110 / 228
第六章 俺様、東方に行く
17、完全に事故だけど。
しおりを挟む
足音がどんどん近づいてくる。水漏れを疑い浴室へ向かっているのだろうが、ドアが開いている以上すぐにこの部屋に来てしまうだろう。
どうする? 隠れるか、堂々としているか。俺はルシアちゃんを助けられれば良いだけで、領主と戦ったりましてや改心させたりなんて面倒くさいことをするつもりはない。むしろ接触を極力避けた方がスムーズに救出できるだろう。
だけど……俺は既に一人殺してしまっている。ここで隠れたところで明らかに異常な死体がある以上、俺が侵入していることは容易に想像できるだろう。それならば……。
「リオ殿?! この水は貴殿の仕業か?!」
「なっ?! 竜?!」
ドカドカと問い質しながら室内に入ってきた男達の前に堂々と姿を晒す。
二人のうち一人は、俺を見るなり領主様に知らせねばと言って急ぎ戻っていった。
白髪交じりの青っぽい髪を剃り上げたひと昔前のドラマに出てくるヤンキーのような髪型のおっさんは、俺を見て固まっていた。その凄まじいムキムキな筋肉からして領主の護衛か何かだろうか。とても強そうだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【ステータス】
名前 : リザイア
レベル : 18
HP : 564/ 564
MP : 168/ 168
Atk : 229
Def : 170
ステータスの取得に失敗しました。ごめんなさい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
前言撤回。雑魚だわ。レベル1の要さんでも頑張れば何とか倒せそうだぞ。
それとも俺や要さんのステータスがおかしいだけでこれがこっちの世界の普通なのか?
「リオ殿はどうした?」
『……忌まわしい呪具を作る輩ならば、そこにいるぞ?』
混乱気味だった様子は収まり、それでも警戒した様子で聞いてくるリザイア。
ん? 竜を崇める国民性って聞いていたのにこいつからは敵意を感じるぞ? うーん、でももう後には退けないしなぁ。
『俺様の手にかかれたことを光栄に思うが良い』
完全に事故だけど。
こういうのはハッタリも大事。
「なっ……リオ殿! 貴様~!!」
『誰に武器を向けている? 俺様を誰と心得るか?!』
控えおろう! 気分は時代劇のご老公、そのお付きの人である。
『人間ごときが俺様を所有しようなどとおこがましいわ』
ん? あれ? おこがましいで合ってる?
リザイアとかいうおっさん、顔を真っ赤にしてプルプルしてて反応ないんだけど。盛大に間違っていて笑いを堪えてるとかだったら嫌だなぁ。
でもここまできたらやり通すしかない!
『人の魂を縛り無理矢理隷属させるなど、倫理にもとる外道な行為だ。その道具を作っていたこ奴は断じて許せぬ。その道具を使って誘拐同然に奴隷を得ている領主もな』
「何だと?! リオ殿が、いや領主様がそんなことするはずがないだろう!」
リザイアが俺の言葉に怒気を隠さず怒鳴る。
ならば何故隷属の宝玉や支配の首飾りの支配者が領主の名で登録されていた? と問えば怒りで赤かった顔が見る見る青褪めた。
やや呆然とした様子のリザイアに畳みかける。
『俺様の僕たる聖女を攫ったであろう。いずこにやった?』
「何の話だ?」
え? 違うの? ルシアちゃんを連れ去ったのは領主じゃない? そんなバカな。
とぼけているようには見えない。犯人が領主ではないか、リザイアには知らされていないかのどちらかだろう。いや、先ほどの反応からして知らされていないだけな気がする。
それなら説得次第で協力者になってくれるかな?
『ほほう? とぼけるのか。俺様の寝所を襲い、聖女を連れ去りあろうことか護衛の騎士まで手にかけようとしたであろう! これ以上俺様の手を煩わせるでない!』
「聖竜様は騙されているのですよ」
この場にそぐわないねっとりした声がリザイアの後ろからかかった。
慌てて横に避け片膝をついたリザイアを突き飛ばすようにして部屋に入ってきたのは、キンキラキンに全身光らせた豚……いや、おっさん。帽子や服には金色のスパンコールのような小さな粒がたくさん貼られ、両手の指に三つのどでかい宝石のついた指輪、首にはこれまたでかい宝石のついた金のネックレスをつけている。それが部屋の明かりを反射するもんだからめっちゃ目が痛い。
鑑定するまでもない。こいつが領主、アレイ・タイラーツだ。キンキラ具合は息子のクレイバーより凄まじい。やっぱり親子だな。着ている服や宝飾品の趣味も嫌らしい表情までそっくりだ。
そんなアレイはドアの横幅と同じくらいある巨体を揺らしながらゆっくりと近づくと、まるで小動物をあやすかのような手つきで俺に向かって両腕を伸ばしてくる。超キショイんですけど!
「あの女は、あろうことか王女を詐称していたのですよ。そんな女ですからあなた様へも聖女などと嘯いていたに違いありません」
『アホか。ルシアは正真正銘セントゥロの王女で聖女だ』
アレイの手を華麗に避けながら反論すると、いやいや、となおもルシアちゃんが罪人であると滔々とその罪状を並べ立てるアレイ。
元々聞く義理はないのだが、そのあまりの言い分に俺はだんだん苛々してしまい、とうとうキレた。
どうする? 隠れるか、堂々としているか。俺はルシアちゃんを助けられれば良いだけで、領主と戦ったりましてや改心させたりなんて面倒くさいことをするつもりはない。むしろ接触を極力避けた方がスムーズに救出できるだろう。
だけど……俺は既に一人殺してしまっている。ここで隠れたところで明らかに異常な死体がある以上、俺が侵入していることは容易に想像できるだろう。それならば……。
「リオ殿?! この水は貴殿の仕業か?!」
「なっ?! 竜?!」
ドカドカと問い質しながら室内に入ってきた男達の前に堂々と姿を晒す。
二人のうち一人は、俺を見るなり領主様に知らせねばと言って急ぎ戻っていった。
白髪交じりの青っぽい髪を剃り上げたひと昔前のドラマに出てくるヤンキーのような髪型のおっさんは、俺を見て固まっていた。その凄まじいムキムキな筋肉からして領主の護衛か何かだろうか。とても強そうだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【ステータス】
名前 : リザイア
レベル : 18
HP : 564/ 564
MP : 168/ 168
Atk : 229
Def : 170
ステータスの取得に失敗しました。ごめんなさい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
前言撤回。雑魚だわ。レベル1の要さんでも頑張れば何とか倒せそうだぞ。
それとも俺や要さんのステータスがおかしいだけでこれがこっちの世界の普通なのか?
「リオ殿はどうした?」
『……忌まわしい呪具を作る輩ならば、そこにいるぞ?』
混乱気味だった様子は収まり、それでも警戒した様子で聞いてくるリザイア。
ん? 竜を崇める国民性って聞いていたのにこいつからは敵意を感じるぞ? うーん、でももう後には退けないしなぁ。
『俺様の手にかかれたことを光栄に思うが良い』
完全に事故だけど。
こういうのはハッタリも大事。
「なっ……リオ殿! 貴様~!!」
『誰に武器を向けている? 俺様を誰と心得るか?!』
控えおろう! 気分は時代劇のご老公、そのお付きの人である。
『人間ごときが俺様を所有しようなどとおこがましいわ』
ん? あれ? おこがましいで合ってる?
リザイアとかいうおっさん、顔を真っ赤にしてプルプルしてて反応ないんだけど。盛大に間違っていて笑いを堪えてるとかだったら嫌だなぁ。
でもここまできたらやり通すしかない!
『人の魂を縛り無理矢理隷属させるなど、倫理にもとる外道な行為だ。その道具を作っていたこ奴は断じて許せぬ。その道具を使って誘拐同然に奴隷を得ている領主もな』
「何だと?! リオ殿が、いや領主様がそんなことするはずがないだろう!」
リザイアが俺の言葉に怒気を隠さず怒鳴る。
ならば何故隷属の宝玉や支配の首飾りの支配者が領主の名で登録されていた? と問えば怒りで赤かった顔が見る見る青褪めた。
やや呆然とした様子のリザイアに畳みかける。
『俺様の僕たる聖女を攫ったであろう。いずこにやった?』
「何の話だ?」
え? 違うの? ルシアちゃんを連れ去ったのは領主じゃない? そんなバカな。
とぼけているようには見えない。犯人が領主ではないか、リザイアには知らされていないかのどちらかだろう。いや、先ほどの反応からして知らされていないだけな気がする。
それなら説得次第で協力者になってくれるかな?
『ほほう? とぼけるのか。俺様の寝所を襲い、聖女を連れ去りあろうことか護衛の騎士まで手にかけようとしたであろう! これ以上俺様の手を煩わせるでない!』
「聖竜様は騙されているのですよ」
この場にそぐわないねっとりした声がリザイアの後ろからかかった。
慌てて横に避け片膝をついたリザイアを突き飛ばすようにして部屋に入ってきたのは、キンキラキンに全身光らせた豚……いや、おっさん。帽子や服には金色のスパンコールのような小さな粒がたくさん貼られ、両手の指に三つのどでかい宝石のついた指輪、首にはこれまたでかい宝石のついた金のネックレスをつけている。それが部屋の明かりを反射するもんだからめっちゃ目が痛い。
鑑定するまでもない。こいつが領主、アレイ・タイラーツだ。キンキラ具合は息子のクレイバーより凄まじい。やっぱり親子だな。着ている服や宝飾品の趣味も嫌らしい表情までそっくりだ。
そんなアレイはドアの横幅と同じくらいある巨体を揺らしながらゆっくりと近づくと、まるで小動物をあやすかのような手つきで俺に向かって両腕を伸ばしてくる。超キショイんですけど!
「あの女は、あろうことか王女を詐称していたのですよ。そんな女ですからあなた様へも聖女などと嘯いていたに違いありません」
『アホか。ルシアは正真正銘セントゥロの王女で聖女だ』
アレイの手を華麗に避けながら反論すると、いやいや、となおもルシアちゃんが罪人であると滔々とその罪状を並べ立てるアレイ。
元々聞く義理はないのだが、そのあまりの言い分に俺はだんだん苛々してしまい、とうとうキレた。
0
お気に入りに追加
128
あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。


【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる