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第九章 俺様、ダンジョンに潜る
7、はぁ、めんどくせぇ。
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「えっとだな、俺達には暗黒破壊神討伐に集中して欲しいってことで、食料調達とかに余計な時間を取られないように輜重部隊を用意したって。あと、バトルスミスって言うのか? 戦闘もそこそこできる鍛冶師も同行してくれてる」
『必要ない』
2号が、何故彼らが同行することになったのか説明してくれる。
が、今更ここで人数増えてもな。雑魚狩りしてレベリングする予定だし、そうすれば食料だって手に入るだろ。
おっとり国王は勇者を帰したことを知っているから、今勇者が本庄しかいないことに対してジルベルタ達から何も言われないのは良いとしても。ここで守らなきゃいけない人間が増えるのはなぁ。正直足手まといだ。
「いや、リージェ。彼らには是非同行を頼みたい」
ベルナルド先生が、彼らを帰そうとする俺に待ったをかける。
ジルベルタ達が会話に口を挟んだベルナルド先生を殺気の籠った目で睨んだからか、続きをアルベルトが引き継ぐ。
「ルシア様を迎えに我々がダンジョンに潜った時は、できるだけモンスターとの戦闘を避け、全速力で進んだから荷物も最小限にした。だが、今回は殲滅しながら進む予定だろう? 何日かかるかわからないし、武器や防具の修理をダンジョン内でできるのはありがたい」
む、そうか……。
暗黒破壊神の元へと辿り着く前にアルベルト達の武器や防具が壊れてしまったら、また戻らなければならない。そうなるとかえって時間のロスだし危険も増すか。
『わかった。では、同行を許可しよう』
「ありがとうございます! 宜しくお願い致します!」
ジルベルタは、気合の入った顔で俺とルシアちゃんに再度敬礼した。
俺達のやり取りをジルベルタの後方で整列して見守っていた隊員達も揃って敬礼する。
堅苦しいのは嫌いなんだけどなぁ。肩が凝りそうだ。
「あの、皆様楽にしていただけませんか? 私はもう王女ではありませんし。そう畏まらなくて大丈夫ですわ」
「いえ、そういう訳には!」
ルシアちゃんも居心地悪いのか、普通に接してくれと頼んでいるが、ジルベルタに一蹴されていた。
困ったとエミーリオを見るが、肩を竦められた。
これが彼女の素なんです、とそっとルシアちゃんに耳打ちする。
「貴様! 王女殿下に近すぎるぞ! 離れろ!」
ジルベルタが激昂し、剣を抜きそうな剣幕でエミーリオの肩を掴む。
ね? とエミーリオが苦笑するので、こちらも苦笑いするしかない。
ジルベルタは諦めるとして、輜重部隊の隊員達には普段家族に接するように接してくれと言うと、肩の力を抜く奴が数人いた。……ジルベルタに叱られていたが。
作業へと戻っていく隊員達からは、これで王命が全うできると嬉しそうな会話が聞こえてきた。もしかしたら、俺達が彼らを追い返したら何らかの処罰があったのかな?
顔合わせだけで疲れてしまった俺達は、村唯一の宿へ泊ることに。
野宿が続いた疲れも出たのだろう。久しぶりにふかふかのベッドで眠りたいと思っていたが、俺だけ体が大きくなったせいで宿に入れず、エヴァ達と一緒に厩舎で寝ることに。大きくなったって言ったって、ギリギリ馬に乗れるくらいには小さいんだけどなぁ。グスン。
身長2m近いチェーザーレより頭一つ分飛び出るくらいだから体を窄めれば何とか建物にも入たのだが、宿の主人に断られたのだ。
俺が暗黒破壊神になれた暁には、俺が余裕で入れる巨大な城を築いてやると固く誓ったのだった。
朝、ルシアちゃんが食事を持ってきた。2皿。え? ここで食べるの?
厩舎特有の匂いも気にしない様子で、俺の対面に皿を置いたルシアちゃんがちょこんと座る。
「だって、リージェ様がいないと美味しくないんですもの」
なんて嬉しいこと言ってくれちゃって。
食事は麦飯に卵焼き。それと、レタスっぽい野菜に乗せられた薄くスライスしてカリカリに焼いた肉。見た目だけじゃなくて味もベーコンっぽかった。それらが木製の皿に1プレートで盛り付けられていた。
どうにも日本の朝食を思い出すと思ったら、本庄が俺のために厨房を借りて作ってくれたらしい。
道理で、量も味付けも俺好みだと思った。
「麦を炊くという調理方法は宿の料理人の方もご存知なかったようで、カツキ様が質問攻めに遭っておりましたわ」
その様子が可笑しかったらしく、クスクスと笑いながらルシアちゃんが話してくれた。
食事が終わり外に出ると、バルトヴィーノ達が新しい装備の確認で実戦式の組手をしていた。
高レベル冒険者同士の試合に、騎士達が興奮気味に周囲を取り囲み眺めている。
バルトヴィーノがチェーザーレに上段から斬りかかり、それをチェーザーレが大楯でいなす。
切っ先を逸らされたバルトヴィーノは、振り抜き様に斬りあげる。それをチェーザーレが盾で受け止め、上に跳ね上げる。
ガラ空きになった胴にチェーザーレが蹴りを入れようとするのを、バルトヴィーノが後方に飛び退って避けた。
あちこちから歓声が上がっている。
エミーリオとアルベルトの試合も似たような感じで、思い切り動いているのにお互いどこか余裕がある。否、余裕なのはアルベルトだけでエミーリオはいっぱいいっぱいって感じだな。
ジルベルタがアルベルトに手合わせして欲しそうに熱視線を送っている。
動きが普段より大振りなのは、試合だからというのもあるだろうが、剣や盾の具合を確かめているからだろう。
ドナートは広大な麦畑の向こう側から、こちらにある的に向かって遠当てをしていた。
かなりの距離があるのに、次々と矢が飛んでくる。数秒で二矢、三矢と飛んできて、それが寸分違わず前の矢を粉砕して同じ場所に突き刺さる。
弓士らしき人達が的を持って馬で駆けて行くと、やはり的の中央に矢が刺さる。
こちらもやはり歓声が上がっている。
その様子をベルナルド先生が俺の側に来て微笑みながら眺めていた。
人垣から離れているのは、騎士達を気にしてだろうか……初対面でも睨まれてたし、何かあったのかな?
これから行動を共にするなら、その辺も何とかしなきゃか。はぁ、めんどくせぇ。
『必要ない』
2号が、何故彼らが同行することになったのか説明してくれる。
が、今更ここで人数増えてもな。雑魚狩りしてレベリングする予定だし、そうすれば食料だって手に入るだろ。
おっとり国王は勇者を帰したことを知っているから、今勇者が本庄しかいないことに対してジルベルタ達から何も言われないのは良いとしても。ここで守らなきゃいけない人間が増えるのはなぁ。正直足手まといだ。
「いや、リージェ。彼らには是非同行を頼みたい」
ベルナルド先生が、彼らを帰そうとする俺に待ったをかける。
ジルベルタ達が会話に口を挟んだベルナルド先生を殺気の籠った目で睨んだからか、続きをアルベルトが引き継ぐ。
「ルシア様を迎えに我々がダンジョンに潜った時は、できるだけモンスターとの戦闘を避け、全速力で進んだから荷物も最小限にした。だが、今回は殲滅しながら進む予定だろう? 何日かかるかわからないし、武器や防具の修理をダンジョン内でできるのはありがたい」
む、そうか……。
暗黒破壊神の元へと辿り着く前にアルベルト達の武器や防具が壊れてしまったら、また戻らなければならない。そうなるとかえって時間のロスだし危険も増すか。
『わかった。では、同行を許可しよう』
「ありがとうございます! 宜しくお願い致します!」
ジルベルタは、気合の入った顔で俺とルシアちゃんに再度敬礼した。
俺達のやり取りをジルベルタの後方で整列して見守っていた隊員達も揃って敬礼する。
堅苦しいのは嫌いなんだけどなぁ。肩が凝りそうだ。
「あの、皆様楽にしていただけませんか? 私はもう王女ではありませんし。そう畏まらなくて大丈夫ですわ」
「いえ、そういう訳には!」
ルシアちゃんも居心地悪いのか、普通に接してくれと頼んでいるが、ジルベルタに一蹴されていた。
困ったとエミーリオを見るが、肩を竦められた。
これが彼女の素なんです、とそっとルシアちゃんに耳打ちする。
「貴様! 王女殿下に近すぎるぞ! 離れろ!」
ジルベルタが激昂し、剣を抜きそうな剣幕でエミーリオの肩を掴む。
ね? とエミーリオが苦笑するので、こちらも苦笑いするしかない。
ジルベルタは諦めるとして、輜重部隊の隊員達には普段家族に接するように接してくれと言うと、肩の力を抜く奴が数人いた。……ジルベルタに叱られていたが。
作業へと戻っていく隊員達からは、これで王命が全うできると嬉しそうな会話が聞こえてきた。もしかしたら、俺達が彼らを追い返したら何らかの処罰があったのかな?
顔合わせだけで疲れてしまった俺達は、村唯一の宿へ泊ることに。
野宿が続いた疲れも出たのだろう。久しぶりにふかふかのベッドで眠りたいと思っていたが、俺だけ体が大きくなったせいで宿に入れず、エヴァ達と一緒に厩舎で寝ることに。大きくなったって言ったって、ギリギリ馬に乗れるくらいには小さいんだけどなぁ。グスン。
身長2m近いチェーザーレより頭一つ分飛び出るくらいだから体を窄めれば何とか建物にも入たのだが、宿の主人に断られたのだ。
俺が暗黒破壊神になれた暁には、俺が余裕で入れる巨大な城を築いてやると固く誓ったのだった。
朝、ルシアちゃんが食事を持ってきた。2皿。え? ここで食べるの?
厩舎特有の匂いも気にしない様子で、俺の対面に皿を置いたルシアちゃんがちょこんと座る。
「だって、リージェ様がいないと美味しくないんですもの」
なんて嬉しいこと言ってくれちゃって。
食事は麦飯に卵焼き。それと、レタスっぽい野菜に乗せられた薄くスライスしてカリカリに焼いた肉。見た目だけじゃなくて味もベーコンっぽかった。それらが木製の皿に1プレートで盛り付けられていた。
どうにも日本の朝食を思い出すと思ったら、本庄が俺のために厨房を借りて作ってくれたらしい。
道理で、量も味付けも俺好みだと思った。
「麦を炊くという調理方法は宿の料理人の方もご存知なかったようで、カツキ様が質問攻めに遭っておりましたわ」
その様子が可笑しかったらしく、クスクスと笑いながらルシアちゃんが話してくれた。
食事が終わり外に出ると、バルトヴィーノ達が新しい装備の確認で実戦式の組手をしていた。
高レベル冒険者同士の試合に、騎士達が興奮気味に周囲を取り囲み眺めている。
バルトヴィーノがチェーザーレに上段から斬りかかり、それをチェーザーレが大楯でいなす。
切っ先を逸らされたバルトヴィーノは、振り抜き様に斬りあげる。それをチェーザーレが盾で受け止め、上に跳ね上げる。
ガラ空きになった胴にチェーザーレが蹴りを入れようとするのを、バルトヴィーノが後方に飛び退って避けた。
あちこちから歓声が上がっている。
エミーリオとアルベルトの試合も似たような感じで、思い切り動いているのにお互いどこか余裕がある。否、余裕なのはアルベルトだけでエミーリオはいっぱいいっぱいって感じだな。
ジルベルタがアルベルトに手合わせして欲しそうに熱視線を送っている。
動きが普段より大振りなのは、試合だからというのもあるだろうが、剣や盾の具合を確かめているからだろう。
ドナートは広大な麦畑の向こう側から、こちらにある的に向かって遠当てをしていた。
かなりの距離があるのに、次々と矢が飛んでくる。数秒で二矢、三矢と飛んできて、それが寸分違わず前の矢を粉砕して同じ場所に突き刺さる。
弓士らしき人達が的を持って馬で駆けて行くと、やはり的の中央に矢が刺さる。
こちらもやはり歓声が上がっている。
その様子をベルナルド先生が俺の側に来て微笑みながら眺めていた。
人垣から離れているのは、騎士達を気にしてだろうか……初対面でも睨まれてたし、何かあったのかな?
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