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第三章 俺様、王都へ行く
14、意外と乱暴だな、この騎士団長。
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『と、そんなことがあったのだ』
「おのれ、教皇め! 私の可愛いルシアちゃんに下賤な視線を向けおって!」
俺は早速教会でのことをおっとり国王にチクってやった。
教皇がルシアちゃんの身体を狙っていると聞いた国王は顔を真っ赤にして怒っている。
これで、あの腐りまくった教会も少しはまともに……。と思ったら両肩をガシッと掴まれた。
「聖竜殿、正義感の強いそなたに頼みがあるのだが」
え、嫌です。
ていうか目が血走ってて怖い。
「教皇を失脚させてくれ」
『無理』
あのね、俺ドラゴンよ? モンスターに何を期待してるのさ?
何でも、王家は教会に口出しできないそうで。それは向こうも同じなのだが。
教会がどれだけ腐ろうと、正すことができるのは内部の者だけなのだそうだ。
民たちからも教会に対する苦情は上がっていたそうなのだが、調査をすることが叶わず、祈祷料が上がったくらいしか把握していなかったのだと。
そもそも、ここの宗教は婚姻を禁止していない。つまり、肉欲を禁止していないのだ。
女性に手を上げたくらいでは取り締まれない。すべてはモラルの問題ってやつだ。
「聖竜という立場ならば教会の者にも口出しできよう?」
『聖女から祈祷料むしり取ってあげく肉体関係迫ろうとする奴らだぞ?』
「それが何より許しがたい! いっそ聖竜殿のブレスで……」
あ、本音出たね。
俺も殺したいって思ったもん、あいつ。
『明日には岩が届くのだろう? 一刻も早く出立したいのだがな……』
「調査をするには時間が足りぬ、か……」
『いっそ教会壊すか? あんな腐った機関はいらんだろ。女神だってあんな汚れ切った場所にはおらんよ』
沈黙。しばらく見つめ合った俺達はガシリと手を握る。
にやり、と黒い顔で笑うおっさんとドラゴンがそこにはいたのだった。
決行するなら今夜しかない。
俺は国王からウェルナー君と騎士団長を借り受けた。
ウェルナー君には、明日結界を張る際に聖女と共に祈祷を行う式典を開いてくれという王家からの要請を届けるという名目で教会に行ってもらう。
あのスケベおやじは女で頭がいっぱいになっていた。きっと今夜はあの綺麗どころのシスターとにゃんにゃんしていることだろう。
それをウェルナー君と共に俺が発見して断罪するという流れだ。教皇としてどうなのってね。
上手いこと口論になってウェルナー君か俺にでも手を上げてくれればこっちのもの。あとは騎士団長が勅使に手を出した、即ち国家反逆罪として処理してくれるって手筈。
宿に戻ると困り顔のルシアちゃんがいた。
あのゲス教皇から夕食の招待状が届いているというのだ。
「あの、どうしましょう?」
『ふむ、ルシアは留守番しているがいい。俺様が行こう。彼奴を正しい道に導くのもまた使命であろう』
「いえ、それが……」
招待状には、ルシアちゃんは必ず来るようにと書いてあるそうだ。
来なければこの度の支援もしないと。あのゲスが。
ルシアちゃんは巻き込みたくなかったのだが、こうなったら仕方ない。
『心配するな、ルシア。其方は俺様が守ろう』
俺の言葉に頬を染める少女の、なんと美しいことか。
おっとり国王に言われなくても、ルシアちゃんの貞操は俺が守る!
と意気込んでいたのだが、着いた途端にぺっと文字通りつまみ出されてしまった。
「何です、この薄汚いモンスターは。教会は神聖な場所。汚らわしいモンスターごときが入って良い場所ではありませんよ」
だそうだ。
そういや、俺が聖竜、もとい無害だって示す首輪はあいつに盗られてたんだっけ。
どこか入れる場所! って探したけど、見つからない。
悔しいが、ここはウェルナー君を頼るしかないだろう。
それまで頑張ってくれ、ルシアちゃん!
城へ飛ぶと、ちょうどウェルナー君と騎士団長のエミーリオが揃ったところだった。
「おお、聖竜殿。ついに決行ですな」
『それどころではない。急いで教会へ行ってくれ』
これから教皇の失墜もとい教会が崩壊する場所が見られるとわくわくした面持ちのおっとり国王に、口早にルシアちゃんが教会に連れ込まれたと告げる。
一瞬顔を青褪めさせた後真っ赤にさせた国王が拳を振るい、ウェルナーとエミーリオは駆け出した。
元々用意してあった使者用の馬車に乗り込むと、鞭を振るって馬車を飛ばす。
俺は通行人が轢かれないよう先行して避けさせた。
そうして急いで教会に辿り着くと、エミーリオが乱暴に教会の扉を押し開けた。
「な、何を? 乱暴はおやめください」
「祈祷でしたら祈祷料は金貨一枚です」
バタンという大きな音を聞きつけて昼間教皇の後ろで控えていた女性二人が大慌てでやってきた。
「すまぬな、国王陛下からの急ぎの勅使だ。教皇殿はどちらへ?」
「困ります!」
「勝手に入らないでください!」
女性がエミーリオを押し留めようとするが、構わずずけずけと進む。
あっ、そうだ。
「我を害さんとする者よ、姿を現せ」
ぼやっと、嫌悪感のする気配が。教皇に違いない。
『こっちだ!』
俺は廊下を突き進む。その後をエミーリオが、更にその後をウェルナーが続く。
そして、よほど中に入られたくないのか女性二人も。
『ここだ』
それを無視して気配のした部屋の前で止まる。礼拝堂と違ってこちらには扉がついていて入れない。
すると、間髪入れずにエミーリオが扉を蹴破った。綺麗な顔して意外と乱暴だな、この騎士団長。
「おのれ、教皇め! 私の可愛いルシアちゃんに下賤な視線を向けおって!」
俺は早速教会でのことをおっとり国王にチクってやった。
教皇がルシアちゃんの身体を狙っていると聞いた国王は顔を真っ赤にして怒っている。
これで、あの腐りまくった教会も少しはまともに……。と思ったら両肩をガシッと掴まれた。
「聖竜殿、正義感の強いそなたに頼みがあるのだが」
え、嫌です。
ていうか目が血走ってて怖い。
「教皇を失脚させてくれ」
『無理』
あのね、俺ドラゴンよ? モンスターに何を期待してるのさ?
