中二病ドラゴンさんは暗黒破壊神になりたい

禎祥

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第九章 俺様、ダンジョンに潜る

20、大怪獣決戦再び

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 輜重部隊を返し行軍速度を速めた俺達は、17階層まで一気に降りた。
 その間ルシアちゃんとベルナルド先生は俺の背に乗せ、アイテム作りに挑戦してもらった。
 1号の提案であるマジックバックや破壊不能武器を、輜重部隊に大見得を切った手前早々に作ってしまおうというのだ。

 で、それっぽいものを作り出すことはできた。
 できたのだが、ルシアちゃんが作ったマジックバックは容量が小さく、必要最低限残して行ってもらった野営道具を入れたらいっぱいになってしまった。
 ベルナルド先生にはチェーザーレ用の壊れない大盾を作ってもらったのだが、こちらもやはりその権能には限界があった。
 鑑定してみると「どのような攻撃にも耐える」という点では破壊不能の権能を有しているのだが、耐久回数がありその回数に達すると壊れるらしい。
 試作品の耐久回数は925回だった。これはベルナルド先生のMP値と等しい。

 作り出すアイテムに求める能力が高すぎるのか、二人のMPを全て費やしたにも関わらずこの出来であった。
 イメージと違う、とルシアちゃんには不満なようだが、これでも十分凄いと思うけどな。
 マジックバックは必要に応じて作れば良いし、武具も900回以上攻撃を防ぐなら何とか最下層まで間に合うのじゃないだろうか。
 まぁ、予備が作れるならあったほうが良いのだろうが。

「1号様の仰った通りのものができないのは、私のイメージが及んでいないということでしょうか……」
『いや、その腕輪がレプリカだからであろう。鑑定結果でも作り出せる物には限度があるとあったではないか』

 落ち込んだ様子のルシアちゃんに声をかける。
 MP切れで体力も限界だろうに、今度こそは、と1号に作る必要のあるものの詳細を聞きイメージを膨らませようとしている。
 ベルナルド先生もまた大盾を作り出した段階でMP切れしたので眠ってもらった。
 回復には睡眠が一番だからな。

 大盾はチェーザーレが今使っているものよりも軽いらしい。
 軽くて丈夫だなんて最高じゃないか、と珍しく感情を表に出して喜んでいた。
 二人が回復し次第、マジックバックをあと二つ、破壊不能武具を全員分最終決戦までに用意してもらうつもりだ。



「お、黒モンスター発見」
『どこだ?』
「この先のフロア。バジリスクとオークキングに足止めされてるっぽい」
『オークキング……またいるのか』

 1号が嬉しい報せを。
 だが、倒した奴が何度も現れるのは正直いってめんどくさい。
 おまけに、下層から強敵なのが上がってきているとか意味わからん。
 階層ボスなんだから階層に留まってろよ。
 アルベルトの推測ではダンジョンが広がり、浅層に該当する階層が増えているのではないかと。
 そして、中層の階層ボスが浅層まで上がってきている分、深層や最深層の階層ボスも登ってくるのではないか、と。

「まぁ、実際に遭遇してみないとわからないけどな」
「いや、可能性はあるんじゃないか?」

 アルベルトの仮説を1号が肯定する。

「雑魚モンスターとか、複雑な経路とか、ダンジョンを構築するリソースを削ってでも強敵を何度も俺らにぶつけて消耗を狙ってるんじゃないかと俺は思うぞ」

 1号の言う通りかもしれない。
 実際、14階層から今いる17階層まで一気に降りてこれたのは、部屋数が少なく雑魚敵もいなかったからだ。
 ほぼ一本道で、足止めを喰らうこともなく降りてこられた。
 その分、階層ボスの復活を早められるのかもしれない。

「どうする、リージェ?」
『うむ、俺様が行ってチャチャっとスキルで一掃してくる』

 アルベルトが意見を聞いてくる。
 というのも、今日はもうこの辺りで野営にしようとしていたからだ。
 俺が行って戻ってくるから、先に野営をしていてくれという提案はあっさり承認された。

 黒モンスター相手にも肉弾戦が通用するか試したかったが、今はベルナルド先生とルシアちゃんが動けないからな。
 偽女神戦を想定してこのまま全員で突っ込んで封印の鈴を鳴らすのもアリだが、身動きできない二人を守りながらというのはさすがに危険だ。
 チェーザーレが盾の性能を試してみたいと言ってきたので、他のメンバーに二人を託してチェーザーレを乗せて轟音のするフロアを覗き込んだ。



 大怪獣決戦再び。
 そこには、巨大な豚と蜥蜴が巨大な黒サイに襲い掛かっていた。
 控えめに見ても黒サイの方が強そうなのだが、二対一では攻めあぐねているようだ。

 巨体を活かした突進はオークキングの棍棒にあっけなく止められ。
 角が棍棒に突き刺さり動きが停まったところに蜥蜴が毒々しい色の唾を吐きかける。
 それは強酸のようで、浴びた黒サイの表皮が音を立てて溶け崩れ血が噴き出す。

 しかし、それも数秒のこと。
 サイは刺さった棍棒ごとオークを振り回して蜥蜴にぶつける。
 棍棒が角から抜けた、と思った頃には酸による傷は完全に塞がっていた。

 ふむ、サイは頑強な身体を活かしての突進と角での突き刺し、そして高い回復能力が武器。
 蜥蜴は先ほどの強酸の他、素早い舌による強力な殴打、そして透明化による不意打ちが武器。
 加えて豚の強靭な膂力による打撃とのコンビネーションか。

『あの蜥蜴は初めて見るな』
「出る時は暗黒破壊神の欠片によって竜に変化していたからな」

 階層ボスってあんなのだっけ、と首を傾げているとチェーザーレが教えてくれた。
 そういや、竜いたな。強酸吐く奴。
 言われてみれば確かに特徴は一致しているか。
 あの時は壁や床まで溶けていたけれど、今はそこまでの威力はないようだ。
 触れなければ大丈夫だろう。

「リージェは黒モンスターが良いんだろう?」
『当然だ』
「なら、俺は残りの二匹の注意をひく」

 階層ボスを相手にしていて、黒モンスターに先へ行かれてしまっては暗黒破壊神が強化されてしまう。
 二匹を妨害し続けるから、黒モンスターを早めに倒して階層ボス達を倒してくれというのがチェーザーレからのオーダー。
 スキル使うなら俺だけでも、と思ったけど、盾の性能を試すんだったなと思い出し、その作戦で了承した。
 行くぞ、と小声で合図し、俺達は同時に三匹が激戦を繰り広げるフロアへと足を踏み入れた。
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