ブックメイカー ~ゴミスキルを開花させた少年は、孤児から頂点へと成り上がる~

卯月 みつび

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第三章 スキルの力と金策と裏切り

二十二

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 一瞬でその場から消え去ったエンド様。



 残されたのは私と、ドメーノとその家来達。

 魔術のスキル持ちと武術に長けたものたちが集まっている。

 今は、急に変わった環境に心が追いついていないようだ。



「おい! 落ち着け! まずは、敵の排除。それから、今の状況を分析すればいい! 外を見る限りここは森の中だが、賊であるメイドもここにいる! すぐに命を取られるわけじゃないから、とにかく落ち着くんだ!」



 やはり、多くの人を従える人物だ。

 すぐさま状況判断と緊急度を考え指示をだす。

 実力のある商人ということだからこれくらいは当然だろうと思いながら、私はその様子をぼんやりと眺めていた。



 まだ気づかない。



 そんなことを考えながら。



「今は、すばやく敵の排除を――と、あの少年は……?」



 ドメーノが辺りを見回している。

 何も見つかるはずないのに。その姿が妙に滑稽で、私は思わず笑みをこぼしてしまう。



「ご主人様ならもういませんよ? あなた達は私とここで遊んでいましょう。本来なら私もご主人様と一緒に行きたいのですが……しょうがないので相手をしてあげますから」

「メイドを囮にして逃げたのですね! 所詮は下賤な輩! 誇りもなにもあったものではない! お前ら。逃げたのなら引きずりだすまで。目の前のメイドをいたぶり、さらし者にしてやるのです。さぁ、そこのメイドさん。恐ろしければ、さっさとご主人様を呼ぶのです。下品な悲鳴でも上げてね! はははははは!」



 ドメーノがそう叫ぶと、忠実な部下達は再び私に波状攻撃を仕掛けてくる。魔法、槍、魔法と単調でひどくつまらない。

 そんなことよりも、今、この男はエンド様のことをなんといった?

 下賤だと? 誇りも何もないだと?

 エンド様のことを知らずして、どの口が言うのか。



 なぜだか頭のなかでプチンという音が聞こえたけど、もうそんなことはどうでもいい。



「お前こそ……誰に向かって汚い言葉を吐いているのですか?」



 一歩を踏み出す。

 両手にナイフを持ちながら、私は目の前の男の眼前で一回り。

 次は横に飛び、回り。

 だんだんとその勢いをつけながら、私は延々と回り始めた。



 止まらない円運動。その手元にはナイフ。

 近づく人の首筋に沿わせたナイフが、柔らかい喉を容易に切り裂いていく。



「な、なんだぁ――!!??」

「や、やめ――」

「は、はわわわわわわっ」



 切れ者らしいがどこまでも間抜けだ。

 そんなドメーノを見下しながら、私はくるりくるりとまるでワルツのように踊っていく。



 踏み込み、回り、切り裂く。

 死の三拍子はあっという間にその部屋中に襲い掛かり、手間にいた武器を持っていた面々は地面にひれ伏す。

 ひとまず私は立ち止まると、床に描かれた赤い無数の円の重なりに思わずため息を吐く。



「エンド様の前に出るときには、それくらい頭を下げているのがお似合いです。ですが、まずまずのものは描けたかと」

「ひっ――、お前ら! さっさと魔法で焼き尽くせ! さぁ!!!」



 ドメーノの言葉に、魔法スキル持ち達は一斉にスキルを行使する。

 今までと違い、皆が協力して魔法を放つようだ。

 切り札なのだろう。

 熟練されたスムーズなスキル行使とともに、私の天井まで届きそうなほどの炎が作り上げられる。

 屋敷が燃えないのは、結界でも張っているのだろうか。



「これで終わりです!!!」



 視界を埋め尽くす業火。

 それをかわす術はない。そして、炎に飲まれれば耐えきれる道理はない。

 まさか。

 下に見ていた相手に、このような事態になるなんて。



「エンド様……申し訳ありません」

「ふははははは! 金にものを言わせて集めた精鋭達ですからね! 賊の一人や二人、簡単に殺してもらわないと割に合わないんですよ! ははっ! ほぅら! 燃え尽きたぞ! よくやった、お前ら! そうしたら、次はあの忌々しい小僧からだ! さっさと見つけ出して、ころ――な……」



 高笑いを揚げていたドメーノだが、突如として言葉に詰まる。

 その目線の先には当然私がいた。

 燃え盛る炎は既に背後。

 私は、いまだ熱が残る部屋を悠然と歩いていく。



「なぜ……なぜ、お前がそこにいるんだぁ!! どうして燃えていない!!」

「なぜですって? 私はこの世界の主ですよ? それこそ――」



 ――簡単な距離の移動ならなんなくできますから。



 そう。

 私はあの炎を飛び越えただけなのだ。

 といっても、直接ではなく時空を潜ってだ。



 私は本から生まれ、この世界も本から生まれた。

 そして、この世界の主――管理人のようなものが私だ。

 そんな私が、この世界の中で外と同じようにしか動けないはずがない。

 この世界で、私に勝てるものなどエンド様以外にいるはずもない。



「これだけの大魔法。体力も限界でしょう? すぐに休ませてあげますから」



 私はそういって、もう一度ワルツを踊る。

 最後の一人になるまで、優雅に、軽やかに。 
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