196 / 228
第九章 俺様、ダンジョンに潜る
4、お前達はどうする?
しおりを挟む
『さて、お前達はどうする?』
最終確認の意味も込めて尋ねると、アルベルト達からは冗談だろ、と口々に帰ってきた。
「ここまで来て置いてくとかあり得ないだろ」
「俺はアルについていくだけだ」
「女神様が諸悪の根源かも、なんて話聞かされたら、真実を知りたいに決まってる」
「足手まといにはならないようにしますので、連れて行ってください」
「ここまで来たら、決着を見届けなければな」
「ついて行けば珍しい素材たくさん手に入るしな」
断固ついていくと言うアルベルトと、それに従うベルナルド先生。まぁ、ベルナルド先生が一人で行動とかしたらアルベルトが処罰されちゃうからな。
バルトヴィーノは知的好奇心からか。そういや冒険者になったのも世界を見たかったから、なんて語ってたもんな。
エミーリオも勇者に憧れて国を出奔してまでついてきたんだった。そりゃ、ここで帰れなんて言ったら怒るか。
チェーザーレも最後までついてきてくれるようだ。食い意地張ってるだけの奴、なんて思っててすまん。
ドナート……うすうす守銭奴っぽいとは思ってたけど、こうもはっきり……。まぁ、金が手に入るから、って理由が一番わかりやすい。こういうタイプは命を簡単に捨てないから、危険を感じれば逃げてくれるだろう。
『うむ、では最後まで宜しく頼む』
こうして俺達は谷岡や幼女達に別れを告げ、出立した。
馬は4頭しかいないから、本庄とルシアちゃんに乗ってもらい、他は駆け足である。セントゥロの近くに暗黒破壊神がいるという事実に気が急いているらしい。
『少し飛ばしすぎじゃないか? 辿り着く前にバテるぞ』
「大丈夫です。鍛えてますから」
うん、まぁ、良いなら良いけど。
セントゥロには4号を通じておっとり国王に暗黒破壊神が近くに潜伏している可能性を伝えたいてもらっている。今頃は厳戒態勢を取ってくれているだろう。
同時に、全員の装備が壊れていること、馬車と馬の手配をして欲しいことも伝えてある。早急に用意してくれるそうだ。
「装備の替えは用意出来次第送ってくれるって。それと、王都の警備については心配いらないから戦いに集中してくれって」
「おぉ!」
「感謝します、とお父様にお伝えください」
暗黒破壊神に結界が効かないのは、元が聖竜(勇者)だからってのが俺達の見解だ。
結界を張り直した王都でも、結界無視して出入りしてくる奴には結局武力で対抗するしかない。心配いらないなんてどう考えても虚勢なんだろうけど、俺達が戦いに集中するために言ってくれてるのはわかるから感謝しかない。
まぁ、俺達の推測通りの場所にいるとしたら、危ないのは王都じゃなくてその周辺にある村だしな。避難指示を出して村民を王都に受け入れる方針で進めてくれているらしい。
普段の言動からは想像つかないくらい対応が早い。おっとりなんて言って悪かったかな?
そんなこんなでやっと無理のない行軍に戻ったわけだ。
無理ない行軍、と言いつつ休みなく歩き続け、2オーラ。日が中天を通り過ぎてようやく昼休憩となった。
エミーリオが馬の世話、ベルナルド先生が竃、本庄が昼食準備といういつものフォーメーションでテキパキと食事が用意されていく。
メニューは細かい野菜と細切れ肉が浮かんだスープと、焼肉を挟んだパン。手早く食べれるメニューなのは、休憩時間が短いからだ。
『少し急ぎすぎではないか?』
「女神様の寝所まで、どのくらいかかるのでしょう?」
俺やルシアちゃん、本庄は馬に乗せてもらってるからそれほど疲れていないが、ずっと早歩きしているアルベルト達はいくら鍛えているといっても疲れが溜まるだろう。
ルシアちゃんも心配している。
「できれば今日、日が暮れる前に森を抜けたい。街道に出て、陛下が指定した村までは徒歩だと三日くらいか? そこで陛下の用意してくれた馬車に乗れば、ダンジョンまで二日ってところだ」
「いつモンスターに襲われるかわからないので、早めに街道に出たいのですよ」
アルベルトの説明に、エミーリオも同意する。
ルシアちゃんの結界を使えば休息だって普通に取れるのだけど、決戦が近いということでいざという時のために温存しておきたいらしい。現に今も結界を張っていない。
「ここまで、モンスターと遭遇していないのが不気味でしょうがない」
「ダンジョンに集まっていると考えておいた方が良いだろうな」
周囲を警戒していたバルトヴィーノが言うと、ここに来るまでの道中で倒し尽くしたと楽観視しないほうが良いだろうな、とドナートが応じる。
ダンジョン。
俺が生まれた場所にして、ルシアちゃんが修行していた場所。
女神がいるとされていて、暗黒破壊神がかつてこれ以上聖女が現れないよう作り替えたとされている、この世界最凶のダンジョン。
恐らくそこに女神と暗黒破壊神がいる。
『面白い。どうせ倒さねばならんなら、一か所にいてくれるのは好都合。全て蹴散らし、俺様の力にしてくれよう』
修行だ修行! ここ最近苦戦してばっかりで、暗黒破壊神に敵うイメージが崩れかけてるからな。
ここからはモンスターを狩り尽くしながら進んでやる!
「さすがリージェ様ですわ」
ルシアちゃんがうっとりとした表情で笑ってくれた。
まだ少し元気ないけど、笑顔を見せてくれるようになったから良かった。やっぱりルシアちゃんには笑顔でいて欲しいもんな。そのためにも俺、頑張っちゃうよ!
最終確認の意味も込めて尋ねると、アルベルト達からは冗談だろ、と口々に帰ってきた。
「ここまで来て置いてくとかあり得ないだろ」
「俺はアルについていくだけだ」
「女神様が諸悪の根源かも、なんて話聞かされたら、真実を知りたいに決まってる」
「足手まといにはならないようにしますので、連れて行ってください」
「ここまで来たら、決着を見届けなければな」
「ついて行けば珍しい素材たくさん手に入るしな」
断固ついていくと言うアルベルトと、それに従うベルナルド先生。まぁ、ベルナルド先生が一人で行動とかしたらアルベルトが処罰されちゃうからな。
バルトヴィーノは知的好奇心からか。そういや冒険者になったのも世界を見たかったから、なんて語ってたもんな。
エミーリオも勇者に憧れて国を出奔してまでついてきたんだった。そりゃ、ここで帰れなんて言ったら怒るか。
チェーザーレも最後までついてきてくれるようだ。食い意地張ってるだけの奴、なんて思っててすまん。
ドナート……うすうす守銭奴っぽいとは思ってたけど、こうもはっきり……。まぁ、金が手に入るから、って理由が一番わかりやすい。こういうタイプは命を簡単に捨てないから、危険を感じれば逃げてくれるだろう。
『うむ、では最後まで宜しく頼む』
こうして俺達は谷岡や幼女達に別れを告げ、出立した。
馬は4頭しかいないから、本庄とルシアちゃんに乗ってもらい、他は駆け足である。セントゥロの近くに暗黒破壊神がいるという事実に気が急いているらしい。
『少し飛ばしすぎじゃないか? 辿り着く前にバテるぞ』
「大丈夫です。鍛えてますから」
うん、まぁ、良いなら良いけど。
セントゥロには4号を通じておっとり国王に暗黒破壊神が近くに潜伏している可能性を伝えたいてもらっている。今頃は厳戒態勢を取ってくれているだろう。
同時に、全員の装備が壊れていること、馬車と馬の手配をして欲しいことも伝えてある。早急に用意してくれるそうだ。
「装備の替えは用意出来次第送ってくれるって。それと、王都の警備については心配いらないから戦いに集中してくれって」
「おぉ!」
「感謝します、とお父様にお伝えください」
暗黒破壊神に結界が効かないのは、元が聖竜(勇者)だからってのが俺達の見解だ。
結界を張り直した王都でも、結界無視して出入りしてくる奴には結局武力で対抗するしかない。心配いらないなんてどう考えても虚勢なんだろうけど、俺達が戦いに集中するために言ってくれてるのはわかるから感謝しかない。
まぁ、俺達の推測通りの場所にいるとしたら、危ないのは王都じゃなくてその周辺にある村だしな。避難指示を出して村民を王都に受け入れる方針で進めてくれているらしい。
普段の言動からは想像つかないくらい対応が早い。おっとりなんて言って悪かったかな?
そんなこんなでやっと無理のない行軍に戻ったわけだ。
無理ない行軍、と言いつつ休みなく歩き続け、2オーラ。日が中天を通り過ぎてようやく昼休憩となった。
エミーリオが馬の世話、ベルナルド先生が竃、本庄が昼食準備といういつものフォーメーションでテキパキと食事が用意されていく。
メニューは細かい野菜と細切れ肉が浮かんだスープと、焼肉を挟んだパン。手早く食べれるメニューなのは、休憩時間が短いからだ。
『少し急ぎすぎではないか?』
「女神様の寝所まで、どのくらいかかるのでしょう?」
俺やルシアちゃん、本庄は馬に乗せてもらってるからそれほど疲れていないが、ずっと早歩きしているアルベルト達はいくら鍛えているといっても疲れが溜まるだろう。
ルシアちゃんも心配している。
「できれば今日、日が暮れる前に森を抜けたい。街道に出て、陛下が指定した村までは徒歩だと三日くらいか? そこで陛下の用意してくれた馬車に乗れば、ダンジョンまで二日ってところだ」
「いつモンスターに襲われるかわからないので、早めに街道に出たいのですよ」
アルベルトの説明に、エミーリオも同意する。
ルシアちゃんの結界を使えば休息だって普通に取れるのだけど、決戦が近いということでいざという時のために温存しておきたいらしい。現に今も結界を張っていない。
「ここまで、モンスターと遭遇していないのが不気味でしょうがない」
「ダンジョンに集まっていると考えておいた方が良いだろうな」
周囲を警戒していたバルトヴィーノが言うと、ここに来るまでの道中で倒し尽くしたと楽観視しないほうが良いだろうな、とドナートが応じる。
ダンジョン。
俺が生まれた場所にして、ルシアちゃんが修行していた場所。
女神がいるとされていて、暗黒破壊神がかつてこれ以上聖女が現れないよう作り替えたとされている、この世界最凶のダンジョン。
恐らくそこに女神と暗黒破壊神がいる。
『面白い。どうせ倒さねばならんなら、一か所にいてくれるのは好都合。全て蹴散らし、俺様の力にしてくれよう』
修行だ修行! ここ最近苦戦してばっかりで、暗黒破壊神に敵うイメージが崩れかけてるからな。
ここからはモンスターを狩り尽くしながら進んでやる!
「さすがリージェ様ですわ」
ルシアちゃんがうっとりとした表情で笑ってくれた。
まだ少し元気ないけど、笑顔を見せてくれるようになったから良かった。やっぱりルシアちゃんには笑顔でいて欲しいもんな。そのためにも俺、頑張っちゃうよ!
0
お気に入りに追加
128
あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは


【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる