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姦邪Ⅰ -ルィリア編-
第23話 痛恨のミス
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あれから暫くの時間が経って、外の景色が暗くなり始めた頃。……まぁ曇っているため暗い事しかわからないが。
「ていうかレイ君、着替えとか持ってきてないんですか?」
シャーロットが晩御飯の準備をしていて、それがテーブルに並べられるのを待っている時、ふとルィリアがそんなことを聞いてきた。
因みに呼び名は前世の名前である“零”にした。久遠も“久遠と呼んでほしい”と言っていたので、統一する事にしたのだ。
「無い。家出は突発的な行動だったから」
「ふむ……家出してからどれくらい経つんです?」
「わからない……ずっと洞窟に居たから」
「洞窟って、あのボロ家の奥のですか?!」
「ああ、あの洞窟を抜ければエアトベルに着くって聞いたから」
「あの洞窟を抜けるのは冒険慣れした人でも丸一日は掛かるんですよ!? おまけに最奥には凶大な力を持った悪魔が封印されているという伝説も……!」
「悪魔? それって、白い長髪の男の事か?」
「いや、あくまで伝説なので容姿までは分かりませんけど……思い当たる人物に遭遇したんですか?」
「ああ。そいつがエアトベルに着くって教えてくれたんだ。それに……って、そういえば刀は?」
俺はあの長髪の男から貰った刀が無い事に今更気付いて、ルィリアに問う。
「……あ」
ルィリアは何か思い出したような声を出した後、急に顔を青ざめてゆっくりと目線を逸らした。
……これ絶対なんかやらかしただろコイツ。
「どうしたんだ?」
「い、いやぁ~……れ、レイ君みたいな可愛らしい子供には刀なんて似合わないですよ! ええそうだと思います!」
「……アンタ無くしたろ」
「無くしてはいません! ただ……その」
「もったいぶるなよ、何だよ」
「……あのボロ家に忘れました」
「……」
冷や汗を滝のように流して一切目を合わせようとしないルィリアに、俺は呆れたような目を向け続けた。
「いやぁ~……いくら天才でもミスはするのでぇ~……ほ、ほら……猿も木から落ちるって言いますしそのぉ……ごめんなさーーいっ!!」
散々言い訳を言った後、ルィリアはテーブルを破壊するような勢いで頭を下げて大声で謝罪してきた。テーブルから物凄い音が聞こえた。
「……まぁいいよ。別に大切なものって訳でもないし、あの家にはいつでも行けるんだろ?」
「は、はいぃ……」
「じゃあ向こうに行く用事が出来たらついでに持って帰る、それで良いよ」
「ご、ごめんなしゃいぃ~……」
ルィリアはテーブルに額をぶつけて俯いたまま再び謝った。
「……俺、流石に汚れてるか?」
ひとまず刀を忘れた云々の話を終わらせる事にして、俺は先程の話に戻る。
確かに着替えは持ってきてないが故に、家を出てから着替えてないし、当然風呂にも入ってない。あまり気にしてなかったが……臭いとかも実は凄かったりするのかもしれない。
「ま、まぁ流石に。その感じだと数日間まともにシャワーも浴びてないんでしょう?」
「うん……」
「私は汚れてて汗臭い零にぃちゃんも好きだよ」
「そ、そうか……やっぱ臭うか」
「シャーロット! 晩御飯の準備は後どれくらい掛かりますか!?」
いきなりルィリアはキッチンで晩御飯の準備を進めているシャーロットに向けて大声で問う。
「そうですね、お風呂に入れるくらいは時間が掛かります」
「そうと決まればみんなでお風呂に入りましょ!」
「まぁそういう流れになるよな……って、みんな!?」
「当たり前じゃないですか! ましてやワタクシ達、今は家族なんですよ?」
「い、いや……」
「もー子供なんですからそんな事気にしなくても良いのにー」
「心は成人なんだよッ!!」
「ん、ふむふむ……さてはワタクシの魅惑の裸を見るのが恥ずかしいんですねぇ?」
「……」
「まぁでもほら? 今のワタクシはレイ君の母親ですので? 胸くらい揉ませてあげても構いませんよ? 男の人からすれば胸を揉むなんて願ったり叶ったりじゃありませんか?」
ルィリアは誘惑するようなセクシーポーズを俺に見せつけながら煽るようにそう言った。
華奢な身体で、頭脳は天才(魔術に関する事のみ)。それ以外は間抜けな女から誘惑された所で、全く唆られる事も興奮する事も無い。寧ろ、こういう露骨なのは好きじゃないので、今ルィリアのしている事は単に俺の気分を悪くさせるだけのことなのだ。
「別にそういうのに興味は無いんだ、ましてやルィリアだし余計に」
「ルィリアだしって何ですか、余計にって何ですかッ!」
「別に異性同士だから遠慮してる訳じゃない。これは単なる俺の我儘なんだが……風呂は、1人で入りたいんだ」
「あー……なぁんだ、そういう事だったんですね。なら案内するので、お先にどうぞ」
ルィリアは落胆するような、つまらなそうな表情で俺の我儘に納得してくれた。
「え、別にいいよ。2人が先に」
「女性はお風呂長いんですよ。ワタクシ達は2人なので話したりして時間潰せますが……レイ君1人で待たせる訳にはいかないので」
「……わかった。じゃあお言葉に甘えて」
結局、俺が先に風呂に入る事にした。
確かに女子って何故か風呂長いんだよな。久遠も前世では中々風呂出てこなくて、一回のぼせてるのではないかと心配になって思わず浴室に入ってしまってぶっ飛ばされた事があったな。脱衣所で髪乾かしてるとかならまだわかるけど、浴室の中だからなぁ……ずっと湯船に浸かってるって訳でも無いだろうし。
「ていうかレイ君、着替えとか持ってきてないんですか?」
シャーロットが晩御飯の準備をしていて、それがテーブルに並べられるのを待っている時、ふとルィリアがそんなことを聞いてきた。
因みに呼び名は前世の名前である“零”にした。久遠も“久遠と呼んでほしい”と言っていたので、統一する事にしたのだ。
「無い。家出は突発的な行動だったから」
「ふむ……家出してからどれくらい経つんです?」
「わからない……ずっと洞窟に居たから」
「洞窟って、あのボロ家の奥のですか?!」
「ああ、あの洞窟を抜ければエアトベルに着くって聞いたから」
「あの洞窟を抜けるのは冒険慣れした人でも丸一日は掛かるんですよ!? おまけに最奥には凶大な力を持った悪魔が封印されているという伝説も……!」
「悪魔? それって、白い長髪の男の事か?」
「いや、あくまで伝説なので容姿までは分かりませんけど……思い当たる人物に遭遇したんですか?」
「ああ。そいつがエアトベルに着くって教えてくれたんだ。それに……って、そういえば刀は?」
俺はあの長髪の男から貰った刀が無い事に今更気付いて、ルィリアに問う。
「……あ」
ルィリアは何か思い出したような声を出した後、急に顔を青ざめてゆっくりと目線を逸らした。
……これ絶対なんかやらかしただろコイツ。
「どうしたんだ?」
「い、いやぁ~……れ、レイ君みたいな可愛らしい子供には刀なんて似合わないですよ! ええそうだと思います!」
「……アンタ無くしたろ」
「無くしてはいません! ただ……その」
「もったいぶるなよ、何だよ」
「……あのボロ家に忘れました」
「……」
冷や汗を滝のように流して一切目を合わせようとしないルィリアに、俺は呆れたような目を向け続けた。
「いやぁ~……いくら天才でもミスはするのでぇ~……ほ、ほら……猿も木から落ちるって言いますしそのぉ……ごめんなさーーいっ!!」
散々言い訳を言った後、ルィリアはテーブルを破壊するような勢いで頭を下げて大声で謝罪してきた。テーブルから物凄い音が聞こえた。
「……まぁいいよ。別に大切なものって訳でもないし、あの家にはいつでも行けるんだろ?」
「は、はいぃ……」
「じゃあ向こうに行く用事が出来たらついでに持って帰る、それで良いよ」
「ご、ごめんなしゃいぃ~……」
ルィリアはテーブルに額をぶつけて俯いたまま再び謝った。
「……俺、流石に汚れてるか?」
ひとまず刀を忘れた云々の話を終わらせる事にして、俺は先程の話に戻る。
確かに着替えは持ってきてないが故に、家を出てから着替えてないし、当然風呂にも入ってない。あまり気にしてなかったが……臭いとかも実は凄かったりするのかもしれない。
「ま、まぁ流石に。その感じだと数日間まともにシャワーも浴びてないんでしょう?」
「うん……」
「私は汚れてて汗臭い零にぃちゃんも好きだよ」
「そ、そうか……やっぱ臭うか」
「シャーロット! 晩御飯の準備は後どれくらい掛かりますか!?」
いきなりルィリアはキッチンで晩御飯の準備を進めているシャーロットに向けて大声で問う。
「そうですね、お風呂に入れるくらいは時間が掛かります」
「そうと決まればみんなでお風呂に入りましょ!」
「まぁそういう流れになるよな……って、みんな!?」
「当たり前じゃないですか! ましてやワタクシ達、今は家族なんですよ?」
「い、いや……」
「もー子供なんですからそんな事気にしなくても良いのにー」
「心は成人なんだよッ!!」
「ん、ふむふむ……さてはワタクシの魅惑の裸を見るのが恥ずかしいんですねぇ?」
「……」
「まぁでもほら? 今のワタクシはレイ君の母親ですので? 胸くらい揉ませてあげても構いませんよ? 男の人からすれば胸を揉むなんて願ったり叶ったりじゃありませんか?」
ルィリアは誘惑するようなセクシーポーズを俺に見せつけながら煽るようにそう言った。
華奢な身体で、頭脳は天才(魔術に関する事のみ)。それ以外は間抜けな女から誘惑された所で、全く唆られる事も興奮する事も無い。寧ろ、こういう露骨なのは好きじゃないので、今ルィリアのしている事は単に俺の気分を悪くさせるだけのことなのだ。
「別にそういうのに興味は無いんだ、ましてやルィリアだし余計に」
「ルィリアだしって何ですか、余計にって何ですかッ!」
「別に異性同士だから遠慮してる訳じゃない。これは単なる俺の我儘なんだが……風呂は、1人で入りたいんだ」
「あー……なぁんだ、そういう事だったんですね。なら案内するので、お先にどうぞ」
ルィリアは落胆するような、つまらなそうな表情で俺の我儘に納得してくれた。
「え、別にいいよ。2人が先に」
「女性はお風呂長いんですよ。ワタクシ達は2人なので話したりして時間潰せますが……レイ君1人で待たせる訳にはいかないので」
「……わかった。じゃあお言葉に甘えて」
結局、俺が先に風呂に入る事にした。
確かに女子って何故か風呂長いんだよな。久遠も前世では中々風呂出てこなくて、一回のぼせてるのではないかと心配になって思わず浴室に入ってしまってぶっ飛ばされた事があったな。脱衣所で髪乾かしてるとかならまだわかるけど、浴室の中だからなぁ……ずっと湯船に浸かってるって訳でも無いだろうし。
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