何でも、王家は教会に口出しできないそうで。それは向こうも同じなのだが。
教会がどれだけ腐ろうと、正すことができるのは内部の者だけなのだそうだ。
民たちからも教会に対する苦情は上がっていたそうなのだが、調査をすることが叶わず、祈祷料が上がったくらいしか把握していなかったのだと。
そもそも、ここの宗教は婚姻を禁止していない。つまり、肉欲を禁止していないのだ。
女性に手を上げたくらいでは取り締まれない。すべてはモラルの問題ってやつだ。
「聖竜という立場ならば教会の者にも口出しできよう?」
『聖女から祈祷料むしり取ってあげく肉体関係迫ろうとする奴らだぞ?』
「それが何より許しがたい! いっそ聖竜殿のブレスで……」
あ、本音出たね。
俺も殺したいって思ったもん、あいつ。
『明日には岩が届くのだろう? 一刻も早く出立したいのだがな……』
「調査をするには時間が足りぬ、か……」
『いっそ教会壊すか? あんな腐った機関はいらんだろ。女神だってあんな汚れ切った場所にはおらんよ』
沈黙。しばらく見つめ合った俺達はガシリと手を握る。
にやり、と黒い顔で笑うおっさんとドラゴンがそこにはいたのだった。
決行するなら今夜しかない。
俺は国王からウェルナー君と騎士団長を借り受けた。
ウェルナー君には、明日結界を張る際に聖女と共に祈祷を行う式典を開いてくれという王家からの要請を届けるという名目で教会に行ってもらう。
あのスケベおやじは女で頭がいっぱいになっていた。きっと今夜はあの綺麗どころのシスターとにゃんにゃんしていることだろう。
それをウェルナー君と共に俺が発見して断罪するという流れだ。教皇としてどうなのってね。
上手いこと口論になってウェルナー君か俺にでも手を上げてくれればこっちのもの。あとは騎士団長が勅使に手を出した、即ち国家反逆罪として処理してくれるって手筈。
宿に戻ると困り顔のルシアちゃんがいた。
あのゲス教皇から夕食の招待状が届いているというのだ。
「あの、どうしましょう?」
『ふむ、ルシアは留守番しているがいい。俺様が行こう。彼奴を正しい道に導くのもまた使命であろう』
「いえ、それが……」
招待状には、ルシアちゃんは必ず来るようにと書いてあるそうだ。
来なければこの度の支援もしないと。あのゲスが。
ルシアちゃんは巻き込みたくなかったのだが、こうなったら仕方ない。
『心配するな、ルシア。其方は俺様が守ろう』
俺の言葉に頬を染める少女の、なんと美しいことか。
おっとり国王に言われなくても、ルシアちゃんの貞操は俺が守る!
と意気込んでいたのだが、着いた途端にぺっと文字通りつまみ出されてしまった。
「何です、この薄汚いモンスターは。教会は神聖な場所。汚らわしいモンスターごときが入って良い場所ではありませんよ」
だそうだ。
そういや、俺が聖竜、もとい無害だって示す首輪はあいつに盗られてたんだっけ。
どこか入れる場所! って探したけど、見つからない。
悔しいが、ここはウェルナー君を頼るしかないだろう。
それまで頑張ってくれ、ルシアちゃん!
城へ飛ぶと、ちょうどウェルナー君と騎士団長のエミーリオが揃ったところだった。
「おお、聖竜殿。ついに決行ですな」
『それどころではない。急いで教会へ行ってくれ』
これから教皇の失墜もとい教会が崩壊する場所が見られるとわくわくした面持ちのおっとり国王に、口早にルシアちゃんが教会に連れ込まれたと告げる。
一瞬顔を青褪めさせた後真っ赤にさせた国王が拳を振るい、ウェルナーとエミーリオは駆け出した。
元々用意してあった使者用の馬車に乗り込むと、鞭を振るって馬車を飛ばす。
俺は通行人が轢かれないよう先行して避けさせた。
そうして急いで教会に辿り着くと、エミーリオが乱暴に教会の扉を押し開けた。
「な、何を? 乱暴はおやめください」
「祈祷でしたら祈祷料は金貨一枚です」
バタンという大きな音を聞きつけて昼間教皇の後ろで控えていた女性二人が大慌てでやってきた。
「すまぬな、国王陛下からの急ぎの勅使だ。教皇殿はどちらへ?」
「困ります!」
「勝手に入らないでください!」
女性がエミーリオを押し留めようとするが、構わずずけずけと進む。
あっ、そうだ。
「我を害さんとする者よ、姿を現せ」
ぼやっと、嫌悪感のする気配が。教皇に違いない。
『こっちだ!』
俺は廊下を突き進む。その後をエミーリオが、更にその後をウェルナーが続く。
そして、よほど中に入られたくないのか女性二人も。
『ここだ』
それを無視して気配のした部屋の前で止まる。礼拝堂と違ってこちらには扉がついていて入れない。
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