準備に手間取っていてな。」
「何か、ありましたか。」
そして、暫くゆったりとお茶を楽しんだ後には、オユキから。朝食の時間は流石にすぎ、すっかりとブランチといった様相の茶会。本来であれば、そう言った物を見逃さない相手が何処にいるのかとトモエが尋ねれば。
「今朝がたという話だったが、こっちで担当する相手が早々にこっちに来ていたらしくてな。そちらと話をしなきゃならんからと。」
「少し、意外な話ですが。」
「同じ氏族という事でもあるらしい。色々と話が早い相手らしくてな、今は先代公爵と一緒に手配の段取りだ。」
「いよいよ、そうなるとアベルさんの同席もいりそうですが。」
そもそも、神国におけるアイリスの後見任としての立場を持っているのがアベルだ。実際のところはまたいろいろと違うのだろうが、そのように振舞う事をアイリス本人も、周囲も納得している。そんな人物が、そうした重要な話し合いの席から離れてというのは考えにくいと、オユキが疑問をそのまま口にすれば。
「流石に、俺もこっちの事情は分からんからな。氏族としての事であれば、魔国相手であれば任せるしかない。後は、まぁ、神国として優先する対象がここにあるからな。」
そして、アベルが視線を送る先には、神域の種。
「それと、確認もありますか。」
そして、オユキは書き上げた手紙をアベルにそのまま渡す。これをサキに預けて、この後アベルと今屋敷を借り受けているフォンタナ公爵家からも人を出してもらったうえで、届けてもらうのだ。それに、いくつか先代アルゼオ公爵には任せにくい手紙の幾つかも。顔立てる事は当然するが、では何も手を打たないかと言われれば、当然そのはずもない。オユキが書き上げた物はいくつかある。サキは神殿だけと考えているようだが、そこまで暇でも無いというのが実情だ。それは、誰も彼も。今回は、期限を随分短く切ってある。その中で話をと望む者も多いのだが、それをむやみやたらと許してしまえば、重要な事を行う時間が無くなる。つまり、魔国である程度と考えるものたちの中で、きっちりと雑事の統制は行ってくれるという事だ。各派閥の代表者全員という訳にもいかない。こちらの派閥という意味ではフォンタナ公爵が数歩先を言っていることになる。当然そこに食い込みたいものたちというのは、多いのだ。王太子妃から隣接している公爵は、実際の所王妃と派閥が違うという話も聞いている。そちらに対してアベルに預けるのは、配慮をしていると見せるためでもあるし彼を小間使い代わりに送り出し、本人がそれを飲んでいるのにも事情がある。
「ふむ。定型文だけだな。」
「それ以上の物では無いでしょう。仕事上の物ですから。」
「もう少々飾っても良いとは思うが、そちらはいよいよ学ばねばというところではあるか。」
「おや、他国で風習も違うというのに。」
「隣国のことくらいは多少はな、と言いたくはあるが。武国と魔国くらいか。今のところは。」
この二国については、現在の王家とも非常に関係の深い国だ。
「まぁ、そういうものでしょう。と、言いますか王太子妃様とのやり取りの際公爵夫人からも伺いましたが、知識を試すのが好と言われましても。」
「確かにお前らだと背景が違いすぎて、難しいか。」
そうして、アベルによる確認が終わりオユキの手元に戻ってきた手紙を折りたためば、封筒と印が側に控えていたナザレアから差し出される。
「ええと、知識を試すというのは。」
「そうですね、サキさんにも分かりやすいものとなれば古典でもあった物でしょうか。」
トモエがそう話したところで、思い当たるところが無いのかただ首を傾げるばかり。
「アベルさんには伝わるか分かりませんが、漢詩、他国の歌ですね。それを前提として言葉をかけて、相手が解るかどうか、それを知っているかどうかを試すというのはままありましたから。」
「あ、なんだか聞いたことが。えっと、何処かの関でとか。」
「ええ。それも有名な物ですね。」
オユキとしては、小と位を与えられるものは随分と皮肉な物言いを好むのだなと、過去にそのような感想を持った物ではあるが、サキのほうはぼんやりとしか覚えていない事もあるのだろう。なんとなく、そういった話を聞いたことがある程度で、意味までは今一つというものであるらしい。
「空音という程ではありませんが、まぁ言葉遊びの類ですね。」
「それで理外が生まれるのだから、遊びとも言い切れんがな。」
まぁ、そう言った物でしょうともと、オユキからはただそう返すしかない。
「さて、それではこちらはサキさんに。神殿に届けて頂ければ、後の事はまぁあちらの方の方が良くご存知でしょうから。」
「分かりました。えっと、このあとすぐですか。」
「いえ、流石に先触れは出してもらってから、ですね。先方に招かれはするでしょうが、良い経験でしょう。」
アベルもいる訳だからと、オユキから。
「えっと、招かれるって。」
「神殿側も、手紙を受け取ってそれで終わりという訳でもないからな。運ぶ先にも、人を出さなきゃならんわけだ。一先ず、何時なら問題が無いか、それだけはこっちも聞かなきゃならんのでな。」
「その。」
「まぁ、実際のところは、労いの言葉を掛けられながら座っているだけだ。その間に向こうが手紙の準備をして、それを預かれば戻ってくることになる。」
この度の間で、少しづつ苦手意識も薄れてきているため、最低限の会話は問題が無くなっている。しいて言えば、サキにとっては最も大きな今回の長旅の収穫はこれと言っても良いだろう。
「あの、神殿へのお仕事の手紙は確認するのに、オユキちゃんが今一緒に渡した手紙は。」
「こちらは既に確認済みだ。マリーア公爵からの物は、俺が見る訳にもいかんし、王家からの物は猶の事だな。」
「あの、神殿に行くんですよね。」
「ああ。行けば、先に運んだ門を見ようと、そう言った口実で待っている相手がいるからな。」
特に細かい背景は気にせず、ただそう言う事もあるのかと一度サキは全て飲み込むことにしたらしい。これがシグルド達であれば、面倒なことしてるなくらいは表情に出しそうなものではある。その辺りは、これまで育ってきた素地と、そう庇いたくはあるのだが、今回はそれが行われる場所もあってそれも難しい。
では、だからと言ってオユキとトモエが早急に行うべきことが生まれるのかと言えば、勿論そうでは無い。
「ま、聞いちゃいたがな。」
「アベルさんは、一応統括の立場では。」
「この後、こっちはこっちで引継ぎだな。俺が指示を出すのは、流石に移動中までだ。身の回りに置く人員くらいは、流石に今後も指示は出すが。」
「確かに、他国であればそちらに任せるのが筋ですか。」
そもそも長旅の疲れを癒すために、今日一日くらいはゆっくりと事を進めようという共通の目論見もある。しかし、何よりも他国であり、いよいよ判断を待たねばならぬ事ばかりである。
要は、こうして居間に神域の種を置き、それを横目に見ながらお茶を楽しむ程度の余裕はあるというものだ。
「サキさんには、申し訳ありませんが。」
「いいですよ。良くしてもらってますから。それくらいのお遣いは喜んで。でも。」
そして、何故アベルと席を同じくしているかと言えば、サキについてだ。
「カレンさんにお願いするのが良いのは事実ですが。」
そう、こういった事を頼む為に、借り受けている側仕え、家宰見習いのカレンがいるというのも事実なのだが。
「流石に、当分は身動きとれん。」
「えっと、そうなんですか。」
「そうなんですよ。今のカレンさんは、此処迄運んできた積み荷、それが全て間違いなくという大仕事が待っていますから。」
「ここに来る迄、何度も確認されてましたけど。」
サキから不思議そうに言われ、ああ成程とトモエが先に気が付く。
「今度は、受け取る方々との確認ですから。」
郵送、宅配。そういった物を主体として行っていれば、ある程度分かるのだろうが生憎と相手はそのような年ごろではない。オユキにとってみれば、受け入れに際して行うべき事柄というのは、そもそも当然の事となっているため気が付きにくいという事もある。
「そうですね、これまで経験は無いでしょうが運んだとされる物、それが間違っていないかは受け取る側も確かめなければいけません。そして、そこには当然運んだ側の責任者、今の場合はカレンさんですね、その同席も当然必要になりますから。」
「最後の確認から今まで、当然短い期間だが、その間に積み荷に接近した人数も多い。万が一もある。カレンの方で作っている目録と、これから魔国側の人員が運ばれた物を確認しながら一覧を作って照らし合わせてと、それでも数日仕事になるな。」
「大変なんですね。」
流石に、どういった事が行われているかはぴんと来ていないらしいが、実に苦々し気にそう話すアベルとオユキの姿に何やら大変な事をしているのだと、その理解はサキも出来たらしい。
「加えて王太子妃様から預かっている手紙などもありますから、それらを正しく届け先に。そういった手配もあるので。」
「手紙とかって、こう、ここに来る前だと使用人の誰かに預けたりしてましたけど。」
「それを出来る使用人がいないというのが、難点でな。」
マリーア公爵の麾下、その立場を取っているためその権勢が通じる範囲であれば、それも出来る。しかし、この場はそうでは無い。
「そう言えば、以前王妃様が頭を抱えていたが。」
「先代アルゼオ公爵に間に入って頂きました。流石に、私が分かる事でもマリーア公が分かる事でもありませんから。」
そして、今こうしてのんびりとしている場所にしても、出発前にひと悶着あったのだ。結局、よくわからないと丸投げして、好きにされるよりはと受け入れてくれたこともあり、何も考えず案内に従ってとなっているが。それこそ門が出来た後、次回以降観光を目的に訪れる際は結局同じ問題に直面するため、先送りしただけではあるのだが。
「そう言えば、アイリスさんは。」
「向こうは向こうで、少々準備に手間取っていてな。」
「何か、ありましたか。」
そして、暫くゆったりとお茶を楽しんだ後には、オユキから。朝食の時間は流石にすぎ、すっかりとブランチといった様相の茶会。本来であれば、そう言った物を見逃さない相手が何処にいるのかとトモエが尋ねれば。
「今朝がたという話だったが、こっちで担当する相手が早々にこっちに来ていたらしくてな。そちらと話をしなきゃならんからと。」
「少し、意外な話ですが。」
「同じ氏族という事でもあるらしい。色々と話が早い相手らしくてな、今は先代公爵と一緒に手配の段取りだ。」
「いよいよ、そうなるとアベルさんの同席もいりそうですが。」
そもそも、神国におけるアイリスの後見任としての立場を持っているのがアベルだ。実際のところはまたいろいろと違うのだろうが、そのように振舞う事をアイリス本人も、周囲も納得している。そんな人物が、そうした重要な話し合いの席から離れてというのは考えにくいと、オユキが疑問をそのまま口にすれば。
「流石に、俺もこっちの事情は分からんからな。氏族としての事であれば、魔国相手であれば任せるしかない。後は、まぁ、神国として優先する対象がここにあるからな。」
そして、アベルが視線を送る先には、神域の種。
「それと、確認もありますか。」
そして、オユキは書き上げた手紙をアベルにそのまま渡す。これをサキに預けて、この後アベルと今屋敷を借り受けているフォンタナ公爵家からも人を出してもらったうえで、届けてもらうのだ。それに、いくつか先代アルゼオ公爵には任せにくい手紙の幾つかも。顔立てる事は当然するが、では何も手を打たないかと言われれば、当然そのはずもない。オユキが書き上げた物はいくつかある。サキは神殿だけと考えているようだが、そこまで暇でも無いというのが実情だ。それは、誰も彼も。今回は、期限を随分短く切ってある。その中で話をと望む者も多いのだが、それをむやみやたらと許してしまえば、重要な事を行う時間が無くなる。つまり、魔国である程度と考えるものたちの中で、きっちりと雑事の統制は行ってくれるという事だ。各派閥の代表者全員という訳にもいかない。こちらの派閥という意味ではフォンタナ公爵が数歩先を言っていることになる。当然そこに食い込みたいものたちというのは、多いのだ。王太子妃から隣接している公爵は、実際の所王妃と派閥が違うという話も聞いている。そちらに対してアベルに預けるのは、配慮をしていると見せるためでもあるし彼を小間使い代わりに送り出し、本人がそれを飲んでいるのにも事情がある。
「ふむ。定型文だけだな。」
「それ以上の物では無いでしょう。仕事上の物ですから。」
「もう少々飾っても良いとは思うが、そちらはいよいよ学ばねばというところではあるか。」
「おや、他国で風習も違うというのに。」
「隣国のことくらいは多少はな、と言いたくはあるが。武国と魔国くらいか。今のところは。」
この二国については、現在の王家とも非常に関係の深い国だ。
「まぁ、そういうものでしょう。と、言いますか王太子妃様とのやり取りの際公爵夫人からも伺いましたが、知識を試すのが好と言われましても。」
「確かにお前らだと背景が違いすぎて、難しいか。」
そうして、アベルによる確認が終わりオユキの手元に戻ってきた手紙を折りたためば、封筒と印が側に控えていたナザレアから差し出される。
「ええと、知識を試すというのは。」
「そうですね、サキさんにも分かりやすいものとなれば古典でもあった物でしょうか。」
トモエがそう話したところで、思い当たるところが無いのかただ首を傾げるばかり。
「アベルさんには伝わるか分かりませんが、漢詩、他国の歌ですね。それを前提として言葉をかけて、相手が解るかどうか、それを知っているかどうかを試すというのはままありましたから。」
「あ、なんだか聞いたことが。えっと、何処かの関でとか。」
「ええ。それも有名な物ですね。」
オユキとしては、小と位を与えられるものは随分と皮肉な物言いを好むのだなと、過去にそのような感想を持った物ではあるが、サキのほうはぼんやりとしか覚えていない事もあるのだろう。なんとなく、そういった話を聞いたことがある程度で、意味までは今一つというものであるらしい。
「空音という程ではありませんが、まぁ言葉遊びの類ですね。」
「それで理外が生まれるのだから、遊びとも言い切れんがな。」
まぁ、そう言った物でしょうともと、オユキからはただそう返すしかない。
「さて、それではこちらはサキさんに。神殿に届けて頂ければ、後の事はまぁあちらの方の方が良くご存知でしょうから。」
「分かりました。えっと、このあとすぐですか。」
「いえ、流石に先触れは出してもらってから、ですね。先方に招かれはするでしょうが、良い経験でしょう。」
アベルもいる訳だからと、オユキから。
「えっと、招かれるって。」
「神殿側も、手紙を受け取ってそれで終わりという訳でもないからな。運ぶ先にも、人を出さなきゃならんわけだ。一先ず、何時なら問題が無いか、それだけはこっちも聞かなきゃならんのでな。」
「その。」
「まぁ、実際のところは、労いの言葉を掛けられながら座っているだけだ。その間に向こうが手紙の準備をして、それを預かれば戻ってくることになる。」
この度の間で、少しづつ苦手意識も薄れてきているため、最低限の会話は問題が無くなっている。しいて言えば、サキにとっては最も大きな今回の長旅の収穫はこれと言っても良いだろう。
「あの、神殿へのお仕事の手紙は確認するのに、オユキちゃんが今一緒に渡した手紙は。」
「こちらは既に確認済みだ。マリーア公爵からの物は、俺が見る訳にもいかんし、王家からの物は猶の事だな。」
「あの、神殿に行くんですよね。」
「ああ。行けば、先に運んだ門を見ようと、そう言った口実で待っている相手がいるからな。」
特に細かい背景は気にせず、ただそう言う事もあるのかと一度サキは全て飲み込むことにしたらしい。これがシグルド達であれば、面倒なことしてるなくらいは表情に出しそうなものではある。その辺りは、これまで育ってきた素地と、そう庇いたくはあるのだが、今回はそれが行われる場所もあってそれも難しい。
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