16 / 54
第二章 冒険者の門出、差別、救済
六
しおりを挟む
一週間後。
ガーフさんに言われて鍛冶屋にやってきた。
しっかりした武器を作るには時間が必要だってことで、今日になったのだ。
僕としては店先に並んでいるのでよかったんだけど、レイカもガーフさんも絶対にダメだと譲らなかったのだ。
外から声をかけると、なんだかやつれた気がするガーフさんがふらふらになりながら現れた。
「お、おう。エンドか。ちょっと座っててくれ。今、終わったところだ」
「うん。けど、ガーフさん、大丈夫ですか? 体調悪そうですけど」
「今日は徹夜だったからなぁ。まあ、すぐ持ってくるから。待ってろ」
ガーフさんはそういうと、奥から大きな箱を持ってくる。
僕とレイカは、近くにある椅子に座ってそれを待っていた。
「まずは防具だ。これは、言われた通り軽くて丈夫なものを選んだ。金属だと重くなるから、魔物の素材を使ってる」
「へぇ。それが、これですか」
ガーフさんが取り出したのは、深い灰色ものだった。
肩と胸、そして胴回り、腰を守るように作られたそれは、洗練されたかっこよさを感じさせる。
「外側には陸竜亀の甲羅を使った。硬さだけならドラゴンのものより強い。ドラゴンのは流通が少なくてな。手に入らなかったんだ。内側は、スナラクダの皮を使ってる。これは、すぐれもんでな。寒い時は熱を封じ込め、熱い時は熱を逃がし弾く。防具の中張りとしちゃ、最高のもんだ。全身じゃないから常に適温とまではいかねぇが、ある程度ならどんな気温でももろともしねぇ。快適に、そして固く軽く。今手に入る素材で最高のもんを作った。つけてみてくれ。動きづらいところは調整すっからよ」
僕は言われてつけてみた。
つけ外しもしやすいように単純な作りだけど、うん。軽い。動きやすい。
それでいて見た目もかっこいいんだからこの上なくいいものなんだろうな。お金、大丈夫かな。
「一応、同じ素材で作ったブーツもつけておくぞ。それで、こっちは剣だが――」
そういって取り出したのは、黒い剣だった。
その輝きは、吸い込まれそうなほどに美しく思わず目を見張った。
「これは」
「わかるか? こいつはなアダマンタイトを使った剣だ。やや重いが、丈夫で固い。単純な剣の性能としてなら一級品よ。ほら、持ってみろ」
そう言われてその剣を持つと、ずしりと片手に重みを感じる。
だが、触れないほどではない。
むしろ、振っているほうが安定し楽なくらいだ。
「ガーフさん……すごい、剣です」
「そうだろう。傑作だ」
一緒に鞘を渡してくれたガーフさん。
僕は、もらった防具と剣を装備してみた。
「……かっこいい」
「ん? どうしたの? レイカさん」
「い、いえ! なんでも――」
やけに慌てている様子は珍しい。
僕は満足した装備を作ってくれたガーフさんに頭を下げた。
「ガーフさん。ありがとうございます。無理を言ってしまって」
「なにいってやがんだ。金を払ってくれるなら文句はねぇよ」
「そういえば……これってどれくらいの値段になるんですか?」
「あ? ざっと材料費だけでざっと金貨五十枚は下らねぇ」
「た、たかぁ!!」
僕は思わず叫んでいた。
っていうか金貨五十枚って、普通に豪邸が建つ金額じゃなかろうか!
一瞬で血の気が引いてしまった僕は助けを求めるようにレイカに視線を向けた。
すると、レイカは苦笑いを浮かべいる。
「ガーフさん。剣には銘はあるんですか?」
「あ? そんな偉そうなもんねぇよ。好きなように呼んでくれ」
「はい。わかりました。それで、支払いのほうですが――」
すると、ガーフさんは片手を僕らのほうに突き出していった。
「金はいらねぇ! と、目を覚まさしてくれたおめえらには言いてぇが……。それはお前らにひどく失礼だと考えている」
い、いえ!
払えって言われても払えないんですけど!?
「それだけの装備にふさわしい男だ。こんな金、払うのも簡単に出来ちまうだろうよ。だからよ、五年だ」
そう言って、掌を広げた。
「五年待ってやる。それまでに、その装備をつけたてめぇで稼いだ金を持ってこい。そんときは、もっといい装備をつくってやれるように俺も精進しておくからよ」
ガーフさんが僕をまっすぐみた。
鋭い視線。
それを真正面から受け止めたその時、彼が言いたいことが伝わってくる。
「それは……僕に期待してくれてるってことですか?」
「期待じゃねぇ、確信だ。お前はでけぇ男になる」
「そう……ですか」
ここまではっきり言われては、僕だって引けない。
大きくうなづい言葉を返した。
「ガーフさん。僕は必ず戻ってきますよ。ちゃんと、この装備にふさわしい男になって。必ず」
「ああ、待ってるぞ」
ガーフさんはそういうと、レイカに用意していたナイフを何本か渡して奥に入ってしまった。
僕はレイカに目配せをして、そっとその場から立ち去った。
「じゃあ行こうか」
「ええ。エンド様」
そういって、僕らは商店街へと向かった。
明日からの冒険にむけた準備をするために。
ガーフさんに言われて鍛冶屋にやってきた。
しっかりした武器を作るには時間が必要だってことで、今日になったのだ。
僕としては店先に並んでいるのでよかったんだけど、レイカもガーフさんも絶対にダメだと譲らなかったのだ。
外から声をかけると、なんだかやつれた気がするガーフさんがふらふらになりながら現れた。
「お、おう。エンドか。ちょっと座っててくれ。今、終わったところだ」
「うん。けど、ガーフさん、大丈夫ですか? 体調悪そうですけど」
「今日は徹夜だったからなぁ。まあ、すぐ持ってくるから。待ってろ」
ガーフさんはそういうと、奥から大きな箱を持ってくる。
僕とレイカは、近くにある椅子に座ってそれを待っていた。
「まずは防具だ。これは、言われた通り軽くて丈夫なものを選んだ。金属だと重くなるから、魔物の素材を使ってる」
「へぇ。それが、これですか」
ガーフさんが取り出したのは、深い灰色ものだった。
肩と胸、そして胴回り、腰を守るように作られたそれは、洗練されたかっこよさを感じさせる。
「外側には陸竜亀の甲羅を使った。硬さだけならドラゴンのものより強い。ドラゴンのは流通が少なくてな。手に入らなかったんだ。内側は、スナラクダの皮を使ってる。これは、すぐれもんでな。寒い時は熱を封じ込め、熱い時は熱を逃がし弾く。防具の中張りとしちゃ、最高のもんだ。全身じゃないから常に適温とまではいかねぇが、ある程度ならどんな気温でももろともしねぇ。快適に、そして固く軽く。今手に入る素材で最高のもんを作った。つけてみてくれ。動きづらいところは調整すっからよ」
僕は言われてつけてみた。
つけ外しもしやすいように単純な作りだけど、うん。軽い。動きやすい。
それでいて見た目もかっこいいんだからこの上なくいいものなんだろうな。お金、大丈夫かな。
「一応、同じ素材で作ったブーツもつけておくぞ。それで、こっちは剣だが――」
そういって取り出したのは、黒い剣だった。
その輝きは、吸い込まれそうなほどに美しく思わず目を見張った。
「これは」
「わかるか? こいつはなアダマンタイトを使った剣だ。やや重いが、丈夫で固い。単純な剣の性能としてなら一級品よ。ほら、持ってみろ」
そう言われてその剣を持つと、ずしりと片手に重みを感じる。
だが、触れないほどではない。
むしろ、振っているほうが安定し楽なくらいだ。
「ガーフさん……すごい、剣です」
「そうだろう。傑作だ」
一緒に鞘を渡してくれたガーフさん。
僕は、もらった防具と剣を装備してみた。
「……かっこいい」
「ん? どうしたの? レイカさん」
「い、いえ! なんでも――」
やけに慌てている様子は珍しい。
僕は満足した装備を作ってくれたガーフさんに頭を下げた。
「ガーフさん。ありがとうございます。無理を言ってしまって」
「なにいってやがんだ。金を払ってくれるなら文句はねぇよ」
「そういえば……これってどれくらいの値段になるんですか?」
「あ? ざっと材料費だけでざっと金貨五十枚は下らねぇ」
「た、たかぁ!!」
僕は思わず叫んでいた。
っていうか金貨五十枚って、普通に豪邸が建つ金額じゃなかろうか!
一瞬で血の気が引いてしまった僕は助けを求めるようにレイカに視線を向けた。
すると、レイカは苦笑いを浮かべいる。
「ガーフさん。剣には銘はあるんですか?」
「あ? そんな偉そうなもんねぇよ。好きなように呼んでくれ」
「はい。わかりました。それで、支払いのほうですが――」
すると、ガーフさんは片手を僕らのほうに突き出していった。
「金はいらねぇ! と、目を覚まさしてくれたおめえらには言いてぇが……。それはお前らにひどく失礼だと考えている」
い、いえ!
払えって言われても払えないんですけど!?
「それだけの装備にふさわしい男だ。こんな金、払うのも簡単に出来ちまうだろうよ。だからよ、五年だ」
そう言って、掌を広げた。
「五年待ってやる。それまでに、その装備をつけたてめぇで稼いだ金を持ってこい。そんときは、もっといい装備をつくってやれるように俺も精進しておくからよ」
ガーフさんが僕をまっすぐみた。
鋭い視線。
それを真正面から受け止めたその時、彼が言いたいことが伝わってくる。
「それは……僕に期待してくれてるってことですか?」
「期待じゃねぇ、確信だ。お前はでけぇ男になる」
「そう……ですか」
ここまではっきり言われては、僕だって引けない。
大きくうなづい言葉を返した。
「ガーフさん。僕は必ず戻ってきますよ。ちゃんと、この装備にふさわしい男になって。必ず」
「ああ、待ってるぞ」
ガーフさんはそういうと、レイカに用意していたナイフを何本か渡して奥に入ってしまった。
僕はレイカに目配せをして、そっとその場から立ち去った。
「じゃあ行こうか」
「ええ。エンド様」
そういって、僕らは商店街へと向かった。
明日からの冒険にむけた準備をするために。
0
あなたにおすすめの小説
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【土壌改良】で死の荒野がSランク農園に!食べただけでレベルアップする野菜で、世界最強ギルド設立
黒崎隼人
ファンタジー
「え? これ、ただのトマトですよ?」
「いいえ、それは食べただけで魔力が全回復する『神の果実』です!」
ブラック企業で働き詰めだった青年は、異世界の名門貴族の三男・ノアとして転生する。
しかし、授かったスキルは【土壌改良】という地味なもの。
「攻撃魔法も使えない役立たず」と罵られ、魔物すら寄り付かない死の荒野へ追放されてしまう。
だが、彼らは知らなかった。
ノアのスキルは、現代の農業知識と合わせることで、荒れ果てた土地を「Sランク食材」が溢れる楽園に変えるチート能力だったことを!
伝説の魔獣(もふもふ)をキュウリ一本で手懐け、行き倒れた天才エルフを極上スープで救い出し、気づけば荒野には巨大な「農業ギルド」が誕生していた。
これは、本人がただ美味しい野菜を作ってのんびり暮らしたいだけなのに、周囲からは「世界を救う大賢者」と崇められてしまう、無自覚・最強の農業ファンタジー!
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる