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14章 穏やかな日々
困りごと
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一先ずの確認が終われば、家財の管理として後はひたすら単純労働。勿論、あくまでトモエとオユキに帰属する財であり、下賜した物の立場があるため監督業務は必要になるため監督役として、この屋敷を任せると改めて宣言したゲラルドが残ることになる。そして、執務室には珍しくトモエも同席し、方々からの手紙を確認する時間となっている。
「ええと、これは。」
「何と言いましょうか。」
そして、トモエとオユキが並んで確認する手紙、それは王太子妃からの物ではあるのだが、実にわかりやすく文字が躍っている。
「公爵夫人にお任せしましょうか。」
「それしかないでしょうが。」
次に足を向ける先を魔国と決めた。それもあってか随分と熱量の高い手紙が届いている。そして、同封されているのは数枚の紹介状。
「流石に、カレンさんも分かりませんよね。」
「はい、申し訳ありませんが他国の貴族までは。」
魔国での滞在、それを頼るならだれが良く、不足している人員はこちらの家にと。それはもうご丁寧に。
「紹介するほどであるなら。」
「王太子妃様がとなると、輿入れするにあたって信頼していないのか、そう言った声も出るでしょうし。」
後は生臭い部分というのもある。
王族の生活の場、当然そこに他国の人間など入れたいものではない。特にこちらでは国ごとの得意不得意が明確であり、交易も少ないながら行われているのだ。話せない事も多いのだろう。
「となると、私たちのところで実績を積んでとなりますか。」
「流石に徒に取り上げはしないでしょうが、そう言った目論見も無いでは無いでしょう。
主に、私たちとの間を取り持つ、王都に屋敷を用意してそこの管理を任せるとして。まぁ、都合のいい理屈はありますから。」
「乗ってもいいかと思いはしますが。」
「今後もありますから。」
どうした所で並んでいる家名は相応に家格が高い。そこから誰かを借りてきて、ほとんど寄り付かないというのも問題は起こしそうなものだ。別の考えもあるが、分かりやすい物としてそれを口にしてシェリアに視線を向ける。
「確かに、今暫くは同様の事が起こるのであれば、外からは蔑ろにしていると見えるかもしれません。」
そのシェリアにしても、何とも難しい顔だ。
「オユキ様が得られた職務、それを考えれば已むを得ませんが、家主のいない屋敷の管理とはやはり閑職ではありますし。折に触れてとなればともかく、それこそ。」
そう、それこそ片道一年、勿論短縮するつもりはあるがやはりあまりに長い期間を移動に費やす必要がある。そして、どうした所で王都には報告で戻ることはあるとしても、主体となるのは当分の間この始まりの町だ。
人を頼んだところで、今から屋敷の用意を行い、必要な人員を配置したとして、王都では公務以外特にすることもない。体が鈍るような真似は、当然必要以上にトモエもオユキも認める気はない。
「かといって、始まりの町、歴史はあるのでしょうがこういった長閑な町では。」
「いえ、それについては問題は無いでしょう。」
「王太子妃様の思惑とはずれるようにも感じますが。」
公爵夫人経由で断りの文面を、そう話しが傾きかけたところにシェリアから制止がかかる。
「私が文面を確認するわけにも参りませんので、予測が大半ではありますが。」
そして、簡単に対応が伝えられる。
そもそも、側仕えとして引き受けたその事実がまず重要になる。魔国はどうした所で神殿が一つ。知識と魔のみであり、神々の関係としても戦と武技はあまりにも遠い。しかし、その国こそ魔石を常に求めているため、そちらの加護とて喉から手が出るほど欲しいのだと。魔術師はどうした所で戦闘が可能な感覚が長く、魔石の代替を己が行えば、研究が進まないというこれまた難儀な事情を抱えているのだと。
「それもあって、こちらの国が先に迎え入れたわけですか。」
「はい。勿論友好を示す為と、他にも例はありますがそちらは子爵以下となっています。」
