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救いと勇気と①

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 私が外に出ると、たくさんの人たちが集まっていた。きっと住人の方々なのだろう。
 その表情は非常に固く、鋭い視線を向けてくる。
 そのむき出しの感情を向けられると、アルフレート様との決別の時の応接間を思い出す。
 誰もが私を必要としていない。そんな感情に押しつぶされそうになる。
 
 けど、今はあの時とは違う。
 横を見上げると、そこにはエヴァン様がいる。私は、心細さからすがるようにそっと、彼の袖の端を掴んだ。
 その仕草に驚いたのだろうか。
 エヴァン様は、肩に回していた腕に力を込めてくれる。
 包まれてる感じがして、少し安心した。

「なんの真似だ」

 エヴァン様が低い声で問いかける。
 すると、狩人のリクさんが、困惑した表情でがゆっくり近づいてくる。

「いや、俺らはそこの人間をどうして連れてきたのか聞きたかっただけなんだが……」
「なんだ?」
「陛下がな。お前にコスティの家に向かっていると伝えろって言っててな。どういうことだ? なぜ、コスティの家に――」

 リクさんの言葉に、エヴァン様は目をかっと見開いて口を開く。

「アンフェリカ、走るぞ!」
「ふぇ!?」
「いいから、早く! 君の力が必要だ!」

 そうやって、引っ張られるままに私は走った。
 エヴァン様の手は力強く私を引っ張り、私もそれについていこうと足に力をこめる。
 今までこんな走ったことなんてなかったのに、なぜだか力が湧いてくるようだ。

「あ! おい、待てよ! エヴァン!!」

 後ろからリクさんの声が聞こえてくる。
 私は、走りながら後ろを見ると、大勢の人たちが呆気にとられたような表情を浮かべていた。

「いいんですか? エヴァン様!」
「いいんだ! コスティの家には、この村で一番重症なものがいる家だ。父上達はきっとこのものを助けに行ったんだ」
「それは、私のあの花で!?」
「それ以外にあるか!?」

 走りながらだから、どこか怒鳴りあるように。
 それでも、エヴァン様は私の疑問に一つずつ答えてくれた。

 もし、あの花が役に立たなかったら。
 そんな恐ろしい考えが浮かぶけれど、それなら今までの私と変わらないだけだ。何も困らない。
 ならいっそのこと、もしかしたらという希望にすがるほうがきっといい。

 私はただ引っ張られるだけじゃない。
 顔をあげて、自らの意志で彼の横を走る。自分が変わるなら。役に立たない自分から抜け出すには、自分が動かなきゃ変わらない。

 横に並んだ時、エヴァン様は驚いていたけれどすぐに嬉しそうに微笑んでくれた。
 そして、そのまま私達二人は、手をつないだままコスティさんの家に走った。

 
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