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姦邪Ⅰ -ルィリア編-
第26話 温もりの天丼
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「うっ、うぅ……やはりシャーロットの料理は美味しいです……でも悔じぃいい……おいちい……悔し美味しい……くじぃ……」
「何言ってんだアンタ」
ルィリアは悔し涙を流しながら、シャーロットの料理をパクパクと食べている。因みにルィリアの作った消し炭ステーキは一応テーブルの上に置いてはあるが誰も一切手をつけていない。
……手をつけていない、と言えば、この素晴らしい料理達を作ったシャーロットは一緒に料理を食べる事はなく、部屋の隅で料理を食べる俺達をずっと見守っていた。
確かにあまりメイドが自分の作った料理を食べるって見た事がないが、メイドにはそういう規則でもあるのだろうか。
「ふぅ、ご馳走様でした!」
「……お粗末さまでした。今日は沢山の笑顔が見れて、大変嬉しく思います」
「どうやらこの子達はシャーロットが笑顔にするに値する逸材だったようですね、まぁワタクシの目に狂いは無かったという事ですね!」
「……いや、何でルィリアが偉そうなんだよ。そんな事より、笑顔に値するとかなんとかって?」
「拙は自分の料理を食べた人の笑顔を見るのが好きなのですが、誰の笑顔でも良い訳ではございません。拙が笑顔にしたいと思った方にだけ、拙は料理を振る舞いたいのです。気に入った御方を、拙が笑顔にしたような気分になるので」
「そっか……なら尚更シャーロットは料理店じゃなくて、メイドの方が向いてるな」
俺は純粋に、シャーロットにそう告げた。
料理店は色んな人間がやってくる。老若男女は当然の如く、礼儀正しい者もマナーの悪い者も、無理して来てる者もいる。
客は選べないし、“金を払っている方が上”という認識の人間が多い。失礼で気に入らない奴だって当然居る訳で、そんな奴に敬語使いたくはないし頭も下げたくないし、言えるのなら“お金返すんで帰ってください、そして2度と来ないでください”と言いたい。もちろんそんな事は立場的な意味や世間からの評価の問題で出来ない。
そう思うとメイドという職業は仕える主人にもよるかもしれないが、それなりに自由なのだろう。
「ええ。シャーロットがメイドで本当に良かったです! ちょっと小生意気なとこが玉に瑕ですが……まぁそこはちゃんと人間らしさも忘れてないという事で!」
「今後の改善の為にもお聞きしたいのですが、拙はどのような点が小生意気だったのでしょうか?」
「色々ありますが……まぁそれがシャーロットの良い所でもあると思うので、ワタクシのメイドである限りは改善しなくて構いません。シャーロットも、その方が楽でしょう?」
「ええ。馬鹿と言っても追いかけられるだけで何もしないご主人様は、メイドである拙とも対等に話すご主人様は、多少料理が遅れても殴らないご主人様は……ルィリア様だけです」
「メイドだって人間ですからね。毎日ならともかく、たまにうっかりミスする事なんて誰だってありますから!」
「ルィリアはうっかりミスが多いけどな」
「うぐ……」
俺の言葉に、ルィリアは冷や汗を垂らして引き攣った表情をした。
森の中の家に俺の刀を忘れて、さっき風呂上がりに寝巻きは持って来たものの下着を忘れて……今日だけで2回もうっかりミスをしているのだ。ていうかこうして振り返ると全部俺関係じゃないか。
「ふふ……ご主人様が間抜けなお陰で、拙はとてもやりやすいですよ」
「ま、間抜け……!? さっきの発言も流してしまいましたが、そういうとこですよシャーロット」
「おや? ただ事実を述べただけですが」
「んんんにぃぃァァァあァアッ!! 今日という今日は許しませんよォッ!!」
ルィリアは我慢の限界を迎えたのか猫みたいな雄叫びを上げると、鬼のような形相(間抜け顔)でシャーロットに飛び掛かった。
「きゃーっ」
シャーロットは棒読みで全く声量の出ていない悲鳴を上げると、声のやる気の無さとは裏腹に物凄い速度でその場から逃げ出した。間抜けなルィリアは人間とは思えない速度で逃げ出したシャーロットを追いかけていった。そしてその後、シャーロットがぶっ倒れたルィリアを抱えて戻ってくる。
この展開、さっきも見たような気がする。俺達が来て家族が増えたからはしゃいでるのかと思ったが……どうやらこれがルィリア邸での日常のようだ。
「……ほんと、賑やかだな」
「うん……でも、やっぱりイイね」
「思った」
「えへへ……私達も同じ事言ってる」
「確かに。ははっ」
「何言ってんだアンタ」
ルィリアは悔し涙を流しながら、シャーロットの料理をパクパクと食べている。因みにルィリアの作った消し炭ステーキは一応テーブルの上に置いてはあるが誰も一切手をつけていない。
……手をつけていない、と言えば、この素晴らしい料理達を作ったシャーロットは一緒に料理を食べる事はなく、部屋の隅で料理を食べる俺達をずっと見守っていた。
確かにあまりメイドが自分の作った料理を食べるって見た事がないが、メイドにはそういう規則でもあるのだろうか。
「ふぅ、ご馳走様でした!」
「……お粗末さまでした。今日は沢山の笑顔が見れて、大変嬉しく思います」
「どうやらこの子達はシャーロットが笑顔にするに値する逸材だったようですね、まぁワタクシの目に狂いは無かったという事ですね!」
「……いや、何でルィリアが偉そうなんだよ。そんな事より、笑顔に値するとかなんとかって?」
「拙は自分の料理を食べた人の笑顔を見るのが好きなのですが、誰の笑顔でも良い訳ではございません。拙が笑顔にしたいと思った方にだけ、拙は料理を振る舞いたいのです。気に入った御方を、拙が笑顔にしたような気分になるので」
「そっか……なら尚更シャーロットは料理店じゃなくて、メイドの方が向いてるな」
俺は純粋に、シャーロットにそう告げた。
料理店は色んな人間がやってくる。老若男女は当然の如く、礼儀正しい者もマナーの悪い者も、無理して来てる者もいる。
客は選べないし、“金を払っている方が上”という認識の人間が多い。失礼で気に入らない奴だって当然居る訳で、そんな奴に敬語使いたくはないし頭も下げたくないし、言えるのなら“お金返すんで帰ってください、そして2度と来ないでください”と言いたい。もちろんそんな事は立場的な意味や世間からの評価の問題で出来ない。
そう思うとメイドという職業は仕える主人にもよるかもしれないが、それなりに自由なのだろう。
「ええ。シャーロットがメイドで本当に良かったです! ちょっと小生意気なとこが玉に瑕ですが……まぁそこはちゃんと人間らしさも忘れてないという事で!」
「今後の改善の為にもお聞きしたいのですが、拙はどのような点が小生意気だったのでしょうか?」
「色々ありますが……まぁそれがシャーロットの良い所でもあると思うので、ワタクシのメイドである限りは改善しなくて構いません。シャーロットも、その方が楽でしょう?」
「ええ。馬鹿と言っても追いかけられるだけで何もしないご主人様は、メイドである拙とも対等に話すご主人様は、多少料理が遅れても殴らないご主人様は……ルィリア様だけです」
「メイドだって人間ですからね。毎日ならともかく、たまにうっかりミスする事なんて誰だってありますから!」
「ルィリアはうっかりミスが多いけどな」
「うぐ……」
俺の言葉に、ルィリアは冷や汗を垂らして引き攣った表情をした。
森の中の家に俺の刀を忘れて、さっき風呂上がりに寝巻きは持って来たものの下着を忘れて……今日だけで2回もうっかりミスをしているのだ。ていうかこうして振り返ると全部俺関係じゃないか。
「ふふ……ご主人様が間抜けなお陰で、拙はとてもやりやすいですよ」
「ま、間抜け……!? さっきの発言も流してしまいましたが、そういうとこですよシャーロット」
「おや? ただ事実を述べただけですが」
「んんんにぃぃァァァあァアッ!! 今日という今日は許しませんよォッ!!」
ルィリアは我慢の限界を迎えたのか猫みたいな雄叫びを上げると、鬼のような形相(間抜け顔)でシャーロットに飛び掛かった。
「きゃーっ」
シャーロットは棒読みで全く声量の出ていない悲鳴を上げると、声のやる気の無さとは裏腹に物凄い速度でその場から逃げ出した。間抜けなルィリアは人間とは思えない速度で逃げ出したシャーロットを追いかけていった。そしてその後、シャーロットがぶっ倒れたルィリアを抱えて戻ってくる。
この展開、さっきも見たような気がする。俺達が来て家族が増えたからはしゃいでるのかと思ったが……どうやらこれがルィリア邸での日常のようだ。
「……ほんと、賑やかだな」
「うん……でも、やっぱりイイね」
「思った」
「えへへ……私達も同じ事言ってる」
「確かに。ははっ」
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