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第八章 俺様、勇者と対立する
8、さて、こっちの壺は……?
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ドナートの推測ではここを根城にしていた連中は移動するのに時間的余裕があったらしい。だとするならば、隠し扉に残されていたこれらの品々はわざと置いて行ったということになる。
もう地面の確認は終わったから足跡を踏んでも大丈夫だとドナートが言うので、離れた場所で待機していたオーリエンの勇者達にも来てもらい鑑定スキル持ち全員で片っ端から鑑定をかけていく。
---------------
【スティモランティ】
様々な植物を乾燥・粉砕して混ぜ煮込んだ汁を濾して乾燥させてできた粉末。服用した者の身体能力を大幅に強化し狂戦士化する反面、毒性も強く高確率で死に至る。服用から死ぬまでの時間は凡そ1オーラ。吸い込まないよう注意。
---------------
怖!
最初に覗き込んだ壺の中に入っていた一見小麦粉に見える白い粉は、覚せい剤よりヤバイ薬だった。
これを見つけたのがもし鑑定スキルを持たない奴だったなら、小麦粉だと思って食べていただろう。長期保存の効く食材に似ているから、疑いもなく持ち帰り、そして狂戦士化……つまり理性をなくして仲間に襲い掛かるわけだろ? 怖すぎる。やっぱり罠だったか。
さて、こっちの壺は……?
---------------
【ヴェレーノプリュレのヴァイン漬け】
ヴァインの果汁と猛毒のプリュレの果実を壺に入れて保存しているうちにヴァインが発酵し酒精を帯びたもの。長期間のうちに酒精が毒素を分解し、無毒化されています。プリュレ本来の甘みとヴァインの甘みが複雑なハーモニーを醸し出す絶品。酒精が強いため子供は口にしたらいけませんよ。
---------------
……えーっと。猛毒の果物を混ぜて何らかの毒薬を作ろうとして、絶品のお酒ができちゃったってことかな?
壺の中には濃い茶色の液体で満たされ、そこの方に丸っこいものが沈んでいるのが辛うじて見える。
匂いは確かに酒。果実酒にも似た甘ったるい匂いが鼻をくすぐる。ちょっとだけ……。
「うまっ!」
口の中をフルーティーな濃い甘味が広がる。カーっと体が熱くなり、くわんくわんと目が回る。
何だかとても楽しくなってしまって、ケラケラ笑う。こんなに楽しいのは前世を含めて初めてかもしれない。
1号が何か言っている気もするが、よくわかんないな。何語喋ってるんだ?
「あ、リージェ様気が付きましたのね!」
「ダメだぞ~、リージェ。子供がお酒なんか飲んじゃ」
どうやらいつの間にか眠ってしまっていたらしい。目が覚めるなり1号に叱られてしまった。
本当は飲んだのではなく、手につけてちょびっと舐めてみただけなのだが。
いやしかし、美味かった。あれはそう、梅酒だ。ノンアルコールの梅酒を少しもらって飲んだことがあるが、それに凄く近かった。きっとノンアルじゃない本当の梅酒があんな味だろう。
『あれ? そう言えば俺様の酒は?』
「だから子供が酒飲むなって。今後子供に飲ませないよう大人が責任もって処分しといたぜ」
なんだと?!
がば、と身を起こして見渡すと、バルトヴィーノの横に空になった壺が転がっていた。大人連中で飲み尽くしてしまったようだ。普段水代わりに酒を飲むようなバルトヴィーノだけでなく、他のメンバーも顔が紅潮していた。
赤ら顔で「こんな美味い酒を見つけてくれてサンキューな」などとケラケラ笑うバルトヴィーノにイラっとしつつ、甕に首を突っ込んで残った水滴を舐めようとしたらエミーリオに取り上げられた。むぅ……。
「伝承に出てくる竜の多くはお酒が好きなようですが、リージェ様も例外ではないようですね」
「1号さんの言う通り、子供のうちから飲むのは体に悪いからダメですよ」
名残惜しく甕を目で追っていた俺の様子を見てルシアちゃんがクスク笑い、エミーリオが窘める。
うん、決めた。俺は大きくなったら樽一杯の酒を飲む。そんでもって、暗黒破壊神になった暁には人間共に酒をたくさん献上させて酒の池を作って浴びるほど飲むんだ。
そんな決意を胸に掲げていたらルシアちゃんにスープを渡された。
改めて状況を確認すると、俺が寝ている間に鑑定を終わらせ休憩に入ったらしい。
結局、残されていた保存食や薬品、強力な武器や防具、宝飾品に見える品々はほとんどが毒や呪いのアイテムだったらしい。持ち出した人間を破滅に追い込む罠だろうというのがベルナルド先生の見解だ。俺が見つけた酒みたく、毒が相殺しあって無毒化してしまったものもあることから毒薬を作る実験でもしていたんじゃないかって。
ルシアちゃんの浄化スキルで呪いの効果を消せた弓と剣だけ、予備の武器としてもらっていくことにしたそうだ。
それ以外は残しておいても悪用されてしまうだけだし、天罰で消滅させておこう。
「あの、約束、忘れていませんか?」
おずおずと増田が声をかけてくる。
あ、そうだった。アスーの勇者達を解放してやる約束だったんだ。
いつまでも嫌がっていても仕方ないか。ここはガツンと、どっちが上か教えてやろうじゃないか。
もう地面の確認は終わったから足跡を踏んでも大丈夫だとドナートが言うので、離れた場所で待機していたオーリエンの勇者達にも来てもらい鑑定スキル持ち全員で片っ端から鑑定をかけていく。
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【スティモランティ】
様々な植物を乾燥・粉砕して混ぜ煮込んだ汁を濾して乾燥させてできた粉末。服用した者の身体能力を大幅に強化し狂戦士化する反面、毒性も強く高確率で死に至る。服用から死ぬまでの時間は凡そ1オーラ。吸い込まないよう注意。
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怖!
最初に覗き込んだ壺の中に入っていた一見小麦粉に見える白い粉は、覚せい剤よりヤバイ薬だった。
これを見つけたのがもし鑑定スキルを持たない奴だったなら、小麦粉だと思って食べていただろう。長期保存の効く食材に似ているから、疑いもなく持ち帰り、そして狂戦士化……つまり理性をなくして仲間に襲い掛かるわけだろ? 怖すぎる。やっぱり罠だったか。
さて、こっちの壺は……?
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【ヴェレーノプリュレのヴァイン漬け】
ヴァインの果汁と猛毒のプリュレの果実を壺に入れて保存しているうちにヴァインが発酵し酒精を帯びたもの。長期間のうちに酒精が毒素を分解し、無毒化されています。プリュレ本来の甘みとヴァインの甘みが複雑なハーモニーを醸し出す絶品。酒精が強いため子供は口にしたらいけませんよ。
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……えーっと。猛毒の果物を混ぜて何らかの毒薬を作ろうとして、絶品のお酒ができちゃったってことかな?
壺の中には濃い茶色の液体で満たされ、そこの方に丸っこいものが沈んでいるのが辛うじて見える。
匂いは確かに酒。果実酒にも似た甘ったるい匂いが鼻をくすぐる。ちょっとだけ……。
「うまっ!」
口の中をフルーティーな濃い甘味が広がる。カーっと体が熱くなり、くわんくわんと目が回る。
何だかとても楽しくなってしまって、ケラケラ笑う。こんなに楽しいのは前世を含めて初めてかもしれない。
1号が何か言っている気もするが、よくわかんないな。何語喋ってるんだ?
「あ、リージェ様気が付きましたのね!」
「ダメだぞ~、リージェ。子供がお酒なんか飲んじゃ」
どうやらいつの間にか眠ってしまっていたらしい。目が覚めるなり1号に叱られてしまった。
本当は飲んだのではなく、手につけてちょびっと舐めてみただけなのだが。
いやしかし、美味かった。あれはそう、梅酒だ。ノンアルコールの梅酒を少しもらって飲んだことがあるが、それに凄く近かった。きっとノンアルじゃない本当の梅酒があんな味だろう。
『あれ? そう言えば俺様の酒は?』
「だから子供が酒飲むなって。今後子供に飲ませないよう大人が責任もって処分しといたぜ」
なんだと?!
がば、と身を起こして見渡すと、バルトヴィーノの横に空になった壺が転がっていた。大人連中で飲み尽くしてしまったようだ。普段水代わりに酒を飲むようなバルトヴィーノだけでなく、他のメンバーも顔が紅潮していた。
赤ら顔で「こんな美味い酒を見つけてくれてサンキューな」などとケラケラ笑うバルトヴィーノにイラっとしつつ、甕に首を突っ込んで残った水滴を舐めようとしたらエミーリオに取り上げられた。むぅ……。
「伝承に出てくる竜の多くはお酒が好きなようですが、リージェ様も例外ではないようですね」
「1号さんの言う通り、子供のうちから飲むのは体に悪いからダメですよ」
名残惜しく甕を目で追っていた俺の様子を見てルシアちゃんがクスク笑い、エミーリオが窘める。
うん、決めた。俺は大きくなったら樽一杯の酒を飲む。そんでもって、暗黒破壊神になった暁には人間共に酒をたくさん献上させて酒の池を作って浴びるほど飲むんだ。
そんな決意を胸に掲げていたらルシアちゃんにスープを渡された。
改めて状況を確認すると、俺が寝ている間に鑑定を終わらせ休憩に入ったらしい。
結局、残されていた保存食や薬品、強力な武器や防具、宝飾品に見える品々はほとんどが毒や呪いのアイテムだったらしい。持ち出した人間を破滅に追い込む罠だろうというのがベルナルド先生の見解だ。俺が見つけた酒みたく、毒が相殺しあって無毒化してしまったものもあることから毒薬を作る実験でもしていたんじゃないかって。
ルシアちゃんの浄化スキルで呪いの効果を消せた弓と剣だけ、予備の武器としてもらっていくことにしたそうだ。
それ以外は残しておいても悪用されてしまうだけだし、天罰で消滅させておこう。
「あの、約束、忘れていませんか?」
おずおずと増田が声をかけてくる。
あ、そうだった。アスーの勇者達を解放してやる約束だったんだ。
いつまでも嫌がっていても仕方ないか。ここはガツンと、どっちが上か教えてやろうじゃないか。
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