憧れの世界でもう一度

五味

文字の大きさ
257 / 1,235
7章 ダンジョンアタック

日程

しおりを挟む
「さて、私は私で確認すべきことがあるとして。」

そうメイが話題を切り替える。トモエとオユキにしても今すぐ返事をするのは難しい事であるし、更に応える先はメイではなく公爵なのだ。それに、恐らく少年たちも目をかけられているだろうから、そちらにも話して置かなければならないだろう。

「今後の予定ですが。狩猟者ギルドから聞きました、何やら既にかなりの量の魔石を集めてあるとか。」
「ええ、あの子たちも馬車のお礼にと張り切っていましたから。今回の物は、ギルド長からも承認を得ていますので、赴任への我々一同からの祝いの品と、その様に。」
「本当に。良い民に恵まれた物です。」

河沿いの町、50人近い一団で1週間も暴れまわったおかげで、集まった魔石の数はそれなりどころではない物になっている。インスタントダンジョンに浪費したところで、贈り物であれば問題ないだろう。
そうでなければ税からの支出が発生するため、直ぐにどうこうは出来なかっただろうが。

「今日、この後私は必要な連絡を。そして明日にはダンジョンの作成を試します。」
「戦力は。」
「最低量は分かります。まずは其処から。当家の騎士と傭兵。それからお三方も。」

そう言われてトモエが少し身を固めたのにオユキが気づく。ダンジョンというものにどういう印象を持っているかは分からないが、懸念していることはわかる。

「虫は他の方に任せましょう。私たちはあくまで確認のため。それにこの場で強敵を求めるのであれば、他に方法はありませんから。」
「ああ、トモエは虫が駄目か。出てくる魔物の方向性はある程度しか決められないからな。出てくる可能性は否定できない。」
「そう、ですか。」
「私たちだけで、という事はなさそうですね。」

そんな話をしているとメイが不思議そうにする。本人も言ってはいたが戦闘の経験は一切ないのだろう。

「その、巨大な虫が出ますから。見た目がどうにも苦手で。」
「よくわかりませんが、苦手な相手は他に任してもいいのでは。」
「いるというだけで、気にはなりますので。」

トモエがメイに話しかけているが、彼女としては先ほどの話の中一つの事項として先頭における充足を話していたことも有り、ここで折れられると困ると、そんなことも有るのだろう。
トモエはその時話している間に、そこまで気が回っていなかったのだろうが。

「私が入ったことのあるものは、虫の類はいませんでしたが。」
「素材の都合だな。虫から得た魔石や、指向性を与えるために虫の素材辺りを使ったら出るな。それ以外だと正直確率だ。一応周辺にいる魔物の近縁種が出やすいなどといった話もあったが、そうなるとここは森が近いしな。」
「困りますね。しかし、それしかありませんか。」

どうやらトモエの中で何かの覚悟が決まってしまったらしい。

「その、そこまで思いつめなくとも。お抱え狩猟者程度であれば、魔石だけを集める、そう言った先もありますから。それに公爵様から声がかかっているという事は、受ければ拠点は領都になりますよ。」
「そういえばそうですね。」
「あの、そのあたりはご相談したく。」
「最悪、いえ言葉が悪いですね、話の流れによっては王都に居を構えるでしょうし。」

オユキがそう言ってミズキリを見れば彼も頷いている。一方でメイは複雑そうな表情をしているが。

「ともかく、明日ですか。」
「ええ、門の側に作りますので、そちらに。」

どうやら作り方などは既に知っているようだ。そこに不安はみられない。此処の代官ともすでに話はつけてあるのだろう。

「収集品の運び出しなどは。」
「ダンジョンがどのような物か分かりませんので。」
「そうなると、当日での攻略は難しそうですか。」
「それほど簡単な物なのですか。」

そう言えばそのあたりは説明していなかったと、そう気が付いたのだろう。ミズキリが話し始める。

「最低限の物であれば、当日で片が付きます。内部構造は、それこそできるまでは。」
「難儀ですね。」
「魔石を増やしていけば、内部が複数の階層に別れ複雑になっていきますが、それこそ明日用意する予定の物であれば一層でしょうね。」
「複数のですか。」
「ええ、地下に向かって伸びます。階段があるとそんな話も聞いた事が有りますが、私が知っているものはスロープによるものだけですね。」

そうしてミズキリが説明を始めると、メイが少し考えるようなそぶりを見せる。荷物を運ぶための馬車などを考えているのだろうが。

「道幅が狭かったように思いますが。」
「よりけりだな。」
「そうなのですか。」
「はい。それこそ二人並んで歩くのがやっとの物から、この町の大通り位のものまで。」
「本当に作ってみなければ分からないのですね。」

そういってメイがため息をつく。
今後資源の確保先として利用しよう、その腹積もりがあるのであればなおの事。そう言った不規則性は好ましくないだろう。
オユキ達の様な、攻略する側からすれば嬉しいものではあるのだが。

「魔物の素材、収集品は確保できるが、魔石は不可能。そうでしたね。」
「はい。」
「採取はできるのですか。」
「不可能です。壁面も破壊できません。」
「破壊できない、ですか。」
「以前異邦で試したことはありますが、当時の最大威力、魔術によるものでも焦げ目一つつきませんでしたよ。」

オユキはそのあたり初耳ではあるが、どうにもゲーム的と言えばいいのか、理外にもほどがあるというのか。
さて果たしてそんなものを本当に許すのだろうか。まだまだ何かありそうだとそんなことをどうしても考えてしまう。

「誰かに運びようの物も付けなければいけないかもしれませんね。」
「初回は良いのでは。一先ず確認と、そこからでしょうし。」
「それしかありませんか。」
「試しながらと、そうするしかないでしょう。それと集めた物は。」
「正直現状でははっきりと言えません。」

メイとしてはそちらも頭が痛い問題なのだろう。領主として買い上げるとなれば予算が逼迫するのだろうし。
そもそも作成に使うための魔石、それすらもあるのだから。

「増税、という道を選ぶよりは、領主として手勢を使ってそうなりそうですね。」
「それも含めての人材の切り取り合戦だな。」
「ああ、そうなりますか。」
「頭の痛い事です。」

メイとしての頭痛の種も、予算の確保ではなくどうやらそちらであったらしい。

「あの子たちはこの町に残ると思いますが、どうでしょうか。」
「それこそあの子たちの話し合いの結果ですね。王都には着いてくる気のようですが。」
「領主自らダンジョンに潜り、魔物を狩る日が来るかもしれないな。それを求められるようになるというのもあるだろうが。」

そうして三人そろってメイに視線を送れば、ただただ苦笑いを浮かべる。
概要を聞いただけではあるが、間違いなく現在そんな余裕は作れないだろうが。

「それこそ、先々の事だな。事が動くまでに一年程度は流石に猶予があるだろう。」
「あくまで準備期間であって、動きはあるのでは。」
「それにしても、移動には時間がかかるからな。引き抜きにまず人が集まって、そこからだ。一応紳士協定の様な物くらいはできるだろう。そうでなければ近隣の他領に向かって食い合いをすることになる。」
「いっそ、纏まるというのも手かとは思いますが。」
「いえ、拠点の数を増やす、それは神の定めです。そこは違える事が出来ません。」

前世の歴史通り、淘汰が行われて一つに集約、そんな流れが自然かと考えていたオユキは、メイの言葉にそういえばそんなものがあったと思い出す。

「となれば、やはり大きな、それこそ王都や公都からとなりますか。その辺りはダンジョンに頼らずとも、都市の維持ができるだけの基盤があるでしょうから。先ほどの話の補強となりますが。」
「ままならない話ですね。」
「今後の展望は、それぞれが思い描くことになりそうですが。さて。」

ミズキリはそういって何やら考え込んでいる。人同士の争いは、物理的な物は神の存在が許しはしないだろうが、政治的なパワーゲームは認められているようではある。少なくともミズキリの予想をメイは一度も否定していないのだから。

「そのあたりは決まり次第という事になりそうですね。正直ギルドの仕組みなどが大きく変わりそうでもありますし。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

処理中です...