中二病ドラゴンさんは暗黒破壊神になりたい

禎祥

文字の大きさ
上 下
93 / 228
第六章 俺様、東方に行く

3、鬼! 悪魔! 俺だって夜は眠いわ!

しおりを挟む
「リージェ様! ダメですよ、ペッてして下さい!」
『ほえ?』
「痺れ実の葉を食べてしまうなんて!」

 痺れ実? 山椒だよな?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【ハジカミ】

別名をオーリエン・ペッパー。偽胡椒とも呼ばれる。ピリリと舌を痺れさせるような辛さのある香辛料。実と葉が可食部。乾燥させて使用するのが一般的。
胡椒よりは調達しやすいですよ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 やっぱり山椒じゃねぇか!
 ああ、だが鑑定スキル持っているのにそのまま口にするのは危険か。
 吐きなさい、と俺の背をパンパン叩くルシアちゃんに俺は素直に謝った。

『だが、これは香辛料で毒性のあるものではない。調理に使えるから採取していこう』
「え? やだ、私ったら。ごめんなさい」

 毒だと思っていたなら仕方ないよねー。
 残念ながら葉はもうだいぶ固くなってしまっていたので実を採取するよう教える。
 棘に気をつけながら恐る恐る実を摘むルシアちゃんが可愛いかった。


『――≪リージェ≫が経験値18700を入手しました――』


 お、戦闘が終わったようだ。
 倒した兎はでかすぎて運べないので放置して野営地に戻る。
 と、大量の熊やら猪やら鼠やら兎やらのモンスターが山となっていた。


「で、どうするよ。これ?」

 血の匂いに魅かれてやってきたとは言え、これを解体とかしてたらまた集まってくるよなぁ。
 幸い今は殲滅して視界に入る範囲にはいないが。夜に囲まれたらなかなか大変だ。

「仕方ない、血抜きができない分味は落ちるがこのまま解体しよう」

 ドナートの問いにアルベルトが決断を下す。
 解体はドナートの他にエミーリオもできる。が、一度に二体ずつしかできないならその間だけでも血抜きをしておこう、とベルナルド先生が処理をしていく。
 何と、早く抜けるように、と土魔法で急角度の土台を作ってしまったのだ。

「トーポはまた集まってきたときの撒き餌用にしよう」
「おう、じゃぁ俺半分遠くに置いてくるわ」
「じゃぁ俺も行こう」

 アルベルトの言葉にチェーザーレが遠くへ捨ててくると掴んだのは鼠だった。
 トーポっていうのか、あの鼠。血に集まってくるなら、先にあの鼠を食わせて気を逸らせようということらしい。
 それから実に半日かけて解体したが、幸い再びモンスターが集まってくることはなかった。



『にーく! にーく!』
「はいはい。今作りますよ。煮るのと焼くのとスープ、どれにします?」
『全部!』

 はしゃぐ俺にエミーリオが苦笑する。
 今夜は久々に肉食べ放題なのだ。これが心躍らずにいられようか。
 兎肉は胸肉をスープに、それ以外の部位を玉ねぎと卵で他人丼にしてもらった。
 鶏肉とはまた違うが柔らかく淡白な味がまた旨い。
 熊の胃はこちらでも薬品扱いになるらしく、それ以外のホルモンは日持ちがしないからと全て香草焼きになった。あとは猪肉で生姜焼き。これが激うまだった。ああ、白飯が欲しい。

「くぅぅぅっ! 旨い!」
「力が戻ってくる感じだ」

 バルトヴィーノとドナートは珍しく酒を飲まずモリモリ食べている。他のメンバーも無言で一心不乱に食べているから、相当料理を気に入ったのだろう。

 あの戦闘のあと、解体処理をするドナートとエミーリオ以外はモンスターがなるべく寄ってこないように戦闘の跡を掘り返して埋めてきた。
 土魔法の使えるベルナルド先生は魔法で、他のメンバーは人力で。シャベルなんて無いからアルベルトとバルトヴィーノは自分の剣で、チェーザーレは盾で掘り返していた。
 え? 俺? 俺は勿論見てるだけだよ? やだなぁ、生後半年の赤ちゃんドラゴンに何を求めてるのさ。えへっ。

 ルシアちゃんはというと、俺がモンスターの支配領域を浄化したらどうなるんだろうね、と言ったら早速試してくれた。何と、戦闘や解体作業で漂っていた血生臭さが消えたのだ。
 浄化の効果範囲外に捨ててあったトーポの死骸に魅かれてやってきた熊がいたのだが、こちらをチラリと確認するもウロウロしてやがてトーポの死骸を持って去っていった。
 その後も鼠やら兎やらが来たのだが、どうやら浄化した範囲を嫌がって避けているようだった。

 これなら大量のモンスターが囲ってくることはもうないだろう。今は念のためルシアちゃんに馬車周りに結界を張ってもらっている。それも、その辺に落ちてい小石を聖別して核にしたものだ。これなら夜間ルシアちゃんが眠ってしまっても大丈夫。
 そんなこんなで皆重労働をしてクタクタだったのだ。疲れたときにはスタミナたっぷりホルモン焼きだよね! 二食続けてとか気にしない! 携行食が続いていた時よりマシ!

「それでも念のため見張りは置いておいた方が良いですよね」
「よし、リージェお前今夜は一人でずっと見張りな!」
『な、何故だ?!』

 エミーリオが結界を過信しないほうが良いと言ったら、アルベルトが夜間交代せずに見張りをしろと言いやがった。

「だってお前だけ何にもしてないじゃねぇか。俺達はクタクタで眠くてしょうがねぇ」
『酷くね?!』

 既に眠いらしく欠伸交じりの回答。鬼! 悪魔! 俺だって夜は眠いわ!
 キャンキャン抗議をしたが交代せずに一人で見張りというのは半分冗談だったらしく、一人ずつ交代で見張りをすることでいつもより睡眠時間を確保することにしたようだ。
 夜も更けた頃、ルナさんが来て最後の一人の遺体を連れて帰った。
 
しおりを挟む
感想 289

あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

処理中です...