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16章 隣国への道行き
料理を作りながら
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場の喧騒に当てられていた少年たちは、纏めてしっかり威圧して、少し熱を冷ましてから送り出した。今はファルコが散々目にしたように、一人づつしっかりと一体の魔物を相手しては、喜びつつと微笑ましい様子ではある。
それらを気持ちはわかるからだろう、随分とやんわりとしか注意できていないファルコには、後で話をしなければとそのような事を考えながらもトモエは料理を進める手を止めない。
「オユキさんは。」
「大丈夫ですよ。またしばらくの間は、始まりの町の時と同じ状態にはなるでしょうが。」
最初にオユキが野外での調理をするために作ったのが、王都だからということもあったのだろう。そこからさらに日が建った、その間に随分と改良が進んだものであるらしい。今となっては、すっかりとシステムキッチンの様な状態になっている。オユキがどうした所で知識の無かった魔道具。それがしっかりと組み込まれ、コンロというよりは電磁調理器といった様子の箇所、水が出せる、貯められる簡易の流しのようなものまでが取り付けられた物が、今はいくつか並べられている。
「何とも、献身的な物ですね。」
「あまりに自罰的とは、私も思いますが。やはり本人の納得というのも大事ですから。」
「成程。ままある話ではありますね。では、行き過ぎるようであれば。」
「ええ。私が。」
そうして、今はトモエとアルノーで並んで料理などを行っている。流石に一度に管理ができる量、勧められる手順というのは、トモエとアルノーでは比べ物にならない。トモエはあくまで一角だけを使っているのだが、アルノーに至っては、調理台までを持ち込んでまさに八面六臂の活躍中。そして、その中でもこうしてトモエと雑談に興じる余裕すらある。王都までの移動の間、途中で馬車の揺れにやられたりもしたが、始まりの町からしっかりとついて来ている教会の子供たちも監督しながらだというのに。
こちらの子供たちは、いよいよ教会から出る事を決めたようで、祭りも何のそのと、こうして今は忙しく下ごしらえを行っている。
「さて、私の方も、そろそろ用意が整いますが。」
「私の方も問題ありません。ただ、コースとしてお出しするには。」
「そう言えば、その辺り打ち合わせしていませんでしたね。」
トモエの方ではどうしても時間が取れなかったが、アルノーはそれこそが仕事でもある。王都中とまでは行かないが、日々時間を使って実にあれこれと食材を探し回り、とにかくあれこれと買い集めてくれた。そして、その中には以前三狐神に言われた大豆を使ったと分かる、慣れた香りとはかなり差があるが、醤油。こちらも同様に、随分と香りの違う味噌なども。味を試してみたが、やはりそれぞれに差異を感じたため、それが変わった味覚によるものか分からず難儀をしながらの用意となっている。
「やはり和食というのは、素材の使い方が面白いものですね。」
「生憎と、家庭以上の知識が無いので。」
「そればかりは、仕方ないものでしょうね。」
そうして話すアルノーは、本当にあれこれと多方面の料理に手を出しているようで、今はアイリスたちに向けた者だろう。王都で武器として購入するのではないと言って、随分と不思議な顔はされたが、レイピアに集められた肉を次々と刺している。突き刺す肉にしても、種類ごとに下ごしらえの方法を変えてと、実に芸の細かい事だ。
「オユキさんは、出発まではまたお休みでしょうね。」
そして、そうして話し、流石にトモエよりも慣れている相手に仕上げとしての盛り付けを任せるためにと、事前にアルノーに完成品はここにと言われた場所に、あれこれと用意した物を置いていく。トモエにしても、流石に容易に時間がかかると思っている物は、事前に用意した物を持ち込んでいる。せっかく馴染んだものとは違うとはいえ味噌があるのだからと、砂糖や酒で簡単に整え、試しにとばかりそこにいくらかの肉を付けこんでみたりもしたものだ。
「こちらは、何でしたか、確か。」
「そうですね、葉山椒を添える事が多いのですが。」
「流石に用意がありませんね。」
そして、そうは言いながらも簡単に味を確かめるための物を口に運んで、似つかわしいと判断できる緑を当然としてアルノーが添える。
「確か、出立は三日後でしたか。」
「そのように聞いていますね。」
隣国への出立についても、実に慌ただしいものだ。
逃げ出すように、正直そう言っても問題が無い。
事実、これから王国で起こる混乱や、そこでオユキに求められる面会など、そう言った雑事から逃げる為という意味合いもあるのだから。背景には、敵意を向ける先の制御もあると、オユキは笑いながらトモエにそのようにも話はしたものだ。一所に集まっていれば、そして、オユキとマリーア公爵家が王都にいる間に作る面会の断りなどは、席次を理由にしたものが多くなる。今回の事にしても、予測の内。それも理由にとすれば、結局原因が何処にあると言わざるを得ないものになる。そうしてしまえば、色々と無用な不和を生むからと。一先ず好き放題を変わらず行った上で、追いかける事も難しい隣国へと旅立った、そうするほうが色々と楽なのだ。人ではなく、神に敵意をというのは、こちらの世界ではなかなか難しい。それでもというものたちは、いよいよこの国で守るべき民にはならないのだから。
「何とも、忙しない事ですね。」
「ええ、本当に。」
そうして話している間、互いにやはり料理の手を止めず、その合間にもアルノーの用意した皿と、トモエが用意した皿を並べて、どの順番で出すかを検討したりもする。今回料理を運ぶ先は、国王陛下夫妻に、公爵家が二つという、実に愉快な相手にとなっている。加えて、神殿に運ばなくても良いのかという、その疑問に対してもオユキがユリアに連れ出されて行っても席に残る神々の姿を見れば実にわかりやすい。
しいて言えば、そこで事態を引き起こしたものが気を失って運ばれ、予測も伝えられていないものが残っているのは、トモエとしてもなんとも言えない感情は覚えてしまう。すっかりと顔から血の気が引いている。戦と武技の神を祀る教会、その司祭を務めるマルタについては、実に慣れた仕草でその名を冠する神の傍らに立ち位置を変えているが。
「アペリティフは、何をお出しするのでしたか。」
「壁の外でもあるため、今は控えておりますが。」
「でしたら、オードブルは飛ばしましょうか。」
そこまでアルノーが口にしたところで、見覚えのない樽や、これまで備えた覚えのある果物を付けこんだ蜂蜜酒などが台の上に並ぶ。
「リクエストとなれば、応えぬわけにはいきませんね。では、そうですね、こちらのお酒を好まれる方には。」
そしてアルノーがまた細かく配膳の方法を、王城付きの使用人と両公爵家の使用人に説明していく。
「私たちも、これでひと段落としたいものですが。」
作った品を並べる先が並べる先であるため、とにかく気も使うし量も多い。
こちらの生産力というのは、低いかと思えば素材があれば個人の能力がやはり加護でかなりかさましされる世界でもあり、魔術もある。素材さえあれば、そこまで長い期間で無くとも十分以上の備えができる。特に今は新年祭。各地の領主たちが、それぞれ多くの人員を引き連れてきていることも影響はしているのだろう。
壁の外には、流石に王家の人々は同席している相手というのはほとんどいないが、他に作られた即席の木組みの台の上には相応の人数がいる。そちらにも出さないわけにはいかないのだから。そして、愉快な食欲を持つ来賓たちもいる。そちらの用意もあるため、多くの人に囲まれての状況ともまた違う鉄火場が、今この場にはある。
「ええ、川は流石に見えない程度には遠いですから。」
「これからが本番ですよね。」
「トモエさんは、良いのですか。」
「ええ。後事を託すと、そうオユキさんも考えての事でしょうから。」
それこそ事前に用意された木々と狩猟の神の聖印。そちらについては、いよいよ神その物がこちらに顕れたこともある。オユキが渡すよりも、実にわかりやすい説得力というものがあるだろう。用意の時間がそれなりに続いていた合間には、王太子の席に己の成果を掲げていくものもいたのだが、今となってはすっかりとそちらは誰も彼もが避けているという事はあるが。それこそ、少し離れたところでどうにか鹿を仕留めて快哉を上げているファルコ達が、そのまま残ったそれを掲げて持っていくことだろう。恐らく先にトモエの所に顔を出すだろうと、そう言った予測はあるが、それこそその時に一言いえば持っていくはずでもある。
「こう、これまでであれば、何となく味見等もあり、合間に少しで満足も出来たのですが。」
別の問題としては、やはりこうしてあれこれと忙しなく動けば、トモエとしても空腹は覚えるものだ。一先ずの物を並べてしまえば、後はとそのような事も考えていたのだが、どうにもそれが許されそうにない気配もある。
「これからが本番ですよ。」
「では、その前に簡単に口に入れるだけとしましょうか。」
「ええ。そうなる物です。私たちの食事は、前と後、そう相場が決まっていますから。」
「事前に食べてしまうと、確認も難しくなりそうですが。」
「ですから、それ用の物を用意するわけです。」
使用人たちが、アルノーに言われた料理を、更にこちらの文化に合わせてだろう。またいくつかの事を言えば、それを受け入れた上で、アルノーもそこに手を加えて返す。そして、それらの料理が粛々と運ばれていく。流石に草原、そこではワゴンなど使う事も出来ないが、そればかりは仕方のない事でもある。使用人たちが列を作て料理を運んでいく様を見送るというのは、トモエにしても思えばこのような描写も過去の書物にあったようなと、そのように感じるものだ。そして、この場の主催が終われば、特別に労を担った相手からも、人が送られてくる。アイリスの横、フスカの横には、それぞれ一度見れば忘れる事も出来ない相手がさも当然とばかりに陣取っていることもある。
「まだまだ、落ち着くまでは時間がかかりそうですね。」
「ええ、有難い事ですとも。トモエさんも、風が冷たいとはいえ水だけは。」
「火の側にずっといる訳ですからね。」
王都での日々は、やはり忙しない。ここまでの道中にしても。隣国への道行きは、先方の準備を待つ意味もあるため、ゆっくりとしたものとなると話には聞いているが、何やらまた急ぎでとそう言う話も出そうなものだと、トモエとしてはそちらも少々不安に思ってしまう。オユキははっきりと口にしていない。ただ、通常神職たちが向かうとなれば四カ月、しかしオユキはその頃には始まりの町に戻ると計画を立てているのだから。
それらを気持ちはわかるからだろう、随分とやんわりとしか注意できていないファルコには、後で話をしなければとそのような事を考えながらもトモエは料理を進める手を止めない。
「オユキさんは。」
「大丈夫ですよ。またしばらくの間は、始まりの町の時と同じ状態にはなるでしょうが。」
最初にオユキが野外での調理をするために作ったのが、王都だからということもあったのだろう。そこからさらに日が建った、その間に随分と改良が進んだものであるらしい。今となっては、すっかりとシステムキッチンの様な状態になっている。オユキがどうした所で知識の無かった魔道具。それがしっかりと組み込まれ、コンロというよりは電磁調理器といった様子の箇所、水が出せる、貯められる簡易の流しのようなものまでが取り付けられた物が、今はいくつか並べられている。
「何とも、献身的な物ですね。」
「あまりに自罰的とは、私も思いますが。やはり本人の納得というのも大事ですから。」
「成程。ままある話ではありますね。では、行き過ぎるようであれば。」
「ええ。私が。」
そうして、今はトモエとアルノーで並んで料理などを行っている。流石に一度に管理ができる量、勧められる手順というのは、トモエとアルノーでは比べ物にならない。トモエはあくまで一角だけを使っているのだが、アルノーに至っては、調理台までを持ち込んでまさに八面六臂の活躍中。そして、その中でもこうしてトモエと雑談に興じる余裕すらある。王都までの移動の間、途中で馬車の揺れにやられたりもしたが、始まりの町からしっかりとついて来ている教会の子供たちも監督しながらだというのに。
こちらの子供たちは、いよいよ教会から出る事を決めたようで、祭りも何のそのと、こうして今は忙しく下ごしらえを行っている。
「さて、私の方も、そろそろ用意が整いますが。」
「私の方も問題ありません。ただ、コースとしてお出しするには。」
