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エルフの国と拒絶④

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 連れてこられたのは、村の奥、大きな白い建物だ。
 きっとお城のようなものなのだろう。物々しい大きな門がそびえたっている。

 その最中も、私達の周囲にはたくさんのエルフの方がいて、しかも顔は怖いし、睨まれるし、ひどく居心地が悪い。
 でも、エヴァン様がいる。
 私を受け入れてくれたエヴァン様が隣にいる。
 それだけが今の私の支えだった。

 城の中に入りどんどんと奥へ入っていくと、ある部屋に通された。
 そこには、私とエヴァン様、そして国王であるエヴァン様のお父様と、見慣れないお爺さんがいた。背中も曲がり、よちよちと歩くその様は、ひどく高齢であるように見えた。
 眉毛も髭も長くて白くて顔はしわだらけ。
 そんなお爺さんが、国王の横にちょこんと座った。

「はじめましてじゃ……。わしは宰相を務めておるウルホじゃ。エヴァンの坊やと恋仲なんじゃて? 仲良くしてやってくれよ?」
「はぁ……」
「なんじゃ? 驚いているのか? かっか! まぁ、無理もない。ここにいる奴らは人間に対して敵対心を持っておるからの」

 見た目とは裏腹に饒舌なウルホ様は、かっか、と笑いながら話を始める。
 エヴァン様とお父様が同じようなしかめっ面を浮かべている。

「ウルホよ。少し黙っていられぬのか?」
「なんじゃ? アルヴィリよ。おぬしは息子と結婚したいと思ってくれるものを邪険にするのか? 狭量な奴じゃのう」
「違う。私はこの国を背負う王族としての姿勢を――」
「うるさいわい! そんなことよりも、まずは父親として息子を祝ってやれんのか? そして、このような人間と国交を絶っているエルフの国に一人やってくるこの子の心細さに寄り添えんのか? そんなことで国を支えられると?」
「ぐぅ……」

 ウルホ様の言葉に、お父様は二の句が継げない。
 そして、そんな言葉をかけてくれるなんて。私は思わず涙ぐむ。

「あ、ありがとうございます……」

「ほれ。おぬしが泣かしたんじゃからな?」

「ち、違う! 私は――」

 そんな漫才のようなやり取りをよそに、エヴァン様はそっと私を抱きしめてくれた。

「ぁ……」
「本当にありがとう。つらかっただろう? だが、安心してほしい。きっと、このエルフの国を君の居場所にしてみせる。そのためにはまず――」
「――目の前の頭の固い老害から始末しないとな」
「かっか! あの氷の王子がこうまで変わるとは! 面白いものじゃのぉ!」
「エヴァン……わかったから。まずは話を聞こう」

 そう言うと、お父様は椅子に座った。
 私はエヴァン様の腕の中からそっと彼を見上げる。

「ありがとうございます。私も、頑張りますから」
「あぁ、一緒にな」
「はい。……でも、お父様なんですから。あんまりひどいこと言っちゃだめですよ?」
「っ――」

 私がそういうと、エヴァン様もばつが悪そうに視線を逸らした。その様子を見てたウルホ様はやはり面白そうに笑う。

「一番の強者はおぬしじゃな! まぁ……このあたりで遊びは終いじゃ。さぁ エヴァン。話を始めてくれんか?」
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