憧れの世界でもう一度

五味

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6章 始まりの町へ

一騒動

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その後は恙なく狩りを行い、程よく積み荷が集まり子供たちが疲れはじめた所で、ギルドへと納品に向かう。
ここしばらくは一日おきに草原と廃鉱山を行き来しており、草原の時は積み荷が少なく、ギルド職員の手を煩わせるほどでもない。
とはいっても、少ないとは言えない量であり、特に草原はどの魔物も肉を落とすために、それだけでもかなりの量になる。各々が両手一杯に荷袋を抱える必要がある程度には。

「今日も大量ですね。」

ギルドに入れば、馴染みとなった受付の女性にそう声をかけられる。

「魔物が変わらず多いですからね。」
「いつも助かります。」
「肉などは、多すぎる気もしますが。」
「いいえ、そんなことはありませんよ。全体で見れば不足しているほどですから。」
「そうなのですか。ひとまず納品をしてきますね。」

トモエがそう話して奥へと進み、これまた馴染みの男性のカウンター、そこに荷物を積み上げていく。
トモエの手が空になれば後ろを振り向き、それぞれから受け取りながら、おいていけば、相手も慣れた物で、それを順次少し奥にある台へと並べていく。

「今日も、魔石だけ先で構わないか。」
「はい、その様に。」
「荷袋の内訳は。」
「狩猟者の登録番号で縫い取りしています。それと、魔石は頭割りで。」
「ま、いつも通りてやつだな。分かった。ほれガキどもからも代表者を出せ。」

そう言うと男性が3枚の書類を取り出し、それぞれの前に置く。

「こっちが受取証だ。内容はいつも通り荷袋単位。で、個数に間違いがないと確認出来たら、此処にサインだ。」

その声に子供たちの代表者、ティファニアが元気よく返事をして、書類に向かう。

「良い返事だ。良し確認したら、サイン。それから登録証を見せてくれ。よし、大丈夫だな。
 何度も言うが、手順自体は前後することもある。特に顔なじみのいないギルドなら、先に登録証を出すようにな。」
「分かりました。」
「あと、お前らも、始まりの町に行くんだったか。」
「そうですけど。」
「それなら、転属届も必要だな。またこっちに戻るってならいいが、活動拠点を移すなら必須だ。
 まぁ、実績で言えば残ってほしいが、経験としては、妥当だし。まぁ、問題ないだろう。」
「えっと。町を移るのにも、許可がいるんですか。」
「そりゃそうだ。住民を管理するのは、町を治める者の大事な仕事だぞ。」
「へー。」

そんな微笑ましいやり取りを聞きながら、トモエが自分の書類を確認し手早くサインを終えれば、背後から面倒が現れる。

「おい、俺達だって手伝っただろ。」

鹿と遭遇した時は逃げ去った相手ではあるが、なかなか目端は効くようで、その後もトモエたちからほど近い場所、護衛がある程度魔物を削らざるを得ない位置に陣取り、常に少数しか来ない、そんな位置につかず離れずついて来ていた者達であった。
それでも消耗は激しかったのか、オユキ達が戻る一時間と少し前には戻り始めていたが、馬車があっさりと追い越し、こうしてのんびりと手続きを行ったために間に合ってしまったらしい。

「こういったときは、ギルドはどの様に。」
「どうもこうもないな。これまでと納品の量に対して違いがなさそうだし、荷運びもしていない。それで終わりだ。」
「とのことです。」
「は、ふざけんな。俺らだって、そっちに向かう魔物を狩っただろうが。」
「ですから、その成果はあなた方でどうぞ。それでも不服があるようでしたら、ギルドの受付、受付でいいのでしょうか。」
「ああ、此処は納品カウンターだからな。苦情や相談の受付は別だ。そっちで話してこい。
 他にも待ってるのはいるんだ、邪魔するな。それでも続けるなら戒告処分だ。」

受付からそう鋭く声がかかれば、三人組の若い男たちもようやく黙る。
それをしり目に、手続きを済ませ、魔石の計数が終わるのを少し離れて待つ。
そして、そこに懲りることなくついて来て、また何事かを言い始める。
ただ、今度はそれを放置して、トモエとオユキは少年たちに話始める。

「さて、この後はいつものように訓練としたいところではありますが、どうしましょうか。」
「そうですね、シグルド君たちに関しては、体が動くようになってきましたし、型の数を増やしましょうか。
 一連として動くには、その方がよいでしょうし。」

トモエがいつも通りの口調でそう話しかければ、少年たちも少々無理に無視して話に応じる。

「へー。でも、切りが悪くなりそうだし、戻ってからでいいんじゃね。」
「そうだね、あんまり日も残ってないし。」
「皆さんがそう言うのであれば、それでも構いませんが。どのみち帰還の道中、素振りはしますから。」
「あー。そっか、またずっと馬車だもんな。」
「あれ、結構疲れるよね。」

そうして話しだすと、それにいら立ったのか、近づいて来ようとするが、それはオユキ達がなにをする必要もなくルイスによって止められる。

「おっとそこまでだ。」

そうしてルイスが声をかけると同時に、三人組をその場に転がす。

「アイリス、俺はこいつらギルドに預けて来るから、後は任せるぞ。」
「ええ、分かったわ。それにしても、初めての護衛らしい仕事がこんなのの相手とはね。」
「ま、それらしい事ができたと喜ぶしかないわな。」
「町の外でも、護衛してもらってましたけど。」
「あれは護衛、まぁ、そういえばそうなるのかしら。」
「いや、俺らは俺らで魔物を狩ってるだけだな。全部こっちの取り分になるんだから。」
「ってことは、本来の護衛って違うのか。」

シグルドの言葉には答えず、意識を失っているのだろう三人をルイスが一人担げば、他にももう二人が入口付近から入ってきて、残りを担いでルイスに続く。
そして、残ったアイリスがシグルドに応える。

「契約次第だけれど、全てが私たちの物になることはないわね。そう言ったことも込みでの護衛だから、基本的に雇い主の物よ。」
「えー。」
「成果次第で追加報酬を求めることはあるけれどね。」
「大変ですね。」
「言葉は悪いけれど、それこそあなた達程度の戦果なら、休みの日に外に行けばそれだけで得られるもの。」
「でも、俺ら結構稼いでるぜ。」
「あのね。トロフィーも入れればそれなりだけど、抜いてしまえば、私が護衛している間のあなた達の稼ぎじゃ、私が使ってる武器一本にもなわないわよ。」

そのアイリスの言葉に、少年たちが、まじまじとアイリスの腰から下げられた片手剣を見る。
大太刀も作ってはいるが、それはあくまで練習用と、少年たちと同じ程度の物を作っている。

「そんなにすんのか。」
「それでも、中ほどよ。上を見ればきりがないわ。」
「えっと、アイリスさんの知ってる一番高い武器って、どれくらいするんですか。」
「一番となると、二年前に大型種のトロフィーに錬金術と魔術、奇跡を重ねて素材を強化してそれを名匠が打ったものね。七千億くらいだったかしら。」

アイリスの言葉に、少年たちが口を大きく開ける。
これまでかなりの稼ぎ、それこそ数十万と稼いで入るが、それをどれだけ続ければと、考えても思いつかないほどに途方もなく聞こえるのだろう。

「今のままだと、8千年を超えるほど頑張れば買えそうですね。」
「オユキちゃん、それって無理ってことだと思う。」
「まぁ、そうですね。それにしても、それだけの金額の武器ですか。
 長持ちするならよいのですが。」
「どうなのかしら、使ったことが無いもの。それでも伝来の物になるとは思うわよ、流石に。
 そうでなければ、もう飾るしかないもの。」
「そんだけ払って、飾りとか。」

そういってシグルドは首を左右に振る。

「魔物、硬貨は落としてくれますが、あまり増えませんからね。」
「中型以降は、落とさないわよ。」
「流石にそうなりますか。魔石がほとんどその代わりでしょうが。」
「まぁ、ね。ああ、あなた達安心なさい。中型以上になれば魔石の金額も二桁は増えるから。」
「でも、狩るために必要な武器の金額も上がるんですよね。」
「ええ、勿論。」

そんなアイリスの言葉に少年たちはただため息を落とし、番号を呼ばれて昨日の納品物と今日の魔石、それを合わせた額を受け取るのだった。
アマリーアが早速動いていたようで、商人ギルドへの取り置き分もきちんと狩猟者ギルドの物より少し高い、手数料を引けば同じ額になる、そんな風にきちんと設定された額で、取引がなされていた。
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