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5章 祭りと鉱山
少年達も
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「いや、斬るのは無理だ。」
シグルドが肩で息をしながら、そう零す。
「まだ早いですよ、流石に。」
「にしても、結構とろいと思ったのに、狙い通りに斬れないもんだな。」
「次の段階として、目を鍛えますから。それからですね。」
「うん、それって鍛えてどうにかなるもんなのか。」
「はい。文字通り目を鍛えるという訳でなく、物の見方、この場合敵の見方ですね、それを鍛えます。」
「あー、あれか、こっち見てるはずなのに、足を狙ったりとか、してるもんな。」
「ええ。そう言った物です。まずは構えですけど。」
そう言うと、シグルドが剣を改めて見ながら、ため息をつく。
「でもなぁ、流石にあれ相手に防御はなぁ。」
「ええ。盾としての遣い方は出来ません。いなす、捌く、そういう使い方をしなければいけません。」
「あー、オユキにやられたな。」
「あれはまた違うのですが。そうですね、今日打ち込んでいただいてやって見せましょうか。」
「分かった。良し、パウ、次が来たぞ。」
そう、シグルドが石人形が歩いてくる方を見もせずにそういう。
トモエとオユキもそろそろトラノスケがやっていたようなものが身に付き始めてはいるが、どうやらシグルド少年のほうが早くに身に着けたらしい。
警戒といっても、これまでに慣れた、気配、音や風の流れ、敵意、や視線、そう言った物を総合的に感じ取ることに慣れているからか、未だにトラノスケの言うような、頭の中に簡単に地図が存在しと、そんなものは出来ていない。
「ああ。」
シグルドに応えて、パウがつるはしを手に握り、石人形に向かうが、その途中でトモエが止める。
「はい。力が入りすぎていますよ。確かに見た目に威圧感はあります。
ですが、問題なく勝てます。後は怪我をしないように、それだけです。」
「む、そうか。」
「ええ。過剰に力が入れば、体の動きが鈍ります。無意味な、しなくてもよい怪我をすることに繋がりますよ。」
そう言われたパウが、数度深呼吸をすれば、体から程よく力が抜ける。
その肩に置いた手をトモエが離せば、何を話すでもなく、前えと歩き、石人形に対峙し、振り下ろされた腕に、踏み出された足につるはしを叩きつけ、その体を砕き続ける。
そして、地面に転がる石人形につるはしを振り下ろせば、胴体が消えるが、後には砕いた石人形の部位が散乱している。
「初めて得たトロフィーがこれか。」
そう、肩を落として呟くパウの声が思いのほか響き、アナがそれに噛みつく。
「もう、そういうこと言っちゃダメでしょ。」
「そうだな、神に感謝を。だが、これは、厄介だな。すまん、手間をかける。」
「本来のお仕事ですから。」
戻ってきたパウが子供たちにそう声をかければ、せっせと分かれて拾い集めては、馬車へと運んでいく。
幸い入り口からは数十メートル。ランタンの明りが届かなくなり暫くと、そのような距離であるため、繰り返しの間隔も短いが、成程奥に行けば、大仕事になるだろう。
「騎士の方は、どのように。」
「確か、荷車持ち込んでとかだったな。」
「まぁ、他にありませんか。」
「狭いしな。流石に、小型の馬車なら入れられるだろうが、方向転換はできないだろうな。」
「広げたりは。」
「試したが、魔物が出るようになってからは、広げても暫くすると埋まるらしいぞ。」
「とことん不思議ですね。」
オユキとルイスがそうして話している間に、次はアナが石人形を相手に、どうにかこうにか勝利を手にする。
「トモエさん、私は流石に無理かも。」
「短剣は、とことん相性が悪いですから。片手剣、使いますか。」
「オユキちゃんと同じの使おうかなって。」
「あれは、演武よりも舞に近い動きには合いそうですから。そうですね、オユキさんに流派としての型を繋げた演武を改めてお教えするときに、一緒に見ていてくださいね。」
「そんなのもあるんですね。」
「どちらかと言えば、流派の紹介としての物で、あまり実践的ではありませんが、今なら助けになるでしょうから。」
「へー。トモエさんは、あれ、使えるんですか。」
「どうでしょうか。オユキさんが私と並ぶためにと選んだものですから、私からそちらに行くのは違いますね。」
「素敵。」
そうして、話しながらも武器の手入れに周囲の警戒、狂った地精は現れるたびに手近なものが撫で切りにして、泥人形はオユキとルイスが捌く。
「それにしても、収集物以外は、明りが確保できれば、初心者にもやさしそうですね。」
「まぁ、な。ただ問題は石人形だな。力任せに向かえば、叩き潰されるんだがなぁ。」
「そのような教えはしませんから。」
「ここまで回避主体ってのは珍しいよな。」
「こちらだと身体の強度も上がりますからね。ルイスさんであれば、やはり。」
「どれ、少し見せるか。」
そういってルイスが前にたち、石人形の相手をするが、それはもうめちゃくちゃな物であった。
振り下ろされた腕を真っ向から殴り返して砕き、そのまま無造作に胴体を拳でたたき割る。
物理法則も何もあったものではない、その結果に、オユキもトモエも苦笑いをするしかない。
「まぁ、こうだな。」
「お見事、というのも違う気がしますが。」
「お前らのやってる当身か、打撃技があるけどそれとその長刀には興味があるんだがな。
正直アイリスじゃないが、伸び悩んでるからな、俺も。」
「そうなのですか。」
「ああ、正直加護だけじゃな。そこらの魔物を狩ったところでもう伸びない。
で、伸ばそうと思えば強敵相手だが、一人では勝てない、そんな状況になってなぁ。」
そうして彼の見る先では、セシリアがどうにかこうにか石人形を倒し切る。
最初はオユキの真似を試みたのか、首を狙ったが、数度狙いを失敗し弾かれた結果、おとなしく振り下ろされた後の手や、足を狙い順々に切り崩し、最後は動きの遅くなった首をはねて片を付ける。
「うーん。上手く行かなったかな。」
「まだまだ練習が足りませんからね。」
「そうですね。私も、武器オユキちゃんとおそろいにしようかな。」
「正直そうしていただけると、私も教えやすいので。」
「あ、そうなんですね。でも、あれ作るの大変そうだよね。」
「そのあたりは、工房の方に相談してみましょうか。」
「はい。」
セシリアが戻ってきたら、次はアドリアーナが相対するが、弓を使いたいそういう事もあって、しっかりと相手を見て危なげなく対処しきる。
「私、こういう相手は得意かもしれません。」
「そうですね、パウ君とアドリアーナさんは相性がいいですね。」
「相性ですね。」
「はい。勿論、そうしてきちんと対応できる能力が身についていることもありますが、やはりそうなると今度はそれが出てきます。」
「はい、何となくわかります。それを突き詰めれば、自分の得意で押し通す、そうなるわけですよね。」
「そうですね。そこにも色々理合いがありますが。大きくはそうなります。」
「うーん。私は、どんな方向を目指そうかな。」
「あくまで弓の補助ですからね。それも色々と考えていきましょう。やって馴染むものを突き詰めればいいわけですからね。」
少年達も、少し欲が出てきているようで何よりだと、そんな様子を見ながらオユキは微笑ましく見守り、そのうえで自分の道というのも考える。
さて、こうしていざ自分の望んだ新しい形が手元に来てみれば、その欲はやはり強くなってくるものだ。
先ほどからせっせと荷物を運んでいる子供たちも、今はまだまだそれ以前の問題ではあるが、さて、今後を考えられる程度には、仕込んでいきたいものだと、そんなことも考える。
「さて、馬車に詰めれる、その分くらいは狩ってみましょうか。」
そんなことを呟きながらも、ふと目の端に止まった光に気を引かれ、それを手に取る。
生憎鉱物の知識はないため分からないが、こうしてこういった物を拾い集めるのも楽しいものだな、とそんなことをのんびりと考えながら。
「それにしても、狩猟者ギルド、そちらの納品物を受け付ける方は大変ですね。」
「あー。一応近隣の魔物の収集品はすべて記録してるらしいぞ。ま、専門職だ。並の商人より目利きができる。
加えて、魔眼もち、見たらそれが何なのか分かるとか、そんな人間も場所によってはいるらしいからな。」
「おや。それはまた。」
シグルドが肩で息をしながら、そう零す。
「まだ早いですよ、流石に。」
「にしても、結構とろいと思ったのに、狙い通りに斬れないもんだな。」
「次の段階として、目を鍛えますから。それからですね。」
「うん、それって鍛えてどうにかなるもんなのか。」
「はい。文字通り目を鍛えるという訳でなく、物の見方、この場合敵の見方ですね、それを鍛えます。」
「あー、あれか、こっち見てるはずなのに、足を狙ったりとか、してるもんな。」
「ええ。そう言った物です。まずは構えですけど。」
そう言うと、シグルドが剣を改めて見ながら、ため息をつく。
「でもなぁ、流石にあれ相手に防御はなぁ。」
「ええ。盾としての遣い方は出来ません。いなす、捌く、そういう使い方をしなければいけません。」
「あー、オユキにやられたな。」
「あれはまた違うのですが。そうですね、今日打ち込んでいただいてやって見せましょうか。」
「分かった。良し、パウ、次が来たぞ。」
そう、シグルドが石人形が歩いてくる方を見もせずにそういう。
トモエとオユキもそろそろトラノスケがやっていたようなものが身に付き始めてはいるが、どうやらシグルド少年のほうが早くに身に着けたらしい。
警戒といっても、これまでに慣れた、気配、音や風の流れ、敵意、や視線、そう言った物を総合的に感じ取ることに慣れているからか、未だにトラノスケの言うような、頭の中に簡単に地図が存在しと、そんなものは出来ていない。
「ああ。」
シグルドに応えて、パウがつるはしを手に握り、石人形に向かうが、その途中でトモエが止める。
「はい。力が入りすぎていますよ。確かに見た目に威圧感はあります。
ですが、問題なく勝てます。後は怪我をしないように、それだけです。」
「む、そうか。」
「ええ。過剰に力が入れば、体の動きが鈍ります。無意味な、しなくてもよい怪我をすることに繋がりますよ。」
そう言われたパウが、数度深呼吸をすれば、体から程よく力が抜ける。
その肩に置いた手をトモエが離せば、何を話すでもなく、前えと歩き、石人形に対峙し、振り下ろされた腕に、踏み出された足につるはしを叩きつけ、その体を砕き続ける。
そして、地面に転がる石人形につるはしを振り下ろせば、胴体が消えるが、後には砕いた石人形の部位が散乱している。
「初めて得たトロフィーがこれか。」
そう、肩を落として呟くパウの声が思いのほか響き、アナがそれに噛みつく。
「もう、そういうこと言っちゃダメでしょ。」
「そうだな、神に感謝を。だが、これは、厄介だな。すまん、手間をかける。」
「本来のお仕事ですから。」
戻ってきたパウが子供たちにそう声をかければ、せっせと分かれて拾い集めては、馬車へと運んでいく。
幸い入り口からは数十メートル。ランタンの明りが届かなくなり暫くと、そのような距離であるため、繰り返しの間隔も短いが、成程奥に行けば、大仕事になるだろう。
「騎士の方は、どのように。」
「確か、荷車持ち込んでとかだったな。」
「まぁ、他にありませんか。」
「狭いしな。流石に、小型の馬車なら入れられるだろうが、方向転換はできないだろうな。」
「広げたりは。」
「試したが、魔物が出るようになってからは、広げても暫くすると埋まるらしいぞ。」
「とことん不思議ですね。」
オユキとルイスがそうして話している間に、次はアナが石人形を相手に、どうにかこうにか勝利を手にする。
「トモエさん、私は流石に無理かも。」
「短剣は、とことん相性が悪いですから。片手剣、使いますか。」
「オユキちゃんと同じの使おうかなって。」
「あれは、演武よりも舞に近い動きには合いそうですから。そうですね、オユキさんに流派としての型を繋げた演武を改めてお教えするときに、一緒に見ていてくださいね。」
「そんなのもあるんですね。」
「どちらかと言えば、流派の紹介としての物で、あまり実践的ではありませんが、今なら助けになるでしょうから。」
「へー。トモエさんは、あれ、使えるんですか。」
「どうでしょうか。オユキさんが私と並ぶためにと選んだものですから、私からそちらに行くのは違いますね。」
「素敵。」
そうして、話しながらも武器の手入れに周囲の警戒、狂った地精は現れるたびに手近なものが撫で切りにして、泥人形はオユキとルイスが捌く。
「それにしても、収集物以外は、明りが確保できれば、初心者にもやさしそうですね。」
「まぁ、な。ただ問題は石人形だな。力任せに向かえば、叩き潰されるんだがなぁ。」
「そのような教えはしませんから。」
「ここまで回避主体ってのは珍しいよな。」
「こちらだと身体の強度も上がりますからね。ルイスさんであれば、やはり。」
「どれ、少し見せるか。」
そういってルイスが前にたち、石人形の相手をするが、それはもうめちゃくちゃな物であった。
振り下ろされた腕を真っ向から殴り返して砕き、そのまま無造作に胴体を拳でたたき割る。
物理法則も何もあったものではない、その結果に、オユキもトモエも苦笑いをするしかない。
「まぁ、こうだな。」
「お見事、というのも違う気がしますが。」
「お前らのやってる当身か、打撃技があるけどそれとその長刀には興味があるんだがな。
正直アイリスじゃないが、伸び悩んでるからな、俺も。」
「そうなのですか。」
「ああ、正直加護だけじゃな。そこらの魔物を狩ったところでもう伸びない。
で、伸ばそうと思えば強敵相手だが、一人では勝てない、そんな状況になってなぁ。」
そうして彼の見る先では、セシリアがどうにかこうにか石人形を倒し切る。
最初はオユキの真似を試みたのか、首を狙ったが、数度狙いを失敗し弾かれた結果、おとなしく振り下ろされた後の手や、足を狙い順々に切り崩し、最後は動きの遅くなった首をはねて片を付ける。
「うーん。上手く行かなったかな。」
「まだまだ練習が足りませんからね。」
「そうですね。私も、武器オユキちゃんとおそろいにしようかな。」
「正直そうしていただけると、私も教えやすいので。」
「あ、そうなんですね。でも、あれ作るの大変そうだよね。」
「そのあたりは、工房の方に相談してみましょうか。」
「はい。」
セシリアが戻ってきたら、次はアドリアーナが相対するが、弓を使いたいそういう事もあって、しっかりと相手を見て危なげなく対処しきる。
「私、こういう相手は得意かもしれません。」
「そうですね、パウ君とアドリアーナさんは相性がいいですね。」
「相性ですね。」
「はい。勿論、そうしてきちんと対応できる能力が身についていることもありますが、やはりそうなると今度はそれが出てきます。」
「はい、何となくわかります。それを突き詰めれば、自分の得意で押し通す、そうなるわけですよね。」
「そうですね。そこにも色々理合いがありますが。大きくはそうなります。」
「うーん。私は、どんな方向を目指そうかな。」
「あくまで弓の補助ですからね。それも色々と考えていきましょう。やって馴染むものを突き詰めればいいわけですからね。」
少年達も、少し欲が出てきているようで何よりだと、そんな様子を見ながらオユキは微笑ましく見守り、そのうえで自分の道というのも考える。
さて、こうしていざ自分の望んだ新しい形が手元に来てみれば、その欲はやはり強くなってくるものだ。
先ほどからせっせと荷物を運んでいる子供たちも、今はまだまだそれ以前の問題ではあるが、さて、今後を考えられる程度には、仕込んでいきたいものだと、そんなことも考える。
「さて、馬車に詰めれる、その分くらいは狩ってみましょうか。」
そんなことを呟きながらも、ふと目の端に止まった光に気を引かれ、それを手に取る。
生憎鉱物の知識はないため分からないが、こうしてこういった物を拾い集めるのも楽しいものだな、とそんなことをのんびりと考えながら。
「それにしても、狩猟者ギルド、そちらの納品物を受け付ける方は大変ですね。」
「あー。一応近隣の魔物の収集品はすべて記録してるらしいぞ。ま、専門職だ。並の商人より目利きができる。
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