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姦邪Ⅰ -ルィリア編-
第36話 俺の考察
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「1発殴らねば気が済まん!! 通せ!!」
「ダメですって!! 暴力で解決なんて一番ダメですからっ!!」
体たらくが過ぎる団員達を殺すような勢いでカナンはルィリア邸へ戻ろうとするが、それをルィリアが必死に止めていた。
「言ってもわからんなら殴る他ないであろう!!」
「殴って言う事聞かせようなんて無意味です!! 騎士団は国を守るための組織! 従う理由が“国のため”じゃなくて“殴られるのが怖いから”なんて、それこそ情けないとは思わないですか!」
「……ちょっと俺見てくるよ」
「零にぃちゃん……?」
「すぐ戻るよ。ちょっと気になったからさ」
そう言って俺は、もはや取っ組み合いになっているカナンとルィリアの横を通り過ぎてルィリア邸へ戻り、リビングに入った。しかし団員達は黙って椅子に姿勢よく座ったまま固まっていた。
「……な、何があったんだ?」
「君は……確かシン君であったか。今、シャーロット様の説教を受けてきたのだ」
「シャーロット……様? まぁいいや、シャーロットは何処に?」
「キッチンの冷蔵室です」
「冷蔵室? そんな場所があったのか……わかった、ありがとう」
俺は礼を告げるとキッチンに入っていき、冷蔵室への入り口を探した。しかしそれっぽい扉も入り口も全然見つからず、やる気が無くなってその場に寝転んでしまった。
「…………な…………ね……」
「ん?」
ふと、床の下からシャーロットの声が聞こえた。なんて言っているかまでは聞き取れないが、どうやら冷蔵室はこの下にあるようだ。俺は床に耳をピッタリとくっつけ、内容を聞こうと試みる。
「……さ……寒いぃっ……!」
「寒いんですか……? 男ともあろう方がみっともありませんねぇ……どうして貴方のようなゴミが騎士団になんて所属出来ているんでしょうか……?」
「ゴ……ゴミ!?」
「ええゴミですよ……いいえ……喋らない分、ゴミの方が優秀かもしれませんねぇ……貴方はゴミ以下のクソ野郎ですね……ふふ……」
「や……やめてくれぇええっ!」
「自分の意見が通用するとでも思ってるのでしょうか……バカなんですねぇ。やめる訳ないでしょう……貴方のようなクソ野郎を、世に放つなんて身の毛もよだつような事を……何故拙がしなくてはならないのですか? 想像しただけで……あーあ、気持ち悪いですねぇ……」
「う、うぅぁああああああああうぐっ!?」
「誰の許可を得て声を出してるのでしょうか……団長であるカナン様に言われてもわからないようなら……お仕置きが必要のようですね……それもかなり……痛っったぁいのを……ね?」
「うっ……や、やめ……い、イギィぁッ……ぁあああああああああ!!!」
「痛い……? 痛いですよねぇ……ここ、男の人の弱点ですもんねぇ……でも貴方が黙るまでやめませんよ……貴方が声を出す度、どんどん強くしていきますからねぇ……ああ、でもこの調子だと……出る頃には女になっているかも……しれませんねぇ?」
「い……いぃっ、いいぃゃぁぁあだぁぁあああっァァァァァァァア!!!」
その後聞こえてきたのは、まるでそれしか音を発する事ができない獣のような、団員の男の泣き叫ぶ声だけであった。
シャーロットが男に何をしているのかが容易に想像出来るゆえ、股間がキュッとするような感覚に襲われながら、俺は無言で音を立てないようにこっそりとキッチンを出て、リビングで座る団員達と特に会話をする事もなく、ルィリア邸を出てカナン達の元へ戻っていった。
そんな事はつゆ知らず、ルィリアとカナンは未だに取っ組み合いをしており、もはやプロレスと化していた。
「ぎぎぎぎっ……絶対行かせませんからねぇえっ……!!」
「ぐっ……かくなる上は……あっ! 空にグリモワール・レヴォル賞が!」
「ホントですか!? って騙されませんよそんな子供騙しにはっ!」
「効かないだと……!? これは予想外だ……!」
「ワタクシの事バカにしてますよね、そう捉えて良いですよねその発言! 大体なんですか“空にグリモワール・レヴォル賞”って! 意味がわかりませんよ!」
「……カナン」
まるで子供みたいな言い争いに発展している中、俺はカナンの名を呼んだ。するとプロレスはピタリと止まり、カナンとルィリアは俺の方に目を向けた。
「どうしたシン?」
「カナンが殴らなくても大丈夫そうだ。シャーロットの説教は、効果絶大みたいだ」
「何……? 一応聞きたいのだが、どんな説教だったのだ?」
「いや……多分カナンじゃできない」
「私では出来ない……?」
「学校でも、怖い先生がいつものように怒った時より、普段優しい先生が怒った時の方が怖いだろ。それと同じ感じだ」
「…………腑に落ちないというのが本音だが、理解は出来た。では此度はシャーロット殿に任せるとしよう」
そう言うと、カナンはルィリアから体を離した。長期戦だったからか、ルィリアは息を荒くしてその場に寝転がった。
「あーッ! ほんっと疲れました……あ、星きれい。というかレイ君、何を見たんですか?」
「見たって訳じゃないけど……団員の泣き叫ぶ声が聞こえたぞ」
「な、泣き……?! シャーロット、一体ナニしてるんでしょう……」
「まぁナニかを踏みつけたりしてると思う、あの感じだと」
「……シャーロットって意外とSっ気ありますよね」
「ああ……だな」
「まぁともかく、明日には団員達が真面目になっていれば良いのだが……しかしルィリア殿、少し聞いて欲しい事がある」
「なんでしょう?」
「今日、シンと一緒に魔術アカデミーに行ってきた。暗殺を依頼した人物の情報を得るためだ」
「……そう、ですか」
カナンが“魔術アカデミー”という単語を発した途端、ルィリアの表情が曇った。やっぱり、ルィリア自身はあまり魔術アカデミーの事を良く思っていないようだ。
「その……思い出したくないかもしれないが、リヒト殿が亡くなった爆発事故についてなのだが……よろしいか?」
「……いいですよ。いずれ聞かれると思ってましたし」
「では……まず、ルィリア殿はリヒト殿の死体を見たか?」
「……いえ、気が付いた時にはもう……リヒトは瓦礫に埋もれていて……辺り一帯には、血の絨毯が出来ていました。最初は信じたくありませんでしたけど……後から、あれはリヒトの血だと聞かされました」
「誰から?」
「……ネルフィラという、リヒトに思いを寄せていた同級生です。わたしがリヒトと交際していた事で、よくちょっかい出しに来てました。ですがリヒトが亡くなってからは彼女もショックだったのかアカデミーに来なくなりましたね」
「そうか……やはり彼女が?」
「やはりって……?」
「実は例の爆発事故ではネルフィラが最初に助かったようでな……なんなら今朝、この家の前でネルフィラと遭遇したのだ。ルィリア殿に会うつもりだったようだが……その感じだとあまり仲が良かった訳ではなさそうだな」
「ええ。ワタクシは正直苦手でした……リヒトの前では猫を被るあの性格は、見ていて不快でした」
「ボロクソ言うじゃんか」
「り、リヒトも迷惑してたんです! わたしとリヒトの研究は、属性に縛られた魔術界に革命を齎す重要な研究でしたから……邪魔なんてされたくなかった訳ですし」
「しかし、こうしてみるとやはりおかしいな……」
一通り話を聞き、カナンは顎に手を当てて考え込むようなポーズをしながらそう呟いた。
カナンが“おかしい”と思う点……それは、俺もなんとなく気付いているし、きっとルィリアもわかっている。そしてそれが、ネルフィラが怪しいと思う要因に繋がる事も。
「……ねぇ、零にぃちゃん」
「どうした?」
「さっきから話聞いてたんだけど……何がおかしいの? 零にぃちゃんはわかった?」
「ああ。簡単な話だよ、リヒトは爆発事故による瓦礫の下敷きになって圧死したのなら、あの暗殺者はどうやってリヒトの死体を、それもあんな綺麗な状態で調達したのかって事だよ」
「あっ……確かに!」
「そしてここからはもしもの話、俺の考察だけど……実はリヒトは、瓦礫の下敷きになって死んだ訳じゃないのかもしれない」
「えっ?」
「なに……?」
「どういう事です、レイ君?」
俺の考察に、この場にいる全員が疑問を浮かべる。当然だ、いろんな人から“リヒトは瓦礫の下敷きになって死んだ”と聞き、なんならルィリアはそれを目の当たりにしている訳だし……俺の発言は、それら全てを覆すようなものだったからだ。
「あの時リヒトは瓦礫に埋もれたように見えていて、実は助かっていたとしたら……?」
「えっ?」
「どういう根拠でそういった結論になった、シン?」
「リヒトの死体は、誰も見てない。ルィリアだって目の前の血がリヒトのものだと思い込んでいたから、死んだって聞かされて信じざるを得なかった」
「……はい」
「でも昨日現れた死体は綺麗な状態だった。もし瓦礫に埋もれて死んでたら、リヒトの死体は……ボロボロかペタンコだ」
「そう……だから驚いたんです。また、リヒトの顔が見れる日がくるなんて思ってませんでしたから」
「やっぱり、リヒトは助けられていたんだ。 そしてリヒトを助ける事が出来たのは、2人……駆けつけた校長と、運良く助かったネルフィラだ」
「待て、シン。もし君の言う通りなら、リヒトは助かって、今も生きている筈だ」
「ああ。でも確かに昨日、リヒトは言ってた。“死んだ僕が……”って。だから助けられた後、どこかのタイミングで殺されたんだよ」
「……つまり、リヒトを殺した者が暗殺者に依頼したとでも?」
「ああ……意味不明な話だが、リヒトを殺したのなら、暗殺者にリヒトの死体を提供できる訳だし」
「何なのだろうな……この、進んでいるようでそうでもないようなモヤモヤした感じは」
カナンは少し不機嫌そうな顔でそう言った。
確かに考えてみれば、新しい可能性は俺の考察によって生まれはしたが、これで別に犯人がわかった訳でもないし、なんなら“何故リヒトは殺されたのか”や“いつ殺されたか”などの疑問が多く生まれてしまった。
「ダメですって!! 暴力で解決なんて一番ダメですからっ!!」
体たらくが過ぎる団員達を殺すような勢いでカナンはルィリア邸へ戻ろうとするが、それをルィリアが必死に止めていた。
「言ってもわからんなら殴る他ないであろう!!」
「殴って言う事聞かせようなんて無意味です!! 騎士団は国を守るための組織! 従う理由が“国のため”じゃなくて“殴られるのが怖いから”なんて、それこそ情けないとは思わないですか!」
「……ちょっと俺見てくるよ」
「零にぃちゃん……?」
「すぐ戻るよ。ちょっと気になったからさ」
そう言って俺は、もはや取っ組み合いになっているカナンとルィリアの横を通り過ぎてルィリア邸へ戻り、リビングに入った。しかし団員達は黙って椅子に姿勢よく座ったまま固まっていた。
「……な、何があったんだ?」
「君は……確かシン君であったか。今、シャーロット様の説教を受けてきたのだ」
「シャーロット……様? まぁいいや、シャーロットは何処に?」
「キッチンの冷蔵室です」
「冷蔵室? そんな場所があったのか……わかった、ありがとう」
俺は礼を告げるとキッチンに入っていき、冷蔵室への入り口を探した。しかしそれっぽい扉も入り口も全然見つからず、やる気が無くなってその場に寝転んでしまった。
「…………な…………ね……」
「ん?」
ふと、床の下からシャーロットの声が聞こえた。なんて言っているかまでは聞き取れないが、どうやら冷蔵室はこの下にあるようだ。俺は床に耳をピッタリとくっつけ、内容を聞こうと試みる。
「……さ……寒いぃっ……!」
「寒いんですか……? 男ともあろう方がみっともありませんねぇ……どうして貴方のようなゴミが騎士団になんて所属出来ているんでしょうか……?」
「ゴ……ゴミ!?」
「ええゴミですよ……いいえ……喋らない分、ゴミの方が優秀かもしれませんねぇ……貴方はゴミ以下のクソ野郎ですね……ふふ……」
「や……やめてくれぇええっ!」
「自分の意見が通用するとでも思ってるのでしょうか……バカなんですねぇ。やめる訳ないでしょう……貴方のようなクソ野郎を、世に放つなんて身の毛もよだつような事を……何故拙がしなくてはならないのですか? 想像しただけで……あーあ、気持ち悪いですねぇ……」
「う、うぅぁああああああああうぐっ!?」
「誰の許可を得て声を出してるのでしょうか……団長であるカナン様に言われてもわからないようなら……お仕置きが必要のようですね……それもかなり……痛っったぁいのを……ね?」
「うっ……や、やめ……い、イギィぁッ……ぁあああああああああ!!!」
「痛い……? 痛いですよねぇ……ここ、男の人の弱点ですもんねぇ……でも貴方が黙るまでやめませんよ……貴方が声を出す度、どんどん強くしていきますからねぇ……ああ、でもこの調子だと……出る頃には女になっているかも……しれませんねぇ?」
「い……いぃっ、いいぃゃぁぁあだぁぁあああっァァァァァァァア!!!」
その後聞こえてきたのは、まるでそれしか音を発する事ができない獣のような、団員の男の泣き叫ぶ声だけであった。
シャーロットが男に何をしているのかが容易に想像出来るゆえ、股間がキュッとするような感覚に襲われながら、俺は無言で音を立てないようにこっそりとキッチンを出て、リビングで座る団員達と特に会話をする事もなく、ルィリア邸を出てカナン達の元へ戻っていった。
そんな事はつゆ知らず、ルィリアとカナンは未だに取っ組み合いをしており、もはやプロレスと化していた。
「ぎぎぎぎっ……絶対行かせませんからねぇえっ……!!」
「ぐっ……かくなる上は……あっ! 空にグリモワール・レヴォル賞が!」
「ホントですか!? って騙されませんよそんな子供騙しにはっ!」
「効かないだと……!? これは予想外だ……!」
「ワタクシの事バカにしてますよね、そう捉えて良いですよねその発言! 大体なんですか“空にグリモワール・レヴォル賞”って! 意味がわかりませんよ!」
「……カナン」
まるで子供みたいな言い争いに発展している中、俺はカナンの名を呼んだ。するとプロレスはピタリと止まり、カナンとルィリアは俺の方に目を向けた。
「どうしたシン?」
「カナンが殴らなくても大丈夫そうだ。シャーロットの説教は、効果絶大みたいだ」
「何……? 一応聞きたいのだが、どんな説教だったのだ?」
「いや……多分カナンじゃできない」
「私では出来ない……?」
「学校でも、怖い先生がいつものように怒った時より、普段優しい先生が怒った時の方が怖いだろ。それと同じ感じだ」
「…………腑に落ちないというのが本音だが、理解は出来た。では此度はシャーロット殿に任せるとしよう」
そう言うと、カナンはルィリアから体を離した。長期戦だったからか、ルィリアは息を荒くしてその場に寝転がった。
「あーッ! ほんっと疲れました……あ、星きれい。というかレイ君、何を見たんですか?」
「見たって訳じゃないけど……団員の泣き叫ぶ声が聞こえたぞ」
「な、泣き……?! シャーロット、一体ナニしてるんでしょう……」
「まぁナニかを踏みつけたりしてると思う、あの感じだと」
「……シャーロットって意外とSっ気ありますよね」
「ああ……だな」
「まぁともかく、明日には団員達が真面目になっていれば良いのだが……しかしルィリア殿、少し聞いて欲しい事がある」
「なんでしょう?」
「今日、シンと一緒に魔術アカデミーに行ってきた。暗殺を依頼した人物の情報を得るためだ」
「……そう、ですか」
カナンが“魔術アカデミー”という単語を発した途端、ルィリアの表情が曇った。やっぱり、ルィリア自身はあまり魔術アカデミーの事を良く思っていないようだ。
「その……思い出したくないかもしれないが、リヒト殿が亡くなった爆発事故についてなのだが……よろしいか?」
「……いいですよ。いずれ聞かれると思ってましたし」
「では……まず、ルィリア殿はリヒト殿の死体を見たか?」
