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素っ気ない彼氏
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最近彼氏が素っ気ない。最初は気のせいかと思っていたけど明らかにおかしい。これが世間で言う倦怠期なのかとショックを受けた。まさか自分たちがそうなるとはついこの間までは思ってもいなかったからだ。
『会うのを我慢してみましょう』
倦怠期を抜け出したくて見つけた記事にはそう書いてあった。正直、我慢したくない。でも、それがもしかしたら改善に繋がるかもしれない。そう信じて距離を置くことにした。
思い立ったらすぐ実行。
朝の登校のことなんだけど、別々に行かない?
彼氏にメールを送る。
わかった
意外にも早く来た返信は簡潔で拍子抜けしてしまった。いつも一緒に登校するのを楽しみにしてたのは自分だけだったんだなぁと悲しくなってしまう。そんな自分に、やると決めたんだからと叱責しながら電源を落とした。
「もうやめたい……」
「それさっきも聞いた」
我慢し続けて2週間。友人がうんざりした様子でそう返した。ほとんど会ってないのに関わらず彼氏からのメールは来ず、期待してたこともあってほぼ意地のように避け続けて今に至っている。改善どころか自然消滅してしまいそうで怖い。
「なんで彼氏冷たくなったの?」
「わかんない」
「わかんないって…」
「倦怠期かも」
「でも結構付き合って長いじゃん。今更?」
たしかに。3ヶ月くらいからが多いって聞いたけどそんなことはなかった。ほんと急に素っ気なくなったのだ。
「もしかしたらだけど他に好きな人出来たんじゃない…?」
「え…」
「だって、急にそんな態度になるのはおかしいよ」
他に好きな人が…。思いつきもしなかった言葉によほどひどい顔をしていたのだろう。友人が慌てて言い直した。
「ごめん。知り合いにそういう子がいたから、ほんとごめん!」
「ううん!そういうこと考えてなかったから知れてよかった」
倦怠期ではなく他に好きな人ができることもあるんだ…。
「付き合ってても他に好きな人ができたら別れるしかないよね」
そう友人に言った。しかし、友人からの答えが帰って来ず不審に思って顔を見ると私の後ろ、つまり教室のドアを驚いた様子で見つめていた。嫌な予感がして振り返ると彼氏が立っていた。
「迎えにきたよ」
以前と変わらない笑顔で、優しい声音で私を呼んだ。それが懐かしくて嬉しかった私は先程の自分の発言も忘れて椅子から立ち上がった。
「ごめん!呼ばれたから先帰るね!」
「あっ…うん」
「また明日!」
友達の返事を待てないまま鞄を手に扉に向かった。
「わざわざ来てくれてありがとう」
「んーん。ちょっと一緒に寄りたいとこあって」
「いいよ。どこいくの?」
「着くまで内緒~」
彼は私の手を引いて歩き出した。自分の家とは反対方向で、どんどんすれ違う人が少なくなっていく。最初は他愛ない話を振っていたけど彼は生返事でそれに応えた。
「ねぇ、どこいくの…?」
「…」
さすがにおかしいと思い、そう言っても彼は黙ったままだった。
「痛いっ…」
彼と繋ぐ手が逃がさないとばかりに強くなる。引きずられるように着いた先は暗い裏路地。
「なんで俺のこと避けたの」
「え…」
メールもされなかったからそのことを言われると思わなくて言葉に詰まる。そんな私を見て彼の顔は歪んだ。
「やっぱり他に好きな人ができたからなんだ」
他に好きな人ができた…?私が?
「他に好きな人なんてっ…ァ」
他に好きな人なんていない、そう伝えようとした。しかし、それは叶わなかった。彼の大きい手が包み込むように私の首を絞めたからだ。
「なんで俺以外を好きになったの」
彼の目は私を見てるようで見ていなかった。その濁った目は自分のしていることも分かっていないようだった。それでも彼の手はきりきりと首を締めつけていく。
「俺のどこがダメだったの、なんでなんでなんで…!!」
違うと言う声も小さくて聞こえなかったのか、彼が気づかなかったのか、絞める手の強さと苦しさは増すばかり。
「あはっ」
彼は泣きながら笑ってた。酸素不足だからか霧のように意識は曇っていった。私はもう対抗する力もなかった。
「愛してる」
意識が途絶える瞬間そう聞こえた気がした。
【首絞めエンド】
『会うのを我慢してみましょう』
倦怠期を抜け出したくて見つけた記事にはそう書いてあった。正直、我慢したくない。でも、それがもしかしたら改善に繋がるかもしれない。そう信じて距離を置くことにした。
思い立ったらすぐ実行。
朝の登校のことなんだけど、別々に行かない?
彼氏にメールを送る。
わかった
意外にも早く来た返信は簡潔で拍子抜けしてしまった。いつも一緒に登校するのを楽しみにしてたのは自分だけだったんだなぁと悲しくなってしまう。そんな自分に、やると決めたんだからと叱責しながら電源を落とした。
「もうやめたい……」
「それさっきも聞いた」
我慢し続けて2週間。友人がうんざりした様子でそう返した。ほとんど会ってないのに関わらず彼氏からのメールは来ず、期待してたこともあってほぼ意地のように避け続けて今に至っている。改善どころか自然消滅してしまいそうで怖い。
「なんで彼氏冷たくなったの?」
「わかんない」
「わかんないって…」
「倦怠期かも」
「でも結構付き合って長いじゃん。今更?」
たしかに。3ヶ月くらいからが多いって聞いたけどそんなことはなかった。ほんと急に素っ気なくなったのだ。
「もしかしたらだけど他に好きな人出来たんじゃない…?」
「え…」
「だって、急にそんな態度になるのはおかしいよ」
他に好きな人が…。思いつきもしなかった言葉によほどひどい顔をしていたのだろう。友人が慌てて言い直した。
「ごめん。知り合いにそういう子がいたから、ほんとごめん!」
「ううん!そういうこと考えてなかったから知れてよかった」
倦怠期ではなく他に好きな人ができることもあるんだ…。
「付き合ってても他に好きな人ができたら別れるしかないよね」
そう友人に言った。しかし、友人からの答えが帰って来ず不審に思って顔を見ると私の後ろ、つまり教室のドアを驚いた様子で見つめていた。嫌な予感がして振り返ると彼氏が立っていた。
「迎えにきたよ」
以前と変わらない笑顔で、優しい声音で私を呼んだ。それが懐かしくて嬉しかった私は先程の自分の発言も忘れて椅子から立ち上がった。
「ごめん!呼ばれたから先帰るね!」
「あっ…うん」
「また明日!」
友達の返事を待てないまま鞄を手に扉に向かった。
「わざわざ来てくれてありがとう」
「んーん。ちょっと一緒に寄りたいとこあって」
「いいよ。どこいくの?」
「着くまで内緒~」
彼は私の手を引いて歩き出した。自分の家とは反対方向で、どんどんすれ違う人が少なくなっていく。最初は他愛ない話を振っていたけど彼は生返事でそれに応えた。
「ねぇ、どこいくの…?」
「…」
さすがにおかしいと思い、そう言っても彼は黙ったままだった。
「痛いっ…」
彼と繋ぐ手が逃がさないとばかりに強くなる。引きずられるように着いた先は暗い裏路地。
「なんで俺のこと避けたの」
「え…」
メールもされなかったからそのことを言われると思わなくて言葉に詰まる。そんな私を見て彼の顔は歪んだ。
「やっぱり他に好きな人ができたからなんだ」
他に好きな人ができた…?私が?
「他に好きな人なんてっ…ァ」
他に好きな人なんていない、そう伝えようとした。しかし、それは叶わなかった。彼の大きい手が包み込むように私の首を絞めたからだ。
「なんで俺以外を好きになったの」
彼の目は私を見てるようで見ていなかった。その濁った目は自分のしていることも分かっていないようだった。それでも彼の手はきりきりと首を締めつけていく。
「俺のどこがダメだったの、なんでなんでなんで…!!」
違うと言う声も小さくて聞こえなかったのか、彼が気づかなかったのか、絞める手の強さと苦しさは増すばかり。
「あはっ」
彼は泣きながら笑ってた。酸素不足だからか霧のように意識は曇っていった。私はもう対抗する力もなかった。
「愛してる」
意識が途絶える瞬間そう聞こえた気がした。
【首絞めエンド】
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