平凡な魔女は「愛」を捨てるのが仕事です

魔法も、モンスターも、ポーションもある世界。

ある田舎の町のはずれには、小さな家がある。
ある人は普通の人が住んでいると言い、ある人は魔女が住んでいると言った。

魔女とは、呪いを専門とする者もいれば、薬師のような者もいる。つまり、魔女といっても専門とするものが大きく違っていた。そして、誰もが特出した能力をもっていた。

魔法の能力が飛び抜けている魔女、治癒の能力で聖女と呼ばれた魔女、呪いの能力で災厄と呼ばれた魔女もいる。誰も彼もが、類まれな力で良くも悪くも人に必要とされていた。

「でも、私の能力って必要?」
 小さな家で、ひとりの魔女が呟く。田舎町のはずれに住んでいる魔女だ。
 しかし、彼女は魔女のわりに魔女っぽくなかった。

 なんというか……平凡な容姿だった。魔女は美人という鉄則を覆しているのが、彼女だった。まあ、そんなことはどうでもいい。

「はあ、【『愛』を結晶化させる】能力なんて誰が必要とするんだろ」

 そう嘆きながら、今日も薬作りにいそしむ。
 今まで、かろうじて必要とされてきたのは薬の調合だった。彼女の能力が、人生で役に立ったことなど一度たりともなかった。


 

 そう、だから、こんな能力が必要とされるなんて思いもしなかった。
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