上 下
36 / 54
第三章 スキルの力と金策と裏切り

しおりを挟む


「エンド様がここに住まわせてくれているお陰で、安心して生活できます。本当にありがとうございます」

「そうだねぇ。あたしら老人も元気が湧きでてくるようでね」

「この前、おばあちゃん、こんなおっきい獲物を捕まえたんだよ! 本当にすごかったんだから!」

「病気もしないし、本当にここの食べ物は体にいいかもしれんねぇ」

「それより、むこうのじっさんもすごくなかったかぁ? あんな大型の獣、現役時代よりでも取れなかったしなぁ!」

「それよりもあたしは、突然じいさまが元気になってこっちの身がもたないよ!」



 みんなが僕に話してくれることを一つ一つ聞いていく。

 ちょっぴり大人な話もあったけど、おおむねみんな元気でいてくれているらしい。

 子供達もあんなに元気に過ごしてる。

 まあ、すばしっこさはレベルがあがった僕のステータスでもなかなか捕まえるのが難しかった。

 っていうか、久しぶりにステータスをみたら、あんなにあがってたんだなってびっくりした。



 こういう時お酒とかあると盛り上がるのかな? 今度、村長さんに相談してみよう。



 そんなことを思っていると、レイカとルルルが僕に近づいて隣に座ってくる。

 僕が視線を向けると、それに応えるようにほほ笑んでくれた



「レイカもルルルも楽しんでる?」

「はい。今日はあちらの方々に色々話を聞いていました」

「うん! おばちゃんたち、楽しそうだったよ!」



 そちらをみると、ご婦人方が楽しそうに盛り上がっている。

 ちょっと僕には入り込めない雰囲気だけど。



「エンド様。皆、笑っていますね」

「うん。よかったよ……でも、もっと、過ごしやすくなるといいんだけどね」

「焦らなくていいんですよ。今でもエンド様は十分にやってますから」 

「そっかな」

「そうですよ」



 レイカにそう言ってもらえると、元気が出てくる。

 うん。

 このまま家が建って、もっとみんなが過ごしやすくなればいい。



「ねぇ、エンド」

「どうした? ルルル」

「ルルルね。エンドのために何かしたいんだ」

「何か?」



 その言葉に僕は驚いた。

 まさかそんなことを考えてくれてるなんて。

 こんな僕に……って思うのは、もう失礼なんだろうな。



「どうしてそう思ったの?」

「みんな言ってるよ! エンドのために何かしたい。けど、何もできないのがつらいって。じいちゃん達もばあちゃん達もお母さんも、みんなエンドが好きなんだ。役に立ちたいんだって」

「先ほどのご婦人方もおっしゃっていましたよ? もらうばかりじゃ嫌だって。何人か、エンド様の愛人になりたいと思っておりましたがいかがなされます?」

「ばっ、愛人ってっ! レイカ! 変なこと言わないでよ!」

「ふふ。それだけ慕われてるってことですよ」



 みんながそう思ってくれてるって知ることができて、暖かい気持ちになる。

 そうなると、なんでも僕がやるのは違うのかもしれないな。



「そっかぁ。そうだね。例えばルルルは何をしたいの?」

「ルルル? えっとねぇ、ルルルはねー」



 楽しそうに体をくねくねさせたルルルは、何かを思いついたのか、大きい目をぱっちり開いて僕に顔を近づけた。



「エンドと同じ、冒険者になりたい!」

「冒険者に?」

「うん! それで、お母さんを守るんだ!」



 剣か何かで斬りつける真似をしながらルルルは、またどこかに遊びに行ってしまった。



「ルルルが冒険者ね」

「いいと思いますけどね。今日の身のこなしを見ていれば、きっとうまくやるのではないでしょうか」

「たしかに。ここの子達の動きは正直びっくりしたから」

「獣人の元々の能力を考えても……たしかに普通じゃないかも?」



 そんな話をしていると、徐々に夜も更けてくる。

 そろそろ寝る準備をしないとな。

 そんなことを考え始めたころ、村長さんがやってきた。

 なにやら隣には若い男性を引き連れて。



「エンド様……少し時間をよろしいですかな?」

「あ、村長さん。それはいいんだけど……」

「そちらの方は……」



 一緒に来ていた男をみると、見覚えのない人だった。

 そして、彼の身体の一部。

 ついそこに視線が集中するのは仕方のないことなのだろう。



「こう……もり?」



 そう。

 彼の背中からは黒い翼が生えていたのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

なりゆきで、君の体を調教中

星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。

クリ責めイド

めれこ
恋愛
----------  ご主人様は言いました。  「僕は、人が理性と欲求の狭間で翻弄される姿が見たいのだよ!」と。  ご主人様は私のクリトリスにテープでロータを固定して言いました。  「クリ責めイドである君には、この状態で広間の掃除をしてもらおう」と。  ご主人様は最低な変態野郎でした。 -----------  これは、あらゆる方法でクリ責めされてしまうメイド「クリ責めイド」が理性と欲求の狭間で翻弄されるお話。  恋愛要素は薄いかも知れません。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

番だからと攫っておいて、番だと認めないと言われても。

七辻ゆゆ
ファンタジー
特に同情できないので、ルナは手段を選ばず帰国をめざすことにした。

お屋敷メイドと7人の兄弟

とよ
恋愛
【露骨な性的表現を含みます】 【貞操観念はありません】 メイドさん達が昼でも夜でも7人兄弟のお世話をするお話です。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

処理中です...