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第十章 俺様、暗黒破壊神と対峙する
2、進むか、戻るか今ここで決めろ
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偽女神のことは他のメンバーにはまだ伝えていないのだが、特に疑うこともなく全員反射の腕輪を発動させてくれた。
「これなら封印の鈴を使わずに戦えますね」とはエミーリオの言葉。
皆、これで戦闘の幅が広がると喜んでいる。
やはり、敵だけじゃなく自分のスキルも封じられる封印の鈴は使いたくなかったようだ。
下層のモンスター相手ならスキルを封じられたところで渡り合えるが、ミノタウロスのような膂力で負けてる奴が相手だとキツい戦いになるから当然か。
中層を進むことしばし。
中層ボスのバジリスクはリポップ地点が近いからか何度かぶつかったが、まだミノタウロスとは遭遇していない。
最深層から上がってくるからかな?
『そういえば、豚が来ないな』
「オークキングのことか?」
バジリスク以外のモンスターと遭遇しないのだ。
階層ボスしか出現しないというのは入ってからずっとだったが、それも俺たちを撃退するためだというのなら、浅層ボスであるオークキングが追いかけてきてもいいはずなのだが。
俺たちの行軍速度に追いついてないとか?
「オークキングなら、ダンジョンの外に出てきたとかで今騎士たちが食い止めてるよ」
「何だと?!」
1号の言葉に、階層ボスが定位置にいない理由を知る。
ここで1号が嘘を言う理由などないから、これは通信役としておっとり国王の所に残った4号からの情報だろう。
つまり、階層ボスたちは俺たちを撃退するつもりではなく、初めから外へ出るつもりで上がってきていたのだ。
「そ、それで、騎士たちは!?」
「落ち着けよ、ジルベルタ。今のところ重傷者なしで撃退できてるってさ」
1号の言葉にホッと息を吐くジルベルタ。
初めは身勝手女の印象だったが、副団長だけあってちゃんと仲間思いなのな。
オークキングが外に出てくるのは2回目だということで、今は戦いつつ防壁の建築を急いでいるらしい。
「バジリスクが出てきたらさすがに軽傷じゃ済まないだろうが……かと言って、今から外の防衛のためにこの中の誰かが戻るってわけにはいかないだろう?」
「ああ」
『無論だ』
バジリスクが出てきたら、という言葉に一瞬ジルベルタとエミーリオが焦りを見せるが、かといって二人ともかなりの覚悟を持ってここにいるわけだ。
仮に帰れと言っても聞かないだろう。
「なら、少しは外にいる連中の力を信じることだな」
「そう、だな……」
「急ぎましょう。少しでも早く、みなさまのもとへ戻りますわよ」
ルシアちゃんの言葉に、全員頷く。
バジリスクなら、軽傷じゃ済まないだろうが撃退できると1号は言う。
なら、ミノタウロスは? 奴が取り込んでいた黒水晶は俺が回収したから、流石にもう黒モンスター化はしていないだろうが、レガメメンバーでも苦戦した相手だ。
バジリスク戦で重傷を負った騎士たちの前にミノタウロスが現れたら……。
「早く暗黒破壊神に追いついて、ミノタウロスも食い止める、か」
「なかなかの難題だな」
アルベルトの言葉に、バルトヴィーノが言う。
しかし、難題と言いつつもその顔は笑っていた。やってやる、という覚悟の顔だろうか。
『それは違うぞ、バルトヴィーノ。暗黒破壊神を倒し、最奥まで行きコアを破壊する。そうせねば何度だってミノタウロスが外へ出てこようとするぞ』
「最奥……」
「歴代の聖女やその護衛が何度も辿り着きながら、未だ破壊に至っていないことを、俺たちが……」
お、レガメメンバーの闘志に火が付いたようだ。
『征くぞ! 最凶ダンジョンを終わらせに!』
「「「おお!」」」
え? 目的変わってないかって?
良いんだよ、やること一緒なんだから。
俺の推測では、コアを倒そうとした時こそ偽女神が出てくる。
俺の目的は暗黒破壊神と偽女神を倒すこと。だから問題ない。
しかし……。
チラ、とルシアちゃんと1号を見る。
俺の考えが伝わったのか、頷いてくれた。
「と、その前に良いか?」
「何だよ、怖じ気づいたのか? 行くって言ったばかりなのに」
1号が進み始めようとしたアルベルト達にストップをかける。
やる気になってた空気をぶち壊したものだから、ドナートが苦笑する。
が、戻るかどうかの話をした今だからこそ、これを言わねばならないだろう。
俺から話そうと思っていたのだが、口を開いたのは1号だった。
「このダンジョンの最奥、恐らくコアを守っているだろう存在について、だ」
いつものおどけた態度ではなく、真剣な口調の1号に一同はごくりと喉を鳴らす。
全員が話を聞く姿勢になったのを確認し、1号は言葉を紡ぐ。
「暗黒破壊神など話にならない強敵が、そこにいる」
「それは、いったいどこからの情報です?」
「暗黒破壊神と、この世界の外界を管理する神からだ」
「女神様から?」
エミーリオからの横やりにも怒らず、1号は答える。
神と聞いてすぐに女神を連想するのは、この世界の宗教が女神のみを信仰する一神教だからだろう。
「暗黒破壊神……アミールから、共闘を持ち掛けられたのは覚えているだろう?」
「まさか……女神様と戦うつもりですか?」
「我らの敵は暗黒破壊神であって、女神様ではないぞ」
あー、うん、そうなるよねぇ。
早とちりして喚きだす安定のジルベルタをスルーして、1号が本題を切り出す。
「その女神様が偽物なんだ」
「……どういうことだ?」
アルベルトが騒ぐ全員を黙らせ、話の続きを促した。
1号が、俺とルシアちゃんにしてくれたのと同じ話を全員にする。
偽女神の正体。その残虐性。世界のこと。精霊のこと。偽女神がしかけたゲームのこと。
「というわけで、今のところ偽女神は俺たちの敵ではないが味方でもない。だが、リージェもルシアちゃんも偽女神の所業を止めたいと思っている。最終的に、このダンジョンの最奥にいるであろう偽女神とは戦うことになるだろう」
『偽女神と戦いたくない、或いはこの話が信じられないという者はここで帰れ』
俺の言葉に、迷うかのように全員が顔を見合わせた。
今なら戻ったところで、バジリスクやミノタウロスから街を守るという大義名分がある。
偽女神が敵だとわかっていて進むのと、偽女神が味方だと思って進むのではいざ対峙したときの反応が違う。
いきなり攻撃される可能性だってあるんだ。
さぁ、どうする?
「これなら封印の鈴を使わずに戦えますね」とはエミーリオの言葉。
皆、これで戦闘の幅が広がると喜んでいる。
やはり、敵だけじゃなく自分のスキルも封じられる封印の鈴は使いたくなかったようだ。
下層のモンスター相手ならスキルを封じられたところで渡り合えるが、ミノタウロスのような膂力で負けてる奴が相手だとキツい戦いになるから当然か。
中層を進むことしばし。
中層ボスのバジリスクはリポップ地点が近いからか何度かぶつかったが、まだミノタウロスとは遭遇していない。
最深層から上がってくるからかな?
『そういえば、豚が来ないな』
「オークキングのことか?」
バジリスク以外のモンスターと遭遇しないのだ。
階層ボスしか出現しないというのは入ってからずっとだったが、それも俺たちを撃退するためだというのなら、浅層ボスであるオークキングが追いかけてきてもいいはずなのだが。
俺たちの行軍速度に追いついてないとか?
「オークキングなら、ダンジョンの外に出てきたとかで今騎士たちが食い止めてるよ」
「何だと?!」
1号の言葉に、階層ボスが定位置にいない理由を知る。
ここで1号が嘘を言う理由などないから、これは通信役としておっとり国王の所に残った4号からの情報だろう。
つまり、階層ボスたちは俺たちを撃退するつもりではなく、初めから外へ出るつもりで上がってきていたのだ。
「そ、それで、騎士たちは!?」
「落ち着けよ、ジルベルタ。今のところ重傷者なしで撃退できてるってさ」
1号の言葉にホッと息を吐くジルベルタ。
初めは身勝手女の印象だったが、副団長だけあってちゃんと仲間思いなのな。
オークキングが外に出てくるのは2回目だということで、今は戦いつつ防壁の建築を急いでいるらしい。
「バジリスクが出てきたらさすがに軽傷じゃ済まないだろうが……かと言って、今から外の防衛のためにこの中の誰かが戻るってわけにはいかないだろう?」
「ああ」
『無論だ』
バジリスクが出てきたら、という言葉に一瞬ジルベルタとエミーリオが焦りを見せるが、かといって二人ともかなりの覚悟を持ってここにいるわけだ。
仮に帰れと言っても聞かないだろう。
「なら、少しは外にいる連中の力を信じることだな」
「そう、だな……」
「急ぎましょう。少しでも早く、みなさまのもとへ戻りますわよ」
ルシアちゃんの言葉に、全員頷く。
バジリスクなら、軽傷じゃ済まないだろうが撃退できると1号は言う。
なら、ミノタウロスは? 奴が取り込んでいた黒水晶は俺が回収したから、流石にもう黒モンスター化はしていないだろうが、レガメメンバーでも苦戦した相手だ。
バジリスク戦で重傷を負った騎士たちの前にミノタウロスが現れたら……。
「早く暗黒破壊神に追いついて、ミノタウロスも食い止める、か」
「なかなかの難題だな」
アルベルトの言葉に、バルトヴィーノが言う。
しかし、難題と言いつつもその顔は笑っていた。やってやる、という覚悟の顔だろうか。
『それは違うぞ、バルトヴィーノ。暗黒破壊神を倒し、最奥まで行きコアを破壊する。そうせねば何度だってミノタウロスが外へ出てこようとするぞ』
「最奥……」
「歴代の聖女やその護衛が何度も辿り着きながら、未だ破壊に至っていないことを、俺たちが……」
お、レガメメンバーの闘志に火が付いたようだ。
『征くぞ! 最凶ダンジョンを終わらせに!』
「「「おお!」」」
え? 目的変わってないかって?
良いんだよ、やること一緒なんだから。
俺の推測では、コアを倒そうとした時こそ偽女神が出てくる。
俺の目的は暗黒破壊神と偽女神を倒すこと。だから問題ない。
しかし……。
チラ、とルシアちゃんと1号を見る。
俺の考えが伝わったのか、頷いてくれた。
「と、その前に良いか?」
「何だよ、怖じ気づいたのか? 行くって言ったばかりなのに」
1号が進み始めようとしたアルベルト達にストップをかける。
やる気になってた空気をぶち壊したものだから、ドナートが苦笑する。
が、戻るかどうかの話をした今だからこそ、これを言わねばならないだろう。
俺から話そうと思っていたのだが、口を開いたのは1号だった。
「このダンジョンの最奥、恐らくコアを守っているだろう存在について、だ」
いつものおどけた態度ではなく、真剣な口調の1号に一同はごくりと喉を鳴らす。
全員が話を聞く姿勢になったのを確認し、1号は言葉を紡ぐ。
「暗黒破壊神など話にならない強敵が、そこにいる」
「それは、いったいどこからの情報です?」
「暗黒破壊神と、この世界の外界を管理する神からだ」
「女神様から?」
エミーリオからの横やりにも怒らず、1号は答える。
神と聞いてすぐに女神を連想するのは、この世界の宗教が女神のみを信仰する一神教だからだろう。
「暗黒破壊神……アミールから、共闘を持ち掛けられたのは覚えているだろう?」
「まさか……女神様と戦うつもりですか?」
「我らの敵は暗黒破壊神であって、女神様ではないぞ」
あー、うん、そうなるよねぇ。
早とちりして喚きだす安定のジルベルタをスルーして、1号が本題を切り出す。
「その女神様が偽物なんだ」
「……どういうことだ?」
アルベルトが騒ぐ全員を黙らせ、話の続きを促した。
1号が、俺とルシアちゃんにしてくれたのと同じ話を全員にする。
偽女神の正体。その残虐性。世界のこと。精霊のこと。偽女神がしかけたゲームのこと。
「というわけで、今のところ偽女神は俺たちの敵ではないが味方でもない。だが、リージェもルシアちゃんも偽女神の所業を止めたいと思っている。最終的に、このダンジョンの最奥にいるであろう偽女神とは戦うことになるだろう」
『偽女神と戦いたくない、或いはこの話が信じられないという者はここで帰れ』
俺の言葉に、迷うかのように全員が顔を見合わせた。
今なら戻ったところで、バジリスクやミノタウロスから街を守るという大義名分がある。
偽女神が敵だとわかっていて進むのと、偽女神が味方だと思って進むのではいざ対峙したときの反応が違う。
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