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7章 ダンジョンアタック
問題の解決方法、その模索
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「でもさ。そっちの方が大変じゃね。そりゃ、それができるなら、その、嬉しいけど。」
提案そのものは、シグルドの意に沿うものであった様だとオユキはひとまず安心する。
うかっりそこを見誤っていれば、別の話をしなければいけなかったわけではあるし。
「いえ。実際のところそうではないんですよ。」
ここからはシグルドに説明する、そんな形を取りつつも周囲の説得をしなければいけない。
オユキにとっては実に慣れた振る舞いだが。
「でも、大げさになるし。代官様も、祭りのたびに忙しそうにしてるぞ。」
「えっと。うん。私たちがこうちょっとお供えするってそういう訳じゃないから。」
シグルドに続いて、アナも口を開く。教会の子供たち、こちらでの祭りについては、オユキよりもずいぶんと詳しいだろう。
だが、それでも見落としていることも多いのだ。オユキとてよくそうなる様に。
「では、まず問題点を整理しましょうか。」
彼らではいきなり全体像を投げかけても、把握は出来ない、であれば切り分け、理解できる大きさに。
「まず前提。何故メイ様は、全ての物品を買い取りたい、そう望んでおられるか分かりますか。」
「さっき言ってたよな。」
「ですが、私たちが狩猟者ギルドに販売しても、領主としてそれらを望むことは出来ますよ。」
「えっと、でも、私たちだと、こう商業ギルドにも売ったりできるし。」
「そこはそれ。ダンジョン由来の物、それを引き取れるのは狩猟者ギルドだけと、そう定めてしまえばいいのです。」
「あー。そっか。そうだよな。でも、だったらなんで今までと同じじゃダメなんだ。」
そう、つまるところ一つの大きな問題はそこなのだ。
「では、シグルド君、アナさん。狩猟者ギルドの方々は、言葉は悪いですが、暇そうに見えますか。」
「いや、いっつも忙しそうだ。」
「ね。私たちがいつ行っても、必ずだれか対応してくれるし、奥の方でもあれこれ仕分けしてるし。」
そう口にしたアナが、気が付く。
「そっか。そこにこれまでと全く違う魔物の品が急に増えるんだ。」
「あー、そりゃ、無理だな。」
シグルドとアナがそう口にすれば、ブルーノも重々しくそれに頷く。
「力不足、そう言わざるを得ない。見知らぬ素材の鑑定、金額の策定、加えてダンジョンを今後も運営するとなれば、魔石をより集めねばならん。無論それに付随するものの取り扱い、その業務が増える。すまんが、手が足りぬのだ。」
「あー、その、ギルドには感謝してるんだ。その、俺らみたいに丸投げする奴らの尻拭いだろ、ようは。
こっちこそ、力に慣れなくて悪いな。」
「良いのだよ、少年。それこそが力を合わせるという事である。そなたらが魔物を狩り、魔石を集める、それなくして成り立たぬことのなんと多い事か。
そこで、今回はメイ様が手当てを払う、代わりに全てをと、そうなるわけだ。」
「そっか。そうだな。うん、わかった。」
ブルーノからも説明され二人が何度も頷く。
さて、一つはこれで良しと、オユキは次へと勧める。
「では、次ですね。何故個人が神様へ収められないのでしょう。」
「私、わかったかも。それをやると、持ち出す、持ち出さない、その判断で結局大変な思いをする誰かがいるんですね。」
「その通りです、アナさん。そして誰かに許して、誰かに許さぬ、そうしてしまえばできなかった人はどうでしょう。何も神々へ供えるだけでなく、武器の欲しい人、何か素材を使いたい人、それはいくらでもいるでしょうから。」
「えっと、はい。それを決めるのはえっと偉い人ですよね。これから大変になるのに、それまでとなると、もっともっと大変ですよね。いちいち細かく、ひょっとしたらそれ全部話を聞いて判断しなきゃだもん。」
アナの言葉を飾らない感想に、今度はメイが口を開く。
「シグルド、アナ。あなた方の真摯な神への感謝、その気持ちを邪魔したくはない。私とて同じ気持ちです。
我々ではとても及ばぬ奇跡を与えてくれた神々に感謝を示す。叶うなら、止めたくありません。
そも、神への祈りを止める貴族など、もはやそう呼べるものではありません。ですが。」
そこで言いにくそうにメイが口を噤む。今の彼女の立場として、出来ぬとそうは言えないだろう。
そこはオユキが再度言葉を引き取る。
「つまり、シグルド君、アナさん、お二人の願いをかなえようとすると、すでに忙しい方々、その方々だけに負担を強いることになるのです。」
「分かった。それは良くない。」
「その、困らせてしまって、ごめんなさい。」
二人そろって頭を下げるが、メイもブルーノもただ首を横に振る。
「良いのですよ。言っていることは正しく、本来であれば止めるべきものではないのですから。」
「うむ。我らもまた同じく、神々への感謝を常に持つ者である。どうかそれだけは忘れてくれるな。」
二人がそう言えば、今度はシグルドから、オユキに質問が来る。
つまり、すでに忙しいと、そう断られたのに、何故さらに忙しくなる祭り、そのような物を提案するのかと。
そう言った、直近の物だけを見る姿勢は、若さと経験不足、そうとしか言えない。だからこそ年長者としてオユキが振舞うのだから。
「だからこそ、ですよ。お祭り、それで忙しくなるのは、誰でしょうか。」
「えっと、町の皆だな。」
「そうだよね。私たちもだけど、みんなあれこれするもんね。」
「なら、良いではないですか。誰かが忙しいのではない。皆が忙しい。
誰にも押し付けず、皆で新しく得られたもの、その喜びと共に忙しさを分かち合い、感謝を示しましょう。
それとも、ダンジョン、与えられた神の奇跡は町の皆が感謝を示す、それには足りない物ですか。」
そう話して、主語が大きくなったことをオユキは反省する。
この言い方では、少年たちには今一つ実感しにくいだろう。社会性、それはそれこそ経験の中で磨かれるのだから。教会とそれに付随する場所、そこに長くいた少年たちに使うべき言葉ではない。
ただ、そういう言い方をしなければ、此処に今集まったものたちを巻き込む理由付けもできない。
オユキとしても、まだまだ足らぬと内心でそう反省しているところに、メイから声がかかる。
「成程。そういう理屈ですか。分かりました。しかし、新しい祭り、そう簡単に行うのは。」
メイには伝わって、乗り気になってくれたようだが、さて子供たちはついていけていない様子。
どうしたものかと、オユキが少し考えていると、トモエが横合いから言葉を足す。
「誰かに苦労を押し付けることは、悪い事ですね。」
「ああ。前に、やろうとしちまったし。」
「リーアには悪い事言っちゃったよね。」
「では、皆で一緒に難しいことをしよう。それはどうでしょう。勿論得手不得手はあるので、それぞれに行う事は変わるでしょうが。」
「えっと、うん。良い事だと思う。でも、わざわざ作らなくっても。」
どうにも彼の言葉でそう言った大仰なことが始まりそうだからと、気後れがあるらしい。
「では、与えられた奇跡、それに感謝を示さない、そういった人たちをあなたはどう思うでしょうか。」
トモエの言葉に、反応は分かり易い。
「それは駄目だ。絶対に。」
「だから、元々やらなくてはいけない事なんですよ。皆さんはそれを後に回そうと、そう考えていただけなのです。」
「あー、その、直ぐにってのが難しいなら、ゆっくりでもいいんじゃね。
感謝は神様に言わなきゃダメだけどさ。」
「うん。それでみんなが大変って、そう思うよりは。」
トモエの補助もあって、飲み込めた様だ。だからと今度はメイの質問に答える形で、オユキは二人に話しかける。
「ええ。直ぐにと、それは難しいでしょう。だって私たちは、どの神へ主として感謝を捧げなければいけないのか、それすら分からないのですから。」
「えっと。そういや、そうだな。魔石がないから、魔物って訳でも無いし、あれ、ってことは木々と狩猟の神様じゃないのか。」
「うーん。でも狩猟者としての活動で、でしょ。」
そうして話す二人に、他の大人たちも首をかしげる。
オユキとメイ、それからトモエ、今この場にいるその三人は事の次第を知っているため、想像は出来るのだが。
「ええ、ですから、お二人はロザリア様に尋ねてください。
ダンジョン、そこから得た物の感謝を示すには、どうするのがよいのか。」
「そっか。ばーさんなら、分かるか。」
「あ、そうやって、誰かが忙しくならないようにするんだ。」
「はい。そこで聞いたお話を、そうですね。」
「ブルーノに預けてください。」
「はい。ですから、この話を始めたあなた達二人、まずは二人から少し忙しくなりましょうか。」
「おー。」
そうして、どうにかの着地点を見る。他の者にしても異存は無いようであるし。
ただミズキリは変わらぬオユキのやり方に。気が付けば少年たちも巻き込んで事を進める算段を取り付けたそれに、苦笑いを浮かべているのだが。
提案そのものは、シグルドの意に沿うものであった様だとオユキはひとまず安心する。
うかっりそこを見誤っていれば、別の話をしなければいけなかったわけではあるし。
「いえ。実際のところそうではないんですよ。」
ここからはシグルドに説明する、そんな形を取りつつも周囲の説得をしなければいけない。
オユキにとっては実に慣れた振る舞いだが。
「でも、大げさになるし。代官様も、祭りのたびに忙しそうにしてるぞ。」
「えっと。うん。私たちがこうちょっとお供えするってそういう訳じゃないから。」
シグルドに続いて、アナも口を開く。教会の子供たち、こちらでの祭りについては、オユキよりもずいぶんと詳しいだろう。
だが、それでも見落としていることも多いのだ。オユキとてよくそうなる様に。
「では、まず問題点を整理しましょうか。」
彼らではいきなり全体像を投げかけても、把握は出来ない、であれば切り分け、理解できる大きさに。
「まず前提。何故メイ様は、全ての物品を買い取りたい、そう望んでおられるか分かりますか。」
「さっき言ってたよな。」
「ですが、私たちが狩猟者ギルドに販売しても、領主としてそれらを望むことは出来ますよ。」
「えっと、でも、私たちだと、こう商業ギルドにも売ったりできるし。」
「そこはそれ。ダンジョン由来の物、それを引き取れるのは狩猟者ギルドだけと、そう定めてしまえばいいのです。」
「あー。そっか。そうだよな。でも、だったらなんで今までと同じじゃダメなんだ。」
そう、つまるところ一つの大きな問題はそこなのだ。
「では、シグルド君、アナさん。狩猟者ギルドの方々は、言葉は悪いですが、暇そうに見えますか。」
「いや、いっつも忙しそうだ。」
「ね。私たちがいつ行っても、必ずだれか対応してくれるし、奥の方でもあれこれ仕分けしてるし。」
そう口にしたアナが、気が付く。
「そっか。そこにこれまでと全く違う魔物の品が急に増えるんだ。」
「あー、そりゃ、無理だな。」
シグルドとアナがそう口にすれば、ブルーノも重々しくそれに頷く。
「力不足、そう言わざるを得ない。見知らぬ素材の鑑定、金額の策定、加えてダンジョンを今後も運営するとなれば、魔石をより集めねばならん。無論それに付随するものの取り扱い、その業務が増える。すまんが、手が足りぬのだ。」
「あー、その、ギルドには感謝してるんだ。その、俺らみたいに丸投げする奴らの尻拭いだろ、ようは。
こっちこそ、力に慣れなくて悪いな。」
「良いのだよ、少年。それこそが力を合わせるという事である。そなたらが魔物を狩り、魔石を集める、それなくして成り立たぬことのなんと多い事か。
そこで、今回はメイ様が手当てを払う、代わりに全てをと、そうなるわけだ。」
「そっか。そうだな。うん、わかった。」
ブルーノからも説明され二人が何度も頷く。
さて、一つはこれで良しと、オユキは次へと勧める。
「では、次ですね。何故個人が神様へ収められないのでしょう。」
「私、わかったかも。それをやると、持ち出す、持ち出さない、その判断で結局大変な思いをする誰かがいるんですね。」
「その通りです、アナさん。そして誰かに許して、誰かに許さぬ、そうしてしまえばできなかった人はどうでしょう。何も神々へ供えるだけでなく、武器の欲しい人、何か素材を使いたい人、それはいくらでもいるでしょうから。」
「えっと、はい。それを決めるのはえっと偉い人ですよね。これから大変になるのに、それまでとなると、もっともっと大変ですよね。いちいち細かく、ひょっとしたらそれ全部話を聞いて判断しなきゃだもん。」
アナの言葉を飾らない感想に、今度はメイが口を開く。
「シグルド、アナ。あなた方の真摯な神への感謝、その気持ちを邪魔したくはない。私とて同じ気持ちです。
我々ではとても及ばぬ奇跡を与えてくれた神々に感謝を示す。叶うなら、止めたくありません。
そも、神への祈りを止める貴族など、もはやそう呼べるものではありません。ですが。」
そこで言いにくそうにメイが口を噤む。今の彼女の立場として、出来ぬとそうは言えないだろう。
そこはオユキが再度言葉を引き取る。
「つまり、シグルド君、アナさん、お二人の願いをかなえようとすると、すでに忙しい方々、その方々だけに負担を強いることになるのです。」
「分かった。それは良くない。」
「その、困らせてしまって、ごめんなさい。」
二人そろって頭を下げるが、メイもブルーノもただ首を横に振る。
「良いのですよ。言っていることは正しく、本来であれば止めるべきものではないのですから。」
「うむ。我らもまた同じく、神々への感謝を常に持つ者である。どうかそれだけは忘れてくれるな。」
二人がそう言えば、今度はシグルドから、オユキに質問が来る。
つまり、すでに忙しいと、そう断られたのに、何故さらに忙しくなる祭り、そのような物を提案するのかと。
そう言った、直近の物だけを見る姿勢は、若さと経験不足、そうとしか言えない。だからこそ年長者としてオユキが振舞うのだから。
「だからこそ、ですよ。お祭り、それで忙しくなるのは、誰でしょうか。」
「えっと、町の皆だな。」
「そうだよね。私たちもだけど、みんなあれこれするもんね。」
「なら、良いではないですか。誰かが忙しいのではない。皆が忙しい。
誰にも押し付けず、皆で新しく得られたもの、その喜びと共に忙しさを分かち合い、感謝を示しましょう。
それとも、ダンジョン、与えられた神の奇跡は町の皆が感謝を示す、それには足りない物ですか。」
そう話して、主語が大きくなったことをオユキは反省する。
この言い方では、少年たちには今一つ実感しにくいだろう。社会性、それはそれこそ経験の中で磨かれるのだから。教会とそれに付随する場所、そこに長くいた少年たちに使うべき言葉ではない。
ただ、そういう言い方をしなければ、此処に今集まったものたちを巻き込む理由付けもできない。
オユキとしても、まだまだ足らぬと内心でそう反省しているところに、メイから声がかかる。
「成程。そういう理屈ですか。分かりました。しかし、新しい祭り、そう簡単に行うのは。」
メイには伝わって、乗り気になってくれたようだが、さて子供たちはついていけていない様子。
どうしたものかと、オユキが少し考えていると、トモエが横合いから言葉を足す。
「誰かに苦労を押し付けることは、悪い事ですね。」
「ああ。前に、やろうとしちまったし。」
「リーアには悪い事言っちゃったよね。」
「では、皆で一緒に難しいことをしよう。それはどうでしょう。勿論得手不得手はあるので、それぞれに行う事は変わるでしょうが。」
「えっと、うん。良い事だと思う。でも、わざわざ作らなくっても。」
どうにも彼の言葉でそう言った大仰なことが始まりそうだからと、気後れがあるらしい。
「では、与えられた奇跡、それに感謝を示さない、そういった人たちをあなたはどう思うでしょうか。」
トモエの言葉に、反応は分かり易い。
「それは駄目だ。絶対に。」
「だから、元々やらなくてはいけない事なんですよ。皆さんはそれを後に回そうと、そう考えていただけなのです。」
「あー、その、直ぐにってのが難しいなら、ゆっくりでもいいんじゃね。
感謝は神様に言わなきゃダメだけどさ。」
「うん。それでみんなが大変って、そう思うよりは。」
トモエの補助もあって、飲み込めた様だ。だからと今度はメイの質問に答える形で、オユキは二人に話しかける。
「ええ。直ぐにと、それは難しいでしょう。だって私たちは、どの神へ主として感謝を捧げなければいけないのか、それすら分からないのですから。」
「えっと。そういや、そうだな。魔石がないから、魔物って訳でも無いし、あれ、ってことは木々と狩猟の神様じゃないのか。」
「うーん。でも狩猟者としての活動で、でしょ。」
そうして話す二人に、他の大人たちも首をかしげる。
オユキとメイ、それからトモエ、今この場にいるその三人は事の次第を知っているため、想像は出来るのだが。
「ええ、ですから、お二人はロザリア様に尋ねてください。
ダンジョン、そこから得た物の感謝を示すには、どうするのがよいのか。」
「そっか。ばーさんなら、分かるか。」
「あ、そうやって、誰かが忙しくならないようにするんだ。」
「はい。そこで聞いたお話を、そうですね。」
「ブルーノに預けてください。」
「はい。ですから、この話を始めたあなた達二人、まずは二人から少し忙しくなりましょうか。」
「おー。」
そうして、どうにかの着地点を見る。他の者にしても異存は無いようであるし。
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