「……いえ、気が付いた時にはもう……リヒトは瓦礫に埋もれていて……辺り一帯には、血の絨毯が出来ていました。最初は信じたくありませんでしたけど……後から、あれはリヒトの血だと聞かされました」
「誰から?」
「……ネルフィラという、リヒトに思いを寄せていた同級生です。わたしがリヒトと交際していた事で、よくちょっかい出しに来てました。ですがリヒトが亡くなってからは彼女もショックだったのかアカデミーに来なくなりましたね」
「そうか……やはり彼女が?」
「やはりって……?」
「実は例の爆発事故ではネルフィラが最初に助かったようでな……なんなら今朝、この家の前でネルフィラと遭遇したのだ。ルィリア殿に会うつもりだったようだが……その感じだとあまり仲が良かった訳ではなさそうだな」
「ええ。ワタクシは正直苦手でした……リヒトの前では猫を被るあの性格は、見ていて不快でした」
「ボロクソ言うじゃんか」
「り、リヒトも迷惑してたんです! わたしとリヒトの研究は、属性に縛られた魔術界に革命を齎す重要な研究でしたから……邪魔なんてされたくなかった訳ですし」
「しかし、こうしてみるとやはりおかしいな……」
一通り話を聞き、カナンは顎に手を当てて考え込むようなポーズをしながらそう呟いた。
カナンが“おかしい”と思う点……それは、俺もなんとなく気付いているし、きっとルィリアもわかっている。そしてそれが、ネルフィラが怪しいと思う要因に繋がる事も。
「……ねぇ、零にぃちゃん」
「どうした?」
「さっきから話聞いてたんだけど……何がおかしいの? 零にぃちゃんはわかった?」
「ああ。簡単な話だよ、リヒトは爆発事故による瓦礫の下敷きになって圧死したのなら、あの暗殺者はどうやってリヒトの死体を、それもあんな綺麗な状態で調達したのかって事だよ」
「あっ……確かに!」
「そしてここからはもしもの話、俺の考察だけど……実はリヒトは、瓦礫の下敷きになって死んだ訳じゃないのかもしれない」
「えっ?」
「なに……?」
「どういう事です、レイ君?」
俺の考察に、この場にいる全員が疑問を浮かべる。当然だ、いろんな人から“リヒトは瓦礫の下敷きになって死んだ”と聞き、なんならルィリアはそれを目の当たりにしている訳だし……俺の発言は、それら全てを覆すようなものだったからだ。
「あの時リヒトは瓦礫に埋もれたように見えていて、実は助かっていたとしたら……?」
「えっ?」
「どういう根拠でそういった結論になった、シン?」
「リヒトの死体は、誰も見てない。ルィリアだって目の前の血がリヒトのものだと思い込んでいたから、死んだって聞かされて信じざるを得なかった」
「……はい」
「でも昨日現れた死体は綺麗な状態だった。もし瓦礫に埋もれて死んでたら、リヒトの死体は……ボロボロかペタンコだ」
「そう……だから驚いたんです。また、リヒトの顔が見れる日がくるなんて思ってませんでしたから」
「やっぱり、リヒトは助けられていたんだ。 そしてリヒトを助ける事が出来たのは、2人……駆けつけた校長と、運良く助かったネルフィラだ」
「待て、シン。もし君の言う通りなら、リヒトは助かって、今も生きている筈だ」
「ああ。でも確かに昨日、リヒトは言ってた。“死んだ僕が……”って。だから助けられた後、どこかのタイミングで殺されたんだよ」
「……つまり、リヒトを殺した者が暗殺者に依頼したとでも?」
「ああ……意味不明な話だが、リヒトを殺したのなら、暗殺者にリヒトの死体を提供できる訳だし」
「何なのだろうな……この、進んでいるようでそうでもないようなモヤモヤした感じは」
カナンは少し不機嫌そうな顔でそう言った。
確かに考えてみれば、新しい可能性は俺の考察によって生まれはしたが、これで別に犯人がわかった訳でもないし、なんなら“何故リヒトは殺されたのか”や“いつ殺されたか”などの疑問が多く生まれてしまった。
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