「こちらを受け入れれば、王太子妃様としても祖国に対して益を運んだとなるわけですか。加えて、橋が用意できた暁には、魔石とも道具といった公益が盛んになると。道理でアベルさんがまずは王家の領としてと考える訳ですね。」
辺境の管理者、他国との国境を管理するものなど間違いなくいるだろうに、まずは王家がとアベルが言い出した事にも実に納得がいくという物だ。純粋な魔術師というのは、かつてもそうであったのだが、肉体的な強度が非常に低い。基本の鍛錬は瞑想であり、応用に至っては書物を紐解くのがそれだ。それこそ当然の帰結と分かる物だが。
「そうであるなら、交易のための人員もこちらの国が負担することになるのでは。」
トモエの疑問も最もではあるのだが。
「そのために、新しい魔術文字がという事でしょう。」
そちらの補填は、馬車と道中休む為の道具といった形で補填がなされる物だろう。
「そうなると、いよいよカナリアさんが。」
「あまりに無体はしない、その保証だけをお願いするしかないでしょうね。文字自体は、一応私の所有物扱いですから、そちらを預ける事も考えてもいいのですが。」
カナリアに過剰に負担がかかるなら、大本を預けてそれを逸らすという手もあるにはある。しかし、それについては公爵と王家に計らねばならない。そして、そこまで明確な国益を手放すとなれば、交渉の材料になる。
そんな事を考えながらも手紙の先に目を通していると、気になる文がオユキの目に入る。
「家名ですか。」
事前に紹介する事も出来る、いよいよ遠距離との通信手段を隠さなくなったものだが、その一文があり、そのためにオユキとトモエを紹介するとして、正式な名が必要になると。
「オユキさんは、他の神職の方々と同様では。」
「皆さま、確かに位を使われていましたが、私が勝手に名乗っていい物でしょうか。」
神職のくらいは神から与えられる。そうであるなら、それにしても神から与えられるのが筋ではある。そして、オユキはそれを未だに得ていない。
「アイリスさんにしても、あくまでご自身の名乗りですし。」
そして、同様の位を得ているアイリスにしても、部族としての物を使っている。敬うのが祖霊なのか、神なのか。その違いはあるのかもしれないが、何か決まりごとがありそうだと、そう言った予想は立つものだ。
それに、改めて紋章を作り使っているのだ。登録に必要になるだろうと分かりはするが、そちらについて庇護者から何も言われていないこともある。こうしてわざわざ手紙で聞かれる前に、既に話が進んでいそうなものではあるのだが。
「異邦の方々は、その辺りが難しく。」
シェリアがため息とともに、そう話す。
思い返せば、こちらに来るにあたって創造神に言われた言葉もある。つまり、この世界においてトモエとオユキを表すなというのは、既に世界に刻まれている。そこに別の、追加で有れ何かを足すというのは難しいのだろうかと、そう言った予想もできないではない。
「アイリスさんについては。」
「そもそも他国の方ですから。」
「文化風習も違いますよね、それは勿論。」
アイリスの方はそちらで納得いくものだ。
「王太子妃様から、紹介するにあたって求められていますが。」
「そちらについては、現状決まっていないと、そう返して頂くしかありません。」
「分かりました。その辺り新年祭の折に登録があるという話もありますし、その折に何かありそうな気はするんですよね。」
そうオユキがため息とともに零せば、トモエがくすくすと笑う。
随分と、折に触れてとある柱から声がかかることもあるのだ。元の家名を考えればそちらについても納得がいく。かつてのそれ、月代、月の代わり。それを司る神がいる世界では、なんというか、実に融通が嬉々そうな名前ではある。
「ただ、そうなるとトモエさんは。」
「五穀豊穣、それを司る獣がいますから。」
「それは少々迂遠なとも思いますが。」
トモエにしても、元は秋守、秋を守るという家名ではあったのだ。それこそ座を持つ四季の一角を司る神とている。今はそちらが忙しいとも聞いてはいるが、祖霊という物が存在するのであれば確かに十分以上の因果を得られる物だろう。
「かつてのものがあるのでしたら、それでも問題はないかと。」
シェリアとカレンから揃ってそう言われるが、トモエとオユキは揃って首を振る。
「やめておきましょう。あまりにも障りがありそうですから。」
少々持つ意味がこちらの世界では仰々しすぎる。そして、かつては文字は表意文字。同音異義語というのがそこには存在していた。そこまで考えれば、今の扱いにも実に納得がいくという物だ。
「こう、新しい世界とはいっても、過去が関わってくるものですね。」
「ええ、本当に。」
月代、憑代。秋守、阿騎守。
「トモエさんの物は、直ぐに思いつく物であれば、構わないようにも思いますが。」
「芸事でなければ、まぁ、理解は及びますが、流石に場の管理は私では。オユキさんの物は、巫女らしいと言えるものにはなりそうですが、そうなると主たる柱も変わってしまいますし。当てる字を変えると、それこそという物ですからね。」
「それもあって、彼の神からの覚えも良いのでしょうね。」
だとしたらこじつけの果てに迷惑極まりない、そこまで考えたときに、オユキは体を椅子ごとそのまま後ろに倒す。そして、そこで空いた空間をトモエが払い、シェリアが気が付けば机に跳びあがり服に隠していた短刀を抜いている。そして、トモエの手に弾かれた磨き抜かれた石が弾き飛ばされ、家具に当たり音を上げる。
「え、え。」
慌てるはカレンばかり。
「オユキさん。」
「相手の想像は付くのですが。シェリア様も有難う御座います。」
「いえ、離れていたとはいえ、護衛対象よりも遅かったのは私の不徳の致すところです。」
「それと、カレンさん、一応、拾ってこちらに持ってきていただけますか。後は、シェリアさんは、一度足元を確認してから。」
そして、事が終わった時にオユキには聞こえた言葉もある。それが正しいと言わんばかりに、言われたとおりに机から降りる前に視線を降ろしたシェリアの足元には、便箋が一つ。それも、先ほど話題の端に上り、オユキが良からぬことを考えた相手の紋章が刻まれたものが。
「オユキ様、こちらを。」
そして、トモエが弾いた物を拾ったカレンがそれを机に改めて置いてくれる頃には、オユキもトモエに引き起こされ改めて椅子に座りなおしている。シェリアが遅れた理由としては、そもそもオユキが移動のために机を蹴ったこともあるのだ。それも今はシェリアの手によって位置を直されているし、反動で落ちた他の手紙なども拾い集められている。
「全く、本当に気安い物ですね。」
さて、こうして呼び立てずにわざわざ置かれているのだ。確認しないわけにはいかない物だろう。
「ええと、これは。」
「何と言いましょうか。」
そして、トモエとオユキが並んで確認する手紙、それは王太子妃からの物ではあるのだが、実にわかりやすく文字が躍っている。
「公爵夫人にお任せしましょうか。」
「それしかないでしょうが。」
次に足を向ける先を魔国と決めた。それもあってか随分と熱量の高い手紙が届いている。そして、同封されているのは数枚の紹介状。
「流石に、カレンさんも分かりませんよね。」
「はい、申し訳ありませんが他国の貴族までは。」
魔国での滞在、それを頼るならだれが良く、不足している人員はこちらの家にと。それはもうご丁寧に。
「紹介するほどであるなら。」
「王太子妃様がとなると、輿入れするにあたって信頼していないのか、そう言った声も出るでしょうし。」
後は生臭い部分というのもある。
王族の生活の場、当然そこに他国の人間など入れたいものではない。特にこちらでは国ごとの得意不得意が明確であり、交易も少ないながら行われているのだ。話せない事も多いのだろう。
「となると、私たちのところで実績を積んでとなりますか。」
「流石に徒に取り上げはしないでしょうが、そう言った目論見も無いでは無いでしょう。
主に、私たちとの間を取り持つ、王都に屋敷を用意してそこの管理を任せるとして。まぁ、都合のいい理屈はありますから。」
「乗ってもいいかと思いはしますが。」
「今後もありますから。」
どうした所で並んでいる家名は相応に家格が高い。そこから誰かを借りてきて、ほとんど寄り付かないというのも問題は起こしそうなものだ。別の考えもあるが、分かりやすい物としてそれを口にしてシェリアに視線を向ける。
「確かに、今暫くは同様の事が起こるのであれば、外からは蔑ろにしていると見えるかもしれません。」
そのシェリアにしても、何とも難しい顔だ。
「オユキ様が得られた職務、それを考えれば已むを得ませんが、家主のいない屋敷の管理とはやはり閑職ではありますし。折に触れてとなればともかく、それこそ。」
そう、それこそ片道一年、勿論短縮するつもりはあるがやはりあまりに長い期間を移動に費やす必要がある。そして、どうした所で王都には報告で戻ることはあるとしても、主体となるのは当分の間この始まりの町だ。
人を頼んだところで、今から屋敷の用意を行い、必要な人員を配置したとして、王都では公務以外特にすることもない。体が鈍るような真似は、当然必要以上にトモエもオユキも認める気はない。
「かといって、始まりの町、歴史はあるのでしょうがこういった長閑な町では。」
「いえ、それについては問題は無いでしょう。」
「王太子妃様の思惑とはずれるようにも感じますが。」
公爵夫人経由で断りの文面を、そう話しが傾きかけたところにシェリアから制止がかかる。
「私が文面を確認するわけにも参りませんので、予測が大半ではありますが。」
そして、簡単に対応が伝えられる。
そもそも、側仕えとして引き受けたその事実がまず重要になる。魔国はどうした所で神殿が一つ。知識と魔のみであり、神々の関係としても戦と武技はあまりにも遠い。しかし、その国こそ魔石を常に求めているため、そちらの加護とて喉から手が出るほど欲しいのだと。魔術師はどうした所で戦闘が可能な感覚が長く、魔石の代替を己が行えば、研究が進まないというこれまた難儀な事情を抱えているのだと。
「それもあって、こちらの国が先に迎え入れたわけですか。」
「はい。勿論友好を示す為と、他にも例はありますがそちらは子爵以下となっています。」
「こちらを受け入れれば、王太子妃様としても祖国に対して益を運んだとなるわけですか。加えて、橋が用意できた暁には、魔石とも道具といった公益が盛んになると。道理でアベルさんがまずは王家の領としてと考える訳ですね。」
辺境の管理者、他国との国境を管理するものなど間違いなくいるだろうに、まずは王家がとアベルが言い出した事にも実に納得がいくという物だ。純粋な魔術師というのは、かつてもそうであったのだが、肉体的な強度が非常に低い。基本の鍛錬は瞑想であり、応用に至っては書物を紐解くのがそれだ。それこそ当然の帰結と分かる物だが。
「そうであるなら、交易のための人員もこちらの国が負担することになるのでは。」
トモエの疑問も最もではあるのだが。
「そのために、新しい魔術文字がという事でしょう。」
そちらの補填は、馬車と道中休む為の道具といった形で補填がなされる物だろう。
「そうなると、いよいよカナリアさんが。」
「あまりに無体はしない、その保証だけをお願いするしかないでしょうね。文字自体は、一応私の所有物扱いですから、そちらを預ける事も考えてもいいのですが。」
カナリアに過剰に負担がかかるなら、大本を預けてそれを逸らすという手もあるにはある。しかし、それについては公爵と王家に計らねばならない。そして、そこまで明確な国益を手放すとなれば、交渉の材料になる。
そんな事を考えながらも手紙の先に目を通していると、気になる文がオユキの目に入る。
「家名ですか。」
事前に紹介する事も出来る、いよいよ遠距離との通信手段を隠さなくなったものだが、その一文があり、そのためにオユキとトモエを紹介するとして、正式な名が必要になると。
「オユキさんは、他の神職の方々と同様では。」
「皆さま、確かに位を使われていましたが、私が勝手に名乗っていい物でしょうか。」
神職のくらいは神から与えられる。そうであるなら、それにしても神から与えられるのが筋ではある。そして、オユキはそれを未だに得ていない。
「アイリスさんにしても、あくまでご自身の名乗りですし。」
そして、同様の位を得ているアイリスにしても、部族としての物を使っている。敬うのが祖霊なのか、神なのか。その違いはあるのかもしれないが、何か決まりごとがありそうだと、そう言った予想は立つものだ。
それに、改めて紋章を作り使っているのだ。登録に必要になるだろうと分かりはするが、そちらについて庇護者から何も言われていないこともある。こうしてわざわざ手紙で聞かれる前に、既に話が進んでいそうなものではあるのだが。
「異邦の方々は、その辺りが難しく。」
シェリアがため息とともに、そう話す。
思い返せば、こちらに来るにあたって創造神に言われた言葉もある。つまり、この世界においてトモエとオユキを表すなというのは、既に世界に刻まれている。そこに別の、追加で有れ何かを足すというのは難しいのだろうかと、そう言った予想もできないではない。
「アイリスさんについては。」
「そもそも他国の方ですから。」
「文化風習も違いますよね、それは勿論。」
アイリスの方はそちらで納得いくものだ。
「王太子妃様から、紹介するにあたって求められていますが。」
「そちらについては、現状決まっていないと、そう返して頂くしかありません。」
「分かりました。その辺り新年祭の折に登録があるという話もありますし、その折に何かありそうな気はするんですよね。」
そうオユキがため息とともに零せば、トモエがくすくすと笑う。
随分と、折に触れてとある柱から声がかかることもあるのだ。元の家名を考えればそちらについても納得がいく。かつてのそれ、月代、月の代わり。それを司る神がいる世界では、なんというか、実に融通が嬉々そうな名前ではある。
「ただ、そうなるとトモエさんは。」
「五穀豊穣、それを司る獣がいますから。」
「それは少々迂遠なとも思いますが。」
トモエにしても、元は秋守、秋を守るという家名ではあったのだ。それこそ座を持つ四季の一角を司る神とている。今はそちらが忙しいとも聞いてはいるが、祖霊という物が存在するのであれば確かに十分以上の因果を得られる物だろう。
「かつてのものがあるのでしたら、それでも問題はないかと。」
シェリアとカレンから揃ってそう言われるが、トモエとオユキは揃って首を振る。
「やめておきましょう。あまりにも障りがありそうですから。」
少々持つ意味がこちらの世界では仰々しすぎる。そして、かつては文字は表意文字。同音異義語というのがそこには存在していた。そこまで考えれば、今の扱いにも実に納得がいくという物だ。
「こう、新しい世界とはいっても、過去が関わってくるものですね。」
「ええ、本当に。」
月代、憑代。秋守、阿騎守。
「トモエさんの物は、直ぐに思いつく物であれば、構わないようにも思いますが。」
「芸事でなければ、まぁ、理解は及びますが、流石に場の管理は私では。オユキさんの物は、巫女らしいと言えるものにはなりそうですが、そうなると主たる柱も変わってしまいますし。当てる字を変えると、それこそという物ですからね。」
「それもあって、彼の神からの覚えも良いのでしょうね。」
だとしたらこじつけの果てに迷惑極まりない、そこまで考えたときに、オユキは体を椅子ごとそのまま後ろに倒す。そして、そこで空いた空間をトモエが払い、シェリアが気が付けば机に跳びあがり服に隠していた短刀を抜いている。そして、トモエの手に弾かれた磨き抜かれた石が弾き飛ばされ、家具に当たり音を上げる。
「え、え。」
慌てるはカレンばかり。
「オユキさん。」
「相手の想像は付くのですが。シェリア様も有難う御座います。」
「いえ、離れていたとはいえ、護衛対象よりも遅かったのは私の不徳の致すところです。」
「それと、カレンさん、一応、拾ってこちらに持ってきていただけますか。後は、シェリアさんは、一度足元を確認してから。」
そして、事が終わった時にオユキには聞こえた言葉もある。それが正しいと言わんばかりに、言われたとおりに机から降りる前に視線を降ろしたシェリアの足元には、便箋が一つ。それも、先ほど話題の端に上り、オユキが良からぬことを考えた相手の紋章が刻まれたものが。
「オユキ様、こちらを。」
そして、トモエが弾いた物を拾ったカレンがそれを机に改めて置いてくれる頃には、オユキもトモエに引き起こされ改めて椅子に座りなおしている。シェリアが遅れた理由としては、そもそもオユキが移動のために机を蹴ったこともあるのだ。それも今はシェリアの手によって位置を直されているし、反動で落ちた他の手紙なども拾い集められている。
「全く、本当に気安い物ですね。」
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