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姦邪Ⅰ -ルィリア編-
第19話 天才への不信感
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何かをされたのか単に少ない体力を使い果たしただけなのかぶっ倒れたルィリアを担いで、シャーロットはこの豪邸の何処かにあった休憩室まで歩いていく。
「あ、因みにシン様とフェリノート様のお部屋はこちらですので、ごゆっくりとお過ごしください」
俺達もとりあえず着いていこうとした途端、シャーロットは近くの部屋の方を指さしながらそう言った。
「……わかった、そうする」
俺は頷いて久遠の手を握るとその部屋へ入っていった。
俺達専用らしい部屋は、丁度俺達が隣り合わせで寝てもスペースが余りそうなダブルベッドに、机やクローゼット、この部屋だけでも十分暮らせるんじゃないかと思うくらいに設備の整った広い部屋だった。
部屋の奥に曇り加工の施された窓があり、閉めた状態では景色を眺める事は出来ないが、開ける事によって換気も出来て王都の景色も眺められるようだ。
「広いね、零にぃちゃん」
「そうだな」
俺は久遠の言葉に頷くと、早速部屋の奥に向かって窓を開けて換気も兼ねて外の景色を眺める。久遠も外の景色がどんなものなのか気になるようで、俺の隣に駆け寄ってきて一緒に眺める。
うまく言葉には出来ないが、異世界というより外国……例えるなら、ギリシャのサントリーニ島みたいだ。行った事はないが。
「……ルィリアの事はいいの?」
ふと、風に吹かれながら外の景色を眺めながら久遠がそんな事を聞いてきた。
「ああ、シャーロットに任せる事にする。俺達が居ても邪魔になるだけだしな」
「そうだね」
その後俺達は特に会話する事なく、ただ風に吹かれながら景色を眺めた。下に目を向けると、少し大きめの公園くらいの庭がある。
俺達はこれからこんなトコで暮らすのかと思うと、心が躍った。こんなあからさまな豪邸で暮らすなんて、人間誰しも一度は抱く夢だろう。
「……?」
ふと俺はある事に気がついた。
それは、ルィリア邸の周りはやたら人通りが少ないという事だった。近くには人で賑わってる繁華街があるのだが、繁華街へ向かう人々がまるでルィリア邸の前を通らないようにわざと遠回りしているようだった。
ルィリアはグリモワールなんとか賞を受賞した栄誉ある人物の筈だ。実際ルィリアの魔術によって久遠の目が見えるようになったのは事実だし……確かにそういった栄誉ある人物を良く思わない人間も居るだろうが、ここまでなのか?
「こうして顔も声も何もかもが変わってても、零にぃちゃんと一緒に居られるのが……幸せ」
不意に、久遠がそう言って寄りかかってきた。
「本当に……そうだな。どんなに転生を繰り返したとしても“黒月零”としての記憶がある限り、俺の妹は久遠だけだよ」
「えへへっ、ありがとう……零にぃちゃん」
「……さて、暇だしルィリアの様子でも見に行くか」
「えっ? さっきシャーロットに任せるって……」
「そのつもりだったんだけど……聞きたい事が出来たからね、行くぞ」
俺はシャーロット達が居るであろう休憩室に向かうべく、窓を閉める。そこである違和感を感じた。
よく見ると窓は曇りガラスになっているのではなく、内側から番手の細かい紙やすりで削ったような雑な仕様になっていたのだ。こんな豪邸を建てられるほどの財力があるのに、窓だけこんな手を抜くなんて明らかにおかしい。
それはともかく、俺は久遠の手を握ると自分の部屋を出て休憩室に向かう事にした。
……の、だが。
「やばい……広すぎて何処に休憩室があるのかわからない……」
俺はうる覚えで休憩室までの道を辿っているのだが、シャーロットに教えてもらったとはいえいかんせんルィリア邸内は広い。結局場所が分からず、同じような場所を行ったり来たりしていた。
「えと……私、憶えてるよ」
「本当か久遠? じゃあちょっと案内してくれ」
「うん、着いてきて」
「おう」
俺は久遠に手を引っ張られながら、同じような場所を行ったり来たりする。
たった一回案内されただけで憶えられるなんて、久遠の記憶力は凄まじい。まぁ目が見えなかった時ですら当時住んでた家の内部を把握してたし納得か。
まず家に休憩室があるのおかしくないか?
……と思ったが、こんな大きな家でメイドまで雇っているから、もしかしたら本来はもっと大勢のメイドを雇うつもりだったのだろうか。
“でも拙が居なくなったら、誰が家事を担うんです? 拙以外絶対引き受けませんよ、こんな無駄に大きな家の家事なんて”
シャーロットの発言から察するに、このルィリア邸はメイドにとって条件が悪いのだろうか。もしくは……ルィリアという人物のメイドになる事を拒んでいる、という可能性もある。
「着いたよ」
そうこう考えている内に、どうやら休憩室に辿り着いたようだった。
——ここからは考察ではなく、直接本人から聞く事にしよう。
「あ、因みにシン様とフェリノート様のお部屋はこちらですので、ごゆっくりとお過ごしください」
俺達もとりあえず着いていこうとした途端、シャーロットは近くの部屋の方を指さしながらそう言った。
「……わかった、そうする」
俺は頷いて久遠の手を握るとその部屋へ入っていった。
俺達専用らしい部屋は、丁度俺達が隣り合わせで寝てもスペースが余りそうなダブルベッドに、机やクローゼット、この部屋だけでも十分暮らせるんじゃないかと思うくらいに設備の整った広い部屋だった。
部屋の奥に曇り加工の施された窓があり、閉めた状態では景色を眺める事は出来ないが、開ける事によって換気も出来て王都の景色も眺められるようだ。
「広いね、零にぃちゃん」
「そうだな」
俺は久遠の言葉に頷くと、早速部屋の奥に向かって窓を開けて換気も兼ねて外の景色を眺める。久遠も外の景色がどんなものなのか気になるようで、俺の隣に駆け寄ってきて一緒に眺める。
うまく言葉には出来ないが、異世界というより外国……例えるなら、ギリシャのサントリーニ島みたいだ。行った事はないが。
「……ルィリアの事はいいの?」
ふと、風に吹かれながら外の景色を眺めながら久遠がそんな事を聞いてきた。
「ああ、シャーロットに任せる事にする。俺達が居ても邪魔になるだけだしな」
「そうだね」
その後俺達は特に会話する事なく、ただ風に吹かれながら景色を眺めた。下に目を向けると、少し大きめの公園くらいの庭がある。
俺達はこれからこんなトコで暮らすのかと思うと、心が躍った。こんなあからさまな豪邸で暮らすなんて、人間誰しも一度は抱く夢だろう。
「……?」
ふと俺はある事に気がついた。
それは、ルィリア邸の周りはやたら人通りが少ないという事だった。近くには人で賑わってる繁華街があるのだが、繁華街へ向かう人々がまるでルィリア邸の前を通らないようにわざと遠回りしているようだった。
ルィリアはグリモワールなんとか賞を受賞した栄誉ある人物の筈だ。実際ルィリアの魔術によって久遠の目が見えるようになったのは事実だし……確かにそういった栄誉ある人物を良く思わない人間も居るだろうが、ここまでなのか?
「こうして顔も声も何もかもが変わってても、零にぃちゃんと一緒に居られるのが……幸せ」
不意に、久遠がそう言って寄りかかってきた。
「本当に……そうだな。どんなに転生を繰り返したとしても“黒月零”としての記憶がある限り、俺の妹は久遠だけだよ」
「えへへっ、ありがとう……零にぃちゃん」
「……さて、暇だしルィリアの様子でも見に行くか」
「えっ? さっきシャーロットに任せるって……」
「そのつもりだったんだけど……聞きたい事が出来たからね、行くぞ」
俺はシャーロット達が居るであろう休憩室に向かうべく、窓を閉める。そこである違和感を感じた。
よく見ると窓は曇りガラスになっているのではなく、内側から番手の細かい紙やすりで削ったような雑な仕様になっていたのだ。こんな豪邸を建てられるほどの財力があるのに、窓だけこんな手を抜くなんて明らかにおかしい。
それはともかく、俺は久遠の手を握ると自分の部屋を出て休憩室に向かう事にした。
……の、だが。
「やばい……広すぎて何処に休憩室があるのかわからない……」
俺はうる覚えで休憩室までの道を辿っているのだが、シャーロットに教えてもらったとはいえいかんせんルィリア邸内は広い。結局場所が分からず、同じような場所を行ったり来たりしていた。
「えと……私、憶えてるよ」
「本当か久遠? じゃあちょっと案内してくれ」
「うん、着いてきて」
「おう」
俺は久遠に手を引っ張られながら、同じような場所を行ったり来たりする。
たった一回案内されただけで憶えられるなんて、久遠の記憶力は凄まじい。まぁ目が見えなかった時ですら当時住んでた家の内部を把握してたし納得か。
まず家に休憩室があるのおかしくないか?
……と思ったが、こんな大きな家でメイドまで雇っているから、もしかしたら本来はもっと大勢のメイドを雇うつもりだったのだろうか。
“でも拙が居なくなったら、誰が家事を担うんです? 拙以外絶対引き受けませんよ、こんな無駄に大きな家の家事なんて”
シャーロットの発言から察するに、このルィリア邸はメイドにとって条件が悪いのだろうか。もしくは……ルィリアという人物のメイドになる事を拒んでいる、という可能性もある。
「着いたよ」
そうこう考えている内に、どうやら休憩室に辿り着いたようだった。
——ここからは考察ではなく、直接本人から聞く事にしよう。
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