憧れの世界でもう一度

五味

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7章 ダンジョンアタック

仕事が終われば

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その後の会議は実に白熱したものとなった。
オユキは殊更口を挟まなかった、やはり基礎となるこの世界、都市、組織、その知識があまりに足りないために口をはさむ余地があまりなかったことに加え、思いつくことは一通りメイに提出していたことも有り、どちらかと言えば少年たちに白熱する議論、その争点は何処かそんなことを説明しながら、様子を眺め、改めてこの世界の知識を収集していた。
その結果として、狩猟者ギルドはもとより、傭兵ギルドというのがかなり特殊な組織であることが分かったのには驚いたりしたのだが。
そして、少年たちにはまだ早くはあるが、仕事が終わればいつもの流れとして、宿の食堂、そこには見知った顔が並んでいる。生憎とメイは参加できないため、護衛騎士だったはずが、侍女の格好をしているローラが混ざっていたりするが。

「想定以上の大事であったな。」
「あー、そっちは報告いってなかったのか。うちはアイリスがしっかり巻き込まれたから報告が上がっていたが。」
「そのあたりは、これまでの結果としか言いようがない。魔物、それ以外については殊更緩くしておる故。」
「ま、結果として自由が利くわけだし、それを好む手合いもいる。ままならんものだな。
 というか、お前らそれに関しては、流石に伝えておいても良かったんじゃないのか。」

ギルドの長二人が管を巻きながらオユキに絡むが、それについてはオユキも流すしかない。

「いえ。どこまで話していいのか区別がつかないのですよ。それこそ先の会議の時にもメイ様がぼかしていた以上、喋らなくて正解、そうとしか判断が出来ませんから。」
「あー。信頼してないわけじゃないんだよな。」
「ええ。そこは信頼していますが。それとこれとは。」
「うむ。話が違う故な。」

ブルーノとしても、聞かなくて正解、そう判断しているらしい。本来であればこの席にミズキリも居そうなものだが話を詰めるとメイとゲラルドに反論する間もなく連れて行かれてしまった。

「メイ様は口にはしませんでしたが。」

彼女の側に、さてどれだけ長く使えているのか。少なくともこういった場所に代わりに顔を出すそんな人物がそういってトモエとオユキを見る。

「お二人には、叶うならと、そう望まれています。」

それについてはオユキも理解はできる。
そもそも元凶、見方次第ではあるがそう見えるものであるし、後進の育成、ことこれからより重要になる魔石の収集。それに関して既に目覚ましい成果を上げているように見える二人だ。
人材の切り取り合戦がこれから始まる予想も、ミズキリから聞かされているのだから、なおの事と彼女は望むだろう。外見として年齢が近いことも有るのだし。

「その。流石に公爵様、国王陛下に何かを言われて、伯爵家令嬢、それを優先するのは難しいと、その程度の身分についての理解は、私も持ち合わせていますよ。」

オユキがにべもなく答えれば、それは彼女も分かっているのだろう。
何も言わずにただジョッキを呷る。

「まぁ、な。」
「その方らは、拠点を移すつもりかね。」
「それについてはトモエさんと話していますが。」

そういってオユキが目配せをすれば、トモエからも補足が入る。

「拠点を複数、それも楽しいのではないかと。こちらではさほど難しくないと聞いていますし。」
「ま。それこそ貴族によっちゃ領内のあちこちに屋敷持ってるしな。」
「この町も好きですし、利便性を考えれば基本は領都、王都になるでしょうが。」
「狩猟者、特にその方らは腕が立つ故な。」

メイにはあきれられてしまったが、やはり武器、手ごろな強敵、その誘惑はあまりに大きい。
ただ、ローラはそれについてもため息をこぼすが。

「トモエ殿はまだしも、オユキ殿。そちらはこうして座っていれば実に愛らしいというのに。」
「観相学等もあるのでしょうが、やはり内面は見た目と一致をみるかと言われれば。」
「人生の選択に戦闘ありき、それはあまりに殺伐としすぎではないかと、私は嘆かずにいられません。」
「ええと、その。」

そこまで言われると、どうしても言葉に詰まってしまう。特にトモエについてはこちらに来る前から、そのような生活であったのだ。

「まぁ、そう言うな。求道者とはどうしてもそのような物だ。あまり人の世を捨てぬよう、そう言い聞かせる気持ちは我にもあるが。」
「王都には観光で行くつもりですから。」
「その観光に魔物の狩猟が含まれてんのがなぁ。」

そこはそれ。こういった世界であるのだから。そんなことを考えるもトモエもオユキも表情には出さない。

「王都ね。私もいかなければいけないのかしら。」
「お前も当事者だ。」

アイリスがそう呟けばアベルの言葉はにべもない。

「最近すっかりよろしくやってるみたいだし、もはや一団とそう言った見方もあるぞ。」
「そうなのよね。私も狩猟者ギルドに移ろうかしら。」
「歓迎するが、アベルと話し合ってくれ。」

ブルーノは言った言葉に反応したアベルを慮って、直ぐに言葉を足す。

「二人は、私がついていったら迷惑かしら。」
「いえ、構いませんよ。二人の時間が欲しい時はそのように言いますし。
 オユキさんには程よい相手ですから。」
「一度も勝ててないけれどね。」
「きちんと状況を作れば、そうですね、互いに有利な物を5個づつ選べば、3回はアイリスさんが拾えますよ。」
「オユキはそれを作らせる気はないでしょう。」
「それが兵法であり、技ですから。」

トモエがそう応えれば、アイリスはただ何も言わずにジョッキを傾け、肉にかじりつく。
こちらに来てからも、時間があればとアイリスと打ち合いは行っているが、今のところ一度もオユキが負けと、そんな状態には陥っていない。
以前指摘した耳や尻尾の動きについても、直そうとはしているようだが気が付かなった癖でもあるため、今一つ上手くいっていない。いっそそれを虚として、そのような浅はかな考えも見られたが、それにしてもちぐはぐとなるため効果は無い。

「それにしても、アイリス、お前能力が上がってるとルイスが言っていたが。」
「鍛錬の成果でしょうね。報告したように、訓練中は指輪をしているもの。」
「身体能力だけ、というわけでもなさそう、そう聞いているがな。」

その言葉については、オユキとトモエも興味がわく。アイリスにしても同様であるらしく、アベルの言葉を待っている。

「ま、例の件にも関わってくるんだがな。加護も増えてると、そう見えるらしい。」
「身体能力以上に、ですか。」
「そっちは高々一月で見て分かるほどに変わるもんでもないだろ。いや、それこそずぶの素人ならともかく。」
「私に自覚はないけれど。」
「そうそう加護の量なんざ自覚できんだろうさ。いや、お前らならあるいは。」
「いくらこの指輪があるといっても、昨日と今日の加護の総量、そのような物は正しく計れませんよ。」

そう。それに一切の加護と、そう聞こえてはいたのだが、いくら素振りをしても手に傷一つもできない、明らかに重すぎる剣が持てる事、それを考えれば、ある程度の物は働いているのは違いないのだろうし。
まだまだ、色々と分からないことが実に多い事だ。

「それなら、そのうちあの子たちも望むことになるのかしら。」
「私がいる限り道に迷う、そのような暇は与えませんが、そうですね。」

トモエが一先ず断言しながらも少し考える。オユキにしても一人は頭に浮かぶのだから。
それを望む、そんな相手が。加えてこれを付けている間に、訓練の成果それが上乗せされると知れば、他の子たちもそれを望む様になるかもしれない。

「あの子たちには黙っていてくださいね。」
「あなたなら、付けさせるかとも思ったけど。」
「今は、ある程度加護ありきで詰め込んでいますから。少なくとも見習い、そう呼ばなくてもよくなってからでしょうね。」
「単独で鉄人形を討伐できるものが、見習いであるか。」

トモエの言葉にブルーノが深々とため息をつく。そういえば領都では中級と、そのような物が狩る相手であったか。

「領都で、その、言葉は悪いのですがグレイハウンド程度で怪我をする方が、中級と名乗っていましたが。」
「ふむ。それについては、手違いとしか言いようがないな。個人に対して出すのであれば、10匹程度の群れなら無傷で切り抜けるのが最低条件である。」

つまり、彼らはいよいよ南区、その制度の中でだけ生きていたという事だろう。
だとしても、それならそれでよくもまぁ、あの地区の依頼主、その望みをかなえられたものだと、そんな事を考えてしまうが。

「そういや、お前ら中級目指してるんだったか。」
「いえ。特には。」

上がることにメリットもないので、それこそ時間がるときに、その程度の考えでしかない。
そもそも得られる特権も下部組織の物でしかない。お願いは頭を飛び越えて付き合いのある相手にすれば、より融通が利くのだから。制限はあるが、それでも今の所の願いは、そこから保証を得ている物でもある。

「なんにせよ、明日は少し森迄足を延ばしてみたいですね。」
「ほう。」
「魔物を調べてになりますが、果物なども欲しいですし。」
「実にらしいことであるな。」

ローラからはそこで得た魔石についてと、ブルーノに向けた話があり、アベルはアベルで傭兵達をダンジョンに放り込む算段をする。
どうしても、あの場。忌憚なくと言われてもある程度決まった、それ以外を話すのが難しい、相談の比重が大きい話がそうして進んでいく。
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