11 / 23
エルフの国と拒絶④
しおりを挟む
連れてこられたのは、村の奥、大きな白い建物だ。
きっとお城のようなものなのだろう。物々しい大きな門がそびえたっている。
その最中も、私達の周囲にはたくさんのエルフの方がいて、しかも顔は怖いし、睨まれるし、ひどく居心地が悪い。
でも、エヴァン様がいる。
私を受け入れてくれたエヴァン様が隣にいる。
それだけが今の私の支えだった。
城の中に入りどんどんと奥へ入っていくと、ある部屋に通された。
そこには、私とエヴァン様、そして国王であるエヴァン様のお父様と、見慣れないお爺さんがいた。背中も曲がり、よちよちと歩くその様は、ひどく高齢であるように見えた。
眉毛も髭も長くて白くて顔はしわだらけ。
そんなお爺さんが、国王の横にちょこんと座った。
「はじめましてじゃ……。わしは宰相を務めておるウルホじゃ。エヴァンの坊やと恋仲なんじゃて? 仲良くしてやってくれよ?」
「はぁ……」
「なんじゃ? 驚いているのか? かっか! まぁ、無理もない。ここにいる奴らは人間に対して敵対心を持っておるからの」
見た目とは裏腹に饒舌なウルホ様は、かっか、と笑いながら話を始める。
エヴァン様とお父様が同じようなしかめっ面を浮かべている。
「ウルホよ。少し黙っていられぬのか?」
「なんじゃ? アルヴィリよ。おぬしは息子と結婚したいと思ってくれるものを邪険にするのか? 狭量な奴じゃのう」
「違う。私はこの国を背負う王族としての姿勢を――」
「うるさいわい! そんなことよりも、まずは父親として息子を祝ってやれんのか? そして、このような人間と国交を絶っているエルフの国に一人やってくるこの子の心細さに寄り添えんのか? そんなことで国を支えられると?」
「ぐぅ……」
ウルホ様の言葉に、お父様は二の句が継げない。
そして、そんな言葉をかけてくれるなんて。私は思わず涙ぐむ。
「あ、ありがとうございます……」
「ほれ。おぬしが泣かしたんじゃからな?」
「ち、違う! 私は――」
そんな漫才のようなやり取りをよそに、エヴァン様はそっと私を抱きしめてくれた。
「ぁ……」
「本当にありがとう。つらかっただろう? だが、安心してほしい。きっと、このエルフの国を君の居場所にしてみせる。そのためにはまず――」
「――目の前の頭の固い老害から始末しないとな」
「かっか! あの氷の王子がこうまで変わるとは! 面白いものじゃのぉ!」
「エヴァン……わかったから。まずは話を聞こう」
そう言うと、お父様は椅子に座った。
私はエヴァン様の腕の中からそっと彼を見上げる。
「ありがとうございます。私も、頑張りますから」
「あぁ、一緒にな」
「はい。……でも、お父様なんですから。あんまりひどいこと言っちゃだめですよ?」
「っ――」
私がそういうと、エヴァン様もばつが悪そうに視線を逸らした。その様子を見てたウルホ様はやはり面白そうに笑う。
「一番の強者はおぬしじゃな! まぁ……このあたりで遊びは終いじゃ。さぁ エヴァン。話を始めてくれんか?」
きっとお城のようなものなのだろう。物々しい大きな門がそびえたっている。
その最中も、私達の周囲にはたくさんのエルフの方がいて、しかも顔は怖いし、睨まれるし、ひどく居心地が悪い。
でも、エヴァン様がいる。
私を受け入れてくれたエヴァン様が隣にいる。
それだけが今の私の支えだった。
城の中に入りどんどんと奥へ入っていくと、ある部屋に通された。
そこには、私とエヴァン様、そして国王であるエヴァン様のお父様と、見慣れないお爺さんがいた。背中も曲がり、よちよちと歩くその様は、ひどく高齢であるように見えた。
眉毛も髭も長くて白くて顔はしわだらけ。
そんなお爺さんが、国王の横にちょこんと座った。
「はじめましてじゃ……。わしは宰相を務めておるウルホじゃ。エヴァンの坊やと恋仲なんじゃて? 仲良くしてやってくれよ?」
「はぁ……」
「なんじゃ? 驚いているのか? かっか! まぁ、無理もない。ここにいる奴らは人間に対して敵対心を持っておるからの」
見た目とは裏腹に饒舌なウルホ様は、かっか、と笑いながら話を始める。
エヴァン様とお父様が同じようなしかめっ面を浮かべている。
「ウルホよ。少し黙っていられぬのか?」
「なんじゃ? アルヴィリよ。おぬしは息子と結婚したいと思ってくれるものを邪険にするのか? 狭量な奴じゃのう」
「違う。私はこの国を背負う王族としての姿勢を――」
「うるさいわい! そんなことよりも、まずは父親として息子を祝ってやれんのか? そして、このような人間と国交を絶っているエルフの国に一人やってくるこの子の心細さに寄り添えんのか? そんなことで国を支えられると?」
「ぐぅ……」
ウルホ様の言葉に、お父様は二の句が継げない。
そして、そんな言葉をかけてくれるなんて。私は思わず涙ぐむ。
「あ、ありがとうございます……」
「ほれ。おぬしが泣かしたんじゃからな?」
「ち、違う! 私は――」
そんな漫才のようなやり取りをよそに、エヴァン様はそっと私を抱きしめてくれた。
「ぁ……」
「本当にありがとう。つらかっただろう? だが、安心してほしい。きっと、このエルフの国を君の居場所にしてみせる。そのためにはまず――」
「――目の前の頭の固い老害から始末しないとな」
「かっか! あの氷の王子がこうまで変わるとは! 面白いものじゃのぉ!」
「エヴァン……わかったから。まずは話を聞こう」
そう言うと、お父様は椅子に座った。
私はエヴァン様の腕の中からそっと彼を見上げる。
「ありがとうございます。私も、頑張りますから」
「あぁ、一緒にな」
「はい。……でも、お父様なんですから。あんまりひどいこと言っちゃだめですよ?」
「っ――」
私がそういうと、エヴァン様もばつが悪そうに視線を逸らした。その様子を見てたウルホ様はやはり面白そうに笑う。
「一番の強者はおぬしじゃな! まぁ……このあたりで遊びは終いじゃ。さぁ エヴァン。話を始めてくれんか?」
0
お気に入りに追加
171
あなたにおすすめの小説
【完結】王女と駆け落ちした元旦那が二年後に帰ってきた〜謝罪すると思いきや、聖女になったお前と僕らの赤ん坊を育てたい?こんなに馬鹿だったかしら
冬月光輝
恋愛
侯爵家の令嬢、エリスの夫であるロバートは伯爵家の長男にして、デルバニア王国の第二王女アイリーンの幼馴染だった。
アイリーンは隣国の王子であるアルフォンスと婚約しているが、婚姻の儀式の当日にロバートと共に行方を眩ませてしまう。
国際規模の婚約破棄事件の裏で失意に沈むエリスだったが、同じ境遇のアルフォンスとお互いに励まし合い、元々魔法の素養があったので環境を変えようと修行をして聖女となり、王国でも重宝される存在となった。
ロバートたちが蒸発して二年後のある日、突然エリスの前に元夫が現れる。
エリスは激怒して謝罪を求めたが、彼は「アイリーンと自分の赤子を三人で育てよう」と斜め上のことを言い出した。
ループ五回目の伯爵令嬢は『ざまぁ』される前に追放されたい
星井柚乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「伯爵令嬢ヒメリア・ルーイン。貴様はこの国の面汚し、婚約はもちろん破棄、死んで詫びるがいいっ断罪だっ!」
「そんなっ! 一体、どうしてそんな酷いことを? いやぁっ」
ザシュッ!
婚約者である【王太子クルスペーラ】と彼の新たな恋人【聖女フィオナ】に断罪されるという恐怖の夢、息苦しさを覚えてヒメリアが目覚めると……そこは見慣れた自室だった。
「まさか時間が巻き戻っているの。それとも同じ人生をもう一度繰り返してる……五回目よね」
これは清らかな伯爵令嬢ヒメリア・ルーインが、悲劇的なタイムリープの輪から抜け出すまでの物語。
* 2024年04月28日、第二部前日譚『赤い月の魔女達』更新。
* 次章は2024年05月下旬以降を予定しております。
* ショートショート作品として一度完結していましたが、長編版として連載再開です。ショート版の最終話の続きとしてクリスマスの幕間、前世のエピソード、初回のループからの伏線回収などを予定しております。
* アルファポリスさんと小説家になろうさんに投稿しております。
家の全仕事を請け負っていた私ですが「無能はいらない!」と追放されました。
水垣するめ
恋愛
主人公のミア・スコットは幼い頃から家の仕事をさせられていた。
兄と妹が優秀すぎたため、ミアは「無能」とレッテルが貼られていた。
しかし幼い頃から仕事を行ってきたミアは仕事の腕が鍛えられ、とても優秀になっていた。
それは公爵家の仕事を一人で回せるくらいに。
だが最初からミアを見下している両親や兄と妹はそれには気づかない。
そしてある日、とうとうミアを家から追い出してしまう。
自由になったミアは人生を謳歌し始める。
それと対象的に、ミアを追放したスコット家は仕事が回らなくなり没落していく……。
婚約破棄されたおっとり令嬢は「実験成功」とほくそ笑む
柴野
恋愛
おっとりしている――つまり気の利かない頭の鈍い奴と有名な令嬢イダイア。
周囲からどれだけ罵られようとも笑顔でいる様を皆が怖がり、誰も寄り付かなくなっていたところ、彼女は婚約者であった王太子に「真実の愛を見つけたから気味の悪いお前のような女はもういらん!」と言われて婚約破棄されてしまう。
しかしそれを受けた彼女は悲しむでも困惑するでもなく、一人ほくそ笑んだ。
「実験成功、ですわねぇ」
イダイアは静かに呟き、そして哀れなる王太子に真実を教え始めるのだった。
※こちらの作品は小説家になろうにも重複投稿しています。
お父様お母様、お久しぶりです。あの時わたしを捨ててくださりありがとうございます
柚木ゆず
恋愛
ヤニックお父様、ジネットお母様。お久しぶりです。
わたしはアヴァザール伯爵家の長女エマとして生まれ、6歳のころ貴方がたによって隣国に捨てられてしまいましたよね?
当時のわたしにとってお二人は大事な家族で、だからとても辛かった。寂しくて悲しくて、捨てられたわたしは絶望のどん底に落ちていました。
でも。
今は、捨てられてよかったと思っています。
だって、その出来事によってわたしは――。大切な人達と出会い、大好きな人と出逢うことができたのですから。
愛のゆくえ【完結】
春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした
ですが、告白した私にあなたは言いました
「妹にしか思えない」
私は幼馴染みと婚約しました
それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか?
☆12時30分より1時間更新
(6月1日0時30分 完結)
こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね?
……違う?
とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。
他社でも公開
麗しの王子殿下は今日も私を睨みつける。
スズキアカネ
恋愛
「王子殿下の運命の相手を占いで決めるそうだから、レオーネ、あなたが選ばれるかもしれないわよ」
伯母の一声で連れて行かれた王宮広場にはたくさんの若い女の子たちで溢れかえっていた。
そしてバルコニーに立つのは麗しい王子様。
──あの、王子様……何故睨むんですか?
人違いに決まってるからそんなに怒らないでよぉ!
◇◆◇
無断転載・転用禁止。
Do not repost.
【完結】忌み子と呼ばれた公爵令嬢
美原風香
恋愛
「ティアフレア・ローズ・フィーン嬢に使節団への同行を命じる」
かつて、忌み子と呼ばれた公爵令嬢がいた。
誰からも嫌われ、疎まれ、生まれてきたことすら祝福されなかった1人の令嬢が、王国から追放され帝国に行った。
そこで彼女はある1人の人物と出会う。
彼のおかげで冷え切った心は温められて、彼女は生まれて初めて心の底から笑みを浮かべた。
ーー蜂蜜みたい。
これは金色の瞳に魅せられた令嬢が幸せになる、そんなお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる