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6章 始まりの町へ
そして慣れた納品風景
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馬車から、相変わらず狩猟者ギルドの職員にも協力を仰ぎ、本日の成果をせっせと荷下ろしする。
その合間、少年たちには気が付かれないように、オユキとトモエは護衛二人に視線を送る。
ここ数日、少々同業者の視線も強くなっているし、日々同じようなサイクルで活動しているため、商人か、それ以外かそんな視線も増えている。
加えて、今回は鉄人形のトロフィーがかなりの量存在するため、その視線は、より強いものとなっていた。
全てを預け、取っておくものとそうでないもの、それらを選ぶ。
そんな話し合いを、ギルドの二階で、すっかり顔なじみになったフレデリックとフランシスの二人と行う。
「まったく、大したものだよ。」
「ありがとうございます。」
開口一番、そんなことを東部狩猟者ギルドの長であるフレデリックが言うが、オユキとしては今一つ何についてか分からない。心当たりそのものはあるのだが。
「鉄人形など、それこそ中級に上がって、少し慣れた者が狩るような相手だ。
それをよくもまぁ、初級の内から。そっちの少年たちにしても、グレイウルフ複数同時に相手をしているそうじゃないか。」
「そうですね。この子たちはなかなか呑み込みが早いですよ。」
そう、トモエがフレデリックの言葉を受けて、少年たちを誉めれば、一様に嬉しそうにする。
「トロフィーがこうも得られる。何か心当たりは、本当にないのかね。」
「私からは、特には。」
オユキとトモエ、どちらも本当に分からない。
そもそも魔物を狩り、その場から本体が消え、何かが残る、それ自体が既に原理不明だ。
トロフィーは神の功績、そう聞いているから、恐らくそれが関係しているのだろう、そんな程度だ。
かといって、それを証明するために神職の者たちに、魔物と戦って見せよと言えるわけもない。
「それなんだけどさ。」
シグルドが思い当たる事が有るかのように声を出す。
「一応、自分より弱い魔物を相手にすると出ないって、そんな話があるよな。」
「ああ。そういう傾向がある、そんな研究成果は存在する。」
「そりゃそうだよな、功績、神様に褒めてもらってるんだ。
でもさ、他の奴って神様に褒めて貰ったり、認めてもらえたりするような戦い方してんのか。」
「ほう。それは、どういう。」
言いながら、あくまで感覚によるものなのだろう、シグルドは腕を組んで唸りながら続ける。
「いやさ、最近俺らの戦ってるところに、ちょこちょこ別の狩猟者もいるけどさ、戦い方雑じゃん。
で、そんな雑に戦って、戦うってことは戦と武技の神様だろ。
碌に技も使わず、雑に戦って、それでなんで褒めて貰えたり、認めて貰えたりするなんて考えてんだ。」
それは、おかしいだろ。そんな言葉が聞こえてくるような、そんな語調でシグルドが話す。
「あっちのねーちゃんも、俺らよりかなり強いのに、最近草原でトロフィー出してたし。」
そう、シグルドがアイリスに話を振れば、アイリスもそれに頷く。
「そういえば、そうね。あまり気にしていなかったけど。シエルヴォの角を叩き折ったら残ったわね。」
「な。あんちゃんにあれこれ言われて、それでうまくいったから、ちゃんと技になったから神様が褒めてくれたんじゃねーの。功績って、ようはそういう事だろ。」
「しかしな、それだとこれまで通り戦って、トロフィーを得ている者がいることに、説明がつかん。」
「いや、戦と武技の神様だけじゃないじゃん、神様。
つっても、そんな事なら、誰か気が付いてるか。思い付きだから、間違ってるかもな。」
シグルドがそういって話を切り上げ、考え込むフレデリックを放って、フランシスに話しかける。
「そういや、今日綺麗なの拾ってきて、公爵様のお礼にしようって思ってたんだけど、あれって結局なんだかわかるか。」
「綺麗なのってーと、いくつかあったな。特徴は覚えてるか。」
「ああ。これくらいの大きさの石に、青緑の長方形っぽいのがたくさん生えてて、所々綺麗に透き通ってたんだよな。」
「グランディディエライトを見つけたのは、お前か。希少石だ。特に今回みたいに透明度が高い物は、本当に希少だ。」
フランシスが唸るように言えば、シグルドはそれに頷く。
「じゃ、贈り物に向いてるってことだよな。なら、それは持って帰るよ。」
「ああ。残念だけどな。公爵様も間違いなく喜ぶ品だ。どうする、加工するなら店を紹介するぞ。」
「いや、町に戻る迄、そんなに時間もないし、いいや。それが失礼だってなら、考えるけど。」
「俺もそこまで貴族の礼儀に詳しいわけじゃないが、公爵様に任せた方が、加工も間違いないとは思うが。」
そんな話をして、悩んでいるシグルドに、オユキが声をかける。
「今夜アマリーアさんが来られると思うので、そこで相談すればいいと思いますよ。
彼女であれば、詳しいでしょうし、間違いなく公爵様へ届けて頂けるでしょうから。」
「あー。あのおばさんか。約束してたっけ。」
「いいえ。今日の鉄人形のトロフィーに関して、話に来るでしょうから。そこで帰りの馬車も相談しましょうか。」
「そっか、前の石人形の時にも来たもんな。」
そうシグルドが頷くのを見て、オユキもフランシスに話しかける。
「なので、ギルドには半分お任せしますね。」
「分かった。他に、何か取っておきたいものはあるか。」
「鉄人形は、俺の分も取っておきたいな。武器にしたい。」
「そりゃ、いい素材だが、いつ戻るんだったか。あれは加工に手間がかかるから、一月はかかるぞ。」
「む。」
そう言われてパウが考え込むが、それにはシグルドが軽く話す。
「商業ギルドに頼んだら、荷運びしてくれるらしいから、頼んどけばいいんじゃねーか。
それか、預かっといてもらって、また来た時にでもいいし。」
「それもそうだな。戦槌を二つ程作りたい、残りは任せる。」
「あの量でたった二つか。こっちで確認しておくか。」
「いや、いつものところで、先に取ってもらう。いや、運ぶのが大変か。」
「なんだ、決まったとこが有んのか、どこだ。」
「ウーヴェさんがやられている工房ですが。」
「ああ、あの偏屈ジジイか。いいさ、鉄人形の素材があるって言えば向こうから来る、そいつに戦槌二つ分、それと制作代くらいを渡せばいいか。」
「ああ、頼む。」
そこでパウの話が終われば、次はアドリアーナが口を開く。
「あの、私も今日、透き通った青のこんな形、小さな柱みたいなのを拾って。」
「アクアマリンか。ちょっとくすんでたやつだな。あれも透明なら引く手あまただが、まぁそうそう見つかるもんでもない。そっちの坊主が運がいいとしか言えんな。」
「えっと、はい。それを教会に納めようかなって。」
「水と癒しの教会か、喜ぶだろうな。」
「わ、やった。」
そうして、それぞれにいくつかの素材の使い道をフランシスと話している中、シグルドの言葉を聞いて、考え込んでいたフレデリックはようやく口を開く。
「何故気が付かなかったのか。そうだ、トロフィーとて神から賜る功績なのだ。
ならば神の心に叶う、認められるだけの何かが無くてはならないだろうに。」
その呟きに、その場にいるものの視線がフレデリックに集中する。
「忘れていたのか、気が付かなかったのか。忘れていたかったのか、気づきたくなかったのか。原因は、なんだ。
過去の一品、伝来の品に魔物を使ったものが多いという事は、忘れたのか。」
そんなことをフレデリックがひとり呟く。
別に誰に向けてとそういう物でもなく、本当に自分の思考をまとめる、それだけの物なのだろう。
それについては、トモエとオユキも、寝る前にたまに話し合う。二人以外にもここを訪れた物には、武術の心得がある者がいたはずだ。事実アイリスにも出会った。そうであるのに、戦わなければいけないというのに、何故あまりにそのぎじゅが軽視されているのか。
アイリスにしても、初伝と言い放ったが、構えは出来ているがその構えに伴う心構え。
何故そう構えるのか、それを知らなかった。それでは本来伝承が完了したなどと、そうは認められないはずであるのに。
その合間、少年たちには気が付かれないように、オユキとトモエは護衛二人に視線を送る。
ここ数日、少々同業者の視線も強くなっているし、日々同じようなサイクルで活動しているため、商人か、それ以外かそんな視線も増えている。
加えて、今回は鉄人形のトロフィーがかなりの量存在するため、その視線は、より強いものとなっていた。
全てを預け、取っておくものとそうでないもの、それらを選ぶ。
そんな話し合いを、ギルドの二階で、すっかり顔なじみになったフレデリックとフランシスの二人と行う。
「まったく、大したものだよ。」
「ありがとうございます。」
開口一番、そんなことを東部狩猟者ギルドの長であるフレデリックが言うが、オユキとしては今一つ何についてか分からない。心当たりそのものはあるのだが。
「鉄人形など、それこそ中級に上がって、少し慣れた者が狩るような相手だ。
それをよくもまぁ、初級の内から。そっちの少年たちにしても、グレイウルフ複数同時に相手をしているそうじゃないか。」
「そうですね。この子たちはなかなか呑み込みが早いですよ。」
そう、トモエがフレデリックの言葉を受けて、少年たちを誉めれば、一様に嬉しそうにする。
「トロフィーがこうも得られる。何か心当たりは、本当にないのかね。」
「私からは、特には。」
オユキとトモエ、どちらも本当に分からない。
そもそも魔物を狩り、その場から本体が消え、何かが残る、それ自体が既に原理不明だ。
トロフィーは神の功績、そう聞いているから、恐らくそれが関係しているのだろう、そんな程度だ。
かといって、それを証明するために神職の者たちに、魔物と戦って見せよと言えるわけもない。
「それなんだけどさ。」
シグルドが思い当たる事が有るかのように声を出す。
「一応、自分より弱い魔物を相手にすると出ないって、そんな話があるよな。」
「ああ。そういう傾向がある、そんな研究成果は存在する。」
「そりゃそうだよな、功績、神様に褒めてもらってるんだ。
でもさ、他の奴って神様に褒めて貰ったり、認めてもらえたりするような戦い方してんのか。」
「ほう。それは、どういう。」
言いながら、あくまで感覚によるものなのだろう、シグルドは腕を組んで唸りながら続ける。
「いやさ、最近俺らの戦ってるところに、ちょこちょこ別の狩猟者もいるけどさ、戦い方雑じゃん。
で、そんな雑に戦って、戦うってことは戦と武技の神様だろ。
碌に技も使わず、雑に戦って、それでなんで褒めて貰えたり、認めて貰えたりするなんて考えてんだ。」
それは、おかしいだろ。そんな言葉が聞こえてくるような、そんな語調でシグルドが話す。
「あっちのねーちゃんも、俺らよりかなり強いのに、最近草原でトロフィー出してたし。」
そう、シグルドがアイリスに話を振れば、アイリスもそれに頷く。
「そういえば、そうね。あまり気にしていなかったけど。シエルヴォの角を叩き折ったら残ったわね。」
「な。あんちゃんにあれこれ言われて、それでうまくいったから、ちゃんと技になったから神様が褒めてくれたんじゃねーの。功績って、ようはそういう事だろ。」
「しかしな、それだとこれまで通り戦って、トロフィーを得ている者がいることに、説明がつかん。」
「いや、戦と武技の神様だけじゃないじゃん、神様。
つっても、そんな事なら、誰か気が付いてるか。思い付きだから、間違ってるかもな。」
シグルドがそういって話を切り上げ、考え込むフレデリックを放って、フランシスに話しかける。
「そういや、今日綺麗なの拾ってきて、公爵様のお礼にしようって思ってたんだけど、あれって結局なんだかわかるか。」
「綺麗なのってーと、いくつかあったな。特徴は覚えてるか。」
「ああ。これくらいの大きさの石に、青緑の長方形っぽいのがたくさん生えてて、所々綺麗に透き通ってたんだよな。」
「グランディディエライトを見つけたのは、お前か。希少石だ。特に今回みたいに透明度が高い物は、本当に希少だ。」
フランシスが唸るように言えば、シグルドはそれに頷く。
「じゃ、贈り物に向いてるってことだよな。なら、それは持って帰るよ。」
「ああ。残念だけどな。公爵様も間違いなく喜ぶ品だ。どうする、加工するなら店を紹介するぞ。」
「いや、町に戻る迄、そんなに時間もないし、いいや。それが失礼だってなら、考えるけど。」
「俺もそこまで貴族の礼儀に詳しいわけじゃないが、公爵様に任せた方が、加工も間違いないとは思うが。」
そんな話をして、悩んでいるシグルドに、オユキが声をかける。
「今夜アマリーアさんが来られると思うので、そこで相談すればいいと思いますよ。
彼女であれば、詳しいでしょうし、間違いなく公爵様へ届けて頂けるでしょうから。」
「あー。あのおばさんか。約束してたっけ。」
「いいえ。今日の鉄人形のトロフィーに関して、話に来るでしょうから。そこで帰りの馬車も相談しましょうか。」
「そっか、前の石人形の時にも来たもんな。」
そうシグルドが頷くのを見て、オユキもフランシスに話しかける。
「なので、ギルドには半分お任せしますね。」
「分かった。他に、何か取っておきたいものはあるか。」
「鉄人形は、俺の分も取っておきたいな。武器にしたい。」
「そりゃ、いい素材だが、いつ戻るんだったか。あれは加工に手間がかかるから、一月はかかるぞ。」
「む。」
そう言われてパウが考え込むが、それにはシグルドが軽く話す。
「商業ギルドに頼んだら、荷運びしてくれるらしいから、頼んどけばいいんじゃねーか。
それか、預かっといてもらって、また来た時にでもいいし。」
「それもそうだな。戦槌を二つ程作りたい、残りは任せる。」
「あの量でたった二つか。こっちで確認しておくか。」
「いや、いつものところで、先に取ってもらう。いや、運ぶのが大変か。」
「なんだ、決まったとこが有んのか、どこだ。」
「ウーヴェさんがやられている工房ですが。」
「ああ、あの偏屈ジジイか。いいさ、鉄人形の素材があるって言えば向こうから来る、そいつに戦槌二つ分、それと制作代くらいを渡せばいいか。」
「ああ、頼む。」
そこでパウの話が終われば、次はアドリアーナが口を開く。
「あの、私も今日、透き通った青のこんな形、小さな柱みたいなのを拾って。」
「アクアマリンか。ちょっとくすんでたやつだな。あれも透明なら引く手あまただが、まぁそうそう見つかるもんでもない。そっちの坊主が運がいいとしか言えんな。」
「えっと、はい。それを教会に納めようかなって。」
「水と癒しの教会か、喜ぶだろうな。」
「わ、やった。」
そうして、それぞれにいくつかの素材の使い道をフランシスと話している中、シグルドの言葉を聞いて、考え込んでいたフレデリックはようやく口を開く。
「何故気が付かなかったのか。そうだ、トロフィーとて神から賜る功績なのだ。
ならば神の心に叶う、認められるだけの何かが無くてはならないだろうに。」
その呟きに、その場にいるものの視線がフレデリックに集中する。
「忘れていたのか、気が付かなかったのか。忘れていたかったのか、気づきたくなかったのか。原因は、なんだ。
過去の一品、伝来の品に魔物を使ったものが多いという事は、忘れたのか。」
そんなことをフレデリックがひとり呟く。
別に誰に向けてとそういう物でもなく、本当に自分の思考をまとめる、それだけの物なのだろう。
それについては、トモエとオユキも、寝る前にたまに話し合う。二人以外にもここを訪れた物には、武術の心得がある者がいたはずだ。事実アイリスにも出会った。そうであるのに、戦わなければいけないというのに、何故あまりにそのぎじゅが軽視されているのか。
アイリスにしても、初伝と言い放ったが、構えは出来ているがその構えに伴う心構え。
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