4 / 4
04,空3
しおりを挟む『ガガッ……ピオニー、303号室へ』
通信機からピオニーの名前が呼ばれる。しかも、303号室は"常連"で、ピオニーをひどく気に入っている相手だ。幸い、彼女が仕事を終えて戻って来た時には、暴行や罵倒を浴びた様子は見られない。最初のうちは、いつか相手の本性が現れるのではないかと警戒していたが、今ではその心配が杞憂だったと分かっている。
「アレックス少佐ね。じゃあアサ、またあとで」
「ああ、気をつけて」
ピオニーを見送ったあと、まだ呼ばれていない子達がコソコソと話し始めた。
「アレックス少佐って絶対……だと思うわ」
「確かに確かに!」
「ピオニーは気づいてるのかな?」
「気づいてないんじゃない?」
「だいたいピオニーは……のことしか見てないし」
ところどころ聞き取れないが、楽しそうに会話を続けていた。
アレックス少佐ーーこの基地を管理しているアルバート少佐の補佐役だ。同じ少佐ではあるが、現在所属している基地が大規模なこともあり、2人体制で管理をしている。風の噂では、どちらかが中佐に昇進し、いずれ一本化されるという話もある。
そんな噂の人物が、ピオニーに惚れているらしい。ピオニー本人から聞いた話では、呼び出しされるものの雑談をして終わりだそうだ。この基地では変わった行動とされ、フラワーの子達も憶測を立てるほどの不思議な出来事であった。
ピオニーがアレックス少佐の元へ向かってしばらくした後、基地内に緊急警報が鳴り響いた。突然の警報音に、アサは胸騒ぎを覚えた。何が起きているのかと外を見渡すと、兵士たちが慌ただしく走り回っている。
(何が起こった……?)
兵士たちの会話の断片が耳に入ってくる。
「宇宙の奴らが来た!」
「あいつらが!? 何のために……?」
宇宙――それは地球を捨てた人々を指す言葉だった。男たちが最も憎んでいる存在であり、女性よりも激しい敵意を抱いていた。アサは、なぜこのタイミングで宇宙が現れたのか、全く理解できなかった。
基地全体が緊張感に包まれ、戦闘態勢に入っていた。兵士たちは次々と武器を手に取り、出動準備を進めている。アサはその様子を見て、何か胸が締めつけられるような感覚を覚えた。
その時、アルバート少佐がアサに近づいてきた。
「アサ、ここにいろ」
「しかし……!」
「お前には武器が支給されていないだろう? 基地内で待機していろ」
アサは言葉を飲み込んだ。彼女には武器を持つことが許されていない。軍からは、問題を起こす可能性があると見なされているため、他の兵士たちと同じように戦闘に参加することはできないのだ。
「ここでおとなしくしていろ」
その言葉を残して、少佐は他の兵士たちと共に急ぎ足で出て行った。アサはその背中を見送りながら、心の中で葛藤が渦巻いていた。彼女もまた、この異常事態に対して何かしなければならないと感じていたが、与えられた役割は、ただ待つことだけだった。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

メトロポリス社へようこそ! ~「役立たずだ」とクビにされたおっさんの就職先は大企業の宇宙船を守る護衛官でした~
アンジェロ岩井
SF
「えっ、クビですか?」
中企業アナハイニム社の事務課に勤める大津修也(おおつしゅうや)は会社の都合によってクビを切られてしまう。
ろくなスキルも身に付けていない修也にとって再転職は絶望的だと思われたが、大企業『メトロポリス』からの使者が現れた。
『メトロポリス』からの使者によれば自身の商品を宇宙の植民星に運ぶ際に宇宙生物に襲われるという事態が幾度も発生しており、そのための護衛役として会社の顧問役である人工頭脳『マリア』が護衛役を務める適任者として選び出したのだという。
宇宙生物との戦いに用いるロトワングというパワードスーツには適性があり、その適性が見出されたのが大津修也だ。
大津にとっては他に就職の選択肢がなかったので『メトロポリス』からの選択肢を受けざるを得なかった。
『メトロポリス』の宇宙船に乗り込み、宇宙生物との戦いに明け暮れる中で、彼は護衛アンドロイドであるシュウジとサヤカと共に過ごし、絆を育んでいくうちに地球上にてアンドロイドが使用人としての扱いしか受けていないことを思い出す。
修也は戦いの中でアンドロイドと人間が対等な関係を築き、共存を行うことができればいいと考えたが、『メトロポリス』では修也とは対照的に人類との共存ではなく支配という名目で動き出そうとしていた。
タイムワープ艦隊2024
山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。
この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる