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18章 魔国の下見
難事を切りはらう
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前夜少々特殊な話し合いが行われた物だが、予定が変わるわけでもない。昼を過ぎた頃には、厳重に周囲を整えられた門の前に改めて列をなし、魔国の王都へと迎え入れられる。一団の先頭を、フォンタナ公爵と先代アルゼオ公爵が並んで、それが今回の事をどれだけ重大ごとと考えているのかが良く分かるというものだ。
そして、門を超えれば早速とばかりに。
「しかし、我らは巫女様の付き添いとして、此度の使命その一助を担っているだけにすぎぬ。」
「ですが、こちらの門から入られた以上は、王城を避けて通るのも。」
「我らの国でも、与えられた奇跡は、置くべき場所に置くとその前例があるのだ。」
そして、オユキの想定通りの問答がそこでは繰り広げられている。
「想定通りの事ではありますが。」
そして、先頭は任せているため、少し離れた位置ですっかりと足が止まったからと、オユキはのんびりと現状を評する。押しとどめている相手が誰かは、正直分からない。問答の声は確かに届いているため、先代公爵の言葉遣いで、王家に連なる相手が直接という訳でないというのは分かる。しかし、そこに指示があったかどうか、そればかりはいよいよ分からないものだ。
「やはり、上掛けや装飾は季節に合わせた物を用意したいですね。」
「しかし、神授の装いですから上掛けとして、隠すような真似は。」
「確かに、それも考慮しなければいけませんか。」
神国の中であれば、トモエが騎乗するのに不慣れであるというのは見過ごせるが、生憎ここは他国。カミトキとセンヨウが揃って引く覆いの無い馬車、その御者台ではトモエとナザレアがのんびりとオユキの仕事着を見ながらそのような話をしている。
確かに、戦と武技から直接与えられてからというもの、教会の手によって刺繍などは足されているがそれっきりなのだ。装束としても千早は着込んでいるが、それにしてもトモエとナザレアだけでなく、色々な相手がそれだけでは寂しいとそう評するような衣装だ。
戦と武技にしても、本人が飾るのを好まぬというよりも頓着しないと、そういった話は既に聞いている。手を加える分には、主体として使う彼の神を示す色、それを違える様な事が無ければ何を言うでもないのだと、そう言った話は教会にも残されている。過去に一度だけあった事例としては、装飾が過多であり、身に着けて戦えぬ、そういった装いであった時くらいだと。そして、和装の範疇であれば、トモエがいる限り凡そ問題と成る物が用意されることもない。
「次までに時間があるのであれば、水干や裳を用意しましょうか。」
「初めて聞きますが。」
「水干はまた違う意匠なのですが、裳は千早のように上からは居るわけでは無く、腰に付け後へ流す物なのですが。」
「成程、しかし、それよりも先に髪飾りや装飾の類の方が。」
さて、何やら随分と話が盛り上がっているなと、オユキとしては諦め以外の何物でもない心持で楽し気に進む話し合いを聞き流しながら、周囲を改めて観察する。
知識と魔の国、如何に国が関する名前が変わったとはいえ、そこまで大きく見た目が変わるものではない。王都とは言え、あくまでここは人という種族が多く暮らす拠点でしかない。神国と比べて、あまりに町の様相が変わるという事も無いのだ。特に、今はまだ外周区という事もある。この時点では、精々神国には存在しなかった魔道具らしきものが道の脇に用意されている、それくらいだろう。こちらも変わらず基本は石造り。町を覆う壁などはそうあることに違いは無い。ただし、改めて周囲を見渡して気にかかる事として、神国に比べて実にわかりやすい差異というのが存在している。
知識を重んじる。魔を重んじる。そこには、生まれる歪が存在する。
ゲームであるこれであれば、問題が無かった。物流については、創造主が望まぬとは言え調整を行う事も出来た。魔術という現実には存在しない奇跡に心奪われた者達が多くいた。そして、それを前提とした価値観が醸成されていた国というのは、あまりに分かりやすいものが存在する。
魔石の不足、しかし、国としての価値観は魔術、魔道具に向けられる。
オユキがマナの枯渇から完全に回復するまでに季節が変わるほどの期間を要したように、魔術をマナを大いに使って物事を行うというのであれば、先頭が可能な間隔というのは長くなる。日々の事、その多くも魔道具を基礎としているのだろう。周囲には森もない。草原ではなく荒野と呼んで差し支えない場が広がっている。資源の回復にはそこで活動する者達のマナが徴収される。どうやらそれは確かな事であるらしいなどと、アベルとオユキで改めて話したものだ。知識と間を標榜する国ではある。しかし、人が暮らす場では、何処まで行ってもマナは不足する。快復が追いつかないほどに。何とも、過去の世界、技術というものが抱える問題をまざまざと突き付けてくるものだと、オユキはそのように感じてしまうものだ。利便性の追求、つまり人的資源の代替を他に求めているのだ。当然、資源である以上、永久機関が夢物語でしかない世界であった以上は、他のあらゆる資源も同様なのだと。
「さて、もう少し待ちましょうか。」
「あら、貴女なら早々にと考えていたけれど。」
「不満を表に出す、その機会を求めているだけの相手も居られるでしょうから。」
そこにはどうにもならない、既に決まっていることがある。オユキがさらさら譲る気のない事柄が。フォンタナ公爵に対して用意した物よりは、融通が利かぬ物にはなる。だからこそ、こうして足止めを飲み込む時間というのを予定に組み込んでいる。
「本音でもあるとは思うけれど。」
「ええ。そこに間違いはありませんよ。それこそ、弁えぬ方を選んでこうしている事もあるでしょうから。」
例えば、フォンタナ公爵がオユキが場を用意するまでの間、内心抱えていたものを一切表に出さず、歓待をした相手。それと、こうして公衆の面前で権威を無視すると見える相手を足止めしたと、正直意味のない優越を得る者達との差がそこにある。足を止めさせる、誰かの足を引く。それも確かに一つの成果ではある。オユキにしても、トモエにしても、それは認めている。では、そうして時間を稼いだ間に、他の方策があるのかどうか、それが唾棄すべき振る舞いであるか否か、その判断基準となる。
それこそ、今回の事であれば、こうしてオユキ達の、神々からの奇跡を預かった者達の足を止め、この場に王家の者達を連れて来る。そして、挨拶をする中で、積み荷を改める、神殿への同行をといった用意を整える時間を稼ごうというのであれば、今されている事にしても評価に値するのだ。そうではない理由というのが、こうして足止めした所で何の意味もないどころか、時間を浪費させるだけ、それについて難色を示すのだ。
「ニーナ様。用意は。」
「は。問題ありません。しかしながらオユキ様。」
「流石に、今は耳目も集めていませんから。」
分かりやすい奇跡、それが積まれた開かれた荷台に、オユキとアイリスも一緒に乗せられているのだ。本来であれば、そこにこそ、神国であれば間違いなく視線が集中したものだが、どうにもこの国では違うらしい。知識の集積、科学的思考、それが神を殺したなどと言われることは確かにあったものだが、こちらでは実在しているのだ。どうにも、この国にしても色々と厄介を抱えている物であるらしい。
「さて、私は既に己が羽を休める場所を選びました。観光で訪れる事はあるでしょう。この国は、そのような場所です。」
そして、ここまでの道中、隠そうとする素振りは大いに見られた物だが、見える範囲で想像した結果として、オユキは既に結論を下している。この国は、神国ほど、マリーア公爵の領程暮らして楽しい場所ではないと。過去、歴史に度々表れ、その度に戒めとしてあるべきはずが繰り返す。そうしたものがこの国の根底に存在している。改善にはあまりに時間がかかる。そして、それを叶えようと思うのならば、やはりそれは神国からの働きかけが必要になる。
「では、ニーナ。改めて命じます。私共は使命の途中。大過なく果たせるよう、その盾の輝きを。」
「ご下命承りました。我が主の受けた恩義、それに応えよとの主命に従い。」
問答はいよいよ先代アルゼオ公爵が説き伏せはしたものの、今となっては、ただ己のみを盾に時間を稼ごうと愚かな真似を行うだけとなったため、オユキは早々に決定を下す。
そもそも、如何に時間を使ったところで、魔国の王族がこの場に来る事は無い。フォンタナ公爵の言葉が正しければ、その人物は知識と魔の神殿で、現在の目的地でオユキとトモエを待っているのだから。勿論、王城にいる者達もいるが、そちらはいよいよ饗応の準備に今頃奔走している。つまるところ、こうして足止めをしている人物というのは、そう言った時世も読めず、事前の認識共有も行えず。政治という事柄の外にいる人間でしかない。要は、政治としてこの場に訪れたオユキが、勿論主題は門の肺位置だが、配慮すべき相手ではないのだ。知識と魔の国でとるに足らぬ、考慮するに足らぬとされている相手を、他国の人間が配慮をする必要など無いのだから。
「これ以上の浪費を私は望みません。」
そして、必要な札は既に与えられている。そして、もとよりこの場で使う心算であった札。
「さて、我の与えた位に従い、我らの与えし使命を果たそうとするもの、その前途を徒に阻むものがいるらしい。」
「全く、度し難いものだ。」
この世界には、神が、絶対的な上位者が存在する。
「聞くがよい。我が名はニーナ・ローズ・プチクレール。我が主が受けた恩義に報いる為、神国の誇る盾としてその輝きを示すものである。我らの道行きは既に神々の定めに祝福されている。その前途をふさごうというものがいるのであれば、神国の誇る盾、その意味を知らしめる者ぞ。」
これがトモエやオユキであれば、誇るものは間違いなく刃であり、そこに生まれる結果というのも実に血なまぐさいものになる。しかし、神国の誇る盾、それを名乗ることを許された騎士であれば、また違うのだ。
ニーナの名乗りに合わせて、恐らく神殿までの順路なのだろう。知識と間を表す色が地面からかすかに立ち昇れば、ざわめき先導されていただけの民衆がその場を避ける。言い含められていただろう者達も、ニーナの圧に耐えられず、ただ下がり始める。そして、引くに引けぬ首謀者については。
「ニーナ。使命は既に得ています。神々も、こうしてそれを認めています。」
「退かぬのならば退かせましょう。」
非致死性の攻撃手段、盾による打撃。それこそ加減を誤ればどうなるか分かったものではないが、大盾を片手にニーナが腕を振れば、輝く道をふさぐ者達は、全て一掃される。
そして、門を超えれば早速とばかりに。
「しかし、我らは巫女様の付き添いとして、此度の使命その一助を担っているだけにすぎぬ。」
「ですが、こちらの門から入られた以上は、王城を避けて通るのも。」
「我らの国でも、与えられた奇跡は、置くべき場所に置くとその前例があるのだ。」
そして、オユキの想定通りの問答がそこでは繰り広げられている。
「想定通りの事ではありますが。」
そして、先頭は任せているため、少し離れた位置ですっかりと足が止まったからと、オユキはのんびりと現状を評する。押しとどめている相手が誰かは、正直分からない。問答の声は確かに届いているため、先代公爵の言葉遣いで、王家に連なる相手が直接という訳でないというのは分かる。しかし、そこに指示があったかどうか、そればかりはいよいよ分からないものだ。
「やはり、上掛けや装飾は季節に合わせた物を用意したいですね。」
「しかし、神授の装いですから上掛けとして、隠すような真似は。」
「確かに、それも考慮しなければいけませんか。」
神国の中であれば、トモエが騎乗するのに不慣れであるというのは見過ごせるが、生憎ここは他国。カミトキとセンヨウが揃って引く覆いの無い馬車、その御者台ではトモエとナザレアがのんびりとオユキの仕事着を見ながらそのような話をしている。
確かに、戦と武技から直接与えられてからというもの、教会の手によって刺繍などは足されているがそれっきりなのだ。装束としても千早は着込んでいるが、それにしてもトモエとナザレアだけでなく、色々な相手がそれだけでは寂しいとそう評するような衣装だ。
戦と武技にしても、本人が飾るのを好まぬというよりも頓着しないと、そういった話は既に聞いている。手を加える分には、主体として使う彼の神を示す色、それを違える様な事が無ければ何を言うでもないのだと、そう言った話は教会にも残されている。過去に一度だけあった事例としては、装飾が過多であり、身に着けて戦えぬ、そういった装いであった時くらいだと。そして、和装の範疇であれば、トモエがいる限り凡そ問題と成る物が用意されることもない。
「次までに時間があるのであれば、水干や裳を用意しましょうか。」
「初めて聞きますが。」
「水干はまた違う意匠なのですが、裳は千早のように上からは居るわけでは無く、腰に付け後へ流す物なのですが。」
「成程、しかし、それよりも先に髪飾りや装飾の類の方が。」
さて、何やら随分と話が盛り上がっているなと、オユキとしては諦め以外の何物でもない心持で楽し気に進む話し合いを聞き流しながら、周囲を改めて観察する。
知識と魔の国、如何に国が関する名前が変わったとはいえ、そこまで大きく見た目が変わるものではない。王都とは言え、あくまでここは人という種族が多く暮らす拠点でしかない。神国と比べて、あまりに町の様相が変わるという事も無いのだ。特に、今はまだ外周区という事もある。この時点では、精々神国には存在しなかった魔道具らしきものが道の脇に用意されている、それくらいだろう。こちらも変わらず基本は石造り。町を覆う壁などはそうあることに違いは無い。ただし、改めて周囲を見渡して気にかかる事として、神国に比べて実にわかりやすい差異というのが存在している。
知識を重んじる。魔を重んじる。そこには、生まれる歪が存在する。
ゲームであるこれであれば、問題が無かった。物流については、創造主が望まぬとは言え調整を行う事も出来た。魔術という現実には存在しない奇跡に心奪われた者達が多くいた。そして、それを前提とした価値観が醸成されていた国というのは、あまりに分かりやすいものが存在する。
魔石の不足、しかし、国としての価値観は魔術、魔道具に向けられる。
オユキがマナの枯渇から完全に回復するまでに季節が変わるほどの期間を要したように、魔術をマナを大いに使って物事を行うというのであれば、先頭が可能な間隔というのは長くなる。日々の事、その多くも魔道具を基礎としているのだろう。周囲には森もない。草原ではなく荒野と呼んで差し支えない場が広がっている。資源の回復にはそこで活動する者達のマナが徴収される。どうやらそれは確かな事であるらしいなどと、アベルとオユキで改めて話したものだ。知識と間を標榜する国ではある。しかし、人が暮らす場では、何処まで行ってもマナは不足する。快復が追いつかないほどに。何とも、過去の世界、技術というものが抱える問題をまざまざと突き付けてくるものだと、オユキはそのように感じてしまうものだ。利便性の追求、つまり人的資源の代替を他に求めているのだ。当然、資源である以上、永久機関が夢物語でしかない世界であった以上は、他のあらゆる資源も同様なのだと。
「さて、もう少し待ちましょうか。」
「あら、貴女なら早々にと考えていたけれど。」
「不満を表に出す、その機会を求めているだけの相手も居られるでしょうから。」
そこにはどうにもならない、既に決まっていることがある。オユキがさらさら譲る気のない事柄が。フォンタナ公爵に対して用意した物よりは、融通が利かぬ物にはなる。だからこそ、こうして足止めを飲み込む時間というのを予定に組み込んでいる。
「本音でもあるとは思うけれど。」
「ええ。そこに間違いはありませんよ。それこそ、弁えぬ方を選んでこうしている事もあるでしょうから。」
例えば、フォンタナ公爵がオユキが場を用意するまでの間、内心抱えていたものを一切表に出さず、歓待をした相手。それと、こうして公衆の面前で権威を無視すると見える相手を足止めしたと、正直意味のない優越を得る者達との差がそこにある。足を止めさせる、誰かの足を引く。それも確かに一つの成果ではある。オユキにしても、トモエにしても、それは認めている。では、そうして時間を稼いだ間に、他の方策があるのかどうか、それが唾棄すべき振る舞いであるか否か、その判断基準となる。
それこそ、今回の事であれば、こうしてオユキ達の、神々からの奇跡を預かった者達の足を止め、この場に王家の者達を連れて来る。そして、挨拶をする中で、積み荷を改める、神殿への同行をといった用意を整える時間を稼ごうというのであれば、今されている事にしても評価に値するのだ。そうではない理由というのが、こうして足止めした所で何の意味もないどころか、時間を浪費させるだけ、それについて難色を示すのだ。
「ニーナ様。用意は。」
「は。問題ありません。しかしながらオユキ様。」
「流石に、今は耳目も集めていませんから。」
分かりやすい奇跡、それが積まれた開かれた荷台に、オユキとアイリスも一緒に乗せられているのだ。本来であれば、そこにこそ、神国であれば間違いなく視線が集中したものだが、どうにもこの国では違うらしい。知識の集積、科学的思考、それが神を殺したなどと言われることは確かにあったものだが、こちらでは実在しているのだ。どうにも、この国にしても色々と厄介を抱えている物であるらしい。
「さて、私は既に己が羽を休める場所を選びました。観光で訪れる事はあるでしょう。この国は、そのような場所です。」
そして、ここまでの道中、隠そうとする素振りは大いに見られた物だが、見える範囲で想像した結果として、オユキは既に結論を下している。この国は、神国ほど、マリーア公爵の領程暮らして楽しい場所ではないと。過去、歴史に度々表れ、その度に戒めとしてあるべきはずが繰り返す。そうしたものがこの国の根底に存在している。改善にはあまりに時間がかかる。そして、それを叶えようと思うのならば、やはりそれは神国からの働きかけが必要になる。
「では、ニーナ。改めて命じます。私共は使命の途中。大過なく果たせるよう、その盾の輝きを。」
「ご下命承りました。我が主の受けた恩義、それに応えよとの主命に従い。」
問答はいよいよ先代アルゼオ公爵が説き伏せはしたものの、今となっては、ただ己のみを盾に時間を稼ごうと愚かな真似を行うだけとなったため、オユキは早々に決定を下す。
そもそも、如何に時間を使ったところで、魔国の王族がこの場に来る事は無い。フォンタナ公爵の言葉が正しければ、その人物は知識と魔の神殿で、現在の目的地でオユキとトモエを待っているのだから。勿論、王城にいる者達もいるが、そちらはいよいよ饗応の準備に今頃奔走している。つまるところ、こうして足止めをしている人物というのは、そう言った時世も読めず、事前の認識共有も行えず。政治という事柄の外にいる人間でしかない。要は、政治としてこの場に訪れたオユキが、勿論主題は門の肺位置だが、配慮すべき相手ではないのだ。知識と魔の国でとるに足らぬ、考慮するに足らぬとされている相手を、他国の人間が配慮をする必要など無いのだから。
「これ以上の浪費を私は望みません。」
そして、必要な札は既に与えられている。そして、もとよりこの場で使う心算であった札。
「さて、我の与えた位に従い、我らの与えし使命を果たそうとするもの、その前途を徒に阻むものがいるらしい。」
「全く、度し難いものだ。」
この世界には、神が、絶対的な上位者が存在する。
「聞くがよい。我が名はニーナ・ローズ・プチクレール。我が主が受けた恩義に報いる為、神国の誇る盾としてその輝きを示すものである。我らの道行きは既に神々の定めに祝福されている。その前途をふさごうというものがいるのであれば、神国の誇る盾、その意味を知らしめる者ぞ。」
これがトモエやオユキであれば、誇るものは間違いなく刃であり、そこに生まれる結果というのも実に血なまぐさいものになる。しかし、神国の誇る盾、それを名乗ることを許された騎士であれば、また違うのだ。
ニーナの名乗りに合わせて、恐らく神殿までの順路なのだろう。知識と間を表す色が地面からかすかに立ち昇れば、ざわめき先導されていただけの民衆がその場を避ける。言い含められていただろう者達も、ニーナの圧に耐えられず、ただ下がり始める。そして、引くに引けぬ首謀者については。
「ニーナ。使命は既に得ています。神々も、こうしてそれを認めています。」
「退かぬのならば退かせましょう。」
非致死性の攻撃手段、盾による打撃。それこそ加減を誤ればどうなるか分かったものではないが、大盾を片手にニーナが腕を振れば、輝く道をふさぐ者達は、全て一掃される。
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