「そう言えば、その辺り打ち合わせしていませんでしたね。」
トモエの方ではどうしても時間が取れなかったが、アルノーはそれこそが仕事でもある。王都中とまでは行かないが、日々時間を使って実にあれこれと食材を探し回り、とにかくあれこれと買い集めてくれた。そして、その中には以前三狐神に言われた大豆を使ったと分かる、慣れた香りとはかなり差があるが、醤油。こちらも同様に、随分と香りの違う味噌なども。味を試してみたが、やはりそれぞれに差異を感じたため、それが変わった味覚によるものか分からず難儀をしながらの用意となっている。
「やはり和食というのは、素材の使い方が面白いものですね。」
「生憎と、家庭以上の知識が無いので。」
「そればかりは、仕方ないものでしょうね。」
そうして話すアルノーは、本当にあれこれと多方面の料理に手を出しているようで、今はアイリスたちに向けた者だろう。王都で武器として購入するのではないと言って、随分と不思議な顔はされたが、レイピアに集められた肉を次々と刺している。突き刺す肉にしても、種類ごとに下ごしらえの方法を変えてと、実に芸の細かい事だ。
「オユキさんは、出発まではまたお休みでしょうね。」
そして、そうして話し、流石にトモエよりも慣れている相手に仕上げとしての盛り付けを任せるためにと、事前にアルノーに完成品はここにと言われた場所に、あれこれと用意した物を置いていく。トモエにしても、流石に容易に時間がかかると思っている物は、事前に用意した物を持ち込んでいる。せっかく馴染んだものとは違うとはいえ味噌があるのだからと、砂糖や酒で簡単に整え、試しにとばかりそこにいくらかの肉を付けこんでみたりもしたものだ。
「こちらは、何でしたか、確か。」
「そうですね、葉山椒を添える事が多いのですが。」
「流石に用意がありませんね。」
そして、そうは言いながらも簡単に味を確かめるための物を口に運んで、似つかわしいと判断できる緑を当然としてアルノーが添える。
「確か、出立は三日後でしたか。」
「そのように聞いていますね。」
隣国への出立についても、実に慌ただしいものだ。
逃げ出すように、正直そう言っても問題が無い。
事実、これから王国で起こる混乱や、そこでオユキに求められる面会など、そう言った雑事から逃げる為という意味合いもあるのだから。背景には、敵意を向ける先の制御もあると、オユキは笑いながらトモエにそのようにも話はしたものだ。一所に集まっていれば、そして、オユキとマリーア公爵家が王都にいる間に作る面会の断りなどは、席次を理由にしたものが多くなる。今回の事にしても、予測の内。それも理由にとすれば、結局原因が何処にあると言わざるを得ないものになる。そうしてしまえば、色々と無用な不和を生むからと。一先ず好き放題を変わらず行った上で、追いかける事も難しい隣国へと旅立った、そうするほうが色々と楽なのだ。人ではなく、神に敵意をというのは、こちらの世界ではなかなか難しい。それでもというものたちは、いよいよこの国で守るべき民にはならないのだから。
「何とも、忙しない事ですね。」
「ええ、本当に。」
そうして話している間、互いにやはり料理の手を止めず、その合間にもアルノーの用意した皿と、トモエが用意した皿を並べて、どの順番で出すかを検討したりもする。今回料理を運ぶ先は、国王陛下夫妻に、公爵家が二つという、実に愉快な相手にとなっている。加えて、神殿に運ばなくても良いのかという、その疑問に対してもオユキがユリアに連れ出されて行っても席に残る神々の姿を見れば実にわかりやすい。
しいて言えば、そこで事態を引き起こしたものが気を失って運ばれ、予測も伝えられていないものが残っているのは、トモエとしてもなんとも言えない感情は覚えてしまう。すっかりと顔から血の気が引いている。戦と武技の神を祀る教会、その司祭を務めるマルタについては、実に慣れた仕草でその名を冠する神の傍らに立ち位置を変えているが。
「アペリティフは、何をお出しするのでしたか。」
「壁の外でもあるため、今は控えておりますが。」
「でしたら、オードブルは飛ばしましょうか。」
そこまでアルノーが口にしたところで、見覚えのない樽や、これまで備えた覚えのある果物を付けこんだ蜂蜜酒などが台の上に並ぶ。
「リクエストとなれば、応えぬわけにはいきませんね。では、そうですね、こちらのお酒を好まれる方には。」
そしてアルノーがまた細かく配膳の方法を、王城付きの使用人と両公爵家の使用人に説明していく。
「私たちも、これでひと段落としたいものですが。」
作った品を並べる先が並べる先であるため、とにかく気も使うし量も多い。
こちらの生産力というのは、低いかと思えば素材があれば個人の能力がやはり加護でかなりかさましされる世界でもあり、魔術もある。素材さえあれば、そこまで長い期間で無くとも十分以上の備えができる。特に今は新年祭。各地の領主たちが、それぞれ多くの人員を引き連れてきていることも影響はしているのだろう。
壁の外には、流石に王家の人々は同席している相手というのはほとんどいないが、他に作られた即席の木組みの台の上には相応の人数がいる。そちらにも出さないわけにはいかないのだから。そして、愉快な食欲を持つ来賓たちもいる。そちらの用意もあるため、多くの人に囲まれての状況ともまた違う鉄火場が、今この場にはある。
「ええ、川は流石に見えない程度には遠いですから。」
「これからが本番ですよね。」
「トモエさんは、良いのですか。」
「ええ。後事を託すと、そうオユキさんも考えての事でしょうから。」
それこそ事前に用意された木々と狩猟の神の聖印。そちらについては、いよいよ神その物がこちらに顕れたこともある。オユキが渡すよりも、実にわかりやすい説得力というものがあるだろう。用意の時間がそれなりに続いていた合間には、王太子の席に己の成果を掲げていくものもいたのだが、今となってはすっかりとそちらは誰も彼もが避けているという事はあるが。それこそ、少し離れたところでどうにか鹿を仕留めて快哉を上げているファルコ達が、そのまま残ったそれを掲げて持っていくことだろう。恐らく先にトモエの所に顔を出すだろうと、そう言った予測はあるが、それこそその時に一言いえば持っていくはずでもある。
「こう、これまでであれば、何となく味見等もあり、合間に少しで満足も出来たのですが。」
別の問題としては、やはりこうしてあれこれと忙しなく動けば、トモエとしても空腹は覚えるものだ。一先ずの物を並べてしまえば、後はとそのような事も考えていたのだが、どうにもそれが許されそうにない気配もある。
「これからが本番ですよ。」
「では、その前に簡単に口に入れるだけとしましょうか。」
「ええ。そうなる物です。私たちの食事は、前と後、そう相場が決まっていますから。」
「事前に食べてしまうと、確認も難しくなりそうですが。」
「ですから、それ用の物を用意するわけです。」
使用人たちが、アルノーに言われた料理を、更にこちらの文化に合わせてだろう。またいくつかの事を言えば、それを受け入れた上で、アルノーもそこに手を加えて返す。そして、それらの料理が粛々と運ばれていく。流石に草原、そこではワゴンなど使う事も出来ないが、そればかりは仕方のない事でもある。使用人たちが列を作て料理を運んでいく様を見送るというのは、トモエにしても思えばこのような描写も過去の書物にあったようなと、そのように感じるものだ。そして、この場の主催が終われば、特別に労を担った相手からも、人が送られてくる。アイリスの横、フスカの横には、それぞれ一度見れば忘れる事も出来ない相手がさも当然とばかりに陣取っていることもある。
「まだまだ、落ち着くまでは時間がかかりそうですね。」
「ええ、有難い事ですとも。トモエさんも、風が冷たいとはいえ水だけは。」
「火の側にずっといる訳ですからね。」
王都での日々は、やはり忙しない。ここまでの道中にしても。隣国への道行きは、先方の準備を待つ意味もあるため、ゆっくりとしたものとなると話には聞いているが、何やらまた急ぎでとそう言う話も出そうなものだと、トモエとしてはそちらも少々不安に思ってしまう。オユキははっきりと口にしていない。ただ、通常神職たちが向かうとなれば四カ月、しかしオユキはその頃には始まりの町に戻ると計画を立てているのだから。
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