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第七章 俺様、南方へ行く
17、これが本当の飯テロだな
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翌日、再度ユーザに巨熊は毒素が強すぎるから決して食べないようにと念を押して町を出た。何故町長ではなくユーザかって? あんなプルプルしたボ……げふん、残念な頭脳の町長に言ったところで数秒後には忘れそうだからさ。それでも若干心配だったから門衛にも言っておいた。あとはもう知らない。
「それにしても、本当に驚きました。まさかカナメ様がいらっしゃっているばかりか、冒険者ギルドにご登録までされているんですもの」
「全くだ。こちらに来ていたなら合流してくれれば良かったのに」
今朝宿でカナメさんが皆に声をかけた時、ルシアちゃんを始めアルベルト達は皆一様に驚き、チェーザーレの喜び様が凄まじかった。そんなにカナメさんの手料理が食いたかったのか。片時も離れようとせず、御者もドナートに代われと言い張る始末。キャラ崩壊してるおっさんを勇者達があんぐりと口を開けて見ていた。
中にはカナメさんを知っている奴もいて、何でいるんだと不思議がっていたが、そこは自分たちを日本に帰せる能力の者の仕業だと説明してやった。帰れると改めて実感して泣き出す女子もいてちょっとした騒ぎだったな。
そんなこんなで賑やかな出発になったのだった。
カナメさんは困ったように眉根を寄せて苦笑いで、合流できる状況ではなかったと1号から聞いていたと答えた。
「それに、ルシアさんの父君……オットリーノ陛下に呼ばれたんだ。身分証を作っていただいたのも陛下のご厚意で」
カナメさんが週末にしかこちらにいられないことを7号から聞いたおっとり国王が招集し、身分証を作りたまたま道中一緒になったということにすれば合流もしやすいだろうと手配してくれたそうだ。やるじゃねぇか、あのおっさん。
日本での様子や、カナメさんがこちらに来ていた際にどこで何をしていたのかなど取り留めもなく話をすること1オーラ。
陽は中天に高く、俺の腹の虫がギュココココと肉を要求した。
「そろそろ昼食にしようか。チェーザーレさん、適当なところで……っと!」
昼食、と聞いた途端チェーザーレが馬車を急停止させた。馬が甲高く短い嘶きと共に棹立ちになり、馬車が大きくガタンと跳ね上がる。
後続の馬車でも急停止させることになり、短い悲鳴が聞こえた。
「どうしたチェーザーレ!? モンスターか?!」
『大丈夫だ。食い意地張ったおっさんが昼食休憩と聞いて慌てただけだ』
状況を問うアルベルトの怒声に問題ないことを思念で答える。
その後、路肩に馬車を寄せ全員が降りてくると、いつものようにエミーリオとベルナルド先生が炉を組み食事の準備を始め、その横でチェーザーレがアルベルトに殴られていた。
それを苦笑いで、でも止めずに見ているカナメさんと、何事もなかったことにホッと胸を撫で下ろす勇者達。
興奮気味になってしまった馬を世話するドナートが大変そうにバルトヴィーノに助けを求めていた。
『こ、これは……!』
「ん? あっ、手抜きってバレちゃった?」
渡された器に盛られたのは、どう見ても懐かしのもつ鍋。野菜たっぷり、栄養満点。ニンニクの香りが食欲をそそる。
日本で俺の母親が作ったのは味噌味だったが、この白いスープは塩ベースのようだ。
驚く俺にカナメさんがテヘペロする。おっさんのあざと可愛さなんて誰得……って、チェーザーレがいたな。
『こらそこの二人、落ち着け』
「そうそう。食卓でお行儀よくできない子は食事抜きですよ」
何故か大興奮して鼻息の荒いチェーザーレと、それを見てとても残念な様子になっているルシアちゃんの頭をペシペシ。でも俺よりもカナメさんの食事抜きという言葉の方が効いたみたいだ。二人ともシュンとした様子で大人しくなる。
その様子を見て周りがクスクス笑っていた。うん、やっぱ笑っているのが良いよな。
勇者たちの笑顔なんて初めて見たかも、なんて思いながら俺は催促する腹の虫に餌を与えるのだった。
「ところで、これは何の肉だ? クニクニと初めての食感だがとても美味いな」
「ちょっと癖がありますけど美味しいですね」
「野菜もこうするとたくさん食べれて良いな。味が染みてて美味い」
アルベルトとエミーリオがモツを絶賛し、普段は肉ばかりで野菜をほとんど食べないバルトヴィーノがお替りを要求する。
材料と調理法を聞くエミーリオに、カナメさんが言いにくそうに答える。
「あの、野菜、馬車にあったもので傷み始めていたものを全部使ってしまったんだけど」
「傷む前なら良いのでは?」
「うん、でもかなりの量だからこれからしばらく野菜を本気で消費しないと」
暫くは野菜中心に、とカナメさんは言うがこれだけ美味いなら文句はないだろ。作るのはエミーリオだけど。カナメさん帰っちゃうしね。
「肉は俺の晩酌用のつまみに、と日本から持ち込んだんだ」
「で、何の肉だ?」
「モツって呼ばれてる、豚の内臓」
「「「内臓?!」」」
日本出身の俺達には馴染み深いが、こっちの人達はホルモンは食べないらしく、すごく驚いて何度もカナメさんと手の中の椀を交互に見ていた。
あの気持ち悪い臓器がまさか食べれるとは、とか、あれって毒なんじゃ、とヒソヒソと話し合っているが聞こえているぞ。
「普通はそうだね。鮮度の良い物をよく洗浄して加熱しないと危険だから迂闊に手を出さないほうが良いと思う。これも一晩もたせるのに燻製にして持ってきてたんだ」
ああ、だから仄かにスモークチーズのような香りがしたのか。
しかし、そうか。こっちだとモツ食えないのか。残念。これが本当の飯テロだな。
こっちで調達できないものを持ってくるなと言ってあっただろと1号に怒られているカナメさんは、もう食べれないものと知って肩を落とす俺達にまた持ってくることを約束してくれた。
さぁ、腹も膨れたし気を取り直して進もう。
「それにしても、本当に驚きました。まさかカナメ様がいらっしゃっているばかりか、冒険者ギルドにご登録までされているんですもの」
「全くだ。こちらに来ていたなら合流してくれれば良かったのに」
今朝宿でカナメさんが皆に声をかけた時、ルシアちゃんを始めアルベルト達は皆一様に驚き、チェーザーレの喜び様が凄まじかった。そんなにカナメさんの手料理が食いたかったのか。片時も離れようとせず、御者もドナートに代われと言い張る始末。キャラ崩壊してるおっさんを勇者達があんぐりと口を開けて見ていた。
中にはカナメさんを知っている奴もいて、何でいるんだと不思議がっていたが、そこは自分たちを日本に帰せる能力の者の仕業だと説明してやった。帰れると改めて実感して泣き出す女子もいてちょっとした騒ぎだったな。
そんなこんなで賑やかな出発になったのだった。
カナメさんは困ったように眉根を寄せて苦笑いで、合流できる状況ではなかったと1号から聞いていたと答えた。
「それに、ルシアさんの父君……オットリーノ陛下に呼ばれたんだ。身分証を作っていただいたのも陛下のご厚意で」
カナメさんが週末にしかこちらにいられないことを7号から聞いたおっとり国王が招集し、身分証を作りたまたま道中一緒になったということにすれば合流もしやすいだろうと手配してくれたそうだ。やるじゃねぇか、あのおっさん。
日本での様子や、カナメさんがこちらに来ていた際にどこで何をしていたのかなど取り留めもなく話をすること1オーラ。
陽は中天に高く、俺の腹の虫がギュココココと肉を要求した。
「そろそろ昼食にしようか。チェーザーレさん、適当なところで……っと!」
昼食、と聞いた途端チェーザーレが馬車を急停止させた。馬が甲高く短い嘶きと共に棹立ちになり、馬車が大きくガタンと跳ね上がる。
後続の馬車でも急停止させることになり、短い悲鳴が聞こえた。
「どうしたチェーザーレ!? モンスターか?!」
『大丈夫だ。食い意地張ったおっさんが昼食休憩と聞いて慌てただけだ』
状況を問うアルベルトの怒声に問題ないことを思念で答える。
その後、路肩に馬車を寄せ全員が降りてくると、いつものようにエミーリオとベルナルド先生が炉を組み食事の準備を始め、その横でチェーザーレがアルベルトに殴られていた。
それを苦笑いで、でも止めずに見ているカナメさんと、何事もなかったことにホッと胸を撫で下ろす勇者達。
興奮気味になってしまった馬を世話するドナートが大変そうにバルトヴィーノに助けを求めていた。
『こ、これは……!』
「ん? あっ、手抜きってバレちゃった?」
渡された器に盛られたのは、どう見ても懐かしのもつ鍋。野菜たっぷり、栄養満点。ニンニクの香りが食欲をそそる。
日本で俺の母親が作ったのは味噌味だったが、この白いスープは塩ベースのようだ。
驚く俺にカナメさんがテヘペロする。おっさんのあざと可愛さなんて誰得……って、チェーザーレがいたな。
『こらそこの二人、落ち着け』
「そうそう。食卓でお行儀よくできない子は食事抜きですよ」
何故か大興奮して鼻息の荒いチェーザーレと、それを見てとても残念な様子になっているルシアちゃんの頭をペシペシ。でも俺よりもカナメさんの食事抜きという言葉の方が効いたみたいだ。二人ともシュンとした様子で大人しくなる。
その様子を見て周りがクスクス笑っていた。うん、やっぱ笑っているのが良いよな。
勇者たちの笑顔なんて初めて見たかも、なんて思いながら俺は催促する腹の虫に餌を与えるのだった。
「ところで、これは何の肉だ? クニクニと初めての食感だがとても美味いな」
「ちょっと癖がありますけど美味しいですね」
「野菜もこうするとたくさん食べれて良いな。味が染みてて美味い」
アルベルトとエミーリオがモツを絶賛し、普段は肉ばかりで野菜をほとんど食べないバルトヴィーノがお替りを要求する。
材料と調理法を聞くエミーリオに、カナメさんが言いにくそうに答える。
「あの、野菜、馬車にあったもので傷み始めていたものを全部使ってしまったんだけど」
「傷む前なら良いのでは?」
「うん、でもかなりの量だからこれからしばらく野菜を本気で消費しないと」
暫くは野菜中心に、とカナメさんは言うがこれだけ美味いなら文句はないだろ。作るのはエミーリオだけど。カナメさん帰っちゃうしね。
「肉は俺の晩酌用のつまみに、と日本から持ち込んだんだ」
「で、何の肉だ?」
「モツって呼ばれてる、豚の内臓」
「「「内臓?!」」」
日本出身の俺達には馴染み深いが、こっちの人達はホルモンは食べないらしく、すごく驚いて何度もカナメさんと手の中の椀を交互に見ていた。
あの気持ち悪い臓器がまさか食べれるとは、とか、あれって毒なんじゃ、とヒソヒソと話し合っているが聞こえているぞ。
「普通はそうだね。鮮度の良い物をよく洗浄して加熱しないと危険だから迂闊に手を出さないほうが良いと思う。これも一晩もたせるのに燻製にして持ってきてたんだ」
ああ、だから仄かにスモークチーズのような香りがしたのか。
しかし、そうか。こっちだとモツ食えないのか。残念。これが本当の飯テロだな。
こっちで調達できないものを持ってくるなと言ってあっただろと1号に怒られているカナメさんは、もう食べれないものと知って肩を落とす俺達にまた持ってくることを約束してくれた。
さぁ、腹も膨れたし気を取り直して進もう。
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