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15章 這いよるもの
画策
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席に揃う物たちが物足りないと、そう考えたところで時計の針はただ容赦なく進む。話題に上る事柄が、多少の仕事としての側面。共有すべき事柄からそれ以外、いよいよ日々の雑多な事に移って少しもすれば、周囲から。
トモエとオユキには近衛から。少女達には侍女の方から。殊更口に出して、当然主役ではなく、側に控えているだけなのだから、特別な理由がなければ口に出すことは無いのだが。それでも佇まい以上の空気が漂い始めれば、それに気が付いた物として暇を告げて、その場を終わりにする。このところ立て続けに起こった催し物、その中で何に特に興味を引かれたのかなどは、その場に立てなかったものとして、実に興味をひかれる物であったし、先々を考えればもう少し情報を集めたいものでもあるのだが。それこそ、人を使ってと言われてしまえばその通りでもあるため、今後の予定で最も大きい物。祈願祭の準備の日程の連絡と、王都までの移動。領都から加わった子供たちについては、改めて今後の去就を話す場を設けた上で、王都ではな川沿いの町で新しい教会を整える為に手伝って欲しいといった、大まかな予定を互いに確認した上で。
今はこの場にいる少女たちにしても、王都までの移動はほぼ強制、その理解はあるようで何やら年ごろにそぐわぬ表情を浮かべたりもした。
そういった実に悲喜交々、その言葉が似あう別れの挨拶を済ませれば、トモエとオユキは寄り道することなく屋敷に戻る。朝と呼ぶには遅い時間に出たこともあり、戻ってみれば少し昼を回る位。普段であれば、訓練を終えて休憩がたらに賑やかと御いうほどでもないが、同席する顔の多い食卓に揃っている所だが、今日は珍しくトモエとオユキだけ。アルノーは当然のように彼の城、屋敷内の厨房周りにいるのだろうが、常々であれば夜が遅いこともあり、この時間に起き上がってくるヴィルヘルミナにしても、この場にいない。
「シグルド君とパウ君には、申し訳ない流れが生まれてしまったでしょうか。」
過去の事であれば、食事の用意が無駄になどという声も上がるかもしれないが、こちらの世界ではオユキの食べる量など間食にもならぬと言う者達が多い。トモエにしても人並みには食べるし、肉が主体となっているため多少の重さは感じるかもしれない物だが、教会から借りている者達もいる。とかく口の多い屋敷ではある。突然浮いた食事、その争奪戦の喧騒はあるかもしれないのだが、残って動向などという事はまず起こらない。
「直接声を掛けられて、私も含めて月と安息の女神様より直接苦言を呈されていますから。」
別れ際。すっかり見慣れた助祭が、実に綺麗な笑顔でオユキの好意で申し出た事。それを行う事が出来るのは合格点を得た物だけ、そう言った宣言を行っていた。それに対して、実に難しいし顔を少女たちが下あたり、そういった事を苦手とする少年たちは実に困難を得るだろうと。そう言った心配りがトモエの口を突いて出るが、オユキとしてはそれは遅かれ早かれというしかない。
「今後の事も考えれば、そうなりますか。その割に。」
「メイ様への配慮でしょうか。もしくは、神々の趣向の違いとなりますが。」
戦と武技、そちらに名を連ねるのであれば、少々の格式、形式ばった振る舞いは見逃されるのだと。神々の言葉を解釈するれ場そのようにもとれるのだ。
実際、少年たちはどうした所で代官に預けられたこの地方一体の責任者、その名代の下についているわけでもある。そちらの用事があり、呼ばれていると言えば止めるのも難しいのだろう。そして、それが直接二人の名を呼んだ神、その柱が喜ぶであろう事柄であるならば猶の事。
「正直、その辺りの優先順位と申しましょうか。」
「神々の意向が最優先なのでしょう。ただし、一柱によるものではないため、各々の心にある相手、それを慮ることを蔑ろにせずむしろ尊重してくださっている、そう言う事なのでしょうね。」
それが許されるのは、少年2人がはっきりと手に握るそれの先、未だ何処を目指すとも決めているそぶりもないし、振るう刃にしてもふらふらとしているものだが。その先を信じ、歩くと決めている。それだけは感じられる。だからこそ、戦と武技に名前を呼ばれたこともある。そして、その道に足を、特に一柱の神、その道に足を踏み出した以上、こちらの神職の人々はそれを止めないのであろう。あまりに未知から外れたと、そう感じれば何かあるのかもしれないが。
「有難い事ですね。今回の事で、少しでもお返しになればと思いますが。」
トモエの言葉に、オユキはただ頷く。
形式として、確かに巫女であるオユキが聞き届はするのだが。
「加減はしてあげてくださいね。」
ただし、この度名を連ねる事が出来るのは、ほとんどが教え子たちだ。実際としてはトモエの教えを受けて、それぞれがその先をどう考え、どう進むつもりなのか。それを口にする場になるだろう。
ともすれば、話を聞きつけたアベルやアイリス、第二騎士団に所属する者達のいくらかも望むかもしれぬが。そこまで思い至り、オユキはカレンに向けて。
「当屋敷に努める者達は、流石に私が聞き届けるべきでない道に生きる方も多いですから、そうですね。戦と武技、その巫女が内々にそれぞれの祈願をかの神に届けるために聞き届ける、その場があるのだと布告を。参加の可否については。」
教会であれば、明確な、式典としてか作法としてか。そう言った採点基準があるのだろうが、オユキは生憎それを持っていない。
「オユキ様がよろしければ、アベル様にお預けさせて頂ければと。」
「流石にアベル様に確認を取ってからとなりますが、そうですね。それが無理もないでしょう。どちらにせよ教会でそういった時間を設けます。常の祭りが終わってからとなりますが。」
「警備の計画は、後程ゲラルド様と相談しながら。」
本来であれば、それこそ借り受けている人材の仕事なのだが、そちらが大挙して望んでしまえば警備などと言っている暇もない。今度ばかりは傭兵ギルド辺りに頼ることになるだろう。身内、顔見知り、そう言った意味ではもう少し幅を取ってもいいかもしれないとオユキは思うものだが、際限がなくなりそうであるため、そうして区切ってもいる。
「ええ。お願いしますね。」
実際の計画の立案、それについては判断ができる事を今の所カレンに任せてはいない。しかしこうして折に触れて仕事を任せてみれば、確かに己の不足を正しく認識したうえで、無難であり良い選択を行えることが見て取れる。かつてはアマリーアの過大評価等と、オユキも考えていたのだが。要は、それほど彼女が断れぬ筋から。未だ年若い相手だ。要は彼女の両親、汚染っされていた相手が押し付けた結果がかつての領都での一件なのだろう。
最悪の予想にまで踏み込めば、カレンを経由してアマリーアもという事になるのだが。ただ、それについてはいよいよ元からの予定、その全てを知っているミズキリを問い詰めなければならない。聞いたことで陰鬱な気分になるだけだと、それを理解しているオユキはさらさら行う気はないが。
「それと、シェリア様とタルヤ様で、リオール助祭と相談の上で。」
「オユキ様の衣装は用意がありますが。」
「トモエさまは、どうしましょうか。公務としての装いを選ぶのか、オユキ様と並ぶための装いを。」
さて、一応は内々とは言え神事となるため、場を整える以前にそれを行う物を整える必要もある。オユキの物は、なんだかんだと用意があるのだが。
「実際は、トモエさんにとなる物が主体ですから。」
「戦と武技とすれば、鎧となりますが。」
神像にしても、鎧姿の、それも重装の、柱なのだ。未だにそんな物の用意はない。トモエが自身で身に着けるという以外にも、屋敷に一そろいを飾りたいなどと話した事もあり、オユキからそっと王太子妃宛の手紙にそういった話も混ぜてはいるのだが。それにしても与えられるのなら、王城で功績を称えるとともにとなる。無造作に田舎町迄送り出すわけにもいかない。
「羽織にしても、図柄を細かくお願いしましたし。」
「オユキ様が領都で注文されている衣装ですね。一つ完成したものがあるのですが。」
「アベル様から言われたこともあり、公爵様にお伝えした所まずは王都にという話でしたから。」
以前、褒章の内容に困っている、その話と共にトモエがアベルに言われたこともある。オユキに話せばそれもそうだと、手紙を方々に出してみれば慣れた物としてそれを参考にした上で考えたいと、そう言った返事が来たこともあり出来上がった物は王都に送られている。送り出すのは一着でしかないが、次の服はオユキ達が領都に向かう日程も近い事が有り、その時に改めて調整を行って仕上げをとそう言う話になっているらしい。
らしいというのも、気が付けばその発注の管理がオユキの手を離れ、シェリアと公爵夫人の間で管理され始めているからなのだが。
「お二方揃いの物が、一そろい。」
「あれは、普段着の意味合いが強いものですから。知らぬものが多いとはいえ、そう言った来歴がある物で真摯な祈りを聞き届けるのは。」
「失礼いたしました。」
「知らぬものである以上、そればかりは仕方ない事でしょう。」
今ある紬は、あくまでカジュアルな装いだ。絹独特の上品な光沢もあるし、簡素な上掛けもトモエとシェリアが店員を交えて話し合った結果として用意されている。そして、知らぬものにとってみれば非日常を感じる物なのかもしれないが。式典向きではない。それを知っている身としては、当然それを良しと出来る物ではない。
では、他に用意があるかと言われれば。
「以前の様に、トモエさまとオユキ様で全く異なる装いをして頂くしか。」
ただ、式典に合わせて今ある物を賭すれば、和装のオユキと洋装のトモエとならざるを得ない。
「私たちの不足ですから、そればかりは申し訳ありませんが。」
それこそトモエの物も併せて作ればよかったのかもしれないが、正式に位を持っているのはオユキだけだ。トモエはあくまで与えてもいいと、そう以前に言われただけで、現状それを受けているわけではない。正式な装束が無いのも当たり前の事だ。
「リオール様も交えて、一度相談してとするしかないでしょうね。」
そして、この場にいる者達は教会の流儀に明るいわけでは無い為、結論としてオユキがそう纏めて終わる。この会話、ここで改めて焦点の当たった問題は、近衛たちにより報告され、王都に向かった折、領都でも、トモエと揃って着せ替え人形の役目を全うすることを求められるだろう。
トモエとオユキには近衛から。少女達には侍女の方から。殊更口に出して、当然主役ではなく、側に控えているだけなのだから、特別な理由がなければ口に出すことは無いのだが。それでも佇まい以上の空気が漂い始めれば、それに気が付いた物として暇を告げて、その場を終わりにする。このところ立て続けに起こった催し物、その中で何に特に興味を引かれたのかなどは、その場に立てなかったものとして、実に興味をひかれる物であったし、先々を考えればもう少し情報を集めたいものでもあるのだが。それこそ、人を使ってと言われてしまえばその通りでもあるため、今後の予定で最も大きい物。祈願祭の準備の日程の連絡と、王都までの移動。領都から加わった子供たちについては、改めて今後の去就を話す場を設けた上で、王都ではな川沿いの町で新しい教会を整える為に手伝って欲しいといった、大まかな予定を互いに確認した上で。
今はこの場にいる少女たちにしても、王都までの移動はほぼ強制、その理解はあるようで何やら年ごろにそぐわぬ表情を浮かべたりもした。
そういった実に悲喜交々、その言葉が似あう別れの挨拶を済ませれば、トモエとオユキは寄り道することなく屋敷に戻る。朝と呼ぶには遅い時間に出たこともあり、戻ってみれば少し昼を回る位。普段であれば、訓練を終えて休憩がたらに賑やかと御いうほどでもないが、同席する顔の多い食卓に揃っている所だが、今日は珍しくトモエとオユキだけ。アルノーは当然のように彼の城、屋敷内の厨房周りにいるのだろうが、常々であれば夜が遅いこともあり、この時間に起き上がってくるヴィルヘルミナにしても、この場にいない。
「シグルド君とパウ君には、申し訳ない流れが生まれてしまったでしょうか。」
過去の事であれば、食事の用意が無駄になどという声も上がるかもしれないが、こちらの世界ではオユキの食べる量など間食にもならぬと言う者達が多い。トモエにしても人並みには食べるし、肉が主体となっているため多少の重さは感じるかもしれない物だが、教会から借りている者達もいる。とかく口の多い屋敷ではある。突然浮いた食事、その争奪戦の喧騒はあるかもしれないのだが、残って動向などという事はまず起こらない。
「直接声を掛けられて、私も含めて月と安息の女神様より直接苦言を呈されていますから。」
別れ際。すっかり見慣れた助祭が、実に綺麗な笑顔でオユキの好意で申し出た事。それを行う事が出来るのは合格点を得た物だけ、そう言った宣言を行っていた。それに対して、実に難しいし顔を少女たちが下あたり、そういった事を苦手とする少年たちは実に困難を得るだろうと。そう言った心配りがトモエの口を突いて出るが、オユキとしてはそれは遅かれ早かれというしかない。
「今後の事も考えれば、そうなりますか。その割に。」
「メイ様への配慮でしょうか。もしくは、神々の趣向の違いとなりますが。」
戦と武技、そちらに名を連ねるのであれば、少々の格式、形式ばった振る舞いは見逃されるのだと。神々の言葉を解釈するれ場そのようにもとれるのだ。
実際、少年たちはどうした所で代官に預けられたこの地方一体の責任者、その名代の下についているわけでもある。そちらの用事があり、呼ばれていると言えば止めるのも難しいのだろう。そして、それが直接二人の名を呼んだ神、その柱が喜ぶであろう事柄であるならば猶の事。
「正直、その辺りの優先順位と申しましょうか。」
「神々の意向が最優先なのでしょう。ただし、一柱によるものではないため、各々の心にある相手、それを慮ることを蔑ろにせずむしろ尊重してくださっている、そう言う事なのでしょうね。」
それが許されるのは、少年2人がはっきりと手に握るそれの先、未だ何処を目指すとも決めているそぶりもないし、振るう刃にしてもふらふらとしているものだが。その先を信じ、歩くと決めている。それだけは感じられる。だからこそ、戦と武技に名前を呼ばれたこともある。そして、その道に足を、特に一柱の神、その道に足を踏み出した以上、こちらの神職の人々はそれを止めないのであろう。あまりに未知から外れたと、そう感じれば何かあるのかもしれないが。
「有難い事ですね。今回の事で、少しでもお返しになればと思いますが。」
トモエの言葉に、オユキはただ頷く。
形式として、確かに巫女であるオユキが聞き届はするのだが。
「加減はしてあげてくださいね。」
ただし、この度名を連ねる事が出来るのは、ほとんどが教え子たちだ。実際としてはトモエの教えを受けて、それぞれがその先をどう考え、どう進むつもりなのか。それを口にする場になるだろう。
ともすれば、話を聞きつけたアベルやアイリス、第二騎士団に所属する者達のいくらかも望むかもしれぬが。そこまで思い至り、オユキはカレンに向けて。
「当屋敷に努める者達は、流石に私が聞き届けるべきでない道に生きる方も多いですから、そうですね。戦と武技、その巫女が内々にそれぞれの祈願をかの神に届けるために聞き届ける、その場があるのだと布告を。参加の可否については。」
教会であれば、明確な、式典としてか作法としてか。そう言った採点基準があるのだろうが、オユキは生憎それを持っていない。
「オユキ様がよろしければ、アベル様にお預けさせて頂ければと。」
「流石にアベル様に確認を取ってからとなりますが、そうですね。それが無理もないでしょう。どちらにせよ教会でそういった時間を設けます。常の祭りが終わってからとなりますが。」
「警備の計画は、後程ゲラルド様と相談しながら。」
本来であれば、それこそ借り受けている人材の仕事なのだが、そちらが大挙して望んでしまえば警備などと言っている暇もない。今度ばかりは傭兵ギルド辺りに頼ることになるだろう。身内、顔見知り、そう言った意味ではもう少し幅を取ってもいいかもしれないとオユキは思うものだが、際限がなくなりそうであるため、そうして区切ってもいる。
「ええ。お願いしますね。」
実際の計画の立案、それについては判断ができる事を今の所カレンに任せてはいない。しかしこうして折に触れて仕事を任せてみれば、確かに己の不足を正しく認識したうえで、無難であり良い選択を行えることが見て取れる。かつてはアマリーアの過大評価等と、オユキも考えていたのだが。要は、それほど彼女が断れぬ筋から。未だ年若い相手だ。要は彼女の両親、汚染っされていた相手が押し付けた結果がかつての領都での一件なのだろう。
最悪の予想にまで踏み込めば、カレンを経由してアマリーアもという事になるのだが。ただ、それについてはいよいよ元からの予定、その全てを知っているミズキリを問い詰めなければならない。聞いたことで陰鬱な気分になるだけだと、それを理解しているオユキはさらさら行う気はないが。
「それと、シェリア様とタルヤ様で、リオール助祭と相談の上で。」
「オユキ様の衣装は用意がありますが。」
「トモエさまは、どうしましょうか。公務としての装いを選ぶのか、オユキ様と並ぶための装いを。」
さて、一応は内々とは言え神事となるため、場を整える以前にそれを行う物を整える必要もある。オユキの物は、なんだかんだと用意があるのだが。
「実際は、トモエさんにとなる物が主体ですから。」
「戦と武技とすれば、鎧となりますが。」
神像にしても、鎧姿の、それも重装の、柱なのだ。未だにそんな物の用意はない。トモエが自身で身に着けるという以外にも、屋敷に一そろいを飾りたいなどと話した事もあり、オユキからそっと王太子妃宛の手紙にそういった話も混ぜてはいるのだが。それにしても与えられるのなら、王城で功績を称えるとともにとなる。無造作に田舎町迄送り出すわけにもいかない。
「羽織にしても、図柄を細かくお願いしましたし。」
「オユキ様が領都で注文されている衣装ですね。一つ完成したものがあるのですが。」
「アベル様から言われたこともあり、公爵様にお伝えした所まずは王都にという話でしたから。」
以前、褒章の内容に困っている、その話と共にトモエがアベルに言われたこともある。オユキに話せばそれもそうだと、手紙を方々に出してみれば慣れた物としてそれを参考にした上で考えたいと、そう言った返事が来たこともあり出来上がった物は王都に送られている。送り出すのは一着でしかないが、次の服はオユキ達が領都に向かう日程も近い事が有り、その時に改めて調整を行って仕上げをとそう言う話になっているらしい。
らしいというのも、気が付けばその発注の管理がオユキの手を離れ、シェリアと公爵夫人の間で管理され始めているからなのだが。
「お二方揃いの物が、一そろい。」
「あれは、普段着の意味合いが強いものですから。知らぬものが多いとはいえ、そう言った来歴がある物で真摯な祈りを聞き届けるのは。」
「失礼いたしました。」
「知らぬものである以上、そればかりは仕方ない事でしょう。」
今ある紬は、あくまでカジュアルな装いだ。絹独特の上品な光沢もあるし、簡素な上掛けもトモエとシェリアが店員を交えて話し合った結果として用意されている。そして、知らぬものにとってみれば非日常を感じる物なのかもしれないが。式典向きではない。それを知っている身としては、当然それを良しと出来る物ではない。
では、他に用意があるかと言われれば。
「以前の様に、トモエさまとオユキ様で全く異なる装いをして頂くしか。」
ただ、式典に合わせて今ある物を賭すれば、和装のオユキと洋装のトモエとならざるを得ない。
「私たちの不足ですから、そればかりは申し訳ありませんが。」
それこそトモエの物も併せて作ればよかったのかもしれないが、正式に位を持っているのはオユキだけだ。トモエはあくまで与えてもいいと、そう以前に言われただけで、現状それを受けているわけではない。正式な装束が無いのも当たり前の事だ。
「リオール様も交えて、一度相談してとするしかないでしょうね。」
そして、この場にいる者達は教会の流儀に明るいわけでは無い為、結論としてオユキがそう纏めて終わる。この会話、ここで改めて焦点の当たった問題は、近衛たちにより報告され、王都に向かった折、領都でも、トモエと揃って着せ替え人形の役目を全うすることを求められるだろう。
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