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第七章 俺様、南方へ行く
8、シャキーンッ!
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俺は二撃三撃と繰り出される熊の攻撃を躱しながら、よろける身体を無理矢理動かして空へと逃げる。
攻撃対象がバルトヴィーノ達に移らないよう、手が届くか届かないかくらいの位置で近づいたり逃げたりを繰り返しながら挑発を続ける俺を熊が凄い形相で睨んでいる。
先程から前脚での攻撃しかしてこない。MP切れはまだ考えられないし、顎を潰されことでそれ系のスキルを封じたと考えるべきか。少なくとも、炎弾や牙はもう使えないはずだ。
「全てを見通す神の眼!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【オルソ・モルテネーロ】
レベル : 48
HP : 19269/32115
MP : 17304/21630
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
チッ! まだまだ元気じゃねぇか!
時折高く飛び掛かてくるジャンプ攻撃を警戒しながら再度熊のステータスをチェックすると、まだ6割近くHPが残っていた。
一方俺はというと。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【リージェ】
レベル : 22
HP : 56574/ 80820
MP : 45636/ 57046
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
げ、熊からの攻撃は喰らってないのに3割も減ってる! 新しいスキルは自滅技だな。もともとのHPが高いからまだ大丈夫だが、そう何度は使えない。
でも、あと1回くらいなら……。
「喰らえ、天空からの鉄槌を!」
シャキーンッ! とポーズを取って空高くへ舞い上がると身体を丸め翼を畳む。
星堕とし! と念じながら体をひねるとゴーッと風を切る音と共に一直線に落ちるのを感じた。
『――≪リージェ≫のスキル≪星堕とし≫が≪喰らえ、天空からの鉄槌を≫に改名されました――』
頭の中に響く声も気にする間もなく地面がどんどん近づいてくる。と、熊がひょい、と避けるのが視界の端に見えた。
や、ヤバい。このままじゃ地面に激突だ! 本気で自滅じゃねぇか!!
慌てて翼を出して何とか方向を変えようとする。
「ぐっ!」
ギリギリの所で方向転換に成功し、熊にかすって減速。決定打を与えることはできなかったが、こちらも大きなダメージにはならなかった。
この技は絶対に避けられない状況を作らない限り使えないな。
目が回って再びふらふらとする俺に、熊の容赦ない攻撃が降り注ぐ。が、奴の攻撃も大振り。まともに当たれば大ダメージだが、避けられない速度じゃない。
やはり全体的なステータスは俺の方が上だな。
「ん? 待てよ?」
そもそも俺が使い勝手の良い竜爪斬やメルトスラッシュを使えないのは、バルトヴィーノ達を巻き込まないためだ。なら、このままのらりくらりとこいつを引き付けつつ、バルトヴィーノ達の戦闘が終わるのを待てば良いんじゃね? そんでもって、戦闘が終わったバルトヴィーノ達にはルシアちゃんの結界内に入っててもらえば。
「グォォォォォ」
「ちょっと、五月蠅いよ。今考え中なんだから」
血を飛ばしながら咆哮しパンチの如く腕を伸ばしてくる熊に、攻撃を避けつつその顔面に蹴りを喰らわせる。
或いは、ゼロ距離からならブレス使ったって良いんじゃね?
バルトヴィーノ達を巻き込まないよう方向にだけ気を付ければ良いんでしょ? よし。
「我が劫火に焼かれよ」
「グォォォォォァァァァアア」
チラ、とバルトヴィーノ達の位置を確認して彼らを背に熊と向き合う。
動きを止めた俺を見てニヤリと笑ったように見えた熊だったが、直後に俺の口から放たれた火炎に捲かれ悲鳴を上げて転がった。
ふ、悪いな熊。火を噴くのは貴様の専売特許ではないのだ!
とドヤりつつ見ると、あっという間に火達磨になって転がる様子にドン引く。
なまじステータスが高いせいで、これまで戦ってきたモンスターと違って即死できないのだ。毛皮が焦げ血が蒸発し、肉の焼ける匂いと交じって何とも気持ち悪い。
「あ、そうだ。水魔法も使えたんだっけ」
ふと思い出したのは最近覚えたばかりの水魔法スキル。最初に使った時はただ水を出しただけで、もう一度使った時は治癒スキルと組み合わせてポーションにした。
だけど、確か水は他にも使えたはずだ。イメージは、修学旅行で行った工場で見た、ウォーターカッター。水を凄く細く高出力で出すことで金属を切っていたっけ。水が出せるなら同じことができるだろう。
火を消されてしまう前に、HPをできるだけ削ろう。うまくすれば致命傷になるかもしれんし。
「水よ、集いて俺様の命に従え」
高出力で細い水をイメージするのに両手を合わせて手刀のように前に振り下ろしたら、その先からバシュッ、と勢いよくビームのように飛んで行き熊を貫いた。ように見えた。
あれ? 何も起きない? 失敗か、と思った瞬間、転がり回っていた熊がどさりと地面に倒れ、そのまま真っ二つに裂けてしまった。その身体を炎が包み込んでいく。うえ、グロイ。
『――≪リージェ≫のスキル≪水よ、集いて俺様の命に従え≫がLv.2になりました――』
『――≪リージェ≫が経験値11250を獲得しました――』
頭の中に戦闘終了を証明するかのように声が響く。
やっと終わったか。何だかどっと疲れてしまったが、もうひと頑張り。
バルトヴィーノ達と切り結んでいる熊にキックを喰らわせて気を逸らしてやると、バルトヴィーノはあっさりと二頭の子熊を倒してしまった。
『――≪リージェ≫が経験値10000を獲得しました――』
今度こそ本当に終わったぁぁ。
久々の強敵に、倒した達成感よりも疲れの方が酷い戦いだった。
え? その割にあっさり倒しやがったじゃないかって? 安全に勝てることに越したことないのだよ。
攻撃対象がバルトヴィーノ達に移らないよう、手が届くか届かないかくらいの位置で近づいたり逃げたりを繰り返しながら挑発を続ける俺を熊が凄い形相で睨んでいる。
先程から前脚での攻撃しかしてこない。MP切れはまだ考えられないし、顎を潰されことでそれ系のスキルを封じたと考えるべきか。少なくとも、炎弾や牙はもう使えないはずだ。
「全てを見通す神の眼!」
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【オルソ・モルテネーロ】
レベル : 48
HP : 19269/32115
MP : 17304/21630
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チッ! まだまだ元気じゃねぇか!
