85 / 228
第五章 俺様、北方へ行く
16、ぐっ、何だこの可愛い生き物は!
しおりを挟む
突然ですが大ピンチです。何でこんな事に……。
「ふふ、ダメですよ、リージェ様逃げちゃ……」
『ル、ルシアよ。せめて何か服を……』
「あら、私とリージェ様の仲じゃないですか♪」
俺は今、ルシアちゃんのたわわなメロンに圧し包まれている。それも布越しじゃない、生だ。いかん、鼻血が出そうだ……。
「だいたいですよ、野営続きで、久しぶりに街でお風呂に入れると思ったのに跡形もないし。本音を言えば私より皆さんに湯浴みをしていただきたいのに……」
話は数分前に遡る。
皆が寝静まった頃起き出したルシアちゃんが突然、泉があるのだから水浴びがしたいと言い出したのだ。
当然、見張りをしていたドナートとバルトヴィーノがどちらかを護衛につけるのでなければダメだと止めたのだが……。
「あら、護衛ならリージェ様がいれば十分ですわ。貴方達どちらかでもリージェ様より強いと胸を張って言えますこと? それとも、乙女の裸体を見たいと?」
「バカを言うな!」
「俺達に幼女趣味はねぇ!」
と、俺を抱きしめて離さないルシアちゃんが二人を黙らせて強引に水浴びを始めたのだ。いざという時のために服は着ておけと言ったのだけれど聞く耳を持ってくれない。
あら、私のような幼女の裸体に欲情するような殿方はいないので大丈夫ですよ、と頬を膨らませている。完全に拗ねちゃってるよ、これ。体の成長は早くてもまだ子供なんだよな。
で、今に至る。
『ルシアよ。これでは見張りにならんが?』
「良いんです。私がこうしていたいだけなのです。……だめ、ですか……?」
ぐっ、何だこの可愛い生き物は! 顔見えないけどこれ絶対目ウルウルしてるよ! 身長差が逆じゃなきゃ絶対上目遣いだよ! くそぅ、いや、メロンをムグムグできるこのポジションもなかなか……やっぱりこのままで良いか。
『しかしなぁ、ルシア。俺様が本当は年頃の男子だともう知っているだろう。乙女というならもう少し恥じらいをだな……』
「リージェ様はリージェ様ですわ」
あ、ダメだこれ。俺が下心もある思春期真っ只中なお年頃だなんて思ってもいないわ。というかルシアちゃんの中の俺の扱いってなんなの? ペット?
結局、ずっと風呂に入っていない他のメンバーが男臭くて耐えられないという愚痴を延々と聞きながら水浴びに付き合った。
く、臭いか? 俺はドラゴンな分嗅覚が強い方だが、気にならない。ましてやエミーリオが生活魔法で簡単に全員の汚れを落としているのだ。臭いわけがない。それとも、女子の嗅覚というのは男子と違うのだろうか……。
今度から俺も極力水浴びするようにしよう……。生臭いとか言われたら立ち直れない気がする……。
その後馬車に戻って眠ってくれたのだが、実は昨夜偽暗黒破壊神に遭遇してからというものルシアちゃんが俺を抱き枕にして放してくれないのだ。
「よっ、色男!」
『1号……助け……』
タップしても全然緩めてくれないもんだから、首が若干絞まっているのだ。正直ルシアちゃんの胸の感触を楽しむどころではない。
1号は良い笑顔でサムズアップすると頑張れよ、と言い残して去ってしまった。裏切者め!
色んな意味で眠れない夜を過ごした俺。ルシアちゃんと共に朝馬車から出ると、既に朝食の用意ができていた。
「おはようございます」
「おはようございます。よく眠れたようで良かったです」
ルシアちゃんにそう声をかけるエミーリオ。俺がその腕の中でぐったりしているのを見て、おや、聖竜様は今日はずいぶんと寝坊助さんですね、なんて抜かすので久々に殺意が湧いた。
「ここからベネディジョンは馬車で1日の距離です。現地の調査をするとなると、なるべく休息を取らずに行きたいのですが……」
食事を摂る全員に向かってエミーリオが申し訳なさそうに告げた。いつもなら到着して1泊、夜が明けてから調査して状況次第でもう1泊という流れなのだが。
そこまで急ぐ旅では無いにも関わらず強行したいのは、なるべく考えまいとしていた昨夜の邂逅のせいだろう。あれはベネディジョンの方角から来た。きっとあちらは長居したくない状況になっているに違いない。
『走行中に馬に回復魔法をかけろということだな』
「そうです。お願いできますか?」
「あの、リージェ様と別々の馬車に乗れということですか……?」
ルシアちゃんの俺を抱く腕に力が籠る。俺は腕を緩めるようタップしながら、一緒だから安心しろと言った。
『術をかける時だけ俺が空を飛んで後続の馬車に行けば良い』
「そうですよ。ずっと別々の馬車に乗れなどとは言いませんから大丈夫ですよ」
エミーリオが微笑みながらそう言って、ようやくルシアちゃんは承諾した。他のメンバーも休みなしで行くことに反対はないようだ。
「あ、ちょっといいか?」
話が終わったタイミングで1号が手を挙げた。
聞けば、明日こちらに来るはずだった本体が来れないらしい。代わりに、本体の弟にあたる人物が来るので面倒見てやって欲しいと。
話を聞いた全員の顔に何でそんな人が来るの? と書かれていた。
「子供が勇者の一人なんだよ。で、どうしても連れて行けって。ルナが行き来させられるのは一人、或いは1点だけなんだよ。知らない場所に一人放り出すわけにもいかないから、二日間だけ頼む」
普段おどけてばかりの1号が真剣な顔をするときはたいてい生徒がらみなんだよな。
一人増えようが二人増えようが変わらない、とアルベルトが言ってくれて明らかにほっとしていた。どんなおっさんが来るんだろう?
「ふふ、ダメですよ、リージェ様逃げちゃ……」
『ル、ルシアよ。せめて何か服を……』
「あら、私とリージェ様の仲じゃないですか♪」
俺は今、ルシアちゃんのたわわなメロンに圧し包まれている。それも布越しじゃない、生だ。いかん、鼻血が出そうだ……。
「だいたいですよ、野営続きで、久しぶりに街でお風呂に入れると思ったのに跡形もないし。本音を言えば私より皆さんに湯浴みをしていただきたいのに……」
話は数分前に遡る。
皆が寝静まった頃起き出したルシアちゃんが突然、泉があるのだから水浴びがしたいと言い出したのだ。
当然、見張りをしていたドナートとバルトヴィーノがどちらかを護衛につけるのでなければダメだと止めたのだが……。
「あら、護衛ならリージェ様がいれば十分ですわ。貴方達どちらかでもリージェ様より強いと胸を張って言えますこと? それとも、乙女の裸体を見たいと?」
「バカを言うな!」
「俺達に幼女趣味はねぇ!」
と、俺を抱きしめて離さないルシアちゃんが二人を黙らせて強引に水浴びを始めたのだ。いざという時のために服は着ておけと言ったのだけれど聞く耳を持ってくれない。
あら、私のような幼女の裸体に欲情するような殿方はいないので大丈夫ですよ、と頬を膨らませている。完全に拗ねちゃってるよ、これ。体の成長は早くてもまだ子供なんだよな。
で、今に至る。
『ルシアよ。これでは見張りにならんが?』
「良いんです。私がこうしていたいだけなのです。……だめ、ですか……?」
ぐっ、何だこの可愛い生き物は! 顔見えないけどこれ絶対目ウルウルしてるよ! 身長差が逆じゃなきゃ絶対上目遣いだよ! くそぅ、いや、メロンをムグムグできるこのポジションもなかなか……やっぱりこのままで良いか。
『しかしなぁ、ルシア。俺様が本当は年頃の男子だともう知っているだろう。乙女というならもう少し恥じらいをだな……』
「リージェ様はリージェ様ですわ」
あ、ダメだこれ。俺が下心もある思春期真っ只中なお年頃だなんて思ってもいないわ。というかルシアちゃんの中の俺の扱いってなんなの? ペット?
結局、ずっと風呂に入っていない他のメンバーが男臭くて耐えられないという愚痴を延々と聞きながら水浴びに付き合った。
く、臭いか? 俺はドラゴンな分嗅覚が強い方だが、気にならない。ましてやエミーリオが生活魔法で簡単に全員の汚れを落としているのだ。臭いわけがない。それとも、女子の嗅覚というのは男子と違うのだろうか……。
今度から俺も極力水浴びするようにしよう……。生臭いとか言われたら立ち直れない気がする……。
その後馬車に戻って眠ってくれたのだが、実は昨夜偽暗黒破壊神に遭遇してからというものルシアちゃんが俺を抱き枕にして放してくれないのだ。
「よっ、色男!」
『1号……助け……』
タップしても全然緩めてくれないもんだから、首が若干絞まっているのだ。正直ルシアちゃんの胸の感触を楽しむどころではない。
1号は良い笑顔でサムズアップすると頑張れよ、と言い残して去ってしまった。裏切者め!
色んな意味で眠れない夜を過ごした俺。ルシアちゃんと共に朝馬車から出ると、既に朝食の用意ができていた。
「おはようございます」
「おはようございます。よく眠れたようで良かったです」
ルシアちゃんにそう声をかけるエミーリオ。俺がその腕の中でぐったりしているのを見て、おや、聖竜様は今日はずいぶんと寝坊助さんですね、なんて抜かすので久々に殺意が湧いた。
「ここからベネディジョンは馬車で1日の距離です。現地の調査をするとなると、なるべく休息を取らずに行きたいのですが……」
食事を摂る全員に向かってエミーリオが申し訳なさそうに告げた。いつもなら到着して1泊、夜が明けてから調査して状況次第でもう1泊という流れなのだが。
そこまで急ぐ旅では無いにも関わらず強行したいのは、なるべく考えまいとしていた昨夜の邂逅のせいだろう。あれはベネディジョンの方角から来た。きっとあちらは長居したくない状況になっているに違いない。
『走行中に馬に回復魔法をかけろということだな』
「そうです。お願いできますか?」
「あの、リージェ様と別々の馬車に乗れということですか……?」
ルシアちゃんの俺を抱く腕に力が籠る。俺は腕を緩めるようタップしながら、一緒だから安心しろと言った。
『術をかける時だけ俺が空を飛んで後続の馬車に行けば良い』
「そうですよ。ずっと別々の馬車に乗れなどとは言いませんから大丈夫ですよ」
エミーリオが微笑みながらそう言って、ようやくルシアちゃんは承諾した。他のメンバーも休みなしで行くことに反対はないようだ。
「あ、ちょっといいか?」
話が終わったタイミングで1号が手を挙げた。
聞けば、明日こちらに来るはずだった本体が来れないらしい。代わりに、本体の弟にあたる人物が来るので面倒見てやって欲しいと。
話を聞いた全員の顔に何でそんな人が来るの? と書かれていた。
「子供が勇者の一人なんだよ。で、どうしても連れて行けって。ルナが行き来させられるのは一人、或いは1点だけなんだよ。知らない場所に一人放り出すわけにもいかないから、二日間だけ頼む」
普段おどけてばかりの1号が真剣な顔をするときはたいてい生徒がらみなんだよな。
一人増えようが二人増えようが変わらない、とアルベルトが言ってくれて明らかにほっとしていた。どんなおっさんが来るんだろう?
0
お気に入りに追加
128
あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは


【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる