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第九章 俺様、ダンジョンに潜る
11、あれ、ここってこんなんだったっけ?
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1号が輜重部隊を上手くまとめて以来、トラブルはほとんどなくなった。
ベルナルド先生に対しては距離があるのは相変わらずだが、人の心はそう簡単に変わるもんじゃない。きちんと指示を聞いてくれるだけましになったってもんだ。
いちいち突っかかってこなくなった分スムーズに行軍は進み、ようやく俺達はこの世界最凶のダンジョン、【女神の寝所】へと突入する。
「なっ!? 何だこれは!」
ダンジョンに入ったアルベルトの第一声に、どよめきが輜重部隊にも浸透していく。
俺とルシアちゃんは「あれ、ここってこんなんだったっけ?」程度の違和感しかないのは、この第一層に来た経験が少ないからだろう。
同じようにエミーリオやジルベルタなどはアルベルトが驚いている理由がわからないらしく不思議そうにしている。
今どよめいているのは、このダンジョンに入り慣れた者達。曰く、内部の構造が全く違っている、と。
「本来なら、第1階層は洞窟フロアで、出てくるモンスターもゴブリンが中心のはずだ」
首を傾げていた俺にベルナルド先生が教えてくれた。
だが、現在俺達の周りに広がっているのは、迷宮っていうの? 人工物にしか見えない平らな床と壁。
巨体化した俺でもゆったりと翼を広げられるくらいの広さがある通路が伸び、ところどころ横道がぽっかりと口を開けている。
一定間隔でランプのようなものがあり明るいが、所々死角ができている。
「構造が変わってもルートは変わっていない可能性はある。とにかく慎重に進んでみよう」
アルベルトの号令に「おお!」と野太い声が応える。
ジルベルタがアルベルトに地図を差し出す。
1年前に俺が発破をかけたからか、このダンジョンを攻略してやると息巻く冒険者が増えたらしい。
そのため浅層はマッピングがされているのだそうだ。ここに来ることがわかっていたため、現在存在している地図を一通り買ってきたとジルベルタが胸を張った。
分岐が現れる度に立ち止まり、地図と見比べながら進む。
いくつかの分岐を進むと、行き止まりに突き当たった。
一応索敵をかけるが、特にモンスターが潜んでいるわけではなさそうだ。
慎重になっている分消耗が大きいようで、ここでいったん休憩を取ることになった。
「ダメだ、道も全部変わってしまっているな」
「せっかく地図を持ってきてくださったのに、意味がありませんでしたね」
「も、申し訳ございません……」
「あ、いえ、ジルベルタを責めているわけではありませんわ。こんなことになっているなんて誰も想像しておりませんでしたもの」
アルベルトの言う通り、地図が役に立たないほど内部は構造から何からすっかり変わってしまっていた。
十中八九、俺達が入ったからだろう。未来予知ができるっていう偽女神の仕業か?
どちらにしろ、進むだけだ。
「ここまでモンスターと遭遇しなかったのも不気味だな」
「本来なら浅層はゴブリンが中心という話でしたが、迷宮型だと何が出るんですか?」
索敵をしていたドナートの呟きに、他のメンバーも同意する。
ずっと騎士として生きていたエミーリオは、ダンジョン自体入るのが初めてらしい。今頃質問するのは恥ずかしいのですが、と前置きしてアルベルトに注意すべきことなどを聞いている。
アルベルトが言うには、通常このダンジョンでは浅層ではゴブリン、中層に近づくにつれてスケルトンやオークなどが出てくるらしい。
で、浅層にオークキング、中層にバジリスク、深層にミノタウロスといった階層ボスがいる。
懐かしいなぁ。無防備に突っ込んでってルシアちゃんやベルナルド先生に叱られたっけ。
その他に、フロアの種類によって出てくるのが、洞窟でゴブリンやオーガといった鬼系。
森林ではオークやティグレ、ザンナウルフといった獣系。
草原ではロクスタ、ブルーコ・ヴェレのような虫系。
迷宮ではゴーレムやリビングアーマーなど鎧系が出るらしい。
その他にも、森林・草原では植物系や鳥系、洞窟・迷宮ではアンデット系もいるとか。
強さは当然ダンジョンの深さに比例する。
「ダンジョンモンスターは、どういう訳か倒しても一定期間が経つと再び同じ種類のモンスターが湧く。今まで遭遇しなかったからといって、1階層にはモンスターを配置していないと考えるのは危険だな」
「なるほど……よくわかりました。ありがとうございます」
アルベルトの説明に、エミーリオが礼を言う。
聞けば聞くほど、ダンジョンRPGと似ているな。
勇者やモンスターを遊びの駒としか考えていないみたいだし、遊びを考えるって突き詰めるとどこの世界でも似たような感じになるんだな。
今この階層にモンスターがいないのは、先行していた黒モンスター達が倒した後のクールタイム中って可能性もある。
それはつまり、戦闘をしていなかった俺達が黒モンスターに追いつき始めたって事かもしれんな。
慎重になりながら進んでいるアルベルト達には悪いが、早く遭遇してレベル上げしたい。
『アルベルト、ここは行き止まりだったわけだが、これからどう進む?』
「道は変わってしまったが、次の階層へ降りる階段の位置は変わっていない可能性はまだある。方角を見ながら、取り敢えずその場所を目指そうと思っている」
アルベルトが他のメンバーを見る。
誰からも反対の声は上がらなかった。
各自で再び装備の点検をし、探索のための陣形を変える。
俺達の中で索敵を使えるのはドナート、ベルナルド先生、俺の3人。有志の冒険者を含む輜重部隊には4人、騎士達の中ではジルベルタが使えるらしい。
全員で一度に使うのは消耗が激しすぎるため、半オーラ交代で索敵を行いながら進むことになった。
大人数でどうしても列が伸びてしまうため、先頭で1人、後方で1人が索敵をしながら進む。伝令役が後方に一人。それから、輜重部隊でマッピングを担当する者が2人。
これが大人数でのダンジョン探索か。
不謹慎だけど凄くワクワクする。
「モンスターが来るぞ! 戦闘態勢を取れ!」
「後方からも来ます!」
「よし、リージェ、騎士達の補佐を頼む!」
『任せろ』
再出発していくらも経たない内に、索敵役のドナートが警告を発した。
同時に、後方から伝令役が駆けてくる。
アルベルトが即座に指示を飛ばす。
俺は天井が高いのを良いことに輜重部隊の頭の上を飛び、一気に最後尾に向かった。
よし、やっと俺の出番だ!
騎士の補佐? 騎士達が戦う前に俺が一網打尽にしてやるぜ!
ベルナルド先生に対しては距離があるのは相変わらずだが、人の心はそう簡単に変わるもんじゃない。きちんと指示を聞いてくれるだけましになったってもんだ。
いちいち突っかかってこなくなった分スムーズに行軍は進み、ようやく俺達はこの世界最凶のダンジョン、【女神の寝所】へと突入する。
「なっ!? 何だこれは!」
ダンジョンに入ったアルベルトの第一声に、どよめきが輜重部隊にも浸透していく。
俺とルシアちゃんは「あれ、ここってこんなんだったっけ?」程度の違和感しかないのは、この第一層に来た経験が少ないからだろう。
同じようにエミーリオやジルベルタなどはアルベルトが驚いている理由がわからないらしく不思議そうにしている。
今どよめいているのは、このダンジョンに入り慣れた者達。曰く、内部の構造が全く違っている、と。
「本来なら、第1階層は洞窟フロアで、出てくるモンスターもゴブリンが中心のはずだ」
首を傾げていた俺にベルナルド先生が教えてくれた。
だが、現在俺達の周りに広がっているのは、迷宮っていうの? 人工物にしか見えない平らな床と壁。
巨体化した俺でもゆったりと翼を広げられるくらいの広さがある通路が伸び、ところどころ横道がぽっかりと口を開けている。
一定間隔でランプのようなものがあり明るいが、所々死角ができている。
「構造が変わってもルートは変わっていない可能性はある。とにかく慎重に進んでみよう」
アルベルトの号令に「おお!」と野太い声が応える。
ジルベルタがアルベルトに地図を差し出す。
1年前に俺が発破をかけたからか、このダンジョンを攻略してやると息巻く冒険者が増えたらしい。
そのため浅層はマッピングがされているのだそうだ。ここに来ることがわかっていたため、現在存在している地図を一通り買ってきたとジルベルタが胸を張った。
分岐が現れる度に立ち止まり、地図と見比べながら進む。
いくつかの分岐を進むと、行き止まりに突き当たった。
一応索敵をかけるが、特にモンスターが潜んでいるわけではなさそうだ。
慎重になっている分消耗が大きいようで、ここでいったん休憩を取ることになった。
「ダメだ、道も全部変わってしまっているな」
「せっかく地図を持ってきてくださったのに、意味がありませんでしたね」
「も、申し訳ございません……」
「あ、いえ、ジルベルタを責めているわけではありませんわ。こんなことになっているなんて誰も想像しておりませんでしたもの」
アルベルトの言う通り、地図が役に立たないほど内部は構造から何からすっかり変わってしまっていた。
十中八九、俺達が入ったからだろう。未来予知ができるっていう偽女神の仕業か?
どちらにしろ、進むだけだ。
「ここまでモンスターと遭遇しなかったのも不気味だな」
「本来なら浅層はゴブリンが中心という話でしたが、迷宮型だと何が出るんですか?」
索敵をしていたドナートの呟きに、他のメンバーも同意する。
ずっと騎士として生きていたエミーリオは、ダンジョン自体入るのが初めてらしい。今頃質問するのは恥ずかしいのですが、と前置きしてアルベルトに注意すべきことなどを聞いている。
アルベルトが言うには、通常このダンジョンでは浅層ではゴブリン、中層に近づくにつれてスケルトンやオークなどが出てくるらしい。
で、浅層にオークキング、中層にバジリスク、深層にミノタウロスといった階層ボスがいる。
懐かしいなぁ。無防備に突っ込んでってルシアちゃんやベルナルド先生に叱られたっけ。
その他に、フロアの種類によって出てくるのが、洞窟でゴブリンやオーガといった鬼系。
森林ではオークやティグレ、ザンナウルフといった獣系。
草原ではロクスタ、ブルーコ・ヴェレのような虫系。
迷宮ではゴーレムやリビングアーマーなど鎧系が出るらしい。
その他にも、森林・草原では植物系や鳥系、洞窟・迷宮ではアンデット系もいるとか。
強さは当然ダンジョンの深さに比例する。
「ダンジョンモンスターは、どういう訳か倒しても一定期間が経つと再び同じ種類のモンスターが湧く。今まで遭遇しなかったからといって、1階層にはモンスターを配置していないと考えるのは危険だな」
「なるほど……よくわかりました。ありがとうございます」
アルベルトの説明に、エミーリオが礼を言う。
聞けば聞くほど、ダンジョンRPGと似ているな。
勇者やモンスターを遊びの駒としか考えていないみたいだし、遊びを考えるって突き詰めるとどこの世界でも似たような感じになるんだな。
今この階層にモンスターがいないのは、先行していた黒モンスター達が倒した後のクールタイム中って可能性もある。
それはつまり、戦闘をしていなかった俺達が黒モンスターに追いつき始めたって事かもしれんな。
慎重になりながら進んでいるアルベルト達には悪いが、早く遭遇してレベル上げしたい。
『アルベルト、ここは行き止まりだったわけだが、これからどう進む?』
「道は変わってしまったが、次の階層へ降りる階段の位置は変わっていない可能性はまだある。方角を見ながら、取り敢えずその場所を目指そうと思っている」
アルベルトが他のメンバーを見る。
誰からも反対の声は上がらなかった。
各自で再び装備の点検をし、探索のための陣形を変える。
俺達の中で索敵を使えるのはドナート、ベルナルド先生、俺の3人。有志の冒険者を含む輜重部隊には4人、騎士達の中ではジルベルタが使えるらしい。
全員で一度に使うのは消耗が激しすぎるため、半オーラ交代で索敵を行いながら進むことになった。
大人数でどうしても列が伸びてしまうため、先頭で1人、後方で1人が索敵をしながら進む。伝令役が後方に一人。それから、輜重部隊でマッピングを担当する者が2人。
これが大人数でのダンジョン探索か。
不謹慎だけど凄くワクワクする。
「モンスターが来るぞ! 戦闘態勢を取れ!」
「後方からも来ます!」
「よし、リージェ、騎士達の補佐を頼む!」
『任せろ』
再出発していくらも経たない内に、索敵役のドナートが警告を発した。
同時に、後方から伝令役が駆けてくる。
アルベルトが即座に指示を飛ばす。
俺は天井が高いのを良いことに輜重部隊の頭の上を飛び、一気に最後尾に向かった。
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