時折高く飛び掛かてくるジャンプ攻撃を警戒しながら再度熊のステータスをチェックすると、まだ6割近くHPが残っていた。
一方俺はというと。
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【リージェ】
レベル : 22
HP : 56574/ 80820
MP : 45636/ 57046
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げ、熊からの攻撃は喰らってないのに3割も減ってる! 新しいスキルは自滅技だな。もともとのHPが高いからまだ大丈夫だが、そう何度は使えない。
でも、あと1回くらいなら……。
「喰らえ、天空からの鉄槌を!」
シャキーンッ! とポーズを取って空高くへ舞い上がると身体を丸め翼を畳む。
星堕とし! と念じながら体をひねるとゴーッと風を切る音と共に一直線に落ちるのを感じた。
『――≪リージェ≫のスキル≪星堕とし≫が≪喰らえ、天空からの鉄槌を≫に改名されました――』
頭の中に響く声も気にする間もなく地面がどんどん近づいてくる。と、熊がひょい、と避けるのが視界の端に見えた。
や、ヤバい。このままじゃ地面に激突だ! 本気で自滅じゃねぇか!!
慌てて翼を出して何とか方向を変えようとする。
「ぐっ!」
ギリギリの所で方向転換に成功し、熊にかすって減速。決定打を与えることはできなかったが、こちらも大きなダメージにはならなかった。
この技は絶対に避けられない状況を作らない限り使えないな。
目が回って再びふらふらとする俺に、熊の容赦ない攻撃が降り注ぐ。が、奴の攻撃も大振り。まともに当たれば大ダメージだが、避けられない速度じゃない。
やはり全体的なステータスは俺の方が上だな。
「ん? 待てよ?」
そもそも俺が使い勝手の良い竜爪斬やメルトスラッシュを使えないのは、バルトヴィーノ達を巻き込まないためだ。なら、このままのらりくらりとこいつを引き付けつつ、バルトヴィーノ達の戦闘が終わるのを待てば良いんじゃね? そんでもって、戦闘が終わったバルトヴィーノ達にはルシアちゃんの結界内に入っててもらえば。
「グォォォォォ」
「ちょっと、五月蠅いよ。今考え中なんだから」
血を飛ばしながら咆哮しパンチの如く腕を伸ばしてくる熊に、攻撃を避けつつその顔面に蹴りを喰らわせる。
或いは、ゼロ距離からならブレス使ったって良いんじゃね?
バルトヴィーノ達を巻き込まないよう方向にだけ気を付ければ良いんでしょ? よし。
「我が劫火に焼かれよ」
「グォォォォォァァァァアア」
チラ、とバルトヴィーノ達の位置を確認して彼らを背に熊と向き合う。
動きを止めた俺を見てニヤリと笑ったように見えた熊だったが、直後に俺の口から放たれた火炎に捲かれ悲鳴を上げて転がった。
ふ、悪いな熊。火を噴くのは貴様の専売特許ではないのだ!
とドヤりつつ見ると、あっという間に火達磨になって転がる様子にドン引く。
なまじステータスが高いせいで、これまで戦ってきたモンスターと違って即死できないのだ。毛皮が焦げ血が蒸発し、肉の焼ける匂いと交じって何とも気持ち悪い。
「あ、そうだ。水魔法も使えたんだっけ」
ふと思い出したのは最近覚えたばかりの水魔法スキル。最初に使った時はただ水を出しただけで、もう一度使った時は治癒スキルと組み合わせてポーションにした。
だけど、確か水は他にも使えたはずだ。イメージは、修学旅行で行った工場で見た、ウォーターカッター。水を凄く細く高出力で出すことで金属を切っていたっけ。水が出せるなら同じことができるだろう。
火を消されてしまう前に、HPをできるだけ削ろう。うまくすれば致命傷になるかもしれんし。
「水よ、集いて俺様の命に従え」
高出力で細い水をイメージするのに両手を合わせて手刀のように前に振り下ろしたら、その先からバシュッ、と勢いよくビームのように飛んで行き熊を貫いた。ように見えた。
あれ? 何も起きない? 失敗か、と思った瞬間、転がり回っていた熊がどさりと地面に倒れ、そのまま真っ二つに裂けてしまった。その身体を炎が包み込んでいく。うえ、グロイ。
『――≪リージェ≫のスキル≪水よ、集いて俺様の命に従え≫がLv.2になりました――』
『――≪リージェ≫が経験値11250を獲得しました――』
頭の中に戦闘終了を証明するかのように声が響く。
やっと終わったか。何だかどっと疲れてしまったが、もうひと頑張り。
バルトヴィーノ達と切り結んでいる熊にキックを喰らわせて気を逸らしてやると、バルトヴィーノはあっさりと二頭の子熊を倒してしまった。
『――≪リージェ≫が経験値10000を獲得しました――』
今度こそ本当に終わったぁぁ。
久々の強敵に、倒した達成感よりも疲れの方が酷い戦いだった。
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