33 / 1,235
1章 懐かしく新しい世界
賑やかな夕食
しおりを挟む
フラウが厨房に駆け込んで少しすると、宿にトモエが帰ってくる。
合わせて買ってきたのだろう、肩から上の口を紐で絞る、そんな鞄を下げている。
「お待たせしてしまいましたか?
髪は、オユキさんが、ご自分で?」
オユキの考えるよりも、かなり早い時間で戻ってきており、トラノスケは同行していない。
恐らく、案内の後はミズキリに声をかけに行ったのだろう。
「いいえ、早くて驚いたくらいです。髪はフラウさんが纏めてくれました。
自分でやったのですが、どうにも、彼女の御眼鏡には適わなかったようでして。」
「まぁ、自分の髪をとなると、それこそ化粧台でもないと、難しいですからね。
簡単にまとめるだけであれば、どうとでもなることは確かなのですけれど。」
そういって、トモエはオユキの髪を確認するように、背後に回り込む。
「さて、では一度荷物を置きに行きましょうか。
夕食までには、身も清めたいですから。それに、帯剣して食事というのも、まぁ屋内であれば止めておきましょう。」
「そうですね。体をふくための布なども買ってきました。
ただ、確かに、なかなか把握しにくい物価のようですね。」
「大量生産ができないと、そういう事なのでしょう。」
そうして、トモエが再びオユキを抱えようとするのを、オユキが荷物があるからと断り、荷物を置き、それぞれ体を水で拭う。
石鹸の類もあればと、どうしてもそう考えてしまうが、ないものはしかたない。
そうして、真新しい服へと身を包み、改めて宿の玄関口、多くの机とスツールが並ぶ広場へと戻ってくる。
「それにしても、確かに食事の人気は高いようですね。」
体を拭っている間から、徐々に賑やかさが増していた食堂は、今となっては空いた机二つほどしかない。
最初に宿泊の受付を行ったカウンターにも、スツールが並べられ、既にそこにも席についている人がいる。
また、樽の並んでいたカウンター、そこにも男性が立ち、その前には木製だろう、カップを傾け笑い声をあげる者もいる。
「あら、そうなのですか。それはトラノスケさんに、いい場所を紹介していただけましたね。
どうしましょうか、机についてしまいますか?」
「そうですね、トラノスケさんも来られますし、カウンターでは3人並べるところはなさそうですから。」
そういって、オユキは空いている机の一つへと向かう。
それにトモエが何も言わずについてきて、二人で並んで席に座る。
こうしていろいろな人がいる中でも、トモエの鮮やかな赤色の髪は目立つことだろう。
周りには、多種多様な、それこそ頭部から獣の耳が生えているものもいるが、それでも埋没はしないであろう。
席について、さて注文などはどうすればと、オユキがあたりを見回せば、そこにフラウがパタパタと走り込んでくる。
「いらっしゃい。どうしよう、さっそく料理持ってこようか?」
「いえ、トラノスケさんが戻るのを待ちたいと考えていますが、ご迷惑でしょうか。」
オユキは周りを見回しながら、そう、言葉を続ける。
「大丈夫、大丈夫。そのあたりは泊ってる人優先だよ。
どうしよう、飲み物とかはいる?」
そう聞かれ、オユキはトモエに視線を送る。
確かに今日、オユキはともかく、後半はほとんど自分の足で歩いたわけではない、トモエはあちこちへと動き回っていた。
「そうですね。水があれば、貰いたいですが。
他にどういった物が、あるのでしょうか。」
「うーん、そんなに沢山あるわけじゃないかな。
水に、紅茶、あとはエールにワイン。シードルとミードとか。
泊りの人には、水とエールをタダで出してるよ。」
そのあたりは、見た目通り酒精を含むもののほうが、充実しているようだ。
ところどころで、笑い声と共に木を打ち合わせる音が響いているのは、つまりそういう事なのだろう。
「流石に、お酒は頼むにしても、揃ってからにしましょうか。
一先ず、水を頂けますか。」
「わかった、じゃぁ、ちょっと待っててね。」
フラウはそういうと、またパタパタと厨房のほうへと駆けていく。
それを眺めたトモエがいい子ですね、そう口にして、改めて周りを見回す。
「ゲームのお話としては伺っていましたが、本当にいろいろな方がいるのですね。」
オユキもその視線を軽く追いかけ、頷く。
「そうですね、私達の世界では、それこそお伽噺の中でしか聞かないような方も、たくさんおられます。」
「ええ、此処まであった方は、皆私達と変わりない見た目でしたから。
いえ、町中を歩いている間や、狩猟者ギルドで見かけはしましたけれど。」
こうしてひとところに集まっているのを見ると、改めて感慨深いものがありますね。
そう、トモエが口にする。
元々ゲームとして親しんでいたオユキには、見慣れた光景ではあるが、やはり初めて見るともなれば、思うところがあるのだろう。
失礼にならない程度に、トモエはあちらこちらと視線を動かしている。
「さて、私はあまり背景に熱心ではなかったので、細かい説明はできませんが。」
「いえいえ。それこそ聞きたく成れば、ご本人に聞くのが早いでしょうとも。
それに、1000年は立っているのでしょう。なら、変わったことも多いと思いますから。」
「そうですね。ですが、世界ができて、1000年ですか。
長いと思いもしますが、どうでしょう、私達の世界では、創生から億の単位で立っていたそうですからね。」
オユキはそういうと、ぼんやりと宙を見てしまう。
全うした人生を思えば、とても長い時間だが、世界としてみれば、まだ歩き始めたばかり、そういってもいいのだろうか。
それとも、初めから、それこそゲームのように、そこに突然完成した物が現れたのだろうか。
そういった事に思いを馳せるのも、面白い、オユキはそんなことを考える。
「ええ。不思議なところです。先ほど外に出ていたときに日が沈みましたが、空には星もありませんでした。」
オユキはそれに頷く。それはゲームの頃から変わらない。
さて、ゲーム時代でこの世界の設定は、オユキはどうにか覚えている部分。
特に世界の果て、そこで試したことを思い出す。
「以前、お話ししたかとも思いますが、此処には本当に世界の果てが存在しますからね。
平面の大地で、確か、はて、何がこの大地を支えているのでしたか。」
「確か、大きな樹がと聞いた覚えがありますね。」
「ああ、そうでした。」
オユキとトモエが、そんなことを話していると、机に近づいた二人組が声をかける。
「すまない、待たせたか。」
トラノスケと、オユキは見知った、古い友人、会社でもゲームでも。
姿は違えど、本当に長い時間を共に過ごした相手がそこにいた。
合わせて買ってきたのだろう、肩から上の口を紐で絞る、そんな鞄を下げている。
「お待たせしてしまいましたか?
髪は、オユキさんが、ご自分で?」
オユキの考えるよりも、かなり早い時間で戻ってきており、トラノスケは同行していない。
恐らく、案内の後はミズキリに声をかけに行ったのだろう。
「いいえ、早くて驚いたくらいです。髪はフラウさんが纏めてくれました。
自分でやったのですが、どうにも、彼女の御眼鏡には適わなかったようでして。」
「まぁ、自分の髪をとなると、それこそ化粧台でもないと、難しいですからね。
簡単にまとめるだけであれば、どうとでもなることは確かなのですけれど。」
そういって、トモエはオユキの髪を確認するように、背後に回り込む。
「さて、では一度荷物を置きに行きましょうか。
夕食までには、身も清めたいですから。それに、帯剣して食事というのも、まぁ屋内であれば止めておきましょう。」
「そうですね。体をふくための布なども買ってきました。
ただ、確かに、なかなか把握しにくい物価のようですね。」
「大量生産ができないと、そういう事なのでしょう。」
そうして、トモエが再びオユキを抱えようとするのを、オユキが荷物があるからと断り、荷物を置き、それぞれ体を水で拭う。
石鹸の類もあればと、どうしてもそう考えてしまうが、ないものはしかたない。
そうして、真新しい服へと身を包み、改めて宿の玄関口、多くの机とスツールが並ぶ広場へと戻ってくる。
「それにしても、確かに食事の人気は高いようですね。」
体を拭っている間から、徐々に賑やかさが増していた食堂は、今となっては空いた机二つほどしかない。
最初に宿泊の受付を行ったカウンターにも、スツールが並べられ、既にそこにも席についている人がいる。
また、樽の並んでいたカウンター、そこにも男性が立ち、その前には木製だろう、カップを傾け笑い声をあげる者もいる。
「あら、そうなのですか。それはトラノスケさんに、いい場所を紹介していただけましたね。
どうしましょうか、机についてしまいますか?」
「そうですね、トラノスケさんも来られますし、カウンターでは3人並べるところはなさそうですから。」
そういって、オユキは空いている机の一つへと向かう。
それにトモエが何も言わずについてきて、二人で並んで席に座る。
こうしていろいろな人がいる中でも、トモエの鮮やかな赤色の髪は目立つことだろう。
周りには、多種多様な、それこそ頭部から獣の耳が生えているものもいるが、それでも埋没はしないであろう。
席について、さて注文などはどうすればと、オユキがあたりを見回せば、そこにフラウがパタパタと走り込んでくる。
「いらっしゃい。どうしよう、さっそく料理持ってこようか?」
「いえ、トラノスケさんが戻るのを待ちたいと考えていますが、ご迷惑でしょうか。」
オユキは周りを見回しながら、そう、言葉を続ける。
「大丈夫、大丈夫。そのあたりは泊ってる人優先だよ。
どうしよう、飲み物とかはいる?」
そう聞かれ、オユキはトモエに視線を送る。
確かに今日、オユキはともかく、後半はほとんど自分の足で歩いたわけではない、トモエはあちこちへと動き回っていた。
「そうですね。水があれば、貰いたいですが。
他にどういった物が、あるのでしょうか。」
「うーん、そんなに沢山あるわけじゃないかな。
水に、紅茶、あとはエールにワイン。シードルとミードとか。
泊りの人には、水とエールをタダで出してるよ。」
そのあたりは、見た目通り酒精を含むもののほうが、充実しているようだ。
ところどころで、笑い声と共に木を打ち合わせる音が響いているのは、つまりそういう事なのだろう。
「流石に、お酒は頼むにしても、揃ってからにしましょうか。
一先ず、水を頂けますか。」
「わかった、じゃぁ、ちょっと待っててね。」
フラウはそういうと、またパタパタと厨房のほうへと駆けていく。
それを眺めたトモエがいい子ですね、そう口にして、改めて周りを見回す。
「ゲームのお話としては伺っていましたが、本当にいろいろな方がいるのですね。」
オユキもその視線を軽く追いかけ、頷く。
「そうですね、私達の世界では、それこそお伽噺の中でしか聞かないような方も、たくさんおられます。」
「ええ、此処まであった方は、皆私達と変わりない見た目でしたから。
いえ、町中を歩いている間や、狩猟者ギルドで見かけはしましたけれど。」
こうしてひとところに集まっているのを見ると、改めて感慨深いものがありますね。
そう、トモエが口にする。
元々ゲームとして親しんでいたオユキには、見慣れた光景ではあるが、やはり初めて見るともなれば、思うところがあるのだろう。
失礼にならない程度に、トモエはあちらこちらと視線を動かしている。
「さて、私はあまり背景に熱心ではなかったので、細かい説明はできませんが。」
「いえいえ。それこそ聞きたく成れば、ご本人に聞くのが早いでしょうとも。
それに、1000年は立っているのでしょう。なら、変わったことも多いと思いますから。」
「そうですね。ですが、世界ができて、1000年ですか。
長いと思いもしますが、どうでしょう、私達の世界では、創生から億の単位で立っていたそうですからね。」
オユキはそういうと、ぼんやりと宙を見てしまう。
全うした人生を思えば、とても長い時間だが、世界としてみれば、まだ歩き始めたばかり、そういってもいいのだろうか。
それとも、初めから、それこそゲームのように、そこに突然完成した物が現れたのだろうか。
そういった事に思いを馳せるのも、面白い、オユキはそんなことを考える。
「ええ。不思議なところです。先ほど外に出ていたときに日が沈みましたが、空には星もありませんでした。」
オユキはそれに頷く。それはゲームの頃から変わらない。
さて、ゲーム時代でこの世界の設定は、オユキはどうにか覚えている部分。
特に世界の果て、そこで試したことを思い出す。
「以前、お話ししたかとも思いますが、此処には本当に世界の果てが存在しますからね。
平面の大地で、確か、はて、何がこの大地を支えているのでしたか。」
「確か、大きな樹がと聞いた覚えがありますね。」
「ああ、そうでした。」
オユキとトモエが、そんなことを話していると、机に近づいた二人組が声をかける。
「すまない、待たせたか。」
トラノスケと、オユキは見知った、古い友人、会社でもゲームでも。
姿は違えど、本当に長い時間を共に過ごした相手がそこにいた。
12
あなたにおすすめの小説
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる