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第九章 俺様、ダンジョンに潜る
18、問題は俺か
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封印の鈴の効果が切れるまでの間、それぞれスキルに頼らずにどの程度身体を動かせるか確かめることになった。
偽女神の能力がチート級である以上、封印の鈴を使うことは絶対になる。
意外なことに、ベルナルド先生は剣の腕前もそこそこだということが判明した。
「詠唱中に接近されることもあるからね」
「うぅ、本職でない相手にここまで苦戦するとは……自信失くします」
先生が使う予備武器は片手剣より少し短めの剣。
それから投げナイフや粉状の毒が入った筒などがマントの下に隠れていた。
ここ1年近く一緒に行動していて俺がそれを知らなかったのは、レガメの連携が良くベルナルド先生が近接戦をする必要がなかったからだろう。
エミーリオと組手をしたところ、エミーリオが辛勝するほどの腕前だった。
問題は、俺か。
誰も相手をしてくれないから壁を相手に尻尾を打ち付けたりタックルしてみたり、勢いよく引っ掻き攻撃をしようとして爪をおっかいたり。
尻尾は変な方向に折れて肩を脱臼して1号に盛大に笑われた。
「創世の腕輪で、反射の腕輪を量産してみました」
封印の鈴の効果が切れてすぐ、ルシアちゃんが創世の腕輪の効果を検証した。
何を創り出すか思いつかなかったため反射の腕輪が人数分あると良いなぁと思ったらできたらしい。
さすがルシアちゃん。得意げに微笑んでるのも可愛い。
「これはリージェ様に」
『うむ、助かる』
なんと、俺の足サイズで作ってくれたらしい。
跪いて俺の左前足につけてくれた。少し照れくさい。
で、全員装着して判明したこと。これつけると念話が通じない。
あと、回復魔法も通じない。回復・支援系魔法かける時は外す必要があるとわかった。
戦闘中に俺からルシアちゃん達に話しかけることはあまりないと思うが、念のため「避けろ」「防御」「結界」「治癒」のハンドサインならぬ尻尾サインと鳴き声を決めた。
全員が反射の腕輪をつけたことで、こちらの動きは女神の未来予知の効果から外れたはずだ。
これで向こうも俺達がどう動くか見えないはず。
予想だらけで不安だが、実際偽女神と戦ったことのある奴なんか歴史上にもいないんだから仕方ない。
「じゃあ、次は実戦を想定してオークキングと戦ってみよう」
偽女神がどんな戦闘力か知らないが、オークキングよりは弱いってことはないだろう。
スキルなしのガチンコバトルでオークキングに苦戦するようじゃ話にならない。
壁のバリケードを解除して通路に出ると、索敵を使った。
幸い13階層に上がる階段の手前でオークキングは見つかった。
いくらも戻らないうちに見つけられたのは、まさに行幸と言えよう。
「ブモォォォォオオオオオッ!!」
「行きます」
オークキングもまた俺達に気付くと、雄叫びを上げ地響きを立てながらこちらに突進をしてくる。
騎士達が盾となる背後で、ルシアちゃんが手筈通りに銀色の鈴を鳴らした。
チリィィィン、と低音の、けれど心地よい音が響く。
それはオークキングの持つ巨大な棍棒が騎士達に接触する寸前で。
数名は吹き飛ばされるのを覚悟していたが、オークキングはピタリと動きを止めた。
振り上げていた棍棒をそっと下ろし、円らな瞳で直立している。
「……お、大人しくなった……」
ルシアちゃんが鳴らしたのは、封印の鈴ではなく和魂の鈴。
精霊を鎮めるという説明だったが、どうやらモンスターにも効果があるらしい。
その効果に、騎士達が呆気に取られている。
『封印の鈴を使うのではなかったのか?』
「あ、す、すみません。もう一方の鈴の効果も試してみたくて……」
『そうか、だが、相談してからやってくれ』
打ち合わせと違う行動をしたルシアちゃんに問い質すために腕輪を外す。
追求されたルシアちゃんは、申し訳なさそうにする。
今回は結果オーライだったから良いけど、戦闘時は何が起きるかわからないんだからね。
「それより、こいつどうするんだ?」
1号の言葉に待機状態だったオークキングの存在を思い出す。
オークキングはそのままの位置で大人しくしていた。
『戦意がなくともモンスターには違いあるまい。対偽女神戦のための犠牲となってもらう』
「モンスター相手とはいえ、無抵抗の相手を殴るってのは気分が良いもんじゃないな」
バルトヴィーノは文句を言いつつも剣を抜く。
騎士達も躊躇いがちに武器を構えた。
ルシアちゃんに合図を送ると、今度こそ金色の鈴を鳴らす。
「さて、スキルなしでどこまで通じるか、試させてもらう!」
直立不動で円らな瞳でこちらを見つめているオークキングに、ジルベルタが先陣を切る。
女性とは思えない勢いの乗った切先がオークキングの左肩に食い込んだ。
途端。
「ブルォオオオオオオオ!!」
悲鳴のような鳴き声を上げ、オークキングの瞳が紅く輝いた。
血走った眼で鼻息も荒く、殺意を向けたジルベルタに棍棒を振り上げる。
「なるほど、攻撃を喰らうと和魂の鈴の効果は切れるのか」
あまり乗り気じゃなかったバルトヴィーノ達も、ジルベルタをフォローするように攻撃を仕掛ける。
一撃を入れては退避、別の者が攻撃と入れ替わり立ち代わり斬りつけていく。
ルシアちゃんとベルナルド先生はスキルが使えないため後方で怪我人の手当てだ。
「ブモォォォォオ!」
スキルなしだと決め手にかけるらしく、なかなかオークキングを倒せない。
斬りつけても傷が浅いのだ。
ただし、相手もまたスキルが使えないため、こちらへのダメージも軽い。
騎士達の膂力でも十分対処可能だ。
「後ろから!?」
「仲間を呼んだぞ!」
先ほどの雄叫びは、このフロア内にいるオーク達を呼び寄せるものだったらしい。
通路の後方から、前方から、左右からとオーク達がわらわらと集まってきた。
一匹一匹は大したことがないが、いかんせん数が多い。
ジルベルタの指揮の下、騎士達が隊列を組み三人一組でオークに当たる。
さて、俺もそろそろ腕試しで参戦しますかね。
偽女神の能力がチート級である以上、封印の鈴を使うことは絶対になる。
意外なことに、ベルナルド先生は剣の腕前もそこそこだということが判明した。
「詠唱中に接近されることもあるからね」
「うぅ、本職でない相手にここまで苦戦するとは……自信失くします」
先生が使う予備武器は片手剣より少し短めの剣。
それから投げナイフや粉状の毒が入った筒などがマントの下に隠れていた。
ここ1年近く一緒に行動していて俺がそれを知らなかったのは、レガメの連携が良くベルナルド先生が近接戦をする必要がなかったからだろう。
エミーリオと組手をしたところ、エミーリオが辛勝するほどの腕前だった。
問題は、俺か。
誰も相手をしてくれないから壁を相手に尻尾を打ち付けたりタックルしてみたり、勢いよく引っ掻き攻撃をしようとして爪をおっかいたり。
尻尾は変な方向に折れて肩を脱臼して1号に盛大に笑われた。
「創世の腕輪で、反射の腕輪を量産してみました」
封印の鈴の効果が切れてすぐ、ルシアちゃんが創世の腕輪の効果を検証した。
何を創り出すか思いつかなかったため反射の腕輪が人数分あると良いなぁと思ったらできたらしい。
さすがルシアちゃん。得意げに微笑んでるのも可愛い。
「これはリージェ様に」
『うむ、助かる』
なんと、俺の足サイズで作ってくれたらしい。
跪いて俺の左前足につけてくれた。少し照れくさい。
で、全員装着して判明したこと。これつけると念話が通じない。
あと、回復魔法も通じない。回復・支援系魔法かける時は外す必要があるとわかった。
戦闘中に俺からルシアちゃん達に話しかけることはあまりないと思うが、念のため「避けろ」「防御」「結界」「治癒」のハンドサインならぬ尻尾サインと鳴き声を決めた。
全員が反射の腕輪をつけたことで、こちらの動きは女神の未来予知の効果から外れたはずだ。
これで向こうも俺達がどう動くか見えないはず。
予想だらけで不安だが、実際偽女神と戦ったことのある奴なんか歴史上にもいないんだから仕方ない。
「じゃあ、次は実戦を想定してオークキングと戦ってみよう」
偽女神がどんな戦闘力か知らないが、オークキングよりは弱いってことはないだろう。
スキルなしのガチンコバトルでオークキングに苦戦するようじゃ話にならない。
壁のバリケードを解除して通路に出ると、索敵を使った。
幸い13階層に上がる階段の手前でオークキングは見つかった。
いくらも戻らないうちに見つけられたのは、まさに行幸と言えよう。
「ブモォォォォオオオオオッ!!」
「行きます」
オークキングもまた俺達に気付くと、雄叫びを上げ地響きを立てながらこちらに突進をしてくる。
騎士達が盾となる背後で、ルシアちゃんが手筈通りに銀色の鈴を鳴らした。
チリィィィン、と低音の、けれど心地よい音が響く。
それはオークキングの持つ巨大な棍棒が騎士達に接触する寸前で。
数名は吹き飛ばされるのを覚悟していたが、オークキングはピタリと動きを止めた。
振り上げていた棍棒をそっと下ろし、円らな瞳で直立している。
「……お、大人しくなった……」
ルシアちゃんが鳴らしたのは、封印の鈴ではなく和魂の鈴。
精霊を鎮めるという説明だったが、どうやらモンスターにも効果があるらしい。
その効果に、騎士達が呆気に取られている。
『封印の鈴を使うのではなかったのか?』
「あ、す、すみません。もう一方の鈴の効果も試してみたくて……」
『そうか、だが、相談してからやってくれ』
打ち合わせと違う行動をしたルシアちゃんに問い質すために腕輪を外す。
追求されたルシアちゃんは、申し訳なさそうにする。
今回は結果オーライだったから良いけど、戦闘時は何が起きるかわからないんだからね。
「それより、こいつどうするんだ?」
1号の言葉に待機状態だったオークキングの存在を思い出す。
オークキングはそのままの位置で大人しくしていた。
『戦意がなくともモンスターには違いあるまい。対偽女神戦のための犠牲となってもらう』
「モンスター相手とはいえ、無抵抗の相手を殴るってのは気分が良いもんじゃないな」
バルトヴィーノは文句を言いつつも剣を抜く。
騎士達も躊躇いがちに武器を構えた。
ルシアちゃんに合図を送ると、今度こそ金色の鈴を鳴らす。
「さて、スキルなしでどこまで通じるか、試させてもらう!」
直立不動で円らな瞳でこちらを見つめているオークキングに、ジルベルタが先陣を切る。
女性とは思えない勢いの乗った切先がオークキングの左肩に食い込んだ。
途端。
「ブルォオオオオオオオ!!」
悲鳴のような鳴き声を上げ、オークキングの瞳が紅く輝いた。
血走った眼で鼻息も荒く、殺意を向けたジルベルタに棍棒を振り上げる。
「なるほど、攻撃を喰らうと和魂の鈴の効果は切れるのか」
あまり乗り気じゃなかったバルトヴィーノ達も、ジルベルタをフォローするように攻撃を仕掛ける。
一撃を入れては退避、別の者が攻撃と入れ替わり立ち代わり斬りつけていく。
ルシアちゃんとベルナルド先生はスキルが使えないため後方で怪我人の手当てだ。
「ブモォォォォオ!」
スキルなしだと決め手にかけるらしく、なかなかオークキングを倒せない。
斬りつけても傷が浅いのだ。
ただし、相手もまたスキルが使えないため、こちらへのダメージも軽い。
騎士達の膂力でも十分対処可能だ。
「後ろから!?」
「仲間を呼んだぞ!」
先ほどの雄叫びは、このフロア内にいるオーク達を呼び寄せるものだったらしい。
通路の後方から、前方から、左右からとオーク達がわらわらと集まってきた。
一匹一匹は大したことがないが、いかんせん数が多い。
ジルベルタの指揮の下、騎士達が隊列を組み三人一組でオークに当たる。
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