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居場所とスキルの力②
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食堂に行くと、そこにはエヴァン様のお父様、そしてお父様と同年代に見える女性の方が待っていた。にこりと微笑まれたので、私も小さく会釈を返す。
そして、椅子に案内されたころには、ウルホ様が息を切らせながらやってきた。
「お? 間に合ったようじゃな。そして、ティーエ。久しぶりじゃの」
「えぇ、ウルホ。本当に心配をおかけしました」
そういって二人は見つめ合いながら涙ぐむ。
えっと、たぶんだけどエヴァン様のお母様、かしら。
でも、昨日はお会いできなかったな。どうしてだろうか。
「まあ、積もる話もある。が、とりあえず昼食にしようか」
お父様の声で皆が席についた。
そして、料理が運ばれてくる。
「さて、食事の席だが、色々と話さなければならないことがある。まずは、エヴァン、アンフェリカ」
「はい」
え!? 突然名前を呼ばれるとは思わなかったけれど、すぐさま淑女モードに切り替えて対応する。
「はい」
「二人には本当に礼を言わねばならぬ。エヴァンには長い間苦労を掛けた。お前にトピアスの恵みを探す役を与えて何年になる?」
「約三年です」
「うむ……本当に、三年間よく耐えた。そして、このエルフの村に恵みをもたらしてくれてありがとう。私は……お前を誇りに思う」
「……はい」
エヴァン様は、ゆっくり目をつぶった。
きっと、色々なことを思い出しているのだろう。大きく一呼吸すると、すがすがしい表情で私に視線を向けた。
「そして、アンフェリカ。そなたの功績は計り知れない。トピアスの恵みをこのエルフの村にもたらした。それによって救われた命もある。これで、滅びへつながる道を一つ、断つことができた。本当にありがとう」
「いえ。私の意志ですから。それに、私が事を成せたのはエヴァン様がいてくれたおかげです。お礼なら、エヴァン様へお願いいたします」
「そなたの想いは伝わっているよ。でも私が礼を言いたいんだ。妻も……長らく臥せっていた妻も、こうして元気になったのだから。昨日出してくれた花の余りを使ってな」
私はその言葉を聞いて、ついつい視線を女性のほうに向けてしまう。
「本当に、私からもお礼を言わせてくださいませ。私はティーアと申します。あなたのおかげで、私は家族とともにいる時間を、そして息子のお嫁さんに会える機会を得られたのです。本当にありがとうございました」
「こちらこそ……それよりも、お母様でしたか。ご挨拶が遅れて申し訳ありませんでした」
「ふふっ、いいのよ。堅苦しいのは本当は苦手なの。この人がきっとかっこつけたいからこんな雰囲気なのよね」
「違いないのぉ! アルヴィリはいつもこういうとき見栄っ張りじゃからの」
お母様とウルホ様の言葉に、お父様は顔を歪ませる。
「余計なことはいわなくていい。とにかく、私達はアンフェリカに多大な感謝を抱いている。そして、エヴァンとアンフェリカが望むのなら、二人の婚約も認めよう」
それを聞いたエヴァン様は、口角をあげた。
「別に父上に認められずとも、私はアンフェリカと一緒になる心づもりです」
「わかっておる。近いうちに、この村でも婚約式を行う! 近頃なかっためでたい出来事だからな。皆喜ぶ」
私はその言葉を聞いて、またあの視線にさらされるのかと体が縮こまる思いだった。
だが、エヴァン様はそれにすぐに気づいてくれて、そっと肩を抱いてくれた。
「昨日と今日では君に対する認識は違う。父上からもお触れを出すんだ。きっと大丈夫さ。私も、隣にいるから」
「……はい。ありがとうございます」
不安をすぐに拭ってくれるエヴァン様。その気遣いを感じる度に心がふっと温かくなる。
「今後はアンフェリカからもたらされた種を育てていけば、エルフに降り注いだ呪いは跳ねのけられるだろう。だが、エヴァン、ウルホ。何か気になることがあるとか?」
お父様のその言葉に、ウルホ様はようやくかといった雰囲気で持ってきていた本を開いた。
そして、椅子に案内されたころには、ウルホ様が息を切らせながらやってきた。
「お? 間に合ったようじゃな。そして、ティーエ。久しぶりじゃの」
「えぇ、ウルホ。本当に心配をおかけしました」
そういって二人は見つめ合いながら涙ぐむ。
えっと、たぶんだけどエヴァン様のお母様、かしら。
でも、昨日はお会いできなかったな。どうしてだろうか。
「まあ、積もる話もある。が、とりあえず昼食にしようか」
お父様の声で皆が席についた。
そして、料理が運ばれてくる。
「さて、食事の席だが、色々と話さなければならないことがある。まずは、エヴァン、アンフェリカ」
「はい」
え!? 突然名前を呼ばれるとは思わなかったけれど、すぐさま淑女モードに切り替えて対応する。
「はい」
「二人には本当に礼を言わねばならぬ。エヴァンには長い間苦労を掛けた。お前にトピアスの恵みを探す役を与えて何年になる?」
「約三年です」
「うむ……本当に、三年間よく耐えた。そして、このエルフの村に恵みをもたらしてくれてありがとう。私は……お前を誇りに思う」
「……はい」
エヴァン様は、ゆっくり目をつぶった。
きっと、色々なことを思い出しているのだろう。大きく一呼吸すると、すがすがしい表情で私に視線を向けた。
「そして、アンフェリカ。そなたの功績は計り知れない。トピアスの恵みをこのエルフの村にもたらした。それによって救われた命もある。これで、滅びへつながる道を一つ、断つことができた。本当にありがとう」
「いえ。私の意志ですから。それに、私が事を成せたのはエヴァン様がいてくれたおかげです。お礼なら、エヴァン様へお願いいたします」
「そなたの想いは伝わっているよ。でも私が礼を言いたいんだ。妻も……長らく臥せっていた妻も、こうして元気になったのだから。昨日出してくれた花の余りを使ってな」
私はその言葉を聞いて、ついつい視線を女性のほうに向けてしまう。
「本当に、私からもお礼を言わせてくださいませ。私はティーアと申します。あなたのおかげで、私は家族とともにいる時間を、そして息子のお嫁さんに会える機会を得られたのです。本当にありがとうございました」
「こちらこそ……それよりも、お母様でしたか。ご挨拶が遅れて申し訳ありませんでした」
「ふふっ、いいのよ。堅苦しいのは本当は苦手なの。この人がきっとかっこつけたいからこんな雰囲気なのよね」
「違いないのぉ! アルヴィリはいつもこういうとき見栄っ張りじゃからの」
お母様とウルホ様の言葉に、お父様は顔を歪ませる。
「余計なことはいわなくていい。とにかく、私達はアンフェリカに多大な感謝を抱いている。そして、エヴァンとアンフェリカが望むのなら、二人の婚約も認めよう」
それを聞いたエヴァン様は、口角をあげた。
「別に父上に認められずとも、私はアンフェリカと一緒になる心づもりです」
「わかっておる。近いうちに、この村でも婚約式を行う! 近頃なかっためでたい出来事だからな。皆喜ぶ」
私はその言葉を聞いて、またあの視線にさらされるのかと体が縮こまる思いだった。
だが、エヴァン様はそれにすぐに気づいてくれて、そっと肩を抱いてくれた。
「昨日と今日では君に対する認識は違う。父上からもお触れを出すんだ。きっと大丈夫さ。私も、隣にいるから」
「……はい。ありがとうございます」
不安をすぐに拭ってくれるエヴァン様。その気遣いを感じる度に心がふっと温かくなる。
「今後はアンフェリカからもたらされた種を育てていけば、エルフに降り注いだ呪いは跳ねのけられるだろう。だが、エヴァン、ウルホ。何か気になることがあるとか?」
お父様のその言葉に、ウルホ様はようやくかといった雰囲気で持ってきていた本を開いた。
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