憧れの世界でもう一度

五味

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二章 新しくも懐かしい日々

狩猟者ギルドで

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トモエとオユキの二人が、狩猟者ギルドへ向けて歩いている間に、そちらへと走っていった門番だろう。
揃いのよりが目立つ、そんな相手とすれ違った。
手には筒、紙を持ち運ぶためだろう、を持ちながら、言葉をかける暇もなく、それこそ車に近い、もしくはそれ以上の速度で駆け抜けていった。
ぶつかれば、文字通りの人身事故となるだろうが、大通りは、こういった事もあるからだろう、広い道を歩行者、のんびり歩くものは、それぞれ道の端を、店舗の軒先に並ぶ商品があれば、それを冷かしながら歩いている。
先立つものに余裕はないが、それができれば、二人でこうして歩くのもいいだろう、そんなことを話しているうちに、目的としていた狩猟者ギルドへとたどり着く。

ギルド内は、ここ数日の経験でしかないが、落ち着いた雰囲気は一掃され、緊張感が漂っている。
そんな中に二人が足を踏み入れると、顔だけは見おぼえた、総合受付の女性から声がかかる。

「ああ、お二人。ちょうどいいところに。
 お話を聞かせていただきたいのですが。」

手を振りながら、声を張る女性の元に移動し、オユキが応える。

「はい。白玉兎の事ですね。勿論構いません。
 ですが、納品も行いたいのですが。」
「納品については、物品と仮登録証をお預かりしますね。
 番号でお呼びはせずに、お話を伺い終わるころには、報酬の受け取りができるようにしておきますね。」

そういって、総合受付の女性は、木札を一枚取り出し、受つから出ると、納品カウンターへと二人を先導する。
そこにいた受付に木札を渡しながら、何かを簡単に説明している。
それが終わったのか、直ぐにオユキとトモエが呼ばれ、昨日と同じように、仮登録証と、集めた物品を効果も含めて渡すと、そのまま総合受付の女性に、初日に、トラノスケが、少し特別な場合に使うのだ、そう説明していた一角へと向かう。
そこのカウンターの脇から、回り込み、席に着いた女性に勧められるまま、二人は女性と向かい合って座る。

「はい、それではいくつかお話を聞かせていただきますね。」

そういわれ、オユキが待機所でしたものと同じ話を、ここでも行う。
そして、それを相手が容姿に書き留めていく。
ただ、それが終わった後の様子は、待機所のアーサー達とは異なっていた。

「まずそうですね。」

元々長い話でもないため、話し始めてすぐ、見つけた状況に話が及んだあたりから、相手の表情が曇り、話終えれば、そのようにつぶやいた。

「その、何か対応に不手際がありましたか?」
「ああ、いいえ。そちらは全く問題ありません。むしろ模範的と、そういってもいいくらいなのですが。」

そういうと、女性は奥のほうに向かって声をかけ、呼ばれてきた相手に、書類を渡し、それを受け取った女性がどこかへと運んでいく。
こちらも傭兵ギルドに劣らず、内部はかなり広い。受付からは、衝立もあるため、その奥に何があるか、どれほど広いのかは見通せないが。

「そうですね。少しご説明しておきますね。守衛の方は言及しなかったようですが、知っておいたほうがいいかとも思いますから。
 町の側で見つかっている、それに関してなのですが。そもそも、魔物は、町から一定の距離が離れた場所にしか発生しません。」
「そういえば、町中で発生するのであれば、こうものんびりとはしていませんか。」

その言葉に、トモエがそういって頷いている。
オユキはそれに関して、説明していなかったことを思い出す。

「確か、教会、そこでのお勤めによるものだったかと。」
「はい、そうです。教会での祈り、特に、安息を司る神への物ですが、それに神々がお答えくださるからこそ、こうして我々は、日々魔物におびえることなく、壁の内側で暮らせているわけです。
 ええと、少し話が逸れましたね、ただ、神々の力というのは強く、私達の作った壁に沿ってと、そういうものではありません。そこを超える形で、魔物が発生しないように、そうなっているんです。」

二人は、ひとまずそれに頷く。
さて、話の流れからすれば、本来発生しない、そんな位置に魔物、それも変異種がいたのだろう。
だが、その道すがら、丸兎の討伐も繰り返していたし、前日からも、魔物がいた場所ではあるのだが。
そんな疑問に答えるように、彼女は説明を続ける。

「勿論、一たび発生すれば、魔物は自由に動き回ります。
 その本能である、人への攻撃、それを果たすために、人の住む場所へ近づいてきたりもするわけですが。
 ただ、今回の変異種ですが、朝から出ていった、他の狩猟者の方からの報告が今のところありません。」
「つまり、本来ではありえない場所に発生したのか、そうでなければ誰かが引き連れた結果、そういう事ですか。」
「はい。そうです。守衛の方から、何か聞いていますか?」
「討伐にあたった方は、周期が早く、恐らく溢れ、魔物の氾濫ではないかと、そう懸念されていましたが。」

オユキがそう伝えると、女性は少し安心したように息をつく。
もし、誰かが引き連れてきたのであれば、その人物が見つかってない以上、既に亡くなっていることだろう。
アーサーにしても、遺品があったと、あの火柱で焼き払われていれば、どうなったかは分からないが、それに言及しなかった以上、特に、誰かによるものと、そういった物はなかったのだろう。

「成程、そうであれば、死者が出たわけではなさそうですね。
 いえ、今後はその限りではありませんが。」

魔物の氾濫、それが現実になれば、白玉兎、それ以外にもこの町の近隣に、強力な魔物が現れていてもおかしくはない。
オユキは、それこそ始まりの町で参加したのは半世紀は前だが、確か防衛線、そう呼ばれるものが時に起こり、その際は、昨日ギルドで説明を受けたように、ただただ大量の魔物が発生するもの、フィールドボスが一斉に現れる物、そして、それを超える、その防衛線限定の、強力な魔物が現れる、その3通りがあった。
それを思い出し、オユキは少し表情を曇らせる。
側で話を聞いていたトモエにしても、非常事態、それの気配を感じてか、表情を厳しいものにしている。

「なんにせよ、情報ありがとうございました。
 発見報酬は、納品物と一緒に清算しますので。」
「既に、守衛の方から頂いておりますが。」
「ああ、そちらは、守衛、この場合この地を治める領主からですね。
 それとは別に、当ギルドからも出ますよ。
 先にギルドだけに報告いただいた場合でも、領からの報奨金は後日改めて清算となります。」
「はい、それでは遠慮なく。」

そう答えて、オユキとトモエは女性に促されるままに、報酬を受け取るカウンターへと向かう。
そこでは、既に計算を終えていたようで、準備がされていた。
昨日と同じく、トモエがそれを確認して受取、そこで、思い出したように質問をする。

「そういえば、こちらを、例えば肉そのままが欲しい場合などは、どうなりますか?」
「ああ、それでしたら、納品時に言って頂ければ、その分を分けて生産を行いますよ。
 毒を含むものなどもありますので、一度預からせてはいただきますが。
 洗浄迄行ったうえで、現物をそのままお返しします。」
「成程、有難いことですね。それと、野営の際、魔物から出た肉などを、消費することに関しては?」
「洗浄や解毒が可能であれば、問題ありません。
 納品していただくのは、あくまで町まで、狩猟者ギルドがある場所までお持ち帰りいただいたものになりますから。
 このあたりはともかく、大型の魔物ともなれば、気軽にすべてを持ち帰ることもできない量が出ますからね。」
「分かりました。ご説明いただき、ありがとうございます。」

その場では、トモエがそう答えて、頭を下げ、二人はギルドを後にする。
もう一度町の外へと向かう、それには時間が遅く、宿にまっすぐ帰るにはまだ早い。
そんな時間であったため、さてどうしたものか、宿で一度のんびりしましょうか、そんなことを話しながら。
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